食品中のチラミン(tyramine)含有量
金曜日, 8月 17th, 2007チラミン(tyramine)=4-(2-aminoethyl)phenol、p-hidroxyhenylethylamine。
チロキシンより芳香族L-アミノ酸デカルボキシラーゼの作用で生成する。動物、植物に広く分布する。動物では脳神経に微量に存在しており、い わゆる微量アミン(trace amine)の一種で、ニューロモジュレーター(neuromodulator)として神経伝達作用を調節している可能性が推定されている。 tyramineは、交感神経終末に取り込まれてnorepinephrinを遊離させるので、間接的に交感神経興奮様の作用を示す。モノアミン酸化酵素 (MAO)で酸化的脱アミノを受けてp-ヒドロキシフェニル酢酸となる。
tyramine高含有食品の摂取に引き続き、モノアミンオキシダーゼ阻害薬 (MAOI’s)で治療を行っていた患者に、高血圧の危険性のあることが報告されている。
MAO阻害薬は、胃腸管から吸収されるモノアミン(例えばtyramine)の解毒及び内因性アミン類(norepinephrin、epinephrine) の代謝に関連して、モノアミン酸化酵素の酵素的な作用を抑制する(MAOは体内に広く分布す る酵素)。食品中のtyramineは、通常は腸管壁や肝臓中のMAOにより破壊されてしま うが、患者がMAO阻害薬を服用している場合、tyramineは容易に循環系中に侵入し、 体内に蓄積される。やがてtyramineはMAOが抑制されているため、特別な神経終末部 (epinephrine産生神経単位)に集積したnorepinephrineの大量放出を惹起する。結果的に血圧の異常な上昇、高血圧の危険性が考え られる。
monoamineoxydase(MAO)
[モノアミン酸化酵素] |
*モノアミン類[dopamine、noradrenaline(norepinephrine)、 adrenaline(epinephrine)、serotonin、tyramine等] の酸化酵素(脱アミノ酵素)。
*胃腸管からのmonoamine(例:tyramine)の解毒 *norepinephrinやepinephrineの様な内因性アミンの代謝 |
monoamine oxydase inhibitor(MAOI’s) | *モノアミン酸化酵 素阻害薬 |
tyramine:動植物界に広く存在する生体amineの一つで、チロシンの 脱炭酸されたものである。epinephrineと類似しており、子宮収縮、血圧上昇などの作用がある。腸内の微生物によりチロシンから生成されると有害 である。
報告されている摂取量 | 報告されている症状 |
---|---|
6mg(経 口) | 血圧の徴候的な上昇 |
25mg(経口) | 致命的結果 |
8mg(経 口) | 収縮期圧を 30mgHg上昇させた。 |
20-80mg (皮下注) | 血圧が目覚ましく上 昇し、重篤な頭痛が発症 |
500mg以 上 | 収縮期血圧を 30mgHg上昇させるに要する量 |
*食事制限:MAO阻害薬投与中止後最小2週間継続。薬物中断後アミン代謝が正常に回復するまで2週間を要すると考えられている。
飲食物名 | 含有量 | 飲食物名 | 含有量 |
チェダーチーズ(長期間醗酵) | 153.0 | ニシンの塩漬 | 47.0 |
チェダーチーズ(中期間醗酵品) | 19.2 | ニシンの塩漬 | ND-47.0 |
チェダーチーズ(短期間醗酵品) | 12.0 | ニシンの塩漬の漬け 汁 | 1.51 |
プロセスチーズ | 2.6 | ホウボウ類の卵 | 0.44 |
ゴーダチーズ | 2.0 | 牛の肉汁 | 0.0858 |
ブルーチーズ | 9.3-25.6 | 鶏の肉汁 | 0.046 |
ロマノチーズ | 23.8 | 肉エキス(3銘柄) | 9.5-30.4 |
ポー・デュ・サン リュチーズ | 111.6 | サラミ | 18.8 |
スチルトン・ブルー チーズ | 217.0 | ドライソーセージ | 12.5 |
パルメザンチーズ | 0.4-29.0 | 鶏肝臓(5日目) | 5.1 |
ビール(4銘柄) | 0.65-1.12 | 鶏肝臓(1日目) | ND-0.5 |
ビール(4銘柄) | 0.145-0.452 | ソーセージ(経日) | 2.9 |
ワイン(赤・白各2 品目) | ND-0.06 | コンビーフ | 1.1 |
ワイン(赤6銘柄) | 0.035-0.441 | スモークソーセージ | 0.1 |
ワイン(白3銘柄) | 0.039-0.279 | バナナの皮 | 5.17-6.5 |
パインジュース | 0.04 | バナナの果肉 | ND-0.7 |
キャベツの塩漬 | 5.547 | アボガド | ND-2.3 |
醤油 | 0.176 | イチジク | ND |
濃口醤油 | 35.6(平均) | 米味噌 | 19.4(平均) |
淡口醤油 | 24.0(平均) | 麦味噌 | 14.6 |
牛(新鮮肝臓) | 0.54 | 豆味噌 | 9.3 |
牛(経日保存肝臓) | 27.4 | 鶏(新鮮肝臓) | 0.05 |
鶏(経日保存肝臓) | 10.0 |
[015.4.TYR: 2003.10.27.古泉秀夫]
- 「飲食物・嗜好品と医薬品の相互作用」研究班・編:改訂3版 飲食物・嗜好品と医薬品の相互作用;じほう,1998
- 古泉秀夫:飲食物・嗜好品と薬の相互作用[6]-食品中のチラミン含有量;調剤と情報,5(6):826-827(1999)
- 伊藤正男・他総編集:医学書院医学大辞典:医学書院,2003
- 今堀和友・他:生化学事典 第3版;東京化学同人,1998