2.用法による剤形分類
木曜日, 8月 16th, 2007[1]用法による分類
薬の形(剤形)の分類として、機能的な分類の他に、用途に基づく分類がある。つまり錠剤という一つの剤形に対して、それぞれの用途に基づく名称が付けられている。例えばバッカル錠(buccal:頬側の)、チュアブル錠(chewable:噛まれる物:咀嚼)等は、その使用部位をそのまま名称にしている。また、トローチ錠(troche tablet)については、口腔内に入れるにもかかわらず、『外用錠』に分類されているが、これは本剤の用途が全身作用を目的とするのではなく、局所作用を目的としているためと考えられる。その他、注射錠の名称が見られるが、現在では凍結乾燥による用時溶解の粉末製剤が主体であり、注射錠は製剤として見あたらない。
注射剤についても、それぞれ用途別に、皮内・皮下・筋肉内等の分類がされ ており、筋肉内注射を静注に使用すると、障害が起こる恐れのある薬物も存在する。従って薬物は用途別の分類に準拠して使用をすることが原則である。
[2]用途別分類
分類 | 剤形特性 | |
内用錠 | 内服錠 | 内服する裸錠、糖衣錠、腸溶錠などを総称して内服錠。錠剤は通常水と一緒に服むが、水によって服 みやすいことの他に、消化管内での崩壊を助ける。 |
舌下錠 | 口腔錠の一種で、舌下に挿入して口腔粘膜から直接速やかに吸収させることを目的とした錠剤であ る。作用は全身作用で速効性がある。狭心症の発作時にニトログリセリン錠が使用されるが、揮散性があるため保管には注意する。 | |
バッカル錠 | 口腔錠の一種で、頬側部に挿入して口腔粘膜から直接徐々に吸収させるようにした錠剤(バリターゼ バッカル)。 | |
チュアブル錠(咀嚼錠) | 口腔錠の一種で、口中で噛んでも、しゃぶっても、そのまま服み込んでもよいが、ガムを噛むように することからの別名カムカム錠ともいわれる。口腔粘膜から吸収された薬物は、肝臓を 通らずに血行に入るので、錠剤の中では速効性。 | |
外用錠 | 口中錠 (トローチ) |
口中で徐々に溶解させ、口腔や咽喉などの粘膜に殺菌、収斂などの局所作用をする錠剤である。製剤的には外用剤であるが、患者に与薬する際には、内用の薬袋を使用し、「噛 み砕いたり、そのまま服み込んだりしないで、口の中でしゃぶって溶かして下さい」と説明する(複合トローチ)。 |
溶解錠 | 溶液のまま保存すると分解・変質する薬物を錠剤にして保存し、用時溶解液に溶かして使用する方式 で点眼剤、消毒剤(携帯用)がある(タチオン点眼液、カタリン点眼液、含嗽用アズレン錠)。 | |
膣錠 | 膣内に挿入して殺菌、防腐、消炎などの目的に使用する錠剤(エンペシド膣錠等) | |
注射錠 | 使用時に注射用蒸留水に溶解して注射剤の調製に用いる無菌的に製した錠剤。最近では凍結乾燥や無 菌操作による粉末の容器への封入により安定な製剤化。 | |
注射剤 | 皮内注射 | 皮膚は表皮、真皮、皮下組織の三層よりなり、皮内注射は表皮と真皮の間に注射する。通常は注射部 位は前腕内面、上腕外側が選ばれる。少量の薬液を緩徐に吸収させたい場合、また薬液と生体の反応を確認したい場合:ワクチンの接種・ツベルクリン反応・ア レルギー反応確認のための皮内テスト等。 |
皮下注射 | 皮下結合組織内に注射する。この部分にはリンパ間隙が多いので割合大量の薬液が注入できる。通常 内服量の1/2-3/4程度の用量で同程度の効果。 | |
筋肉内注射 | 大臀筋、三角筋の中に注射することをいう。注射針を深く筋肉に差し込むので神経を損傷することが ある。特に大臀筋肉注射の場合は、坐骨神経を傷つけないよう注意。皮下注射ほど大量の薬液を注入することは出来ない。筋肉は皮下より血管の分布が密なので 吸収は速やか。皮下注射し難い刺激性の薬液も注射が可能であるが、局部刺激の強いものは壊疽を起こすおそれがあり、避けなければならない。油性剤・懸濁剤 等は筋肉内から徐々に吸収されるので、作用の持続性を持たせる目的で筋肉注射が利用される。 |
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静脈注射 [I.V.H含] |
静脈内に薬液を注入することをいい、肘関節内側の静脈(前腕正中皮静脈)が多く用いられる。[カ テーテルを鎖骨下静脈を経て、先端を上大静脈に留置(末梢静脈では高浸透圧のため、静脈炎、血栓等を起こす)、栄養液を無菌的に連続注入する]。 | |
動脈注射 | 直接動脈に薬液を注射する方法で、注射した部位の動脈によって支配されている器官、あるいは組織 に高濃度に作用する。 | |
腹腔内注射 | 腹腔内には種々の臓器が存在し、表面には毛細血管の分布が密で、薬物の吸収がよいことから、腹腔 内に直接薬液を注入することが行われていたが、現在では殆ど行われない。 | |
関節腔内注射 | 関節腔内に穿刺し、浸出液を除去し、炎症を抑えるために副腎皮質ホルモン剤を注入する等の方法が 行われる。 | |
脊髄腔内注射 | (くも膜下腔内注射・腰椎注射)脊髄穿刺を行い、くも膜下腔内に注射する方法である。腰椎麻酔 (脊髄麻酔)を行うため、第?-第?腰椎のくも膜下腔内に注射を行う。 |
[015.11.USA: 2004.1.9.]
- 大宮清司・監修:改訂 看護のための薬品管理学;薬業時報社,1984
- 薬科学大辞典 第2版;広川書店,1993
- 今堀和友・他監修:生化学辞典 第3版;東京化学同人,1998
- 板谷幸一・編:第3版 医薬品情報学入門;南山堂,1999