アコニチン(aconitine)の毒性
木曜日, 8月 16th, 2007対象物 | アコニチン(aconitine)。 | ||
成分 | アコニチン。[英]aconitine、[独]Aconitase、[仏]aconitine。 | ||
一般的性状 | 柱 状晶、C34H47NO11=645.75。クロロホルム、ベンゼンに可溶、エーテル、 乾燥エタノールに僅かに溶ける。水、石油エーテルに殆ど不溶。比較的不安定で、アルカリと加熱すると速やかに加水分解して脱アセチル化及び脱ベンゾイル化を起こし、無毒のアコニン(C25H41NO9)になる。aconitineはキンポウゲ科トリカブト属(Aconitum)植物に含まれるジテルペンアルカロイド。aconit-alkaloid中の代表的なエステル型アルカロイド。融点204℃。 | ||
毒性 | 猛 毒性で、激しい神経麻痺作用を示し、植物毒のうちで最も強力な物に属する。直接心臓に作用し、呼吸器を麻痺する。LD:0.4mg/kg(ネコ、皮下)。 LD50(経口)1mg/kg程度。 致死量は成人で3-5mg。LD50(マウス・静注) 0.166mg/kg、(マウス・腹腔)0.308mg/kg。 摂取により呼吸困難、心臓発作を惹起する。これは神経細胞のNaチャンネルの透過促進作用に関連する。電位依存性NaチャンネルのレセプターサイトIIに結合し、持続的興奮を引き起こすため脱分極が起こる。 |
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症状 | 初 期は口腔・咽頭灼熱感、しびれ、血圧上昇、心拍動亢進、次いで嘔吐、流涎、刺激伝導障害性不整脈、拡張期心停止、肺浮腫、体温下降、局所麻酔作用、筋運動抑制が見られる。 重篤の場合は発症後6時間以内に死にいたる。 |
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処置 | * 催吐、 *胃洗浄(1000倍稀釈の過マンガン酸塩溶液)、 *吸着剤(活性炭、牛乳、タンニン酸液投与)、 *塩類下剤投与 ◆排泄促進 *血液透析は無効。血液吸着は有効との報告あり。 ◆対症療法 *カリウム値の補正*不整脈の治療 心室性期外収縮、心室性頻拍にリドカイン投与 迷走神経刺激による不整脈や房室ブロックにフェ?? ニトイン投与、ペー スメーカー挿入 *ステロイド投与 *抗けいれん剤、鎮痛剤投与 ◆全身管理 *輸液 *酸素吸入と人工呼吸 *循環動態の安定化 |
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事例 | ドクター・ラムスンの犠牲者は、18歳になるびっこの甥なんだが、彼はその甥を、アコニチン入りの干しぶどうをダンデエ・ケーキに焼き込むという方法で殺したのだ。しかも、少年と少年の学校の校長がいる前で、ケーキを切り分けてさえいるんだから驚くよ。三人一緒に、茶卓を囲んで食べたので、少年だけが毒にやられたときも、彼は潔白を主張できたんだ。この手口は、わしもなにかの小説で読んだ覚えがあるな [宇野利泰・訳(ディクスン・カー:Dickson Carr):緑のカプセルの謎;創元推理文庫,2002] |
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備考 | 本編中で実際に使用される毒薬はストリキニーネと青酸であるが、探偵役であるフェル博士が、実際に報告されている過去の毒殺犯についての蘊蓄を語る中で、『アコニチン』を使用した殺人者を紹介したのが上記の部分である。我が国における実際的な事件で、毒薬を使った事件は比較的少ないのではないかと思われるが、英・仏等の外国では、連続毒殺犯や大量毒殺犯の有名人がひしめいているようである。特に王政時代の貴族階級やその取り巻き連中は、毒使いに精通していたのではないかと思われる話が記述されている。 | ||
文献 | 1) 薬科学大辞典 第2版;広川書店,1990 2)志田正二・代表編:化学辞典;森北出版,1999 3)今堀和友・他監修:生化学辞典第3版;東京化学同人,1998 4)Anthony T.Tu:毒物・中毒用語辞典;化学同人,2005 5)西 勝英・監修:薬・毒物中毒救急マニュアル 改訂6版;医薬ジャーナル,2001 |
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調査者 | 古泉秀夫 | 記入日 | 2005.10.17. |