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ハゼ(櫨)の木の毒性

金曜日, 8月 17th, 2007
対象物 ハゼ(櫨)の木
成分 ウルシオール(urushiol)
一般的性状 学 名:Rhus succedanea。分類:ウルシ科(Anacardiaceae)ウルシ属の落葉低木。中国原産。国内では本州の関東以西の山野に自生する。葉は茎頂
に集まって互生し、奇数羽状複葉。羽片はやや厚く、少数の鋸歯がある。初夏、緑色の小花をえき生の散房花状に付ける。果実は小型平滑で多量の固型脂肪を含
み、これから木蝋を取る。
[ラ]Rhus succedanea L.、別名:ロウノキ、カブレノキ。
毒性 ウルシと同様に樹液でかぶれることがある。毒成分としてウルシオール(urushiol)。ウルシ科の植物では有毒成分が気化しており、人によっては近くを
通るだけでも皮膚炎を起こすことがある。
ウルシの樹液には強刺激性のウルシオール、ヒドロウルシオールが含まれ、樹液が皮膚に付着すると皮膚が赤くなり痒みを伴う炎症や水疱が出来る。後で激痛が
走ることがある。個人差もあるが気化した有毒成分にも反応して、過敏な人は附近に近づいたり燃やした煙に当たったりしただけでもかぶれることがある。
漢方ではウルシの木を燃やした煙を扁桃腺の治療に使用するが、かぶれには注意が必要である。
症状 接触性皮膚炎
処置 かぶれた時は水でよく洗い、抗ヒスタミン剤含有の軟膏を塗布し、濡れたタオルなどで冷やす。
接触性皮膚炎の治療の基本は原因物質の除去、皮膚炎の鎮静化であり、皮膚炎に 対して、症状に応じた順位のステロイド外用剤を使用する。ステロイド外用薬は痒み、紅斑・苔癬化が概略治癒するまで外用する。重症(水疱、糜爛等)の場合
にはステロイド外用後に亜鉛華軟膏又は亜鉛華単軟膏をリント布で貼付し、繃帯で保護する。止痒を目的として抗ヒスタミン薬、抗アレルギー薬を使用する。
事例 「残 念でしたな、若旦那。ぽっくり行かずに生きておるわい」
と減らず口をたたく。
「ふざけるのはよせよ」忠兵衛は半ベソで言うと、隣家の内儀すでに梅から話しを聞いていたらしく、いつもの丁寧な口調で話してくれた。
「角野様。どうやら、お梅さんは、何か変なものを吸い込んだようなのです」
「変なもの?」
「これです」
と漆塗りの重箱を差し出した。高級なものではないが、密閉度の高いもので、虫よけや湿気よけなど必要なものをしまっておくのに重宝される。
「なんだ………?」
「この箱から、煙が出てきたんじゃ。玉手箱みたいに」と梅は言った。
「煙が?」
忠兵衛が蓋を開けてみると、中にまだ少し燻っている葉っぱや枝がぎゅうぎゅうに詰め込まれていた。おそらく櫨の木の一種で、強くはないが毒気が少しあり、
燃やした煙を吸うと一時的に息を吸えなくなる。

「なぜ、こんなものを………」
箱をひっくり返すと、二重底になっていて、中から一枚の紙が出てきた。そこには、『おめえは俺の人生をむちゃくちゃにしやがった。今度は俺がお前をぶっ殺
してやる』と書かれてある [井川香四郎:晴れおんな-くらがり同心裁許長;KKベストセラーズ,2004]。

備考 櫨の木はウルシ科に属する落葉樹で、木蝋を取るために九州地方では栽培されていた時代があるようである。
櫨を燻すことで致死的な毒性を発揮するという報告は見当たらないが、扁桃腺に煙を吸引させた場合、人によってはかぶれることがあったという報告があること
から、相手を脅かすくらいの役には立ったかも知れない。
物語に出てくる場面も、特段毒殺を目的としたわけではなく、嫌がらせ目的と考えられるが、櫨の木を燻してその煙を吸引させるという方法は珍しい方法であり、更に櫨の木の成分であるウルシオールによる接触性皮膚炎の可能性は、現在でも起こりえると考えられるので、対処法の概略を調査した。
文献 1) 薬科学大辞典 第2版;広川書店,1990
2)海老沢昭夫:知っておきたい身近な薬草と毒草;薬事日報社,2003
3)小川賢一・他:学研の大図鑑 危険・有毒生物;株式会社学習研究社,2003
4)山口 徹・総編集:今日の治療指針;医学書院,2005
5)高久史麿・他監修:治療薬マニュアル;医学書院,2004
調査者 古泉秀夫 記入日 2005.1.23.