副作用としてこむら返りの記載ある薬剤
金曜日, 8月 17th, 2007KW:こむら返り・腓返り・強直性痙攣・腓腹筋痙攣・筋痙攣・腓腸筋痙直・腓腸筋痙攣・有痛性筋痙攣
添付文書の副作用欄に“こむら返り”(腓返り)とする記載のある薬剤について抽出した。“こむら返り”について、医学用語辞典では『強直性痙攣、腓腹筋痙攣』とする標記がされている。
■強直性痙攣(tonic cramp):持続性痙攣(tonic convulsion)。骨格筋が突っ張るように激しく痙攣し、比較的長時間にわたって持続するものをいう。全身性のものには、てんかん、テタニー、破傷風などがあるが、局所性のものとしては“こむら返り”(腓腹筋痙攣)がある。
■腓腹筋痙攣(muscle spasms of triceps surae):腓腸筋痙攣。下腿三頭筋の痙攣は、上位運動ニューロンの障害、中毒性疾患でも認められるが、健康人の運動中にもしばしば発生する。筋の疲労、準備運動の不足等が原因で“こむら返り”と呼ばれている。冷水中の水泳、テニスのサーブ で爪先立ちをした際に誘発される。腓腹部の緊張と疼痛が加わり運動不能に陥る。膝の屈伸、足趾の伸展などにより筋の痙攣は緩む。軽いマッサージ、温浴も効果がある。
■その他、“こむら返り”を 「有痛性筋痙攣」と標記する文献も見られる。
腓腹筋痙攣の発現機序については、種々の原因で起こる筋収縮であるとされているが、薬剤起因性の腓腹筋痙攣の発現機序は、可逆的で筋の収縮・弛緩に必要なCa2+・Na+のバランス、筋細胞膜の安定性・筋収縮に必要なエ ネルギーの供給不備等により発現すると考えられる。また、遠心性神経と求心性神経のアンバランスが生じた場合にも腓腹筋痙攣が発現するの報告が見られる。
一般名・商 品名(会社名) | 副作用標記 | 推定される発現理由 |
[213]azosemido ダイアート錠(三和化学) |
筋痙攣 | 本剤の利尿作用により電解質 失調・脱水が報告されており、腓腹筋痙攣の原因となりうる。 |
[213]benzylhydrochlorothiazideベハイド錠(杏林) | 筋痙攣 | 本剤の利尿作用により電解質 失調・脱水が報告されており、腓腹筋痙攣の原因となりうる。 |
[213]bumetanide ルネトロン錠(三共) |
筋痙攣 | 本剤の利尿作用により電解質 失調・脱水が報告されており、腓腹筋痙攣の原因となりうる |
[214]bunitrolol hydrochloride ベトリロール-Lカプセル (ベーリンガー) |
腓腸筋痙直 | catecholamine は、筋肉内へのK流入を増大することによって、その上昇を緩衝する傾向がある。β-遮断薬はこの緩衝作用に拮抗するとされており、K値の変動により発現す る可能性。 |
[212]carteolol hydrochloride ミケラン錠(大塚) |
腓腸筋痙攣 (こむら がえり) |
catecholamine は、筋肉内へのK流入を増大することによって、その上昇を緩衝する傾向がある。β-遮断薬はこの緩衝作用に拮抗するとされており、K値の変動により発現す る可能性。 |
[214]celiprolol hydrochloride セレクトール錠(日本新薬) |
腓腹筋痙攣 (こむら がえり) |
catecholamine は、筋肉内へのK流入を増大することによって、その上昇を緩衝する傾向がある。β-遮断薬はこの緩衝作用に拮抗するとされており、K値の変動により発現す る可能性。 |
[214]cilnidipineアテレック錠(味の素-持田) | 腓腸筋痙直 | catecholamine は、筋肉内へのK流入を増大することによって、その上昇を緩衝する傾向がある。β-遮断薬はこの緩衝作用に拮抗するとされており、K値の変動により発現す る可能性。 |
[122]dantrolene sodium ダントリウム注・カプセル (山之内) |
強直性痙攣 痙攣 |
腓腹筋痙攣の記載はないが、 本剤は骨格筋において筋小胞体からのカルシウム遊離を抑制し、中枢神経系において細胞内カルシウム濃度上昇を抑制し神経伝達物質の遊離亢進を抑制する結 果、ドパミン-セロトニン神経活性の不均衡を改善するとされており、この作用に起因して惹起される可能性が推定される[添付文書,2003.5.]。 |
[217]diltiazem hydrochloride ヘルベッサー錠(田辺) |
こむらがえり | 細胞外Ca2+の 血管平滑筋及び心筋細胞内への流入を特異的に遮断し、筋原繊維ATPaseの活性を阻害することにより筋の機械的収縮を抑制すると報告されており、何等か の影響が発現することが考えられる。 |
[214]felodipine スプレンジール錠(アストラゼネカ) |
こむらがえり | catecholamine は、筋肉内へのK流入を増大することによって、その上昇を緩衝する傾向がある。β-遮断薬はこの緩衝作用に拮抗するとされており、K値の変動により発現す る可能性。 |
[213]furosemide ラシックス錠(アベンティス) |
筋痙攣 | 本剤の利尿作用により電解質 失調・脱水が報告されており、腓腹筋痙攣の原因となりうる。 |
[213]hydrochlorothiazideダイクロトライド錠(万有) | 筋痙攣 | 本剤の利尿作用により電解質 失調・脱水が報告されており、腓腹筋痙攣の原因となりうる。 |
[214]metoprolol tartrate セロケン錠(アストラゼネカ) |
筋痙直 | catecholamine は、筋肉内へのK流入を増大することによって、その上昇を緩衝する傾向がある。β-遮断薬はこの緩衝作用に拮抗するとされており、K値の変動により発現す る可能性。 |
[217]nifedipine アダラートカプセル(バイエル) |
筋痙攣 | 腓腸筋痙攣とする記載はないが、細胞外Ca2+の血管平滑筋及び 心筋細胞内への流入を特異的に遮断し、筋原繊維ATPaseの活性を阻害することにより筋の機械的収縮を抑制すると報告されており、何等かの影響が発現す ることが考えられる[IF,1999.10.]。 |
[214]penbutolol sulfate ベータプレシン錠(アベンティス) |
筋痙直 | catecholamine は、筋肉内へのK流入を増大することによって、その上昇を緩衝する傾向がある。β-遮断薬はこの緩衝作用に拮抗するとされており、K値の変動により発現す る可能性。 |
[212]pindolol カルビスケン錠(ノバルティス) |
腓腹筋痙直 (こむら がえり) |
catecholamine は、筋肉内へのK流入を増大することによって、その上昇を緩衝する傾向がある。β-遮断薬はこの緩衝作用に拮抗するとされており、K値の変動により発現す る可能性。 |
[213]piretanide アレリックス錠(ヘキサル) |
筋痙攣 | 本剤の利尿作用により電解質 失調・脱水が報告されており、腓腹筋痙攣の原因となりうる。 |
[243]propylthiouracilプロパジール錠(中外) | こむらがえり | thiamazoleにおい てこむら返りや首筋、脇腹の筋肉が引き連れる症状は、本剤の急激な治療効果の発現の結果であるとする報告が見られる。 |
[213]spironolactone アルダクトンA錠(ファイザー) |
筋痙攣 | 腓腸筋痙攣とする記載はない が、本剤投与により高カリウム血症が惹起された場合、筋痙攣の症状が発現することがある[IF,2003.8.] |
[243]thiamazole メルカゾール注・錠(中外) |
こむらがえり | こむら返りや首筋、脇腹の筋 肉が引き連れる症状は、本剤の急激な治療効果の発現の結果であるとする報告が見られる。 |
[213]torasemide ルプラック錠 (三菱ウェルファーマ) |
筋痙攣 (こむらがえ り) |
本剤の利尿作用により電解質 失調・脱水が報告されており、腓腹筋痙攣の原因となりうる[IF,1999.1.] |
[213]trichlormethiazide フルイトラン錠(塩野義) |
筋痙攣 | 腓腸筋痙攣とする記載はない が、腎遠位尿細管局部の管腔側に局在するNa+、Cl-共輸送体を阻害するこ とによりNa+、Cl-の再吸収を抑制し、尿中への排泄を増加させる。これに 伴って水の排泄が増加することにより利尿作用を示すとされている。体内電解質の減少と脱水は筋肉痛・筋肉痙攣の原因としてあげられている[IF, 1998.4.]。 |
[015.11.MUS:2004.6.21.古泉秀夫]
- 医学大辞典;南山堂,1992
- 葛原茂樹:就寝中に起こる有痛性筋痙攣;日本医事新報,No.3656(1994)
- New Pins Table,2004.6.4.
- 高久史麿・他監修:治療薬マニュアル;医学書院,2004
- 宮川俊平:こむら返りの原因と治療;日本医事新報,No.3743(1996)
- 藤原元始・他監訳:グッドマン・ギルマン薬理書[上]第8版;廣川書店,1992
- 永井育三:薬剤師のための服薬指導-抗甲状腺Q&A-;神谷書房, 2000