アレルギー既往歴患者の鎮痛・解熱剤選択
木曜日, 8月 16th, 2007[但し、いわゆる風邪・急性上気道炎]
KW:解熱剤・鎮痛剤・風邪薬・急性上気道炎・アレルギー既往歴患者・過敏症・ピリン疹・アスピリン喘息・小児薬用量
ピリン系解熱鎮痛薬 | [禁忌]ピリン疹既 往歴者(本剤又はピラゾロン系化合物)・アスピリン喘息。[慎重]食物アレルギー既往・近縁者薬物アレルギー既往。[警告]ショック等の重篤な副作用。*メチロン坐薬(100mg/個)-小児投与量
乳児:50-100mg 2?3歳:100mg 3歳以上:100-200mg |
スルピリン (sulpyrine)[商]スルピリン(各社)[商]メチロン注(第一)[商]メチロン坐薬(第一) | |
ピリン系解熱鎮痛薬-合剤 | |
アンチピリン・カフェイン・ クエン酸[商]ミグレニン(各社)スルピリン・アミノプロピリン・テオクル酸ジフェニールピラリン・(添加剤:ベンジルアルコール)[商]オベロン注(日本新薬) | |
非ピリン系解熱鎮痛薬 | |
アセトアミノフェン(acetaminophen)[商]ピリナジン(山之内)[商]ナパ(アストラ)
[商]ピレチノール(岩城) |
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非ピリン系解熱鎮痛薬-合剤 | |
シメトリド・無水カフェイン[商]キョーリンAP2(杏林)サリチルアミド・アセトアミノフェン・無水カフェイン・メチレンジサリチル酸プロメタジン[商]PL顆粒(塩野義)
[商]ピーエイ錠(吉富) |
[禁忌]本剤成分過敏症既往者・アスピリン喘息。*acetaminophenについて、添付文書中に「アスピリン喘息」は[禁忌]とされているが、アスピリン喘息既往者に対しても安全に投与可能とする 報告がされている。WHOの喘息ガイドラインでも使用可能な消炎・鎮痛剤にリストアップされている(但し、初期は半量から投与し、2?3時間症状観察)。*1包当たり150mg含有のPL顆粒はアスピリン喘息患者に使用可能の報告。しかし、負荷試験成績の結果、安全とされる報告は全て600mg以下。*喘息患者の場合、寛解期よりも有症状期の方が負荷閾値が低下することはよく知られている。従ってアスピリン喘息患者が、少しでも喘息症状を伴っていると きは、通常使用量のacetaminophenでも危険といえる。
*アスピリン喘息の患者に対し、高用量のacetaminophenは[禁忌]である。 *acetaminophen坐薬小児投与量 [商]アンヒバ(北陸) [商]アルピニー坐薬(エスエス) 1歳未満:50mg・1-3歳未満:50-100mg・3-6歳 未満:100mg・6-12歳:100-200mg *1歳未満:安全性未確立-慎重投与。 |
サリチル酸製剤 | [禁忌]本剤成分又 はサリチル酸製剤過敏症既往者、アスピリン喘息。[重要な基本的注意]「サリチル酸系製剤とライ症候群との因果関係は明らかでないが、関連性を疑わせる疫学調査報告がある。15歳未満の水痘・インフルエ ンザの患者にやむを得ず投与する場合には、慎重に投与し、投与後の患者の状態を十分に観察する」*サリチル酸製剤:アスピリン(アセチルサリチル酸)・サリチル酸ナトリウム・サザピリン(サリチロサリチル酸)。*サリチルアミド・エテンザミドについては、他のサリチル酸系薬剤と異なり代謝によりサリチル酸を生じないが、一層の安全性の観点から同様の使用上の注意 記載。
*アスピリン喘息誘発の機序については未だ明確にされていないが、アラキドン酸カスケードにおけるサイクロオキシゲナーゼ(COX)抑制作用と関連がある とされている。しかし、化学構造上の類似性は必ずしも見られない。aspirinとインドール系酢酸のindometacinは強力な誘発作用を持つが、 構造は全く異なっている。 *同じサリチル酸系であっても、sodium salicylate(サリチル酸ナトリウム)はaspirinとは異なり殆ど誘発作用がない。 *消炎・鎮痛剤であっても、塩基性のものでは誘発作用はあっても弱いか殆どない。 |
アスピリン・アスコルビン酸[商]EAC錠(富山)アスピリン・ダイアルミネート・炭酸マグネシウム[商]バファリン錠(ライオン)
サリチルアミド・アセトアミノフェン・無水カフェイン・マレイン酸クロルフェニラミン [商]ペレックス顆粒(大鵬) [商]エルエルシロップ(三共) |
*サリチル酸 | [禁忌]本剤成分過 敏症既往者・アスピリン喘息。*アスピリン喘息誘発作用の特に強力なものaspirin、indometacin、ibuprofen、aminopirin、diclofenac、naproxen、piroxicam等*アスピリン喘息誘発作用のかなり強いもの
mefenamic acid、flufenamic acid等 |
アスピリン (aspirin)[商]アスピリン(各社) | |
*フェナム酸 | |
フルフェナム酸アルミニウム(alminum flufenamete)[商]オパイリン錠(大正)メフェナム酸(mefenamic acid)[商]ポンタール(三共) | |
*アリール酢酸 | |
ジクロフェナックナトリウム(diclofenac sodium)[商]ボルタレン(ノバルティス)フェンブフェン(fenbufen)
[商]ナパノール (ワイスレダリー) インドメタシン(indometacin) [商]インダシン(万有) アセメタシン(acemetacin) [商]ランツジール(興和) |
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*塩基性抗炎症薬 | |
エピリゾール (epirizole)[商]アナロック(ファイザー)[商]メブロン(第一)塩酸チアラミド
(tiaramide hydrochloride ) [商]ソランタール(藤沢) |
OTC-塩化リゾチーム配合剤 | [禁忌]本剤成分過 敏症既往者・卵白アレルギー(本剤の成分は卵白由来の蛋白質で卵白アレルギーがある患者においてアナフィラキシーショックを含む過敏症状の報告)[慎重]アトピー性皮膚炎、気管支喘息、薬剤アレルギー、食物アレルギー等のアレルギー素因(アレルギー性素因のある患者は薬剤含む各種アレルゲンに対し て感作を受けやすくアナフィラキシー様反応を起こすおそれ)・近縁者アレルギー症状既往 |
カゼエッフル( 共栄製薬)3包中:60mgカゼチームカプセル(大協薬品)6ap.中:60mgカゼデスカL錠(テイカ製薬)6錠中:60mgカドリンカゼカプセル(共栄製薬)6 Cap.中: 60mg
コルゲンコーワエアライン(興和)6 Cap.中:90mg コルゲンコーワエアライン顆粒(興和) 3包中: 90mg等 |
1.上記の報告からacetaminophenに過敏症の既往歴がなく、他の鎮痛・解熱剤に過敏症の既往歴のある場合、 acetaminophenの使用が可能である。但し、その場合投与量に注意する。また、アスピリン喘息患者が、少しでも喘息症状を伴っているときは、通 常使用量のacetaminophenでも危険といえるの報告がされているため、そのような事例では本剤の投与を回避する。
2.非ステロイド性抗炎症薬のうち「急性上気道炎(急性気管支炎を伴う急性上気道炎)」の承認適応を有する薬剤があるが、これらの薬剤に対す る過敏症の既往歴者では、acetaminophen又は塩基性抗炎症薬の使用が可能である。acetaminophenの承認適応は「鎮痛及び急性上気 道炎の解熱・鎮痛」であり、塩基性抗炎症薬のうちepirizole、tiaramide hydrochlorideは「急性上気道炎の鎮痛」が適応症として承認されている。ただし「解熱」は含まれていない。
また、塩基性抗炎症薬のうちemorfazone[ペントフィル錠(HMR)]については、1994年当時再評価対象外であったため、[禁忌] 欄に「アスピリン喘息」の記載はされていない。しかし、適応症として「急性上気道炎の鎮痛」は承認されていない。
3.OTCの風邪薬の場合、上記1及び2を参照するほか、卵白アレルギー等の既往者では塩化リゾチーム配合剤に注意する。
上記の各薬剤に対し、いずれも過敏症の既往がある場合には、漢方製剤の使用も選択肢の一つである。
[015.11ALL:1999.3.18.古泉秀夫]
[2003.5.7.第二改訂.古泉秀夫]
- 高久史麿・他監:治療薬マニュアル;医学書院,1999
- 厚生省医薬安全局:医薬品等安全性情報 No.151:2(1998.12.)
- 権田秀雄・他:アスピリン喘息;医薬ジャーナル,24(5):999-1003(1988)
- 谷口正実・他:アスピリン喘息に対する解熱鎮痛薬の安全に使用法-質疑応答第25集;日本医事新報社,1998
- 栃木隆男:アスピリン喘息患者の感冒罹患時における麻黄附子細辛湯の使用経験;漢方診療,11(9):29-31(1992)