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『死亡例等の重篤な副作用が報告されている薬剤』

木曜日, 8月 16th, 2007

1.本表は、緊急安全性情報(ドクターレター)の配布等に関するガイドライン(1989年10月)の公表以降から2006年11月22日までの間に、公表された緊急安全性情報(死亡例)等を参照して作成した。

2.公表された資料の範囲内で可能な限り蒐集したが、蒐集の範囲はあくまで『捕捉できた範囲内』であり、本表の利用に際してはその点を考慮すること。

3.本表を院内研修等の資料として使用する際には、使用者責任において行うこと。

*記事配列は報告年月日降順

薬品名(会社名) 報告の概要 出典
[613]ceftriaxone
sodium
ロセフィン静注用(中外)
セフィローム静注用(マルコ)
ロセメルク静注用(メルク)
[適]セフトリアキソンに感性のブドウ球菌属,レンサ球菌属,肺炎球菌,淋菌,大腸菌,シトロバクター属,クレブシエラ属,エンテロバクター属,セラチア
属,プロテウス属,モルガネラ・モルガニー,プロビデンシア属,インフルエンザ菌,ペプトストレプトコッカス属,バクテロイデス属,プレボテラ属(プレボ
テラ・ビビアを除く)
感染症の治療に使う抗生物質「セフトリアキソンナトリウム」の副作用と見られる重い肝臓障害で死者が3人報告され、厚生労働省は21日、医療関係者に対し安
全性情報を出してこの薬の使用に注意を促した。本品は敗血症などの重い感染症の治療に、注射や点滴で使う薬。これまでも肝機能障害などが報告されていた
が、過去3年間で50代男性、80代男女の3人が、薬の使用後に劇症肝炎で死亡した。
直近3年間(平成15年4月1日-平成18年6月
30日)の副作用報告(因果関係が否定できないもの)の件数・劇症肝炎等:3例(うち死亡3例)。関係企業が推計したおおよその年間使用者数:約104万
人(平成17年7月-平成18年6月)。販売開始:昭和61年
*読売新聞,第46949号,2006.11.22.*医薬品・医療機器等安全性情報,No.230,平成18年(2006年)11月厚生労働省医薬食品局
[395]alteplase(genetical
recombination)
アクチバシン注(協和醗酵)
グルトパ注(三菱ウェルファーマ)
[適]適応1)虚血性脳血管障害急性期。適応2)急性心筋梗塞。
2005
年10月脳梗塞の治療薬として追加承認された「t-PA製剤」を使用した患者48人が脳出血などの副作用が疑われる症状で、死亡していることが2006年
10月27日分かった。製造・販売元の一つ三菱ウェルファーマは、「重い副作用のある薬なので、一層の注意喚起をはかりたい」としている。t-PA製剤
は、血管の塞栓を溶解する効果のある薬。従来、心筋梗塞の薬としてとして承認されていたが、脳梗塞にも劇的な効果があるとして、適応拡大がされた。同社に
よると医療機関などから488人の副作用が疑われる事例が報告され、うち48人
が頭蓋内出血、脳浮腫などで死亡
していた。少なくとも5人については、高血圧などしようが禁止されている患者だった。これまで
に約3,200人の患者に使われたと見られる。効果があった場合には後遺症を残さない反面、脳出血を起こすリスクもあり、発症から3時間以内に限り使うな
ど、厳しい使用基準が定められている。厚生労働省は「極めて重篤な患者に使用する薬で、一定のリスクは想定されている。適正な使用を指導していきたい」と
している。
*読売新聞,第46924号,2006.10.28.
[631]influenza
HA vaccine
ビケンHA(阪大微研)
[適]インフルエンザの予防
平成17年度の推定出荷本数は、約1,932万本であった。ま
た因果関係不明なものも含めて製造販売業者等からワクチン接種によるものとして報告された副作用は、102症例、139件であった。なおワクチン接種によ
死亡例は5例であった。

医薬品・医療機器等安全性情報,No.228,平成18年(2006)9月
[218]atorvastatin
calcium hydrate
リピトール錠(アステラス)
[適]高コレステロール血症、家族性高コレステロール血症

近3年間(平成15年4月1日-平成18年4月26日)の副作用報告(因果関係不明例含)の件数:劇症肝炎、肝炎:12例(うち死亡例4例)。関係企業が推計したおおよその年間使用者数:210万
人(平成17年度)、販売開始:平成12年5月
*医薬品・医療機器等安全性情報,No.226,平成18年
(2006)7月
[422]gemcitabine
hydrochloride
ジェムザール注(イーライリリー)
[適]非小細胞肺癌、膵癌

近3年間(平成15年4月1日-平成18年3月31日)の副作用報告(因果関係不明例含)の件数:肝機能障害、黄疸:6例(うち死亡例3例)。関係企業が推計したおおよその年間使用者数:約
57,000人(平成17年度)。販売開始:平成11年8月。
*医薬品・医療機器等安全性情報,No.227,平成18年
(2006)8月
[339]aspirin
バイアスピリン腸溶錠(バイエル)
[適]血栓・塞栓形成の抑制

近3年間(平成15年4月-平成17年12月)の副作用報告(因果関係不明例含):肝機能障害、黄疸:11例(うち死亡1例)。関係企業が推計したおおよその年間使用者数:約520万
人(平成17年度)
*医薬品・医療機器等安全性情報,No.224,平成18年(2006)5月
[430]norcholestenol
iodomethyl(131I)
アドステロール-I131
(第一ラジオアイソトープ研究所)

近3年間(平成15年4月-平成18年1月)の副作用報告(因果関係の否定できないもの):アナフィラキシー様症状:1例(うち死亡1例)。関係企業が推計したおおよその年間使用者数:3000人
(平成17年度)
*医薬品・医療機器等安全性情報,No.224,平成18年(2006)5月
[212]amiodarone
アンカロン錠(大正富山)
[適]生命に危険のある以下の再発性不整脈で他の抗不整脈薬が無効か、又は使用できない場合:心室細動、心室性頻拍、肥大型心筋症に伴う心房細動

剤の使用は、致死的不整脈治療の十分な経験のある医師が、他の抗不整脈薬が無効か、致死的不整脈患者にのみ使用することに限定されている。販売開始後(約
13年間)の関連副作用報告数(因果関係不明例含):劇症肝炎3例(うち死亡3
)。関係企業が推計したおおよその年間使用者数:約25,000人(平成16年度)。

医薬品・医療機器等安全性情報,No.220,平成17年(2005年)12月
[429]carboplatin
パラプラスチン注(ブリストル)[適]頭頚部癌、肺小細胞癌、精巣腫瘍、卵巣癌、子宮頸癌、悪性リンパ腫、非小細胞肺癌
1995
年7月以降の関連副作用報告数(因果関係が不明例含):肝不全、肝機能障害、黄疸:20例(うち
亡5例
)、急性呼吸窮迫症候群:2例(うち死亡2例)、
播種性血管内凝固症候群(DIC):9例(うち死亡5例)。
関係企業が推計したおおよその年間使用者数:約10万人(平成16年度)。

医薬品・医療機器等安全性情報,No.220,平成17年(2005年)12月
[111]sevoflurane
セボフレン液(大日本住友)
[適]全身麻酔

売開始後(約15年間)の関連副作用報告数(因果関係不明例含む):肝機能障害、黄疸:38例(うち
亡4例
)。関係企業が推計したおおよその年間使用者数:約82万人(平成16年度)。

医薬品・医療機器等安全性情報,No.220,平成17年(2005年)12月
[634]whole
human blood
人全血液(日赤)
照射人全血液(日赤)
合成血・照射合成血(日赤)
新鮮凍結血漿(日赤)
濃厚血小板(日赤)等
[適]輸血

液製剤として販売開始後(約50年間)の関連副作用報告数(因果関係不明例含):呼吸障害等:12例(うち死亡例9例)、腎機能障害等:5例(うち死亡例3例)、肝機能障害等:7例(うち死亡例1例)。関係企業が推計したおおよその年間使用者数:約101
万人(平成15年)。
*医薬品・医療機器等安全性情報,No.220,平成17年
(2005年)12月
[113]
phenytoin・phenobarbital
複合アレビアチン錠(大日本住友)
[113]phenytoin・phenobarbital・caffeine and sodium benzoate
ヒダントールD・E・F錠(藤永)

売開始後(約65年間)の関連副作用報告数(因果関係不明例含):劇症肝炎:4例(うち
亡2例
)。関係企業が推計したおおよその年間使用者数:約25万人(平成16年度)。
*医薬品・医療機器等安全性情報,No.220,平成17年(2005年)12月
[721]barium sulfate
ウムブラゾル-A(伏見)
バリトップ液(カイゲン)
バリトゲンゾル(伏見)
[適]消化管(大腸)撮影

齢者では消化管運動機能が低下していることが多いため、硫酸バリウムの停留により、消化管穿孔が起こりやすく、また、起こした場合にはより重篤な転機をた
どることがあるので、検査後の硫酸バリウムの排泄について十分留意する。販売開始以来(約51年間)の関連副作用報告数:消化管穿孔等:因果関係が不明なものを含んで27例(うち死亡例4例)。関係企業が推計したおおよその年間使用者数:約
1750万人(平成16年度)
*医薬品・医療機器等安全性情報,No.219,平成17年
(2005.11.厚生労働省食品局
[799]bone
cement
骨セメント

ウマチ、骨折の治療等で、体内に埋め込んだ人工関節を固定する『骨セメント』注入後、患者がショック症状を惹起して死亡する例が2001年度から2005
年7月末までの約4年間で計36人発生しているとする発表が25日、厚生労働省からあった。同省によると41人が急激な血圧低下などのショック症状を起こ
し、うち36人が死亡。死亡した27人を含む32人
を解析したところ、特に注意するよう求めていた心疾患の既往歴がある患者に使用されている例が12例あった。また、副作用に素早く対応する麻酔医が不在の
まま使用している例も4例あった。骨セメントが原因と見られる死亡は、1990年度以降に報告され、1996年度から2000年には計30人が死亡してい
る。同省は医療機関に対し、過去3回にわたって『安全性情報』を出し、注意を喚起してきたが、医療現場では軽視されてきた可能性がある。事態を重く見た同
省は再度注意を呼び掛ける。ただし、使用実績から見て、死亡例は低頻度であり、代替物がないことから同省は販売中止措置は取らない。骨セメントは5社が輸
入販売しており、毎年5万人程度に使用されている。いずれも主原料はアクリル製樹脂で、血液中に漏出すると血圧が低下するなどの循環器系に障害を起こすと
考えられている。
*読売新聞,第46497号,2005.8.26.
[119]donepezil
hydrochloride
アリセプト錠・D錠・細粒
(エーザイ)
[適]軽度及び中等度のアルツハイマー型痴呆における痴呆症状の進行抑制
[註]?軽度及び中等度のアルツハイマー型痴呆と診断された患者にのみ使用?本剤かアルツハイマー型痴呆の病態そのももの進行を抑制するという成績は得ら
れていない?アルツハイマー型痴呆以外の痴呆性疾患において本剤の有効性は確認されていない。

ルツハイマー型の認知症の進行を抑える国内唯一の医療用医薬品「塩酸ドネペジル」(商品名・アリセプト)で、1999年の発売以降、服用した8人が骨格筋の細胞が壊れる「横紋筋融解症」を発症し、うち1人が死亡
る副作用が起きていることが23日厚生労働省の調べでわかった。厚労省は先月、製造販売元のエーザイに対し、横紋筋融解症が起きる可能性を医薬品の添付文
書に明記する要指示。エーザイは同月中に改訂し、医療機関に注意を呼び掛けている。8人は40-70代の男女。大半は適切な治療で回復したが、昨年に70代男性の死亡例が初めて確認された。

読売新聞,第46343号,2005.6.24.
[424] paclitaxel
タキソール注(ブリストル)

[適]
卵巣癌、非小細胞肺癌、乳癌、胃癌
本剤を投与されたがん患者10人が消化管壊死や腸管閉塞に陥り、うち6人が死亡していたことが、25日厚生労働省の調べで分かった。同省では、重大な副
作用の可能性があることを使用上の注意に明記するよう、輸入元のブリストル製薬(東京)に指示した。
同省によると死亡したのは60歳代の男性1人と50-70歳代の女性5人。直接の死因は多臓器不全などで因果関係は明確でないが、同省で全国の医療機関に
注意を呼び掛けている。同剤は1997年に販売が開始され、年間の推定使用患者数は約6万人。
*読売新聞,
第46225号,2004.11.26.
[799]
macrogol・sodium chloride
・potassium chloride・sodium bicarbonate・anhydrous sodium sulfate
ニフレック散
(味の素ファルマ)[適]大腸内視鏡検査及び大腸手術時の前処置における腸管内容物の排除
1992
年6月の発売から2003年9月までの11年間(推定累計使用患者:約1,772万人)にニフレックとの関連性か否定できない腸管穿孔症例が11例(うち死亡5例)及び腸管閉塞症例が7例(うち死亡1例)報告されていま
す。腸管穿孔症例は2000年3月に「使用上の注意」の「重大な副作用」の項に記載し、注意を喚起してきた。また、その後高齢者の死亡例が報告されたこと
を踏まえ、2003年4月に自主的に適正情報の配布を行い注意を喚起してきた。しかし、2000年3月の添付文書改訂後、腸管穿孔症例については4例の死
亡例が報告されていること、腸閉塞症例については発売以降、死亡例1例を含む7例が報告されていることから、腸管穿孔、腸閉塞について一層の注意喚起を図
るため、「警告」、「禁忌」を追加記載するとともに「使用上の注意」を改訂した。

緊急安全性
情報,2003.9.No.03-01
[394]
allopurinolアロシトール錠(田辺)
ザイロリック錠(GSK)
[適]痛風、高尿酸血症を伴う高血圧症における高尿酸血症の是正。
腎機能障害のある患者では、本剤及びその代謝物の排泄が遅延し、高
い血中濃度が持続するので、投与量の減量、投与間隔の延長を考慮する。特に腎不全患者に副作用が発現した場合、重篤な転帰をたどることがあり、死亡例も報告されている。
*2003
年3月:医薬品・医療用具等安全性情報,No.187
[424]irinotecan
hydrochlorideカンプト注(ヤクルト本社)
トポテシン注 (第一製薬)
[適]小細胞肺癌、非小細胞肺癌、子宮頸癌、卵巣癌、胃癌(手術不能又は再発)、有棘細胞癌、悪性リンパ腫(非ホジキンリンパ腫)。
発売後3年間(使用患者数:約5,400人)に本剤との関連性を否
定できない死亡例が42例(約0.8%)報告されて
いる。これらの症例の大多数は骨髄機能抑制が主たる原因となり死亡したものと推察される。本剤による骨髄機能抑制については既に「警告」「使用上の注意」
欄に記載し注意を喚起。今回更に記載内容改訂。
*2003年2月:医薬品・医療用具等安全性情報,
No.186*1997年7月:緊急安全性情報
[117]quetiapine
fumarateセロクエル錠
(アストラゼネカ-藤沢)
[平成12年12月22日承認、平成13年2月販売開始]
[適]統合失調症(旧・精神分裂病)
2001
年2月の発売以降、これまでに本剤との関連が否定できない高血糖、糖尿病性ケトアシドーシス、糖尿病性昏睡が13例(うち死亡例1例)報告されている[推定使用患者数:約13万人(2002
年9月現在)]。高血糖については2002年7月に「使用上の注意」に記載し注意を喚起しているが、その後重篤例が報告されたため、「禁忌」、「使用上の
注意」を改訂するとともに「警告」を追加することとした。
*2002年11月:緊急安全性情報
[119]edaravoneラジカット注
(三菱ウェルファーマ)
[適]脳梗塞急性期に伴う神経症候、日常生活動作障害、機能障害の改善 [脳保護薬]
2001
年6月1日の発売以降、本剤投与中又は投与後に重篤な腎機能障害が現れた症例が29例(うち
剤との因果関係が否定できない死亡例10例、因果関係不明の死亡例が2例
)報告されている[推定使用患者数:約146,000
人(平成14年9月末現在)]。急性腎不全については、2002年6月に「使用上の注意」の「重大な副作用」の項に記載し注意を喚起していたが、このたび
「禁忌」、「慎重投与」及び「重要な基本的事項」を追記、再度注意を喚起。
*2002
年10月:緊急安全性情報
[429]gefitinibイレッサ錠(アストラゼネカ)
[平成14年7月5日承認、同月16日販売開始]
[適]手術不能又は再発非小細胞肺癌
2002
年7月16日の発売以降10月11日まで(推定使用患者数:約7,000人以上)に本剤との関連性を否定できない間質性肺炎を含む肺障害が22例[うち本剤との関連性を否定できない死亡例が12]
報告されている。これらの症例には服薬開始後早期(7日未満:5例、7日-14日:7例]に症状が発現し、急速に進行する症例が見られた。間質性肺炎につ
いては、治験段階でも本剤との因果関係を否定できない症例が報告されていることから、既に「使用上の注意:重大な副作用の項」欄に記載し、本副作用につい
ての注意を喚起してきたが、今回改めて警告乱闘に記載し注意を喚起。
*2002
年10月:緊急安全性情報
[339]ticlopidine
hydrochloride
パナルジン錠・細粒(第一)
[適]1)血管手術及び血液体外循環に伴う血栓・塞栓の治療並びに血流障害の改善、2)慢性動脈閉塞症に伴う潰瘍、疼痛及び冷感などの阻血性諸症状の改
善、3)虚血性脳血管障害(一過性脳虚血発作、脳梗塞)に伴う血栓・塞栓の治療、4)クモ膜下出血術後の脳血管痙攣に伴う血流障害の改善
本剤による血栓性血小板減少性紫斑病
(TTP)、無顆粒球症及び重篤な肝障害の重大な副作用(死亡例含む)
は、主に投与開始2カ月以内に発現する。これら重大な副作用を防止するため、「警告」並びに「用法・用量に関連する使用上の注意」の項に「投与開始後2カ
月間は、原則として1回2週間分処方する」旨を追加記載し、2週に1回の血液検査を確実に実施することとした。
*2002年7月23日緊急安全
性情報
*1999年8月30日 医薬品等安全性情報No.156
*1999年6月30日緊急安全性情報
[117]olanzapineジプレキサ錠・細粒(イーライリリー)
[平成12年12月22日承認、平成13年6月販売開始]。細粒[平成13年11月29日承認、未販売]
[適]統合失調症(旧・精神分裂病)
2001
年6月の発売以降、本剤との関連が否定できない高血糖、糖尿病性ケトアシドーシス、糖尿病性昏睡の重篤な症例が9例(うち死亡2例)報告されている[推定使用患者数:約137,000人
(2001年12月末現在)]。高血糖については、既に「使用上の注意」欄に記載し注意を喚起してきたところであるが、これらの重篤例について検討の結
果、「使用上の注意」を改訂するとともに「警告」、「禁忌」を追記。
*2002
年4月
16日緊急安全性情報
[396]acarboseグルコバイ錠(バイエル薬品)
[適]糖尿病の食後過血糖の改善

症肝炎等の重篤な肝機能障害があらわれることがある。これらは投与開始後概ね6ヵ月以内に認められる場合が多いので、投与開始後6ヵ月までは月1回、その
後も定期的に肝機能検査を行うこと。
糖尿病治療薬アカルボースの服用後、5人が副作用とみられる劇症肝炎で死亡していたことが分かり、厚生労
働省は医薬品・医療用具等安全性情報で医療機関などに注意を呼びかけた。
*2002
年2月医薬品・医療用具等安全性情報No.174
*2002年2月22日毎日新聞
[449]zafirlukast
アコレート錠(アストラゼネカ)
[適]気管支喘息

フィルルカスト服用後、9人が副作用とみられる肝機能障害を起こし、うち1人が
劇症肝炎で死亡
していた。
[249]leuprorelin acetateリュープリン注射用(武田)
[適]1)子宮内膜症、2)過多月経、下腹痛、腰痛及び貧血等を伴う子宮筋腫核の縮小及び症状の改善、3)閉経性乳癌、4)前立腺癌、5)中枢性思春期早
発症

酸リュープロレリンの投与を受けた患者に、肝機能障害や糖尿病が計60例報告され、うち1
人が死亡
したとして、厚生労働省は31日までに、添付文書にある「重大な副作用」の項目に追加するよう指示。同日発表した医薬
品・医療用具等安全性情報で医療機関に注意を呼び掛けた。
*2001年10月31日医薬品・医療用具等安全性情報 No.171
*2001年11月1日 日本経済新聞
[232]famotidineガスター錠・注(山之内)
[適]胃潰瘍、十二指腸潰瘍、吻合部潰瘍、上部消化管出血、逆流性食道炎、Zollinger-Ellison症候群
ファ
モチジンに、心臓の拍動に異常が出て血液が送り出せなくなる心室細動などの副作用があり、投与された患者が死亡したケースが3例あったとして、厚生労働省は、山之内製薬に対
し、「心疾患のある人らには注意して投与する」ことを医師らに知らせるよう指示したと発表した。
*2001
年9月28日 朝日新聞
[218]cerivastatin sodiumバイコール錠(バイエル)
セルタ錠(武田)
[薬価削除]
[適]高脂血症、家族性高コレステロール

脂血症薬「セリバスタチン」。国内でも回収開始。独バイエル社製の高脂血症治療薬「セリバスタチン」の副作用とみられる事故で全世界で52人の死亡例が報告された問題で、武田薬品工業とバイエル
薬品は、同治療薬の自主回収を日本でも始めたと発表した。独バイエルでは既に日本を除く全世界で販売中止を決めている。日本市場でも販売を中止して被害の
発生を防ぐ。
*2001年8月24日 日経産業新聞
[639]freeze-driedBCG
イムノブラダー膀注用
(日本ビーシージー製造)
[適]表在性膀胱癌、膀胱上皮内癌

剤の投与中に、発熱、咳嗽、呼吸困難等の自覚症状とともに胸部X線異常と低酸素血症を伴う
亡例を含む重篤な間質性肺炎
があらわれることがある。このような場合には本剤の投与を中止し、速やかにステロイド剤の投与等適
切な処置を行う。
*2001年8月23日医薬品・医療用具等安全性情報 No.169
[114]mofezolac
ジソペイン錠
(三菱ウェルファーマ)
[1994年7月承認、同年11月発売]
[適]1)腰痛症、頸腕症候群、肩関節周囲炎の消炎・鎮痛、2)手術後、外傷後、抜歯後の消炎・鎮痛

非ステロイド系の消炎鎮痛剤の副作用の疑いで、患者25人に消化管出血や肝機能障害などが起き、うち1
人が死亡
していたことが分かり、厚生労働省は「医薬品・医療用具等安全性情報」を出して、全国の医療関係者に注意を呼び掛け
た。
*2001年1月 医薬品・医療用具等安全性情報
*2001年2月1日 日本経済新聞
[114]diclofenac
sodium
ボルタレン錠・坐薬
(ノバルティス)
[適]1)関節リウマチ、変形性関節症、変形性脊椎症、腰痛症、腱鞘炎、頸肩腕症候群、神経痛、後陣痛、骨盤内炎症、月経困難症、膀胱炎、前眼部炎症の鎮
痛・消炎、2)手術、抜歯後の鎮痛・消炎、3)急性上気道炎(急性気管支炎を伴う急性上気道炎含む)の解熱・鎮痛
インフルエンザ脳炎・脳症の患者に対し、解熱を目的として本製剤
(錠又は坐薬)を投与した場合、生存率の予後が悪化する傾向を示す複数の疫学的研究が報告されている。また、インフルエンザ脳炎・脳症の特徴的な病理所見として、脳及び全身
の血管の障害が見出された。このことと本剤の薬理作用を考え合わせると、インフルエンザ脳炎・脳症の悪化に関与する可能性が考えられる。
*2000年11
月緊急安全性情報
[394]benzbromarone
ユリノーム錠(鳥居)ムイロジン細粒(寿)
[適]痛風、高尿酸血症を伴う高血圧症における高尿酸血症の是正。

剤投与により、因果関係の否定できない劇症肝炎の症例が8例(うち6例が死亡)
報告されている(推定使用患者数:約30万人)。従来の「禁忌」及び「使用上の注意」を改訂するとともに、新たに「警告」を追記。
*2000年2月緊急安全性情報
*2000年3月22日 医薬品・医療用具等安全性情報 No.159
[339]ticlopidine
hydrochlorideパナルジン錠・細粒(第一)
[適]1)血管手術及び血液体外循環に伴う血栓・塞栓の治療並び
に血流障害の改善、2)慢性動脈閉塞症に伴う潰瘍、疼痛及び冷感などの阻血性諸症状の改善、3)虚血性脳血管障害(一過性脳虚血発作、脳梗塞)に伴う血
栓・塞栓の治療、4)クモ膜下出血術後の脳血管痙攣に伴う血流障害の改善
*1981年6月承認、1981年9月発売。推定使用患者数:
年間約100万人。血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)は、血小板減少、溶血性貧血、精神神経症状、発熱、腎機能障害の5主徴を呈し、早期に適切な診断・
治療が行われない場合には致死率の高い疾患である。塩酸チクロピジン投与に伴うTTPについては、海外文献を基に1995年(平成7年)6月に「海外での
重大な副作用」として注意喚起を行ったが、その後、国内においても同様の症例が報告されたため、1996年9月に「重大な副作用」の項に記載を行った。更
に、その後、塩酸チクロピジンによるTTP発症に関する論文や米国での添付文書改訂が行われたことから、1998年9月に使用上の注意をより詳細に記載す
る措置を講じてきた。しかし、平成1998年10月以降にTTPの症例が新たに11例(
ち死亡2例
)の報告があり(合計22例、うち死亡6
)、副作用報告の増加が見られたことから、今般、添付文書に「警告」欄を新たに設けるとともに、緊急安全性情報の医療機関へ
の配布を行い、医療現場への情報提供の徹底を図ることとした。なお、従来より副作用情報に掲載するなど、度々注意喚起を行ってきた無顆粒球症および重篤な
肝障害についても併せて「警告」欄に記載することとした。
*1999年8月
30日 医薬品等安全性情報No.156*1999年6月30日緊急安全性情報
[429]flutamide
オダイン錠(日本化薬)
[平成6年10月承認]
[適]前立腺癌

剤の投与により劇症肝炎等の重篤な肝障害が発症し、本剤との関連性が否定できない
亡例が8例報告
されている(推定使用患者数:約8万人)。このため、従来の禁忌及び使用上の注意に加えて、新たに「警告」を追
*1998年8月緊急安全性情報*1998年10月15日医薬品等安全性情報 No.150
[339]beraprost
sodium
ドルナー錠(山之内)
プロサイリン錠(科研)
[適]1)慢性動脈閉塞症に伴う潰瘍、疼痛・冷感改善、2)原発性肺高血圧症
本剤を投与した患者において、間質性肺炎が3例(副作用名「胸部X
線異常影」1例を含む)発現し、1例が死亡している
ことから、「重大な副作用」に「間質性肺炎」の項を追記し注意喚起した。
*1998年8月27日 医薬品等安全性情報 No.149
[259]sildenafil
citrateバイアグラ錠(ファイザー)
[適]勃起不全(満足な性行為を行うに十分な勃起とその維持が出来ない患者)
硝酸薬あるいは一酸化窒素(NO)供与剤:ニトログリセリン、亜硝酸アミル、硝酸イソソルビド等
本剤は米国等において「バイアグラ」の商品名で販売されている勃起
障害治療薬であり、米国では硝酸薬との併用による死亡症例が多数報告されたため、両剤の相互作用に関する注意喚起を行っている。一方、国内において、個人
輸入等により持ち込まれているといわれており、硝酸薬を併用した患者の死亡が報
されたことから、本剤と硝酸薬との併用による重篤な副作用に関して情報提供を行うこととした。
*1998
年8月27日 医薬品等安全性情報 No.149
[396]troglitazon
ノスカール錠(三共)
[薬価削除]
[適]インスリン非依存型糖尿病(ただし、食事療法、運動療法のみで十分な効果が得られずインスリン抵抗性が推定される場合さ
れる場合あるいはスルフォニルウレア剤が効果不十分な場合に限る)
1997年3月の発売以降(推定使用患者数:約15万人)に本剤との関連性を否定できない肝障害が13例(うち本剤と
の関連性を否定できない死亡例が3例
)報告されている。
*1997年12
月緊急安全性情報
[722]meglumine gadopentetate
マグネビスト注(シエーリング)[適]磁気共鳴コンピュータ断層撮影における脳・脊髄造影、躯幹部・四肢造影
本剤発売後約8年9カ月間(推定使用患者数:約311万人)に、
ショック、アナフィラキシー様症状をきたした症例が75例(10例が気管支喘息の患者)、うち3
例の死亡例
(2例が気管支喘息の患者)が報告されている。
*1997
年6月緊急安全性情報
[323]高カロリー輸液用剤トリパレン1-2号(大塚)他[適]経口・経腸管栄養補給が不能又は不十分で、経中心静脈栄養に頼らざるを得ない場合の水分、電解質、カロリー補給
カロリー輸液療法施行中に起こる重篤なアシドーシスについては、1991年10月に緊急安全性情報、1995年4月には適正使用情報を配布し高カロリー輸
液療法の適正の施行を期待してきた。しかし、適正使用情報配布後も重篤なアシドーシスが因果関係の不明な症例も含め15例(死亡7例)に認められている。そこで[警告]欄に『ビタミンB1
併用を追記』。
*1997年6月
緊急安全性情報
*1991年10月緊急安全性情報
[225]fenoterol
hydrobromideベロテックエロゾル
(ベーリンガー)
[適]気管支喘息、慢性気管支炎、肺気腫、塵肺症の気道閉塞障害に基づく呼吸困難等諸症状の寛解

剤の定量噴霧式吸入剤の過度の使用により、不整脈、心停止等の重篤な副作用が発現する可能性があることについては、これまでに使用上の注意等により注意喚
起を行ってきたが、日本小児アレルギー学会喘息死委員会が行った調査では、1990年から1996年までに登録された喘息死亡例123例中に薬物過剰投与が指摘されたもの18例、うち
β2-刺激薬定量噴霧式吸入剤は11例、そのうち本剤によるもの7例
あったの報告がされた。
*1997年5月緊急安全性情報
[441]terfenadineトリルダン錠(ヘキスト)
[薬価削除]
[適]1)気管支喘息、2)アレルギー性鼻炎、3)蕁麻疹、4)皮膚疾患に伴う掻痒(湿疹・皮膚炎、皮膚掻痒症)

売5年間で本剤による重篤なQT延長、心室性不整脈の副作用が7例認められ、1995年1月『警告』欄を設けるとともに使用上の注意を改訂した。その後2
年間で同様な死亡に至るおそれのある副作用として
QT延長、心室性不整脈が10例認められている。これらの副作用はいずれも禁忌及び慎重投与に該当するハイリスク患者で発現している。
*1997
年2月
緊急安全性情報
[634]輸血用血液[適]一般の輸血適応症
血後GVHDは、一度発症するとほぼ全例が致死的な経過をたどる重篤な副作用
ある。日本赤十字社は1996年4月輸血後GVHDの危険性の周知と発症予防のための緊急安全性情報を配布した。しかし、その後の輸血でも引き続き7例が
報告されている。輸血後GVHDに対する有効な治療法は未だ確立されていないので、発症予防が唯一の対策である(放射線照射)。
*1996
年12
月緊急安全性情報
*1996年4月緊急安全性情報
[241]menopausal
gonadotrophin(HMG)
ヒュメゴン注(オルガノン)
[適]間脳性(視床下部性)無月経、下垂体性無月経の排卵誘発
hMG-hCG療法において卵巣過剰刺激症候群が発現することがあ
り、更に血液濃縮・血液凝固能の亢進による血栓症や脳梗塞等の重篤な副作用が認められたことから1995年5月には使用上の注意に記載した。今回、過去3年間に遡り重篤な副作用について再度調査を行ったところ、5例の脳血栓症を含む20例の重篤な卵巣過剰刺激症候群が認められ
た。これら以外にも過去3年間に10例の血栓症・脳梗塞等の発現が認められた。
*1996年4月
緊急安全性情報
[241]human
chorionic gonadotrophin(HCG)
ゴナトロピン注(帝国臓器)[適]無排卵症(無月経、無排卵周期症、不妊症)、機能性子宮出血、黄体機能不全症、停留精巣、造精機能不全による男子不妊症、下垂体性男子性腺機能不全
(類宦官症)、思春期遅発症、精巣・卵巣の機能検査、妊娠初期の切迫流産、妊娠初期に繰り返される習慣性流産
[520]小柴胡湯(各社)
[適]1)体力中等度で上腹部が張って苦しく、舌苔を生じ口中不快、食欲不振、時により微熱、悪心などのあるものの次の諸症:諸種の急性熱性病、肺炎、気
管支炎、感冒、胸膜炎・肺結核などの結核性諸疾患の補助療法、リンパ節炎、慢性胃腸障害、産後回復不全、吐気、食欲不振、胃炎、胃腸虚弱、疲労感及び風邪
の後期の症状、2)慢性肝炎における肝機能障害の改善

柴胡湯による重篤な副作用『間質
性肺炎』については、既に使用上の注意に記載し注意を喚起しているところであるが、1994年1月の改訂以降、間質性肺炎88例、うち10例の死亡例が報告されている。
*1996年3月緊急安全性情報
[625]sorivudine
ユースビル錠(日本商事)
[薬価削除]
一般名:sorivudine
商品名:ユースビル錠(日本新薬)
含有量:50mg/錠 1日3回適応症:帯状疱疹
作用機序:経口の抗ヘルペスウイルス薬で、ヘルペスウイルスに感染した細胞内に特異的に取り込まれ、ソリブジン三リン酸になる。ソリブジン三リン酸はチミ
ジン三リン酸と強く拮抗し、ウイルスDNAポリメラーゼに直接作用して、ウイルスのDNAを阻害する[高久史麿・他監修:治療薬マニュアル;医学書院,
1996]

ウイルス剤ユースビル錠(ソリブジン)とフルオロウラシル系薬剤(テガ
フール、ドキシフルリジン、FU等)との併用により、白血球減少、血小板減少等の重篤な血液障害を発現した症例が7例報告されており、うち3例は死亡に
至っている。フルオロウラシル系薬剤とユースビル錠(ソリブジン)の併用は絶対にしない。
終的に併用により16名死亡
*1993年10
月緊急安全性情報
[114]sodium
salicylate・caffeine
ザルソカイン注(宇治)
[薬価削除]
[適]解熱・鎮痛剤

剤の静脈内投与によるショックの発現が現在までに5例報告されており、このうち3
例は死亡
*1993年8月緊急安全性情報
[323]高カロリー輸液
トリパレン1号・2号(大塚)
ハイカリック液1号・2号・3
号(テルモ)
ハイカリックNC-L・N・H(テルモ)
[適]経口・経腸管栄養補給が不能又は不十分で、経中心静脈栄養に頼らざるを得ない場合の水分、電解質、カロリー、アミノ酸補給

カロリー輸液療法施行中に発現する重篤なアシドーシスについては、1991年10月に緊急安全性情報、1995年4月には適正使用情報を配布し高カロリー
輸液療法時の適正な使用を促すとともに、医薬品副作用情報No.111(1991年11月号)、No.123(1993年11月号)、No.128
(1994年10月号)において症例の紹介あるいは解説を行い注意を喚起してきた。しかし、その後重篤なアシドーシスの発現について因果関係の不明な症例
も含め15例(死亡7例)の報告が寄せられている。
高カロリー輸液療法の適応患者は経口、経腸管栄養
補給が不能又は不十分で、経中心静脈栄養に頼らざるを得ない状態であり、全身状態は一般的に不良である場合が多い。報告された症例のうち、ビタミンB1を
投与していたにもかかわらず重篤なアシドーシスを発現した6例をみると、高齢者であったり、合併症として感染症、腎不全等の腎障害、重篤なアシドーシスを
発現しやすい病態の患者である。
*1991年10
月緊急安全性情報
[211]vesnarinone
アーキンZ錠(大塚)
[適]慢性心不全(軽度-中等症)の状態で他の薬剤を投与しても効果が不十分な場合
アー
キン錠60(ベスナリノン)の発売後6カ月間(推定使用患者数:約17,000人)の投与期間中に、白血球減少、顆粒球減少をきたした症例が43例報告さ
れている。このうち無顆粒球症に至った症例は24例で、少なくとも4例は敗血症
等の重篤な感染症を続発して死亡
*1991年3月緊急安全性情報
[212]propafenone
hydrochloride
プロノン錠(山之内)
[適]頻脈性不整脈で、他の抗不整脈薬が使用できないか又は無効の場合
塩酸プロパフェノン(プロノン

5.外用剤の剤形別使用法

木曜日, 8月 16th, 2007

外用剤に分類される薬は、意外にその種類が多く、どの薬がどこに分類されるのか、甚だ分かりにくいというのが実体である。一般的に皮膚に塗布して使用される薬は、皮膚から薬を吸収させる目的の場合と、皮膚そのものの病変部に作用させる局所適用-炎症を起こした皮膚、湿疹を起こした皮膚等、皮膚病変部に直接塗布する場合とがあり、皮膚からの吸収を目的とするものを『経皮投与』、皮膚病変部に治療目的で直接塗布するものを『局所投与』と区分している。

しかし、実際には、使用されている基剤(主薬以外の成分)によって、主薬が皮膚病変部のみに効果を発揮する場合と、皮膚を経由して吸収されて、吸収部位に効果を発揮する場合とがある。更に最近では皮膚に貼る(貼付)ことにより、全身的な効果を期待する薬物も発売されるようになっている。

ただし、今回は主として『局所投与』の外用剤について、その特徴・使用目的・使用方法を紹介する。『局所投与』は、軟膏の主薬、基剤の相違によって、リント布に薄く伸ばしてから患部に貼る場合、患部にそのまま塗るか、擦り込む場合、又は密封療法として軟膏を塗布し、通気性のない布等で覆う(被覆)場合など、それぞれ使い分けることが必要なため、医師の指示を確認することが必要である。

一般の薬局等で購入できるOTC薬の場合、薬に添付されている説明文書中に、それぞれの使用上の注意が記載されているので、使う前に必ず読むことを習慣付けることが必要である。

剤型区分 使用方法 適応及び特性
油脂性軟膏
(oleaginous ointment)油脂性軟膏は、種々の油脂が軟膏基剤として用いられ、古くから皮膚外用剤として最も安全・効果の高いものとして使用されている。植物油としてオリーブ油・ヒマシ油・菜種油・落花生油・椿油等。
動物性油脂として肝油・ラノリン・豚脂・蜜蝋等。
鉱物性油として流動パラフィン・ワセリン等。
油脂性軟膏は、元来、湿潤性(湿ってぐゅじぐしゅした)病変に貼付して使用するもので、糜爛(びらん;ただれ)、痂皮(カサブタ)、潰瘍面、小水疱・膿疱(膿を含んだ水疱)等にも軟膏をリントに厚目に伸ばしたものを3×4cm角に切り、更にハサミで切れ込みを入れて病変部に貼付する。
丘疹(皮膚上に円錐状の隆起)や落屑(表皮角質層上部の薄片脱落)等の乾燥性病変にも使用することができ、この場合には手指を用いて薄く塗布する。
塗布の場合1日2-3回、貼付の場合には1日1-2回、新しい軟膏と付け替えるが、軟膏を塗布し直すとき、水で洗い落とすことができないので、植物油を含ませた綿で拭き取る。
皮膚の保護、乾燥防止、柔軟作用・冷却、消炎作用がある。その他、痂皮(カサブタ)面に貼付すると痂皮軟化除去作用、糜爛・潰瘍面に用いて肉芽形成促進、表皮形成促進作用がある。
油性が強く、水を殆ど含んでいない。べとべとして洗い流すことが難しい。塗布面がてかって光ったり、外観がいかにも軟膏を塗布したという感じになる。軟膏は皮膚が乾燥し、潤滑又は湿気を必要としているとき最も適切。
油脂性軟膏基剤は、紅斑・丘疹等の炎症性病変から小水疱・膿疱・糜爛等の浸潤面や痂皮・潰瘍に至るまで非常に広範囲の適応がある。
油脂性基剤軟膏は乳剤性軟膏基剤との比較で、配合薬剤の経皮浸透力は弱いが、皮膚刺激作用が殆ど無く、安全な基剤として使用されている。
乳剤性軟膏(クリーム)(emulsion ointoment)

水(水溶液)と油(油溶液)の混合物に乳化剤を加えて乳剤としたもので、乳化剤の種類により水相中に油滴の分散した水中油型乳剤性軟膏(O/W)と、油相中に水滴が分配した油中水型乳剤性軟膏(W/O)とに分類。
通常、病変部に塗布して用い、ガーゼやリント布にのばして貼付することはしない。
但し、副腎皮質ステロイドホルモン剤配合のクリームの使用法として密封法(ODT法)があり、クリームを塗った上からポリエチレン紙で覆い、周囲を絆創膏で密封する方法がある。
各種薬剤との練合性がよく、配合薬剤の経皮浸透力が強い。塗布したとき擦り込むと消えて見えなくなり、外観が美しく清潔で、水で容易に洗い落とすことができる。顔、手掌等に使用する場合に便利。経皮浸透力が強いため、分泌液の多い湿潤面に使用すると、分泌物を逆浸透させて症状を悪化させる危険があるので、湿潤面には使用しない
水溶性軟膏
(water soluble ointment)

完全に水に溶ける基剤主としてマクロゴール(ポリエチレングリコール)が使用される。
各種薬剤を溶解するのに適しており、水によく溶解し、強い吸水、吸湿作用を有するので皮膚病変の分泌液を吸着する力が強い。また塗布したときの外観が美しく、清潔で、容易に水で洗い落とすことができる。
分泌物の少ない病変には塗布してもよいが、普通はガーゼに厚めにのばしたものを病変面より少し大きめに切って貼付し、その上に必ず数枚のガーゼを重ねて絆創膏で固定する。リント布は軟膏の吸着した水性分泌物を吸収しないので使用しない。
水溶性軟膏基剤の吸水性は極めて強いので、湿潤面が乾燥しすぎて病巣面にひび割れを生ずることがある。
水疱・膿疱・糜爛・潰瘍などの湿潤病変を示す第二度熱傷・湿潤性の湿疹・水疱症・感染症等に使用する。
泥膏
(pasta)

粉末剤を多量に含む油脂性の外用剤で、軟膏より硬いものをいう。現在では使用頻度は少ない。
泥膏は手指を用いて塗擦し、泥膏を皮膚面によく付着させる。その上から叩いておくのが、原則的使用法である。貼付して用いることはない。 皮膚保護作用・冷却・消炎作用があるが、粉末剤が多く含まれているので、分泌物吸収作用や乾燥作用が強い。しかし軟膏に比べ痂皮軟化・肉芽形成・表皮形成作用は弱い。
急性湿疹の治癒期の鱗屑の除去や慢性湿疹の湿潤性病変に対して浸潤除去作用を有する。
急性湿疹の落屑期・慢性湿疹・痒疹・苔癬・尋常性乾癬等の浸潤性炎症に対して使用される。
硬膏
(plaster)

油脂・蝋等に樹脂・弾力ゴム等の粘着剤を加えた混合物で、常温では固体であるが、皮膚面に用いると体温で軟化し粘着性となり、皮膚に膠着する。主として皮膚保護・角質軟化等の作用がある。
鶏眼に用いるときは、サリチル酸絆創膏を芯の大きさにできるだけ小さく切って貼付する。その上から普通の絆創膏で固定し、数日間(5日間位)そのままにして、白くふやけた部分をカミソリの刃等で、出血しないよう注意して削る。
副腎皮質ホルモン配合剤のテープは、病巣面よりやや大きめに切って病巣面に貼付し、通常は夜間約12時間貼付し、昼間は剥がして副腎皮質ホルモン剤配合軟膏又はクリームを使用する。夏季に長時間貼付すると、汗疹、毛包炎等を起こすので注意。
硬膏には紙や布にのばした絆創膏とポリエチレン紙にアクリル樹脂やゴム系粘着剤をのばしたテープ剤がある。
皮膚に粘着して外的刺激から保護し、サリチル酸絆創膏は鶏眼(ウオノメ)、胼胝(タコ)等に角質軟化作用を、副腎皮質ホルモン剤配合テープは慢性湿疹・痒疹・尋常性乾癬・掌蹠膿疱症・ケロイド等に抗炎症作用を示す。
ローション剤(lotion)              
懸濁性ローション
(振盪合剤)
(shake lotion)

懸濁性ローションは水(液体)に粉末を配合してつくられるが、疎水性粉末を用いる場合には懸濁を助けるためにアラビアゴム・トラガカント・ベントナイト・メチルセルローズ等の懸濁化剤が用いられる。
軟膏のようにべとつくことが無く、また容易に水で洗い流すことができる。その作用効果は配合した薬物の作用によるが、薬剤を経皮浸透する力は乳剤性ローションに劣り、作用は表面的である。 水・アルコール等の液体中に不溶性の薬剤(粉末剤)が懸濁しているもので、静置すると時間とともに粉末剤は沈殿して液体と分離するが、振盪すると再び粉末剤が液体中によく分散する。
乳剤性ローション(emulsion lotion)

水溶液と油溶液に乳化剤を加えて乳化し、水中油型乳剤(O/W)としたもの。
クリームに類似しているが、より多くの水を含有。実際には水あるいは水と油を溶媒として、その中に微細な粉末を溶かしたもの。
塗布することは容易で、特に皮膚を冷やしたり乾燥させるのに適している。
被髪頭部によく用いられる。
配合される薬剤を経皮浸透させる作用が強い。また外観が美しく、皮膚に塗布してもべとつくことが無く、容易に水で洗い落とすことができる。糜爛面や浸潤面に用いると分泌物を再浸透させて症状を悪化させることが多く、また痂皮(カサブタ)除去作用も弱いので、主として乾燥性病変に塗布して用いられる。
液体外用剤 (Liquids)
液体外用剤とは、溶剤(溶媒)に種々の薬剤を溶解したもの。溶剤の主なものに蒸留水・アルコール・グリセリン・油脂・プロピレングリコール・ポリエチレングリコール等。最も一般的に用いられている液体は、蒸留水。
液剤  (soluion)
 
不揮発性薬物の水溶液を液剤という。
塗布して用いる。 水は皮膚を清潔にし、そのまま湿布や浴湯に用いられる他、種々の薬物を溶解して液剤として使用される。溶液は皮膚に潤いを与えるより、むしろ乾燥させる傾向がある。
アルコール剤
(alcohlic solution)

種々の薬品を溶解して、アルコール剤として使用する。そのうち揮発性薬品のアルコール溶液を酒精剤(spirits)、不揮発性薬品のアルコール溶液をチンキ剤(tinctures)という。
アルコール剤は塗布して用いる。
表皮に病変があると染みたり刺激症状が現れることがある。
刺激を緩和し、揮発性薬品の揮発を抑える意味で、多くの場合グリセリンやヒマシ油が加えられる。
油脂剤(oils)

植物油としてオリーブ油・ヒマシ油・菜種油・落花生油・椿油等。
動物性油脂として肝油・ラノリン・豚脂・蜜蝋等。鉱物性油として流動パラフィン・ワセリン等。
軽度の潮紅を示す炎症面や第1度熱傷に塗布するが、最近では単独で使用することは少なく、粉末剤等と混和して油脂性軟膏として使用することが多い。
植物油は綿に含ませて、油脂性軟膏や軟化した痂皮を拭き取るのに使用する。
皮膚を外的刺激から保護し、鱗屑や痂皮を軟化するほか、水分蒸発抑制・皮膚乾燥防止などの作用がある。
軽度の潮紅を示す炎症面や乾燥性皮膚面に塗布する。ただし、フケ(脂漏)に用いると、かえって鱗屑(皮膚の薄く剥がれたもの)や痂皮(カサブタ)が増加し、症状を悪化させるので注意を要する。このようなときには軟膏類の塗布又は貼付がよい。
グリセリン剤
(glycerites)

外用剤の原料として使用。種々の薬品を溶解し、グリセリン剤として使用。
単独で塗布して用いることもある。 無色透明、やや粘性のある液体で、水分吸収、皮膚軟化作用がある。
粉末剤(powder)

粉末剤には植物性(澱粉)、鉱物性(亜鉛華、タルク等)、動物性の3種類があるが、現在動物性のものは殆ど使用されていない。
個人用にはパフを用いる。一般には粉末剤を綿に含ませるか、又は綿花をガーゼで包んだものを用いて軽く叩くようにして散布す
る。
粉末剤を過剰に使用すると汗腺口や毛孔を塞いで、かえって汗や皮脂の鬱滞を来すので注意すること。また、糜爛・潰瘍等の湿潤面には使用しないのが原則。
あせも(汗疹)等の軽い炎症面に散布する。皮膚と皮膚が擦れ合う部分を護るために使用される乾燥した製剤。足指、臀部の間、腋の下、股の付け根部分、あるいは乳房の下等に用いられる。
粉末剤は柔らかくなった皮膚(湿潤部分)を乾燥し、湿気を吸収することによって摩擦を軽減する。
粉末剤は保護剤としてクリーム、ローション、軟膏などと混合して使用することもある。その他、油脂性軟膏を塗布した上から、軟膏が皮膚面によく付着するように散布する使用法もある。
[特性]粉末剤を散布すると皮膚面を外的刺激や摩擦等から保護し、汗や皮脂その他の分泌物を吸着して皮膚面を乾燥させ、水分を蒸発して冷却、消炎的に作用。
ゲル(gel)

コロイド粒子が固まってゼリー状になったもの
基剤中の溶剤による刺激があるため亀裂、糜爛面への使用は回避する。 油類や脂肪を用いずに濃縮された水ベースの物質。皮膚は、油分や脂肪を含む薬剤を吸収する程には、ゲルを吸収しない。

[015.11.OIN.2004.1.10.]


  1. 大宮清司・監修:改訂 看護のための薬品管理学;薬業時報社,1987
  2. 福島雅典・監修:メルクマニュアル医学情報[家庭版];日経BP社,1999
  3. 高久史麿・他監修:治療薬マニュアル;医学書院,2000
  4. 野波英一郎:改訂第2版 皮膚外用剤療法の実際;中外医学社,1989

4.坐薬・頓服薬の服み方使い方

木曜日, 8月 16th, 2007

[1]坐薬の使い方

薬の使い方による分類法として、内用薬・外用薬・注射薬という分け方があることについては、本章の『1.薬の形(剤形)』で既に述べた。内用薬はいわゆる『飲み薬』で、経口剤ともいわれている薬である。外用薬はもっぱら『塗ったり・貼ったり・挿入』したりする薬である。注射薬は、ご存じの通り、注射器を使って筋肉や静脈内等を経由して薬を直接体内に入れる仕組みということである。

『外用薬』は、一般に赤い文字で印字した薬袋に入れて渡されるが、飲む薬ではないということを強調するために、薬袋の色が換えられている。

ところで『坐薬』であるが、これは明らかに外用薬であるから、飲む薬でない。従って「この薬は坐って飲まないと何か事故が起こるのでしょうか?。」というお訊ねは、基本的に間違いだということになる。

『坐薬』には、痔の治療を目的とするものの他、全身作用(熱を下げる、痛みを抑える)を目的として使用されるものがある。もし、『坐薬』は痔の治療にのみ使用するものだと考えているとすれば、熱がある、あるいは痛みがあるというときに、坐薬が処方されると、薬は飲むものだという先入観から『坐薬』を飲んでみたいという誘惑に駆られるのかもしれないが、そのような誘惑には負けないでいただきたい。

『坐薬』の使用方法は『肛門に挿入する』のが正しい使い方である。

しかし、薬の説明をするとき、特に相手が若い女性の場合、肛門等という言葉は言い難いということがあり、「お尻に入れてください」等と説明するので、「お汁に入れて飲んだけれど、とても飲めるものではないので、薬を換えてください」等という笑えない話がでてくるのである。

  1. 『坐薬』が出された場合、自宅に戻ったら直ちに冷蔵庫に入れてください。温度により柔らかくなったり、変形したりします。薬の安定性に影響する場合もありますから、必ず冷蔵庫に入れておいて下さい。
  2. 『坐薬』を使用する場合、箱入りの場合には箱から出してください。次に銀紙に包まれていたらそれも外してください。プラスチックのコンテナに入っている場合もありますが、そのままでは使用できませんので、それも外してください。コンテナのまま挿入しようとして、肛門が切れて出血したという例があります。ロウソクみたいな感じの紡錘形のものが出てくるはずです。それが『坐薬』の本体です。
  3. 『坐薬』を使用する前に、出来れば排便しておいて下さい。『坐薬』を挿入し便意を催し、排便してしまっては、期待された効果が得られません。
  4. 『坐薬』を『肛門』に挿入するとき、素手で『坐薬』に触れないでください。ティッシュで『坐薬』の細い方をつかみ太い方から挿入します。直接、指でつままないと挿入できない場合は、石鹸を使って十分に手を洗い、挿入後も同様に石鹸を使って手洗いをしてください。
  5. 『坐薬』を女の赤ちゃんに挿入する場合、挿入場所をはっきり確認してから挿入してください。間違えて膣内に挿入した例が報告されています。

なお、坐薬の使用に際して注意することの一つとして、基剤の違いによって主薬の吸収に差が見られることである。熱性痙攣の治療薬であるdiazepam(ジアゼパム)の坐薬と解熱剤の acetoaminophen(アセトアミノフェン)の坐薬を併用した場合、直腸内腔液に溶解した使用性のdiazepamが、 acetoaminophen坐薬の油脂性基剤に一部取り込まれ、diazepamの吸収が遅延するのではないかとされている点である。

『熱性痙攣の指導ガイドライン』では

『diazepam坐薬を使用する場合、解熱薬を経口投与にするか、坐薬を併用する場合には、diazepam坐薬を投与後すくなくとも30分以上間隔を開けることが望ましい』とする記載がされている。

因みに『坐薬』を誤って服んでしまったとしても、特に重篤な障害がでることはないので、心配することはないが、当初の治療の目的は果たせないということにもなるので、薬は正しく使用することが必要である。

[2]頓用について

『とんよう』等というと、そそっかしい人は、『豚用』などという文字を思い浮かべて、動物用の薬ではないのかと思うかもしれないが、これは由緒正しい『薬の服み方』の一つである。

『頓』には「にわか」の意味があるということであり、横文字の『potion』には「一服」とする訳が付けられている。

従って『頓服』あるいは『頓用』とは、「にわかに服む」か、あるいは「にわかに用いる」という意味があることになる。つまり『頓服(potion)』あるいは『頓用』とは、薬を継続的に使用するのではなく、必要時に1回服用することを目的とした服み方ということになる。

それでは『必要な時とはどんな時?』ということになるが、おおよそ想定されている症状としては

『頭痛時』、『疼痛時』、『胸痛時』、『胃(腹)痛時』、『発作時』、『熱発時』、『肩こり時』、『吐気のある時』、『咳のでる時』、『不眠時』、『便秘時』

等があげられている。

つまりこれらの対象となる症状が発現した時に、その症状を改善する目的で投与される薬であり、頓用の目的は、あくまで対象とする症状に合わせて、その時限りの単発で服むことが目的の薬ということである。従って続けて服まなければならない継続的な治療を必要とする病気には、馴染まない投与方法ということになる。

頓用の1回投与量は、処方薬剤の1回量を基準として、投与間隔あるいは1日の服用回数限度は、処方薬剤の作用発現時間、作用持続時間、生物学的半減期、薬剤の排泄動態等を勘案して決定することとされている。

但し、保険診療上の『頓服薬』に関する考え方は、旧厚生省通知等で、次の通り規定されている。

  1. 頓服薬は、1日2回程度を限度として臨時的に投与するものをいい、1日の服用回数が2回以上で、かつ、服用に時間的、量的に一定の方針のある場合は、内服薬とする。頓服薬は、症状に応じて臨時的服用を目的として投与するものをいう。
    (昭24.10.26.保険発第310号)
  2. 十二指腸虫駆除の際に使用される四塩化炭素、チモール等は、投与方法が1日2回以上にわたり、時間的、量的に一定方針ある場合は内服薬とし、1回の場合は頓用とする。
    (昭24.10.26.保険発第310号)

(参考):頓服薬とは一般に「臨時的に投与するもの」とされているが、医師個人により考え方に差があるため、睡眠薬、緩下剤、降圧剤で内服薬とすべきだと思われるレセプトが散見される。

特に1日1回服用のものは、例え長期又は定期的なものであっても、頓服薬と考えていると思われるケースが多い。

内服・頓服の区分については『原則として内服薬とは、医師が「食前」等と服用時間を指示したもの』、『頓服薬とは「痛みのあるとき服用」というように症状がでたときに患者の判断で服用するもの』としており、例外的に駆虫剤等臨時的なものに限り、内服時間を医師が指示したものであっても頓服薬と考えることとしている。

上記の旧厚生省の文書は、昭和24年のものであるが、現在も取り消し等の通知が出されていないため、上記通知に基づく判断が『頓服』に関する旧厚生省の見解ということである。

なお、頓用薬の投与量については、『頓服薬は1回量を基準として5単位以内で、月3回(12単位)』とするの記載もみられる。

その他、平成12年4月21日付事務連絡(地方社会保険事務局・都道府県民生主管部(局)・国民健康保険主管課(部)宛、厚生省保険局医療課発)「疑義解釈資料の送付について」として

Q1.頓服薬の投与許容回数に目安はあるのか。例えば14日処方の中に、頓用28回分はかまわないのか。

(答)昭和24年保険発310号で「頓服薬は1日2回程度を限度として臨時的に投与するものをいい、1日2回以上にわたり時間的、量的に一定の方針のある場合は内服薬とする」とされている。例えば、ニトログリセリン錠のように、頓服で処方された薬剤の特性等からみて妥当であれば構わない。なお、院外処方せん受付時に必要があれば処方医に紹介すること。

とする疑義解釈が例示されている。

つまり『頓服薬』は、患者の都合で、何回分欲しいと申し出ても、申し出た回数分を出すことができないという決まりがあるということである。

[015.11.SUP.2004.1.9.]


  1. 安藤鶴太郎・他:優秀処方とその解説 第37版;南山堂,1996
  2. 診療点数早見表 11月4日増補;医学通信社,1998
  3. 坂上正道・監修:レセプトの基礎知識;株式会社ミクス,1999
  4. 古泉秀夫:市販坐薬の基剤の物性・併用投与について[I];クラヤ三星堂薬報,No.43:4-5(2001.7.6.)

3.服む時間使う時間(のむ時間)

木曜日, 8月 16th, 2007

[1]はじめに

経口投与される薬剤の服用時間が、原則として“食事時間”に合わせてある のは、服用忘れを防止するためであり、薬効その他、特に支障のない場合は、食直後の服用指示で、特に問題はないと考えられる。また高齢者では、服み忘れを防止する意味で、『食直後』での服用が適している。また、高齢者では、薬の服用時間が複雑な組み合わせとならないよう、処方せんの記載に際して注意することが必要である。

薬の用法は、医師によって処方せんに記載されるべきものであって、記載さ れていない処方せんは“不備処方せん”ということである。院内処方せんの場合、院内の約束事に従って、薬剤師の判断により用法の決定をすることができるが、院外処方せんの場合は、処方医に確認することが求められる。

処方せんに関する薬剤師からの疑義照会を回避するためには、医師は処方せ んの記載に正確を期すことが第一である。また患者の安全確保の点からも処方せんの記載は常に吟味することが必要である。

[2]服む時間の基本的事項

(1)薬の作用を迅速・的確にするためには、空腹時(食前30分又は食後2 時間)に服用する。

理由:食物等に吸着されることがなく、吸収が良いと考えられている。

(2)薬の副作用を少なくするためには、満腹時(食直後)に服用する。

理由:胃粘膜に直接の刺激が少なく、吸収も緩慢となるため。

(3)薬の効力(血中濃度)を常に一定するためには数回(1日4-5-6 回・4時間おき又は6時間おき)に服用する。

理由:血管内に吸収された薬は普通4-5時間後に分解排泄し始める。ただ し、持効性製剤は別。

[3]通常使用薬剤の服用時間

服用時間 該当薬
毎食前30分 整腸剤、食欲増進剤、鎮吐剤、その他一般水剤、漢方薬
食直後又は毎食後30分 消化剤、解熱剤、その他一般散剤・錠剤・カプセル剤
毎食後2時間又は毎食前1時間 鎮静剤、鎮咳剤、強心剤、制酸剤、胃酸により効力を減ずる薬剤。
朝・昼・就寝前又は朝・就寝前 胃酸分泌抑制剤(ヒスタミンH2拮抗剤、抗コリン剤等)、気管支拡張剤(交感神経興奮剤)、抗ア レルギー剤。
1日1-2回(朝・昼) 強力利尿剤、利尿性強心剤、利尿降圧剤、精神神経賦活剤(覚せい剤)。
毎食直後 胃粘膜を障害(強刺激性)する薬剤。
就寝前30分(午後9時-10時) 催眠剤、緩下剤、筋弛緩剤、ヒスタミンH2拮抗剤、気管支拡張剤、抗ヒスタミン剤、抗アレルギー 剤、鉄剤。
就寝前空腹時又は早朝空腹時 駆虫剤
1日4-5-6回・毎4時間又は6時間(又は毎食後及び就寝前、毎食間及び就寝前) 化学療法剤、抗生物質、プロスタグランジン剤[ornoprostil(胃潰瘍:アロカ・ロノッ ク)1日4回(食間・就寝前)]
1日1回-毎24時間又は1日2回-毎12時間あるいは朝夕 持続性(持効性)薬剤

[4]常用される用法指示例

服用回数 用法指示例
1日1回 朝(食前・食直後)、早朝空腹時、起床時、夕食後、就寝前、毎24時間
1日2回 朝夕(食前・食後)、朝昼(食後)、朝晩、朝・就寝前、午前○時と午後○時、毎12時間
1日3回 食前30分、食前1時間、食後30分、食後1時間、食後2時間、食直前、食直後、毎8時間
1日4回 毎食後と就寝前、毎食後1(2)時間と就寝前、毎6時間
1日6回 毎食前と毎食後、哺乳時(哺乳前15分)、毎4時間
週2-3回(2-3日) 週2回○曜と○曜(週3回○曜・○曜・○曜)
隔日 1日おきに、隔日に
頓服 頭痛時、疼痛時、胸痛時、胃(腹)痛時、発作時、発熱時、肩こり時、吐き気のある時、咳のでる 時、不眠時、便秘時、空腹時
その他 乗車・乗船前30分、手術前○時間、検査日前○日より

[5]摂取食物の移動時間

薬物の服用時間を食事時間に合わせる以上、摂取食物の移動時間を確認して おくことも必要である。次に標準的な推移時間を紹介する。

移動時間 部位
食事後15分 胃から十二指腸に移行し始める。
食事後2-5時 胃内容は空になる。
食事後3.5時 回盲部に達する。
食事後4.5時 結腸に移行し始める。
食事後6 時 栄養物は殆ど吸収され、上行結腸局に達する。
食事後9 時 下行結腸局に達する。
食事後12時 S状結腸に達する。
食事後12-24時 排便する。

[015.11.REC: 2004.1.4.]


  1. 安藤鶴太郎・他:優秀処方とその解説 第37版;南山堂,1996
  2. 高久史麿・他監修:治療薬マニュアル;医学書院,2003

2.用法による剤形分類

木曜日, 8月 16th, 2007

[1]用法による分類

薬の形(剤形)の分類として、機能的な分類の他に、用途に基づく分類がある。つまり錠剤という一つの剤形に対して、それぞれの用途に基づく名称が付けられている。例えばバッカル錠(buccal:頬側の)、チュアブル錠(chewable:噛まれる物:咀嚼)等は、その使用部位をそのまま名称にしている。また、トローチ錠(troche tablet)については、口腔内に入れるにもかかわらず、『外用錠』に分類されているが、これは本剤の用途が全身作用を目的とするのではなく、局所作用を目的としているためと考えられる。その他、注射錠の名称が見られるが、現在では凍結乾燥による用時溶解の粉末製剤が主体であり、注射錠は製剤として見あたらない。

注射剤についても、それぞれ用途別に、皮内・皮下・筋肉内等の分類がされ ており、筋肉内注射を静注に使用すると、障害が起こる恐れのある薬物も存在する。従って薬物は用途別の分類に準拠して使用をすることが原則である。

[2]用途別分類

  分類 剤形特性
内服錠 内服する裸錠、糖衣錠、腸溶錠などを総称して内服錠。錠剤は通常水と一緒に服むが、水によって服 みやすいことの他に、消化管内での崩壊を助ける。
舌下錠 口腔錠の一種で、舌下に挿入して口腔粘膜から直接速やかに吸収させることを目的とした錠剤であ る。作用は全身作用で速効性がある。狭心症の発作時にニトログリセリン錠が使用されるが、揮散性があるため保管には注意する。
バッカル錠 口腔錠の一種で、頬側部に挿入して口腔粘膜から直接徐々に吸収させるようにした錠剤(バリターゼ バッカル)。
チュアブル錠(咀嚼錠) 口腔錠の一種で、口中で噛んでも、しゃぶっても、そのまま服み込んでもよいが、ガムを噛むように することからの別名カムカム錠ともいわれる。口腔粘膜から吸収された薬物は、肝臓を 通らずに血行に入るので、錠剤の中では速効性
口中錠
(トローチ)
口中で徐々に溶解させ、口腔や咽喉などの粘膜に殺菌、収斂などの局所作用をする錠剤である。製剤的には外用剤であるが、患者に与薬する際には、内用の薬袋を使用し、「噛 み砕いたり、そのまま服み込んだりしないで、口の中でしゃぶって溶かして下さい」と説明する(複合トローチ)。
溶解錠 溶液のまま保存すると分解・変質する薬物を錠剤にして保存し、用時溶解液に溶かして使用する方式 で点眼剤、消毒剤(携帯用)がある(タチオン点眼液、カタリン点眼液、含嗽用アズレン錠)。
膣錠 膣内に挿入して殺菌、防腐、消炎などの目的に使用する錠剤(エンペシド膣錠等)
注射錠 使用時に注射用蒸留水に溶解して注射剤の調製に用いる無菌的に製した錠剤。最近では凍結乾燥や無 菌操作による粉末の容器への封入により安定な製剤化。
皮内注射 皮膚は表皮、真皮、皮下組織の三層よりなり、皮内注射は表皮と真皮の間に注射する。通常は注射部 位は前腕内面、上腕外側が選ばれる。少量の薬液を緩徐に吸収させたい場合、また薬液と生体の反応を確認したい場合:ワクチンの接種・ツベルクリン反応・ア
レルギー反応確認のための皮内テスト等。
皮下注射 皮下結合組織内に注射する。この部分にはリンパ間隙が多いので割合大量の薬液が注入できる。通常 内服量の1/2-3/4程度の用量で同程度の効果。
筋肉内注射 大臀筋、三角筋の中に注射することをいう。注射針を深く筋肉に差し込むので神経を損傷することが ある。特に大臀筋肉注射の場合は、坐骨神経を傷つけないよう注意。皮下注射ほど大量の薬液を注入することは出来ない。筋肉は皮下より血管の分布が密なので
吸収は速やか。皮下注射し難い刺激性の薬液も注射が可能であるが、局部刺激の強いものは壊疽を起こすおそれがあり、避けなければならない。油性剤・懸濁剤
等は筋肉内から徐々に吸収されるので、作用の持続性を持たせる目的で筋肉注射が利用される。
静脈注射
  [I.V.H含]
静脈内に薬液を注入することをいい、肘関節内側の静脈(前腕正中皮静脈)が多く用いられる。[カ テーテルを鎖骨下静脈を経て、先端を上大静脈に留置(末梢静脈では高浸透圧のため、静脈炎、血栓等を起こす)、栄養液を無菌的に連続注入する]。
動脈注射 直接動脈に薬液を注射する方法で、注射した部位の動脈によって支配されている器官、あるいは組織 に高濃度に作用する。
腹腔内注射 腹腔内には種々の臓器が存在し、表面には毛細血管の分布が密で、薬物の吸収がよいことから、腹腔 内に直接薬液を注入することが行われていたが、現在では殆ど行われない。
関節腔内注射 関節腔内に穿刺し、浸出液を除去し、炎症を抑えるために副腎皮質ホルモン剤を注入する等の方法が 行われる。
脊髄腔内注射 (くも膜下腔内注射・腰椎注射)脊髄穿刺を行い、くも膜下腔内に注射する方法である。腰椎麻酔 (脊髄麻酔)を行うため、第?-第?腰椎のくも膜下腔内に注射を行う。

[015.11.USA: 2004.1.9.]


  1. 大宮清司・監修:改訂 看護のための薬品管理学;薬業時報社,1984
  2. 薬科学大辞典 第2版;広川書店,1993
  3. 今堀和友・他監修:生化学辞典 第3版;東京化学同人,1998
  4. 板谷幸一・編:第3版 医薬品情報学入門;南山堂,1999