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感染症の類型(感染症予防法)

木曜日, 8月 16th, 2007

*感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律(感染予防・医療法=感染症予防新法)

分類 感染症名・感染症の 概要 性格
[主な対応・措置]
一類感染症 エボラ出血熱:エボラウイルスの感染により多臓器が侵され、出血傾向を示す。特異的な治療法はなく、死 亡率が高い。患者の血液、体液の接触により感染するが、手術用手袋等による接触感染予防により感染拡大を予防できる。
クリミア・コンゴ出血熱:ウイルスによる出血傾向を示す感染症。ウイルスを保有した成熟ダ ニの刺咬による。未成熟ダニは保有動物宿主から感染し、卵巣内で継代されると考えられている。患者の血液・体液の接触により感染し、人から人の感染が多数
報告されている。罹患後少なくとも1年間は免疫が残る。特異的な治療法なく、死亡率高い。*重症急性呼吸器症候群(病原体がSARSコロナウイルスであるものに限る):SARSコロ ナウイルスの感染による重症急性呼吸器症候群である。多くは2-7日、最大10日間の潜伏期間の後に、急激な発熱、咳、全身倦怠、筋肉痛などのインフルエ
ンザ様の前駆症状が現れる。2-数日間で呼吸困難、乾性咳嗽、低酸素血症などの下気道症状が現れ、胸部CT、X線写真などで肺炎像が出現する。肺炎になっ
た者の80-90%が1週間程度で回復傾向になるが、10-20%がARDS(Acute Respiratory Distress Syndrome)を起こし、人工呼吸器などを必要とするほど重症となる。致死率は10%前後で、高齢者での致死率はより高くなる。
痘そう:痘そうウイルスによる急性の発しん性疾患である。現在、地球上では根絶された状態 にある。主として、飛沫感染によりヒトからヒトへ感染する。患者や汚染された物品との直接接触により感染することもある。エアロゾルによる感染の報告もあ
るが稀である。潜伏期間はおよそ12 日(7-17 日)で、感染力は病初期(ことに4-6病日)に最も強く、発病前は感染力はないと考えられている。すべての発しんが痂皮となり、これが完全に脱落するまで
は感染の可能性がある。皮(かさぶた)の中には、感染性ウイルスが長期間存在するので、必ず滅菌消毒処理をする。
ペスト:黒死病。腸内細菌科に属するグラム陰性桿菌であるYersinia pestis の感染によって起こる全身性疾患である。リンパ節炎、敗血症等を起こし、重症例では高熱、意識障害等を伴う急性細菌性感染症であり、死に至ることも多い。
臨床的に腺ペストと肺ペストの2型に分類される。我が国では大正8年以後発生していない。
マールブルグ病:ウイルス感染により多臓器が侵され、出血傾向を示す。特異的治療法なく、 死亡率高い。患者の血液・体液の接触により感染するが、手術用手袋等による接触感染予防により感染拡大を予防できる。看護婦の院内感染例報告。
ラッサ熱:ウイルス感染。ウイルス血症により肝臓をはじめ多臓器が侵される。多彩な症状を 示し、重篤なものでは出血傾向がある。腎不全、ショック等で死亡することもある。昭和61年1例報告。
*感染力、罹患した場合の重 篤性等に基づく総合的な観点から見た危険性が極めて高い感染症。
*患者、疑似症患者及び無症状病原体保有者について入院等の措置を講ずることが必要。
[主な対応・措置]
*原則入院
*消毒等の対物措置(例外的に、建物への措置、通行制限等の措置も適用対象とする)。
患者・疑似症患者及び無症状病原体保有者:診断医師は速やかに保健所に届出。

医師の届出:直ちに
(法律)
二類感染症 急性灰白髄炎(ポリオ):ポリオウイルス1-3 型感染による急性運動中枢神経感染症である。潜伏期は3-12日で、発熱(3日間程度)、倦怠感、頭痛、嘔気、項部・背部硬直などの髄膜刺激症状を呈する
が、軽症例(不全型)では軽い風邪症状または胃腸症状で終わることもある。髄膜炎症状だけで麻痺を来さないもの(非麻痺型)もあるが、重症例(麻痺型)で
は発熱に引き続きあるいは一旦解熱し再び熱発した後に、突然四肢の随意筋(多くは下肢)の弛緩性麻痺が現れる。罹患部位の腱反射は減弱ないし消失、知覚感
覚異常を伴わない。
コレラ:コレラはコレラ毒素(CT)産生性コレラ菌(Vibrio cholerae O1)またはV. cholerae O139に汚染された飲料水や食品を介した経口感染により、激しい水様性下痢と嘔吐、著しい脱水と電解質の流失をきたす疾病である。コレラの潜伏期間は数
時間から5日、通常1日前後である。近年のエルトールコレラは軽症の水様性下痢や軟便で経過することが多いが、まれに“米のとぎ汁”様の便臭のない水様便
を1日数リットルから数十リットルも排泄し、激しい嘔吐を繰り返す。その結果、著しい脱水と電解質の喪失、チアノーゼ、体重の減少、頻脈、血圧の低下、皮
膚の乾燥や弾力性の消失、無尿、虚脱などの症状および低カリウム血症による腓腹筋(ときには大腿筋)の痙攣がおこる。胃切除を受けた人や高齢者では重症に
なることがあり、また死亡例もまれにみられる。
細菌性赤痢:赤痢菌(Shigella dysenteriae、S.flexneri、S.boydii、S.sonnei )の経口感染で起こる急性感染性大腸炎である。1-5日の潜伏期の後に、発熱、腹痛、下痢、時に嘔吐によって急激に発症し、重症例では頻回の便意とともに
粘血便を排泄する。志賀菌では重症例が多く、ソンネ菌では軽症例が多い。*ジフテリア:ジフテリア菌(Corynebacterium diphtheriae)の感染による急性感染症である。ジフテリア菌が咽頭などの粘膜に感染し、感染部位の粘膜や周辺の軟部組織の障害を引き起こし、扁
桃から咽頭粘膜表面の偽膜性炎症、下顎部から前頚部の著しい浮腫とリンパ節腫張(bullneck)などの症状が出現する。重症例では心筋の障害などによ
り死亡する。
腸チフス:腸チフスはチフス菌(Salmonella serovar Typhi)の感染による全身性疾患である。
腸チフスの潜伏期間は7-14 日で発熱を伴って発症する。患者、保菌者の糞便と尿が感染源となる。39℃を超える高熱が1 週間以上も続き、比較的徐脈、バラしん、脾腫、下痢などの症状を呈し、腸出血、腸穿孔を起こすこともある。重症例では意識障害や難聴が起きることもある。
健康保菌者はほとんどが胆嚢内保菌者であり、胆石保有者や慢性胆嚢炎に合併することが多く、永続保菌者となることが多い。
パラチフス:パラチフスはパラチフスA菌(Salmonella serovar Paratyhi A)の感染によって起こる全身性疾患である。(Salmonella
Paratyphi B、Salmonella Paratyphi Cによる感染症はパラチフスから除外され,サルモネラ症として取り扱われる)。臨床的症状は腸チフスに類似する。7-14
日の潜伏期間の後に38℃以上の高熱が続く。徐脈、脾腫、便秘、時には下痢、等の症状を呈する。症状は腸チフスと比較して、軽症の場合が多い。
*感染力、罹患した場合の重 篤性等に基づく総合的な観点から見た危険性が高い感染症。
*患者及び一部の疑似症患者について入院等の措置を講ずることが必要。[主な対応・措置]
*状況に応じて入院
*消毒等の対物措置
患者・政令で定める感染症の疑似症患者及び無症状病原体保有者:診断医師は速やかに保健所に届 出。

医師の届出:直ちに
(法律)
三類感染症 腸管出血性大腸菌感染症:ベロ毒素(Verotoxin ,VT)を産生する腸管出血性大腸菌(enterohemorrhagic E.coli,EHECあるいはShigatoxin-producing
E. coli ,STEC)の感染によっておこる全身性疾病である。臨床症状はその血清型により差異があるが、一般的な特徴は腹痛、水様性下痢および血便である。嘔吐や
38℃台の発熱を伴うこともある。さらにベロ毒素の作用により溶血性貧血、急性腎不全をきたし、溶血性尿毒症症候群( Hemolytic Uremic
Syndrome, HUS ) をひきおこすことがある。小児や高齢者では痙攣、昏睡、脳症などによって致命症となることがある。
*感染力、罹患した場合の重 篤性等に基づく総合的な観点から見た危険性が高くないが、特定の職業への就業にによって感染症の集団発生を起こし得る感染症。
*患者及び無症状病原体保有者について就業制限等の措置を講ずることが必要。
[主な対応・措置]*特定職業への就業制限
*消毒等の対物措置
患者・無症状病原体保有者:診断医師は速やかに保健所に届出。
医師 の届出:直ちに
(法律)
四類感染症 E型肝炎:E型肝炎ウイルスによる急性ウイルス性肝炎である。我が国では、これまでの報告のほとんどは 発展途上国などの流行地域での海外感染例であったが、2002
年から国内感染例の報告が増加している。途上国では主に水系感染であるが、我が国では汚染された食品や動物の臓器や肉生食による経口感染が指摘されてい
る。潜伏期間はA型肝炎より長く、平均6週間といわれている。臨床症状はA型肝炎と類似しており、予後も通常はA型肝炎と同程度で、慢性化することはな
い。しかし、妊婦(第3三半期)に感染すると劇症化しやすく、致死率も高く20%に達することもある。特異的な治療法はなく、対症療法が中心となる。
ウエストナイル熱(ウエストナイル脳炎を含む):フラビウイルス科に属するウエストナイル ウイルスによる感染症で、蚊によって媒介される。2-14日の潜伏期の後に高熱で発症する。発熱は通常3-6日間持続する。同時に頭痛、背部の痛み、筋肉
痛、食欲不振などの症状を有する。約半数で発しんが胸部、背、上肢に認められる。リンパ節腫張通常認められる。症状は通常1週間以内で回復するが、その後
倦怠感が残ることも多い。特に高齢者においては、上記症状とともにさらに重篤な症状として、激しい頭痛、方向感覚の欠如、麻痺、意識障害、痙攣等の症状が
出現し、脳炎、髄膜脳炎を発症することがある。特に米国では重篤な例で筋力低下が約半数に認められている。
A型肝炎:A型肝炎ウイルスによる急性ウイルス性肝炎である。我が国では衛生状態の向上と ともに患者数は減少したが、最近でも年間500 例近い報告があり、そのほとんどは国内感染例である。汚染された食品や水などを介して、通常経口感染により伝播する。しかし、一部には性感染症として伝播
する例もある。潜伏期間は平均4週間程度である。感染期間は、ウイルスが便に排泄される発病の3-4週間前から発症後数週間にわたることもあり、数ヶ月に
わたって便からウイルスが排出されるという報告もある。主な臨床症状は全身倦怠感、食思不振で、黄疸、肝腫大などの肝症状が認められる。一般に予後は良
く、慢性化することはないが、まれに劇症化することがある。小児では不顕性感染や軽症のことが多い。特異的な治療法はなく、対症療法が中心となる。
エキノコックス症:エキノコックス(Echinococcus) による感染症で、単包条虫(Echinococcus granulosus)と多包条虫(Echinococcus
multilocularis)の2種類がある。ヒトへの感染はキツネやイヌなどから排泄された虫卵に汚染された水、食べ物、埃などを経口的に摂取した時
に起こる。体内に発生した嚢胞は緩慢に増大し、周囲の臓器を圧迫する。多包虫病巣の拡大は極めてゆっくりで、肝臓の腫大、腹痛、黄疸、貧血、発熱や腹水貯
留などの初期症状が現れるまで、成人では通常10 年以上を要する。放置すると約半年で腹水がたまり、やがて死に至る。
黄熱:フラビウイルス科に属する黄熱ウイルスの感染によるウイルス性出血熱である。南米や アフリカの熱帯地域にみられる。潜伏期間は3-6日間で発症は突然である。悪寒または悪寒戦慄とともに高熱を出し、嘔吐、筋肉痛、出血(鼻出血、歯齦出
血、黒色嘔吐、下血、子宮出血)、蛋白尿、比較的除脈、黄疸等を来す。普通は7-8病日から治癒に向かうが、重症の場合には乏尿、心不全、肝性昏睡など
で、5-10 病日に約10%が死亡する。*オウム病:クラミジアChlamydia psittaci を病原体とし、オウムなどの愛玩用のトリからヒトに感染し、肺炎などの気道感染症を起こす疾患である。1-2週間の潜伏期の後に、突然の発熱で発病する。
軽い場合はかぜ程度の症状であるが、老人などでは重症になることが多い。初期症状として悪寒を伴う高熱、頭痛、全身倦怠感、食欲不振、筋肉痛、関節痛など
がみられる。呼吸器症状として咳、粘液性痰などがみられる。胸部レントゲンで広範な肺病変はあるが理学的所見は比較的軽度である。重症になると呼吸困難、
意識障害、DIC などがみられる。発症前にトリとの接触があったかどうかが報告のための参考になる。
回帰熱:シラミ或いはヒメダニ(Ornithodoros 属:ヒメダニ属) によって媒介されるスピロヘータ(回帰熱ボレリア)感染症である。コロモジラミ媒介性Borrelia
recurrentis やヒメダニ媒介性B.duttonii 等がヒトに対する病原体である。菌血症による発熱期、菌血症を起こしていない無熱期を3
ないし5 回程度繰り返す、いわゆる回帰熱を主訴とする。感染後5-10 日を経て菌血症による頭痛、筋肉痛、関節痛、羞明、咳などをともなう発熱、悪寒がみられる(発熱期)。またこのとき点状出血、紫斑、結膜炎、肝臓や脾臓の
腫大、黄疸もみられる。発熱期は3-7日続いた後、一旦解熱する(無熱期)。無熱期では血中から菌は検出されない。発汗、倦怠感、時に低血圧や斑状丘しん
をみることもある。この後5-7日後再び発熱期に入る。上記症状以外で肝炎、心筋炎、脳出血、脾破裂、大葉性肺炎などがみられる場合もある。
Q熱:リケッチアの一種であるCoxiella burnetii の感染によって起こる動物由来感染症である。急性感染ではインフルエンザ様で突然の高熱、頭痛、筋肉痛、全身倦怠感、眼球後部痛の症状で始まる。未治療の
場合、有熱期間は5-57 日とされるが、多くは14日以内に解熱する。肺炎や肝機能障害を起こすこともあるが、予後は一般に良い。慢性感染では心内膜炎を起こし死亡率が高くなる。
急性症例の20-40%に慢性疲労症候群に類似した症状がみられたという報告もある。
狂犬病:ラブドウイルス科に属す狂犬病ウイルスの感染による神経疾患である。狂犬病は狂犬 病ウイルスを保有するイヌ、ネコおよびコウモリ、キツネ、スカンク、コヨーテなどの野生動物に咬まれたり、引っ掻かれたりして感染し、発症する。潜伏期は
1-3カ月で、まれに1年以上に及ぶ。臨床的には咬傷周辺の知覚異常、疼痛、不安感、不穏、頭痛、発熱、恐水発作、麻痺と進む。発症すると致命的となる。
感染動物の唾液中にはウイルスが存在していることがある。米国ではアライグマやコウモリにおける狂犬病の増加が問題となっているが、狂犬病ウイルス感染動
物との接触が明らかでないヒトの感染事例が時々報告され、コウモリが原因と推測される場合がある。ワクチン接種により防御免疫を確立できる。狂犬病ウイル
ス暴露後であっても、ワクチン接種により発症予防が可能である。
高病原性鳥インフルエンザウイルス:高病原性鳥インフルエンザウイルスによるヒトの感染症 をいう。鳥インフルエンザウイルスのうち、特にH5及び(又は)H7亜型のヘマグルチニンを持つものはニワトリに対する病原性が強い。ヒトに対しても強い
病原性を獲得する可能性が高い。H5N1ウイルスの感染により、1997 年に香港で6名が死亡し、さらに2003 年に2名が死亡した。2003 年にオランダでニワトリにH7N7ウイルスの感染症が発生、流行した際に、獣医師が1名死亡した。現在のところ、我が国では家禽類からは、H5及びH7ウ
イルスは検出されていない。感染した家禽あるいは野生鳥などからヒトにH5またはH7ウイルスが感染することがごく稀にある。オランダでのA/H7N7に
よる事例では、ヒトからヒトへの感染も起こったと報告されている。潜伏期間は通常のインフルエンザと変わりなく、1-3日と考えられており、症状は突然の
高熱、咳などの呼吸器症状の他、重篤な肺炎、全身症状を引き起こす。A/H7N7ウイルスの感染では結膜炎を起こした。過去の香港でのA/H5N1ウイル
スによる事例では、感染拡大防止のために大規模な家禽の屠殺処分が行われた。上述の症状のごとくインフルエンザを疑わせる症状があり、A型インフルエンザ
ウイルスが分離同定されるものの、A/H1N1あるいはA/H3N2に対する抗血清と反応せず、亜型判別不能の場合には本疾患を疑う。

コクシジオイデス症:カリフォルニア州、アリゾナ州、ニューメキシコ州をはじめとする米国 西南部各州、メキシコの太平洋側の半乾燥地帯、ベネズエラのコロ地方、アルゼンチンのパンパ地域に発生する風土病で、原因菌は真菌で
Coccidioides immitis である。北アメリカ、特にカリフォルニア州のサンホアキン渓谷で患者が多発している。強風や土木工事などにより土壌中のC.
immitis の分節型分生子が土埃と共に空中に舞い上がり、これを吸入することにより肺感染が起こり、そのうち約0.5%の患者が全身感染へと進み、約半数が死亡する
最も危険な真菌症である。特に皮膚病巣は特徴があり、結節、潰瘍を繰り返し、花キャベツ状の腫瘤を形成する。
サル痘:サル痘ウイルス(Monkeypox virus)による急性発しん性疾患である。野生動物との接触が多い、西アフリカ、中央アフリカの熱帯雨林で多く見られる。げっ歯類やサルなどの野生動
物、あるいはそれらから感染したペットに咬まれる、あるいは血液、体液、発しんなどに触れることで感染する。ヒトからヒトへの感染は稀ではあるが、飛沫に
よる感染、あるいは体液、衣類・寝具などとの接触による感染がありうる。潜伏期間は7-21 日(大部分は10-14 日)である。発熱、不快感、頭痛、背部痛、発しんなど、痘そうとよく似た症状がみられるが、傷などから入るので、局所リンパ節の腫脹がある。致死率は低
い。
腎症候性出血熱(HFRS):ハンタウイルス(ブニヤウイルス科ハンタウイルス属)による 熱性・腎性疾患で、極東アジアから東欧、北欧にかけて広く分布する。HFRS ウイルスとも称する。ネズミに咬まれたり、排泄物(エアロゾルの吸入を含む)に接触することによりヒトにウイルスが伝播する。このウイルスはヒトに感染す
ると状況により重篤な全身感染、あるいは腎疾患を生じ、以下の型が知られている。
1) 重症アジア型:ドブネズミ、高麗セスジネズミが媒介する。潜伏期間は10-30日で、発熱で始まる有熱期、低血圧期(ショック)(4-10 日)、乏尿期(8-13
日)、利尿期(10-28日)、回復期に分けられる。全身皮膚に点状出血斑が出ることがある。発症から死亡までの時間は4-28日で尿素窒素は50-
300mgに達する。常時高度の蛋白尿、血尿を伴う。
2) 軽症スカンジナビア型:ヤチネズミによる。ごく軽度の発熱、蛋白尿、血尿がみられるのみで、極めてまれに重症化する。
炭疽:本症は炭疽菌(Bacillus anthracis)によるヒトと動物の感染症で、温血動物、主にウシなどの草食獣に急性敗血症死を起こす。ヒト炭疽には4つの主要な病型がある。国内の
動物の発生はほとんどがウシで、感染の機会は農業従事者、獣医師、動物産品処理従事者などに多い。

1)皮膚炭疽:全体の95-98%を占める。潜伏期は1-7日である。初期病変はニキビや虫さされ様で、かゆみを伴うことがある。初期病変周囲には水疱が
形成され、次第に典型的な黒色の痂皮となる。およそ80%の患者では痂皮の形成後7-10 日で治癒するが、20%では感染はリンパ節および血液へと進展し、敗血症へと進展し致死的である。2)肺炭疽:上部気道の感染で始まる初期段階はインフル
エンザ等のウイルス性呼吸器感染や軽度の気管支肺炎に酷似しており、軽度の発熱、倦怠感、筋肉痛等を訴える。数日して第2の段階へ移行すると突然呼吸困
難、発汗およびチアノーゼを呈する。この段階に達すると通常、24 時間以内に死亡する。3)腸炭疽:本症で死亡した動物の肉を摂食した後2-5日で発症する。腸病変部は回腸下部および盲腸に多い。初期症状として悪心、嘔
吐、食欲不振、発熱があり、次いで腹痛、吐血をあらわし、血液性の下痢を呈する場合もある。毒血症へと移行すると、ショック、チアノーゼを呈し死亡する。
腸炭疽の死亡率は25-50%とされる。4)髄膜炭疽:皮膚炭疽の約5%、肺炭疽の2/3 に引き続いて起こるが、稀に初感染の髄膜炭疽もある。髄膜炭疽は治療を行っても、発症後2-4日で100%が死亡する。
つつが虫病:ツツガムシ病リケッチア(Orientia tsutsugamusi)に感染した「つつが虫(恙虫)」の幼虫がヒトを刺すことによって経皮感染する急性感染症である。5-14
日の潜伏期の後に、全身倦怠感、食欲不振とともに頭痛、悪寒、発熱などを伴って発症する。体温は段階的に上昇し数日で40 度にも達する。刺し口の所属リンパ節は発熱する前頃から次第に腫脹する。第3-4病日より不定型の発しんが出現するが、発しんは顔面、体幹に多く四肢には
少ない。治療が適切に行われると早期に消退する。重症になると肺炎や脳炎症状を来す。刺し口は皮膚の柔らかい隠れた部分に多い。発生は初夏および晩秋から
冬で、初夏の発生は主として東北・北陸である。
デング熱:フラビウイルス科に属するデングウイルス感染症で、蚊によって媒介される。2- 15 日(多くは3-7日)の潜伏期の後に突然の高熱で発症。頭痛、眼窩痛、顔面紅潮、結膜充血を伴う。発熱は2-7日間持続(二峰性であることが多い)。初期
症状に続いて全身の筋痛、骨関節痛、全身倦怠感を呈する。発症後3-4日後胸部、体幹からはじまる発しんが出現し、四肢、顔面へ広がる。症状は1週間程度
で回復する。血液所見では軽度の白血球減少、血小板減少がみられる。出血やショック症状を伴う重症型としてデング出血熱*があり、全身管理が必要となるこ
ともある。ヒトからヒトへの直接感染はないが、熱帯・亜熱帯(特にアジア、オセアニア、中南米)に広く分布する。日本国内での感染はないが、海外で感染し
た人が国内で発症することがある。*デング出血熱:デング熱とほぼ同様に発症経過するが、解熱の時期に血液漏出や血小板減少による出血傾向に基づく症状が
出現し、死に至ることもある。
ニパウイルス感染症:ニパウイルスによる感染症であり、発熱、倦怠感など、インフルエンザ 様症状を呈し、一部は重症の脳炎を発症する。1999 年にマレーシアで大きなアウトブレイクを起こし、死者105
人を数えた他、直接の感染源と考えられるブタ100 万頭規模の殺処分を招いたことにより、同国の養豚業に壊滅的な打撃を与えた。感染経路は感染動物の体液や組織との接触によると考えられている。ヒトからヒ
トへの感染例は報告されていない。通常、発熱と筋肉痛などのインフルエンザ様症状を呈し、その一部が意識障害、痙攣などを伴い、脳炎を発症する。
日本紅斑熱:新型の紅斑熱リッケチア(Rickettsia japonica)による感染症である。マダニに刺されることで感染すると考えられている。刺されてから2-8日頃から頭痛、全身倦怠感、関節痛、発熱な
どを伴って発病する。発熱とほぼ同時に紅色の斑丘しんが四肢末端から求心性に多発する。リンパ節腫脹はあまりみられない。CRP 陽性、白血球減少、肝機能異常などはツツガムシ病と同様である。発生は主として夏である。

日本脳炎:フラビウイルス科に属す日本脳炎ウイルスの感染による急性脳炎である。ブタが増 幅動物となり、蚊が媒介する。感染後1-2週間の潜伏期を経て、急激な発熱と頭痛を主訴として発症する。その他、初発症状として全身倦怠感、食欲不振、嘔
気、嘔吐、腹痛も存在する。その後、症状は悪化し、項部硬直、羞明、意識障害、興奮性の上昇、仮面様顔貌、筋硬直、頭部神経麻痺、眼振、四肢振戦、不随意
運動、運動失調、病的反射が出現する。知覚障害はまれである。発熱は発症4-5日に最も高くなり、発症後1週間程度で死亡する例が多い。熱はその後次第に
低下する。致命率は約25%、患者の50%は後遺症を残して回復、25%はほぼ完全に回復する。
ハンタウイルス肺症候群:ブニヤウイルス科、ハンタウイルス属のウイルス(Sin Nombre virus)による急性呼吸器感染症で、現在米国あるいは一部南米の国で発生がある。前駆症状として発熱と筋肉痛が100%にみられる。次いで咳、急性に
進行する呼吸困難が特徴的で、消化器症状及び頭痛が70%以上に伴う。最もありふれた症状は頻呼吸(100%)、頻拍である。半数に低血圧等を伴う。発
熱・悪寒は1-4日続き、次いで進行性呼吸困難、酸素不飽和状態に陥る(肺水腫、肺浮腫による)。早い場合は発熱等発症後24 時間以内の死亡も頻繁にみられる。肺水腫等の機序は心性ではない。X線で肺水の貯留した特徴像が出る。死亡率は約60%という報告もある。感染経路として
は、手足の傷口からウイルスに汚染されたネズミの尿、唾液が接触して入る、ネズミに咬まれる、ウイルスを含む尿、唾液により汚染されたほこりを吸い込む
(これが最も多い)等による。媒介動物は、米国ではシカシロアシネズミ(Permyscus maniculatus)がウイルス保有動物として最も一般的である。ウイルスを媒介するこの群のネズミは米国、カナダ、南米(チリ、アルゼンチン等)に
も存在する。このネズミとウイルスは日本では見つかっていない。
Bウイルス病:マカク属のサルに常在するBウイルス(ヘルペス群ウイルス)による熱性・神 経性疾患である。サルによる咬傷後、症状発現までの潜伏期間は早い場合2日、通常2-5週間である。早期症状としてはサルとの接触部位(外傷部)周囲の水
疱性あるいは潰瘍性皮膚粘膜病変、接触部位の疼痛、掻痒感、所属リンパ節腫大を来し、中期症状としては発熱、接触部位の感覚異常、接触部位側の筋力低下あ
るいは麻痺、眼にサルの分泌物等のはねがとんだ際に結膜炎を来す。晩期には副鼻腔炎、項部強直、持続する頭痛、悪心・嘔吐、脳幹部症状として複視、構語障
害、目まい、失語症、交差性麻痺及び知覚障害、意識障害、脳炎症状を来し、無治療での死亡率は70-80%で、生存例でも重篤な神経障害が後遺症としてみ
られる。感染経路は実験室、動物園あるいはペットのマカク属サルとの接触(咬傷、擦過傷)及びそれらのサルの唾液、粘液とヒト粘膜との接触(とびはね)の
経過があることが重要な点である。また実験室ではサルに使用した注射針の針刺し、培養ガラス器具による外傷によっても感染する。
ブルセラ症:本症はウシ、ブタ、ヤギ、イヌおよびヒツジの感染症であるが、原因菌 (Brucella abortus、B. suis、B. melitensis、B.
rangiferi、およびB. canis)がヒトに感染して発症する。波状熱、マルタ熱、地中海熱などの名前でも呼ばれる。感染源は感染動物の組織、乳汁、血液、尿、胎盤、膣排泄物、
流産胎児などである。B. canisに感染したイヌの尿も感染源になるとされる。潜伏期間は1-18 週、通常2-8週との報告がある。感染によって誘導される所見として比較的共通のものは脾腫、リンパ節特に頚部および鼠径部リンパ節の腫脹、および関節の
腫脹と痛みがあり、その他に20-50%の患者に、進行の時期によって泌尿器生殖器症状があらわれる。B. melitensis の感染では約70%の患者に肝腫大が認められる。本感染による死亡率は一般的には低率であるが、心内膜炎を併発している場合には致死率は上昇し、ヒトのブ
ルセラ症による死亡の多くはこれが原因である。ヒトブルセラ症の3-5%に神経症状や精神神経的な症状との関連性があるとされる。
発しんチフス:Rickettsia prowazekii による急性感染症で、シラミによって媒介される。発熱、頭痛、悪寒、脱力感、手足の疼痛を伴って突然発症する。熱は39-40
度に急上昇する。発しんは発熱第5-6病日体幹から全身に拡がるが、顔面、手掌、足底に出現することは少ない。発しんは急速に暗紫色の点状出血斑となる。
患者は明らかな急性症状を呈するが、発熱からおよそ2週間後に急速に解熱する。重症例の半数に精神神経症状が出現する。初感染後潜伏感染し数年後に再発す
ることがある( BrillZinsser病)。症状は軽度である。

ボツリヌス症:ボツリヌス菌(Clostridium botulinum)が産生するボツリヌス毒素、またはC. butyricum、C. baratii などが産生するボツリヌス毒素により発症する神経、筋の麻痺性疾患である。ボツリヌス毒素またはそれらの毒素を産生する菌の芽胞が混入した食品の摂取など
によって発症する。潜伏期は、毒素を摂取した場合(食餌性ボツリヌス症)には、5時間-3日間(通常12-24 時間)とされる。神経・筋接合部、自律神経節、神経節後の副交感神経末端からのアセチルコリン放出の阻害により、弛緩性麻痺を生じ、種々の症状(全身の違
和感、複視、眼瞼下垂、嚥下困難、口渇、便秘、脱力感、筋力低下、呼吸困難など)が出現し、適切な治療を施さない重症患者では死亡する場合がある。発症機
序の違いにより、1) 食餌性ボツリヌス症(ボツリヌス中毒)(食品中でボツリヌス菌が増殖して産生された毒素を経口的に摂取することによって発症)、2)
乳児ボツリヌス症(1歳以下の乳児が菌の芽胞を摂取することにより、腸管内で芽胞が発芽し、産生された毒素の作用によって発症)、3) 創傷ボツリヌス症(創傷部位で菌の芽胞が発芽し、産生された毒素により発症)、4)
成人腸管定着ボツリヌス症(ボツリヌス菌に汚染された食品を摂取した1歳以上のヒトの腸管に数ヶ月間菌が定着し毒素を産生し、乳児ボツリヌス症と類似の症
状が長期にわたって持続する)の4つの病型に分類される。
マラリア:マラリアはPlasmodium 属原虫のPlasmodium vivax(三日熱マラリア原虫)、Plasmodiumfalciparum(熱帯熱マラリア原虫)、Plasmodium
malariae (四日熱マラリア原虫)、Plasmodiumovale(卵形マラリア原虫)などの単独または混合感染に起因する疾患であり、特有の熱発作、貧血および
脾腫を主徴とする。最も多い症状は発熱と悪寒で、発熱の数日前から全身倦怠や背痛、食欲不振など不定の前駆症状を認めることがある。熱発は間隔をあけて発
熱期と無熱期を繰り返す。発熱期は悪寒を伴って体温が上昇する悪寒期(1-2時間)と、悪寒がとれて熱感を覚える灼熱期(4-5時間)に分かれる。典型的
には三日熱及び四日熱マラリアでは悪寒期に戦慄を伴うことが多い。発熱期には頭痛、顔面紅潮や嘔気、関節痛などを伴う。その後に発汗・解熱し、無熱期へ移
行する。発熱発作の間隔は虫種により異なり、三日熱と卵形マラリアで48 時間、四日熱マラリアで72 時間である。熱帯熱マラリアでは36?48 時間、あるいは不規則となる。他の症状としては脾腫、貧血、血小板減少、低血糖、腎肺機能不全、錯乱などがあげられるが、原虫種、血中原虫数及び患者の免
疫状態によって異なる。未治療の熱帯熱マラリアは急性の経過を示し、中枢神経(マラリア脳症)、急性腎不全、重度の貧血、DIC や肺水腫を併発して発病数日以内に重症化し、致死的となる。
野兎病:野兎病菌(Francisella tularensis )による発熱性疾患である。哺乳類の100種以上、鳥類30種以上、両生類、魚類、更に約100種類の節足動物から菌検出例が報告されている。野生鳥獣類
の間で、吸血性節足動物(ダニ類や昆虫類)をベクターとして維持されている。保菌動物の解体や調理の時の組織あるいは血液との接触、あるいはマダニ、アブ
など節足動物の刺咬により感染する。また、汚染した生水からも感染する。ヒトは感受性が高く、健康な皮膚からも感染する。ヒトからヒトへの感染の報告はな
い。潜伏期間は3日をピークとする1-7日である。初期症状は菌の侵入部位によって異なり、潰瘍リンパ節型、リンパ節型、眼リンパ節型、肺炎型などがあ
る。一般的には悪寒、波状熱、頭痛、筋肉痛、所属リンパ節の腫脹と疼痛などの症状がみられる。
ライム病:マダニ(Ixodes 属)刺咬により媒介されるスピロヘータ(ライム病ボレリア;Borreliaburgdorferi sensulato)感染症である。北米、欧州、ロシア、本邦を含む極東地域で広くみられ、患者は皮膚症状、神経症状、心筋炎など多様な症状を示す。本邦
では国内例、輸入例ともに見られる。感染初期(stage I)には、マダニ刺咬部を中心として限局性に特徴的な遊走性紅斑を呈することが多い。随伴症状として、筋肉痛、関節痛、頭痛、発熱、悪寒、倦怠感などのイ
ンフルエンザ様症状を伴うこともある。紅斑の出現期間は数日から数週間といわれ、形状は環状紅斑または均一性紅斑がほとんどである。播種期(stage
II)には、体内循環を介して病原体が全身性に拡散する。これに伴い、皮膚症状、神経症状、心疾患、眼症状、関節炎、筋肉炎など多彩な症状が見られる。感
染から数カ月ないし数年を経て、慢性期(stage III)に移行する。患者は播種期の症状に加えて、重度の皮膚症状、関節炎などを示すといわれる。本邦では、慢性期に移行したとみられる症例は現在のとこ
ろ報告されていない。症状としては、慢性萎縮性肢端皮膚炎、慢性関節炎、慢性脳脊髄炎などがあげられる。
リッサウイルス感染症:狂犬病ウイルスを除くリッサウイルス属のウイルスによる感染症であ る。主にヨーロッパ、オーストラリア、アフリカに分布している。本ウイルスを保有する野生のコウモリとの接触により感染すると考えられている。リッサウイ
ルス感染症の中で最も患者発生数が多いのは狂犬病(狂犬病の項を参照)で、それ以外のリッサウイルス感染症の情報は非常に少ない。潜伏期間は狂犬病ウイル
スに準じた期間と考えられる(20-90日が基本的な潜伏期間。咬傷部位や数によって潜伏期間も異なってくると思われる)。臨床症状としては、頭痛、発
熱、倦怠感、創傷部位の知覚過敏や疼痛を伴う場合があり、興奮、恐水症状、精神錯乱などの中枢神経症状を伴う場合もある。一般的に、発症後2週間以内に死
亡する。

レジオネラ症:Legionella 属菌(Legionella pneumophila)が原因で起こる感染症の総称である。在郷軍人病(レジオネラ肺炎)とポンティアック熱が主要な病型である。免疫不全者に感染する
と、時に心内膜炎や腹膜炎など全身の化膿性病変を起こす。臨床症状で他の細菌性肺炎と区別することは困難である。
レプトスピラ症:病原性レプトスピラ(Leptospira interrogans など)により生じ、黄疸・出血・腎障害などを主徴とする重症型のものから、軽症のものまで、多様な症状を示す急性の熱性疾患である。病原性レプトスピラに
は230 種以上の血清型が存在する。病原性レプトスピラを保有しているネズミ・イヌ・ウシ・ウマ・ブタなどの尿で汚染された下水や河川、泥などにより経皮的に、時
には汚染された飲食物の摂取により経口的にヒトに感染する。重症型の黄疸出血性レプトスピラ病(ワイル病)と、軽症型の秋季レプトスピラ病やイヌ型レプト
スピラ病などがある。ワイル病は黄疸・出血・蛋白尿を主徴とし、最も重篤である。潜伏期間は3-14 日で、突然の悪寒・戦慄・高熱、筋肉痛、眼球結膜の充血が生じ、4-5病日後、黄疸や出血傾向が増強する場合もある。

*動物、飲食物等の物件を介 して感染し、国民の健康に影響を与えるおそれがある感染症(人から人への伝染はない)。
*媒介動物の輸入規制、消毒、物件の排気筒の物的措置が必要。[主な対応・措置]

*感染症発生状況の収集、分析とその結果の公開、提供。

医師の届出:直ちに
(政令)

五類感染症 アメーバ赤痢:赤痢アメーバ(Entamoeba histolytica)の感染に起因する疾患で、消化器症状を主症状とするが、それ以外の臓器にも病変を形成する。病型は腸管アメーバ症と腸管外アメー
バ症に大別される。腸管アメーバ症は下痢、粘血便、しぶり腹、鼓腸、排便時の下腹部痛あるいは不快感などの症状を伴う慢性腸管感染症であり、典型的にはイ
チゴゼリー状の粘血便を排泄するが、数日から数週間の間隔で憎悪と寛解をくり返すことが多い。潰瘍の好発部位は盲腸から上行結腸にかけてとS字結腸から直
腸にかけての大腸である。まれに肉芽腫性病変が形成されたり潰瘍部が壊死性に穿孔することもある。腸管外アメーバ症は多くは腸管部よりアメーバが血行性に
転移することによるが、肝膿瘍が最も高頻度にみられる。成人男性に多い。発熱(38-40℃)、季肋部痛、嘔気、嘔吐、体重減少、寝汗、全身倦怠などを伴
う。膿瘍が破裂すると腹膜、胸膜や心外膜にも病変が形成される。その他、皮膚、脳や肺に膿瘍が形成されることがある。*ウイルス性肝炎(E型肝炎及びA型肝炎を除く):ウイルス感染が原因と考えられる急性肝炎 (B 型肝炎、C 型肝炎、その他のウイルス性肝炎)である。慢性肝疾患、無症候性キャリア及びこれらの急性増悪例は含まない。一般に全身倦怠感、感冒様症状、食思不振、悪
感、嘔吐などの症状で急性に発症して、数日後に褐色尿や黄疸をともなうことが多い。発熱、その他の全身症状を呈する発病まもない時期には、感冒あるいは急
性胃腸炎などと類似した症状を示す。臨床病型は、黄疸をともなう定型的急性肝炎のほかに、顕性黄疸を示さない急性無黄疸性肝炎、高度の黄疸を呈する胆汁
うっ滞性肝炎、急性肝不全症状を呈する劇症肝炎などに分類される。
急性脳炎(ウエストナイル脳炎及び日本脳炎を除く):ウイルスなど種々の病原体の感染によ る脳実質の感染症である。ただし、病原体が特定され、他の届出基準に含まれるものを除く。炎症所見が明らかではないが同様の症状を呈する脳症もここには含
まれる。多くは何らかの先行感染を伴い、高熱に続き意識障害やけいれんが突然出現し、持続する。髄液細胞数が増加しているものを急性脳炎、正常であるもの
を急性脳症と診断することが多いが、その臨床症状に差はない。
クリプトスポリジウム症:クリプトスポリジウム属原虫(Cryptosporidium spp.)のオーシストを経口接種することによる感染症である。潜伏期は4-5日ないし10
日程度と考えられ、無症状のものから、食思不振、嘔吐、腹痛、下痢(水様性下痢や粘血便)などを呈するものまで様々である。患者の免疫力が正常であれば通
常は数日間で自然治癒するが、エイズなどの各種の免疫不全者には重篤な感染を起こすことがあり、1日に3-5リットル、時に10 リットルをこえる下痢によって脱水死することもある。
クロウイツフェルト・ヤコブ病:クロイツフェルト・ヤコブ病(以下、「CJD」という。) は、脳内に異常なプリオン蛋白(蛋白性感染粒子、プリオン、proteinaceous
infectious particle、prion)が蓄積し、脳が海綿状となる「伝達性海綿状脳症(transmissible spongiform
encephalopathy、TSE)」又は「プリオン病」と呼ばれる疾患の代表的な疾患。本疾患の有病率は100 万人に1人前後、その8割は孤発性CJD
で、地域差、男女差はない。発病は50-70 歳代が多い。約2割に遺伝性CJD があり、発病が早い(40 歳代)ものもある。また、医原性感染が疑われるものに、ヒト由来脳下垂体製剤(成長ホルモン等)、ヒト乾燥硬膜移植等がある。孤発性CJD
では、初老期以降に不定の精神・神経症状が生じ、急速に憎悪し、数ヶ月で無動性無言状態となり、全経過は1-2年といわれている。家族性CJD では、プリオン蛋白遺伝子の変異に応じて臨床症状、経過が異なる。この場合は、静脈血から遺伝子診断が可能である。新変異型CJDは、近年、英国で報告さ
れ、20 歳代の若年に発症し、不安、感覚障害等で初発し、経過が従来のCJD よりやや長い。この新変異型CJD は、異常なプリオン蛋白の泳動パターンが牛海綿状脳症(狂牛病)のものと類似していることが指摘されている。この他、亜型として、GSS(ゲルストマン・
ストロイスラー・シャインカー症候群、GerstmannStrausslerScheinkersyndrome)、FFI(致死性家族性不眠症、
Fatal Familial Insomnia)がある。
劇症型溶血性レンサ球菌感染症:突発的に発症し、急激に進行するA群レンサ球菌による敗血 症性ショック病態である。初発症状は咽頭痛、発熱、消化管症状(食欲不振、嘔気、嘔吐、下痢)、全身倦怠感、低血圧などの敗血症症状、筋痛などであるが、
明らかな前駆症状がない場合もある。後発症状としては軟部組織病変、循環不全、呼吸不全、血液凝固症状、腎肝症状など多臓器不全を来し、日常生活を営む状
態から24 時間以内に多臓器不全が完結する程度の進行を示す。A群レンサ球菌による軟部組織炎、壊死性筋膜炎、上気道炎・肺炎、産褥熱は現在でも致命的となりうる疾
患である。

後天性免疫不全症候群:レトロウイルスの一種であるヒト免疫不全ウイルス(human immunodeficiency virus; HIV)の感染によって免疫不全が生じ、日和見感染症や悪性腫瘍が合併した状態。感染からエイズ発症まで通常約10
年の無症候期がある。感染症新法における発生動向調査においては、HIV 感染症を診断した時点から報告することが求められている。HIV に感染した後、CD4
陽性リンパ球数が減少し、無症候性の時期(無治療で約10 年)を経て、生体が高度の免疫不全症に陥り、日和見感染症や悪性腫瘍が生じてくる[サーベイランスのためのHIV
感染症/AIDS 診断基準(厚生省エイズ動向委員会、1999)抜粋]。
ジアルジア症:ジアルジア(消化管寄生虫鞭毛虫の一種)による原虫感染症である。糞便中に 排出された原虫により食物や水が汚染されることによって経口感染を起こす。糞便中に排出された原虫により食物や水が汚染されることによって経口感染を起こ
す。健康な者の場合には無症状のことも多いが、食欲不振、腹部不快感、下痢等の症状を示すこともあり、免疫不全者では重篤となることもある。
髄膜炎菌性髄膜炎:Neisseria meningitidis による急性化膿性髄膜炎で、ヒトからヒトへ飛沫感染し、ときに流行性発症があるので流行性髄膜炎ともいわれる。突然の発症がみられ(潜伏期は2-4日)、
髄膜炎症状(頭痛、発熱、痙攣、意識障害、髄膜刺激症状、乳児では大泉門膨隆)を示す。点状出血斑がみられることもある。敗血症例ではショックならびに
DIC を来し(WaterhouseFriderichsen症候群)、細菌性の関節炎を伴うこともある。世界各地に散発性または流行性に発生し、温帯では寒い
季節に、熱帯では乾季に多発する。本邦では稀である。
先天性風しん症候群:風しんウイルスの経胎盤感染によって起こる先天異常である。先天異常 の発生は妊娠週齢と明らかに相関し、妊娠12 週までの妊娠初期の初感染に最も多くみられ、20
週を過ぎるとほとんどなくなる。三徴は、難聴、白内障、動脈管開存症であるが、その他知能障害、小頭症、緑内障、角膜混濁、脈絡網膜炎、小眼球、斜視、心
室中隔欠損症などを来しうる。
梅毒:スピロヘータの一種である梅毒トレポネーマ(Treponema pallidum )の感染によって生じる性感染症である。I期梅毒として感染後3-6週間の潜伏期の後に、感染局所に初期硬結や硬性下疳、無痛性のそけい部リンパ節腫脹が
みられる。II期梅毒では、感染後3カ月を経過すると皮膚や粘膜に梅毒性バラしんや丘しん性梅毒しんなどの特有な発しんが見られる。感染後3年以上を経過
すると晩期顕症梅毒としてゴム腫、梅毒によると考えられる心血管症状、神経症状、眼症状などが認められることがある。なお、感染していても臨床症状が認め
られない無症候梅毒もある。先天梅毒は、梅毒に罹患している母体から出生した児で、胎内感染を示す検査所見のある症例、II期梅毒しん、骨軟骨炎など早期
先天梅毒の症状を呈する症例、乳幼児期は症状を示さずに経過し学童期以後にHutchinson3徴候(実質性角膜炎、内耳性難聴、Hutchinton
歯)などの晩期先天梅毒の症状を呈する症例がある。

破傷風:破傷風毒素を産生する破傷風菌(Clostridium tetani)が、外傷部位などから組織内に侵入し、嫌気的な環境下で増殖した結果産生される破傷風毒素による神経刺激伝達障害を起こす。外傷部位などで
増殖した破傷風菌が産生する毒素により、運動神経終板、脊髄前角細胞、脳幹の抑制性の神経回路が遮断され、感染巣近傍の筋肉のこわばり、顎から頚部のこわ
ばり、開口障害、四肢の強直性痙攣、呼吸困難(痙攣性)、刺激に対する興奮性の亢進、反弓緊張(opisthotonus)などの症状が出現する。
バンコマイシン耐性黄色ブドウ球菌感染症:獲得型バンコマイシン耐性遺伝子を保有し、バン コマイシン耐性を示す黄色ブドウ球菌による感染症である。バンコマイシンの長期間投与を受けた患者の検体などから検出される可能性がある。
バンコマイシン耐性腸球菌感染症: バンコマイシン耐性遺伝子(vanA, vanB など)を保有する腸球菌(VRE)による感染症である。主に悪性疾患などの基礎疾患を有する易感染状態の患者において、日和見感染症や術後感染症、カテー
テル性敗血症(line sepsis)などを引き起こす。発熱やショックなどの症状を呈し、死亡することもある。

* 国が感染症の発生動向調査を行い、その結果等に基づいて必要な情報を国民一般や医療関係者に情報提供・公開していくことによって、発生・まん延を防止すべ
き感染症。
[主な対応・措置]
後天性免疫不全症候群、梅毒、マラリアその他厚生労働省令で定めるものの患者。但し、後天性免 疫不全症候群、梅毒その他厚生労働省令で定める感染症については、無症状病原体保有者を含む。
医師の届出:7日以 内
(省令)
□ペニシリン耐性肺炎球菌感染症、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌感染症又は薬剤耐性緑膿菌感染 症に係るものにあっては、診断した日の属する月の翌月の初日に最寄りの保健所に届出。
五類感染症
・定点把握対象
RSウイルス感染症:RSウイルス(respiratory syncytial virus)による急性呼吸器感染症である。乳児期の発症が多く、特徴的な病像は細気管支炎、肺炎である。2日-1週間(通常4-5日)の潜伏期間の後
に、初感染の乳幼児では上気道症状(鼻汁、咳など)から始まり、その後下気道症状が出現する。38-39 度の発熱が出現することがある。25-40%の乳幼児に気管支炎や肺炎の兆候がみられる。1歳未満、特に6ヵ月未満の乳児、心肺に基礎疾患を有する小児、
早産児が感染すると、呼吸困難などの重篤な呼吸器疾患をひき起こし、入院、呼吸管理が必要となることがある。乳児では、細気管支炎による喘鳴(呼気性喘
鳴)が特徴的である。その後、多呼吸、陥没呼吸などの症状あるいは肺炎を認める。新生児期あるいは生後2-3か月未満の乳児では、無呼吸発作の症状を呈す
ることがある。再感染の幼児の場合には、細気管支炎や肺炎などは減り、上気道炎が増える。中耳炎を合併することもある。
咽頭結膜熱:発熱・咽頭炎および結膜炎を主症状とする急性のアデノウイルス感染症である。 潜伏期は5-7日、症状は発熱、咽頭炎(咽頭発赤、咽頭痛)、結膜炎が3主症状である。アデノウイルス3型が主であるが、他に7、11、4型なども本症を
起こす。発生は年間を通じてみられるが、さまざまの規模の流行的発生をみる。とくに夏季、プールを介して流行的発生をみるので、プール熱の病名がある。
A群溶血性レンサ球菌咽頭炎:レンサ球菌のうち、Lancefield の血清型分類のA群に分類されるものによる上気道感染症である。乳幼児では咽頭炎、年長児や成人では扁桃炎が現れ、発赤毒素に免疫のない人は猩紅熱といわ
れる全身症状を呈する。気管支炎を起こすことも多い。リウマチ熱や急性糸球体腎炎などの二次疾患を起こすこともある。
感染性胃腸炎:細菌あるいはウイルスなどの感染性病原体による嘔吐、下痢を主症状とし、そ の結果種々の程度の脱水、電解質喪失症状、全身症状が加わるものである。1才以下の乳児は症状の進行が早い。乳幼児に好発し、主症状は嘔吐と下痢である
が、嘔吐または下痢のみの場合、嘔吐の後下痢がみられる場合とさまざまで、症状の程度にも個人差がある。37-38℃の発熱がみられることもある。年長児
では嘔気や腹痛がしばしばみられる。嘔吐や下痢、発熱で脱水症状を来すことがあるので注意が必要である。原因はウイルス感染(ロタウイルス、小型球形ウイ
ルス(SRSV)など)が多く、毎年秋から冬にかけて流行する。また、エンテロウイルス、アデノウイルスによるものや細菌性のものもみられる。*水痘:水痘・帯状疱しんウイルスの初感染による感染症である。冬から春の感染症であるが、 年間を通じて患者の発生をみる。飛沫あるいは接触感染で感染し、潜伏期は2-3週間である。乳幼児や学童いずれの年齢でも罹患する。母子免疫は麻しんほど
強力ではなく、新生児も罹患することがある。症状は発熱と発しんである。それぞれの発しんは紅斑、紅丘しん、水疱形成、痂皮化を順次約3日で経過するが、
次々の発しんが出現するので新旧種々の段階の発しんが同時に混在する。発しんは体幹に多発し、四肢に少ない。発しんは頭皮及び粘膜にも出現する。健康児の
罹患は軽症で予後は良好であるが、免疫不全状態の小児の罹患は重症で、致死的経過をとることもある。
手足口病:主として乳幼児にみられる手、足、下肢、口腔内、口唇に小水疱が生ずる伝染性の ウイルス性感染症である。コクサッキーA16 型、エンテロウイルス71
型のほか、コクサッキーA10 型その他によっても起こることが知られている。典型的なものでは、軽い発熱、食欲不振、のどの痛み等で始まり、発熱から2日ぐらい過ぎた頃から、手掌、足
底にやや紅暈を伴う小水疱が多発し、舌や口腔粘膜に浅いびらんアフタを生じる。この水疱はやや楕円形を呈し、殿部、膝部などに紅色の小丘しんが散在するこ
ともある。皮しんは1週間から10 日で自然消退するが、ごくまれに髄膜炎や脳炎などが生じることがあるので、発熱や嘔吐、頭痛などがある場合は注意を要する。
伝染性紅斑:ヒトパルボウイルスB19 型の感染による紅斑を主症状とする発しん性疾患である。幼少児(2-12 歳)に多いが、乳児、成人が罹患することもある。潜伏期は4-15
日。顔面、とくに頬部に境界明瞭な紅斑が突然出現し、鼻背で融合して蝶型の紅斑になる。つづいて四肢に対側性に小紅斑が出現し、環状又は融合して地図状に
なる。消退後さらに日光照射、外傷などによって再度出現することがある。発しんの他に発熱、関節痛、咽頭痛、鼻症状、胃腸症状、粘膜しん、リンパ節腫脹、
関節炎を合併することがある。予後は通常、良好である。
突発性発しん:乳幼児がヒトヘルペスウイルス6、7型の感染による突然の高熱と解熱前後の 発しんを来す疾患である。乳児期とくに6-18 カ月の間に罹患することが多い。突然、高熱で発症、不機嫌で大泉門の膨隆をみることがある。咽頭部の発赤、とくに口蓋垂の両側に強い斑状発赤を認めること
がある。軟便もしくは下痢を伴うものが多く、発熱は3-4日持続した後に解熱する。解熱に前後して紅色の丘しんが出現し、散在性、時に斑状融合性に分布す
る。発しんは体幹から始まり上肢、頚部の順に広がるが、顔面、下肢には少ない。発しんは1-2日で消失する。
百日咳:Bordetella pertussis によって起こる急性の気道感染症である。かぜ様症状で始まるが、次第に咳が著しくなり百日咳特有の咳が出始める。この咳込みは、顔を真っ赤にしてコンコン
と激しく咳込み、最後にヒューッと音を立てて大きく息を吸う発作でレプリーゼと呼ばれる。嘔吐も伴い、眼瞼の浮腫や顔面の点状出血がみられることがある。
乳児では重症になり、特に新生児がかかると無呼吸となり、致死的となることがある。

風しん:風しんウイルスによる急性発しん性疾患である。潜伏期は2-3週間で、 経気道飛沫感染により、冬から春に流行する。症状は、斑状の紅丘しん、リンパ節腫脹(全身とくに頚部、後頭部、耳介後部)、発熱を三主徴とする。リンパ節
腫脹は発しん出現数日前に出現し、3-6週間で消退する。発熱は38-39℃で3日程度続くため、三日はしかの病名があるが、無熱のものも存在する。妊婦
の風しん感染が、先天性風しん症候群(出生児に白内障、心疾患、難聴などを来す)の原因となることがある。
ヘルパンギーナ:コクサッキーウイルスA群による口峡部に特有の小水疱と発熱を主症状とす る夏かぜの一種である。潜伏期は2-4日、初夏から秋にかけて、乳幼児に多い。突然の38-40℃の発熱が1-3日間続き、全身倦怠感、食欲不振、咽頭
痛、嘔吐、四肢痛などがある場合もある。咽頭所見は、軽度に発赤し、口蓋から口蓋帆にかけて1-5mmの小水疱、これから生じた小潰瘍、その周辺に発赤を
伴ったものが数個認められる。コクサッキーウイルスA群1-10、17、22 型、まれにコクサッキーウイルスB群、エコーウイルスも病原として分離されることがある。
麻しん(成人麻しんを除く):麻しんウイルスによる赤い発しんを呈する急性発しん性疾患で あり、ここでは成人を除く。潜伏期は9-11 日であり、症状はカタル期(2-4日)には38℃前後の発熱、咳、鼻汁、くしゃみ、結膜充血、眼脂、羞明などであり、熱が下降した頃に頬粘膜にコプリック
斑が出現する。発しん期(3-4日)には一度下降した発熱が再び高熱となり(39-40℃)、特有の発しんが出現する。発しんは耳後部、頚部、顔、体幹、
上肢、下肢の順に広がる。回復期(7-9日)には解熱し、発しんは消退し、色素沈着を残す。
流行性耳下腺炎:ムンプスウイルス感染による耳下腺の腫脹する感染症である。上気道を介す る飛沫感染をし、好発年齢は乳児や学童である。潜伏期は2-3週間で、両側又は片側の耳下腺が腫脹し、ものを噛むときに顎に痛みを訴えることが多い。この
とき数日の発熱を伴うものが多い。耳下腺腫脹は有痛性で、境界不鮮明な柔らかい腫脹が耳朶を中心として起こる。他の唾液腺の腫脹をみることもある。耳下腺
開口部の発赤が認められるが、膿汁の排泄はない。合併症としては、髄膜炎、脳炎、膵炎、難聴などがあり、その他成人男性には睾丸炎、成人女子には卵巣炎が
みられることがある。
インフルエンザ(高病原性鳥インフルエンザを除く):インフルエンザウイルス感染による急 性気道感染症である。上気道炎症状に加えて、突然の高熱、全身倦怠感、頭痛、筋肉痛を伴うことを特徴とする。流行期(我が国ではおおむね例年11
月?3月)にこれらの症状のあったものはインフルエンザと考えられるが、非流行期での臨床診断は困難である。

急性出血性結膜炎:エンテロウイルス70 型及びコクサッキーウイルスA24 亜型の感染によって起こる急性結膜炎である。潜伏期は1日で強い眼の痛み、異物感で始まり、結膜の充血、とくに結膜下出血を伴うことが多い。眼瞼の腫脹、
眼脂、結膜浮腫、角膜表層のび慢性混濁などがみられ眼痛、異物感がある。約1週間続いて治癒することが多いが、この疾患に罹患したのち6-12 カ月後に四肢の運動麻痺を来すことがある。
流行性角結膜炎:アデノウイルス8、19、37、4型などによる眼感染症である。約1-2 週間の潜伏期の後、急性濾胞性結膜炎の臨床症状を示して発病する。結膜の浮腫や充血、眼瞼浮腫が強く、流涙や眼脂を伴う。耳前リンパ節の腫脹と圧痛を来
す。角膜にはび慢性表層角膜症がみられ、異物感、眼痛を訴えることがある。偽膜を伴うことも多い。発病後2-3 週間で治癒することが多い。
性器クラミジア感染症:Chlamydia trachomatis による性感染症である。男性では、尿道から感染して急性尿道炎を起こすが、症状は淋菌感染症よりも軽い。さらに、前立腺炎、副睾丸炎を起こすこともある。
女性では、まず子宮頚管炎を起こし、その後、感染が子宮内膜、卵管へと波及し、子宮内膜炎、卵管炎、骨盤内感染、肝周囲炎を起こす(しかし女性の場合、症
状が軽く自覚のないことも多い)。また、子宮外妊娠、不妊、流早産の誘因ともなる。妊婦が感染している場合には、主として産道感染により、新生児に封入体
結膜炎を生じさせることがある。また、1-2カ月の潜伏期を経て、乳幼児の肺炎を引き起こすことがある。淋菌との混合感染も多く、淋菌感染症の治癒後も尿
道炎が続く場合にはクラミジア感染症が疑われる。
性器ヘルペスウイルス感染症:単純ヘルペスウイルス(HSV1型または2型)が感染し、性 器またはその付近に発症したものを性器ヘルペスという。性器ヘルペスは、外部から入ったウイルスによる初感染の場合と仙髄神経節に潜伏しているウイルスの
再活性化による場合の二つがある。初感染では、感染後3-7日の潜伏期の後に外陰部に小水疱または浅い潰瘍性病変が数個ないし集簇的に出現する。発熱など
の全身症状を伴うことが多い。2-4週間で自然に治癒するが、治癒後も月経、性交その他の刺激が誘因となって、再発を繰り返す。再発しんは外陰部のほか、
臀部、大腿にも生じる。病変部位は男性では包皮、冠状溝、亀頭、女性では外陰部や子宮頚部である。HSV2 型による場合はより再発しやすい。
尖圭コンジローマ:尖形コンジローマは、ヒトパピローマウイルス(ヒト乳頭腫ウイルス、 HPV)の感染により、性器周辺に生じる腫瘍である。ヒトパピローマウイルスは80
種類以上が知られているが、尖形コンジローマの原因となるのは主にHPV6型とHPV11 型であり、時にHPV16 型の感染でも生じる。感染後、数週間から2-3カ月を経て、陰茎亀頭、冠状溝、包皮、大小陰唇、肛門周囲等の性器周辺部に、イボ状の小腫瘍が多発する。腫
瘍は、先の尖った乳頭状の腫瘤が集簇した独特の形をしており、乳頭状、鶏冠状、花キャベツ状等と形容される。尖形コンジローム自体は、良性の腫瘍であり、
自然に治癒することも多いが、時に癌(悪性の腫瘍)に移行することが知られている。特に、HPV16、52、58、18 型などに感染した女性の場合、子宮頚部に感染し、子宮頚癌の発癌要因になると考えられている。

淋菌感染症:淋菌(Neisseria gonorrheae)による性感染症である。男性は急性前部尿道炎として発症するのが一般的であるが、放置すると前立腺炎、副睾丸炎となる。後遺症とし
て尿道狭窄が起こる。女子は子宮頚管炎を起こすが、自覚症状のない場合が多い。感染が上行すると子宮内膜炎、卵管炎、骨盤内感染症を起こし、発熱、下腹痛
を来す。後遺症として不妊症が起きる。その他、喉頭や直腸などへの感染や新生児結膜炎などもある。
クラミジア肺炎(オウム病を除く):Chlamydia trachomatis, Chlamydia pneumoniae の感染による肺炎である。いずれも発熱に乏しい下気道感染症である。Chlamydia
trachomatis は新生児乳児に多く、主に産道感染で間質性肺炎像を呈することが多く、C. pneumoniae は飛沫感染により異型肺炎像を呈することが多い。
細菌性髄膜炎:種々の細菌感染による髄膜の感染症である。発熱、頭痛、嘔吐を主な特徴とす る。項部硬直、Kernig 徴候、Brudzinski 徴候などの髄膜刺激症状が見られることがあるが、新生児や乳児などではこれらの臨床症状が明らかではないことが多い。
ペニシリン耐性肺炎球菌感染症:ペニシリンGに対して耐性のある肺炎球菌による感染症であ る。小児及び成人の化膿性髄膜炎や中耳炎で検出されるが、その他、副鼻腔炎、耳炎、髄膜炎、心内膜炎、心嚢炎、腹膜炎、関節炎、髄膜炎、まれには尿路生殖
器感染から菌血症を引き起こすこともある。
マイコプラズマ肺炎:Mycoplasma pneumoniae の感染によって発症する肺炎である。好発年齢は、6-12 歳の小児であり、小児では発生頻度の高い感染症の一つである。潜伏期は2-3週間とされ、飛沫で感染する。異型肺炎像を呈することが多い。頑固な咳嗽と発
熱を主症状に発病し、中耳炎、胸膜炎、心筋炎、髄膜炎などの合併症を併発する症例も報告されている。

成人麻しん:18 歳以上の成人に見られる急性麻しんウイルス感染症である。小児の麻しんと同様で、発熱、カタル症状、咳嗽、コプリック斑、色素沈着を残す発しんが特徴であ
る。
無菌性髄膜炎:種々のウイルス感染による髄膜の感染症である。発熱、頭痛、嘔吐を主な特徴 とするが、新生児や乳児などでは臨床症状が明らかではないことが多い。項部硬直、Kernig
徴候、Brudzinski 徴候などの髄膜刺激症状が見られるが同じく新生児や乳児などではこれらが明らかではないことも多い。
メチシリン耐性黄色ブドウ球菌感染症:メシチリンなどのペニシリン剤をはじめとして、β- ラクタム剤、アミノ配糖体剤、マクロライド剤などの多くの薬剤に対し多剤耐性を示す黄色ブドウ球菌による感染症である。外科手術後の患者や免疫不全者、長
期抗菌薬投与患者などに日和見感染し、腸炎、敗血症、肺炎などを来し、突然の高熱、血圧低下、腹部膨満、下痢、意識障害、白血球減少、血小板減少、腎機能
障害、肝機能障害などの症状を示す。
薬剤耐性緑膿菌感染症:ペニシリン剤、β-ラクタム剤等多くの薬剤に対して耐性を示す緑膿 菌による感染症である。感染防御機能の低下した患者や抗生物質長期使用中の患者に日和見感染し、敗血症や骨髄、気道、尿路、皮膚、軟部組織、耳、眼などに
多彩な感染症を起こす。

[DID-0062.INF:2000.9.4.古泉秀夫・2003.12.9.改訂]


  1. 桜山豊夫:感染症予防新法の概要;都薬雑誌,20(8):4-8(1998)
  2. 基本医療六法 平成12年版;中央法規,2000
  3. 厚生省保健医療局結核感染症課・監修:改訂・感染症マニュアル;株式会社マイガイア,1999
  4. 森 良一・他編:戸田新細菌学;南山堂,1985
  5. 改正感染症法・検査法が施行される;日本医事新報,No.4150:72-73(2003.11.8.)
  6. 感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律及び検疫法の一部を改正する法律:官報号外第239号;24(平成15年10月16 日)

横紋筋融解症を惹起する薬剤

木曜日, 8月 16th, 2007

横紋筋融解症は、骨格筋細胞の融解、壊死により筋体成分が血液中に流出した病態である。その際、流出した大量のミオグロビンにより尿細管に負荷がかか るため、急性腎不全を併発することが多い。また、稀ではあるが、呼吸器筋が障害され、呼吸困難になる場合もあるとする報告が見られる。

従って血液透析などの適切な処置が必要となる。初期症状に気付いた場合、直ちに服用を中止し、主治医に受診する。

発症時の自覚症状として『四肢の脱力感、腫脹、しびれ、痛み、赤褐色尿(ミオグロビン尿)などがあり、これに腎不全症状として無尿、乏尿が見られる場合もある。発症 は急性、亜急性、緩徐発症を示し、筋痛、筋力低下は、下肢、大腿部等に局限することが多いが、全身性のこともあり、呼吸筋、嚥下筋が障害される場合もある。症状として歩行障害、運動障害、呼吸障害、意識障害等様々な症状を呈することがある。検査所見として 『ミオグロビン、CPK等の筋逸脱酵素の急激な上昇』が認められる。

横紋筋融解症を発現する薬剤としては、高脂血症治療剤やニューキノロン系薬剤 などがよく知られているが、最近ではそれ以外にも多種多様な薬剤による横紋筋融解症の報告が続いている。ここの薬剤による横紋筋融解症発現のメカニズムは明確でないものが多いが、直接的な筋障害を起こす可能性の低い薬剤であっても、低リン血症、低K血症、糖尿病性ケトアシドーシスなどの代謝障害や悪性高体温、痙攣発作などを誘発する薬剤は、二次的に横紋筋融解症を発現する可能性があるため、注意が必要である。

対処法

横紋筋融解症の症例の多くは、入院加療が必要となる。速やかな対応(薬剤の中 止、輸液療法、血液透析等)により筋力の回復、腎機能の回復が見られるが、腎不全が進行し透析導入に至った事例もある。また、高カリウム血症による死亡例も報告されているとの報告が見られる。

副作用として横紋筋融解症の発現が添付文書に記載されている薬剤を服用中の患 者では、次の点に注意するよう前もって患者に伝えておく。

『手足がしびれる、手足に力が入らない、手足・肩・腰・全身の筋肉が痛んだり、こわばったりする。又は全身がだるい、尿の色が赤褐色になる』な どの症状に気付かれた場合には、服薬を中止し、直ちに主治医に受診すること。

[分類]一般名・商 品名(会社名) 発生頻度 概要
[394]allopurinol
ザイロリック錠(GSK)
横紋筋融解症 *発症機序不明。 allopurinolはキサンチンの尿酸への転換を阻害するので、キサンチンの尿中排泄が増加する。その結果、尿路系・筋肉内にキサンチン結晶形成の危
険性を生じうるとされており、過剰のキサンチンが影響する可能性。
[218]aluminium clofibrate
アルフィブレートカプセル(日研)
横 紋筋融解症 * フィブラート系薬剤で、腎機能障害を有する患者において横紋筋融解症が発現し、急激に腎機能が悪化。
*HMG-CoA還元酵素阻害薬では服用後1年以内の発症が殆どであり、4カ月以内が50%以上とする報告が見られる。
*発症原因として、薬剤の筋への直接的障害と薬剤により誘発された低K血症、痙攣発作などが原因する二次的なものが考えられている。高脂血症薬では、筋細
胞膜中のコレステロール含量低下、細胞中ユビキノンの低下、膜のClイオンの透過性低下が考えられている。
[218]atorvastatin calcium hydrate
リピトール錠(アステラス)
[211]aminophylline
ネオフィリン末・錠・注
(エーザイ)
横紋筋融解症 *発症原因として、薬剤の筋 への直接的障害と薬剤により誘発された低K血症、痙攣発作などが原因する二次的なものが考えられている。キサンチン系薬剤では、細胞内カルシウムイオンの
流入増加などが関与していると報告されている。
[218]bezafibrate
ベザトールSR(キッセイ)
横紋筋融解症0.01%又は 0.1% *発症原因として、薬剤の筋 への直接的障害と薬剤により誘発された低K血症、痙攣発作などが原因する二次的なものが考えられている。高脂血症薬では、筋細胞膜中のコレステロール含量
低下、細胞中ユビキノンの低下、膜のClイオンの透過性低下が考えられている。
*服用後1日?2年の間での発症が報告されている。2週間以内が50%以上の報告。
[117]bromperidol
インプロメン錠
(三菱ウェルファーマ)
横紋筋融解症(自主報告6 例) *発症機序不明。抗精神病薬 投与中に発症する横紋筋融解症には、抗精神病薬の過量投与、薬剤による直接的な筋障害、多飲による水中毒、悪性症候群、抗利尿ホルモン不適合分泌症候群
等、様々な要因が関与していると考えられる[JPA-DI,2(5):6-9(1999)]。
*抗精神病薬により悪性症候群が発症し、これに引き続き横紋筋融解症が惹起されることは従来よりよく知られていた。今回報告された症例の中に水中毒、
SIADH(抗利尿ホルモン不適合分泌症候群)に引き続いて横紋筋融解症が発現した事例が見られており、注意が喚起される[JPA-DI,2(5):6-
9(1999)]。
[214]candesartan cilexetil
ブロプレス錠(武田)
横紋筋融解症(市販後6例) *アンジオテンシンII受容 体拮抗剤による発症機序は不明。一般的に薬剤による横紋筋融解症の発症機序は、薬剤の筋細胞への直接的障害と、薬剤により誘発された低K血症、痙攣発作な
どが原因で発症する二次的なものが考えられている[JPA-DI,5(9):18(2002)]。
[613]cefcapenepivoxil hydrochloride
フロモックス錠(塩野義)
横紋筋融解症(頻度不明) *発症機序不明。ただし、動 物実験(イヌ)でCPKの上昇を伴う筋細胞障害(骨格筋の病理組織学的検査)が認められているの報告[IF,1997.6]
[624]ciprofloxacin hydrochloride
シプロキサン錠(バイエル)
横紋筋融解症(0.1%未 満) *発症機序不明。ニューキノ ロン系薬剤では服用後1-6日間と短期間の服薬で急激に発症するの報告がされている。
[614]clarithromycin
クラリス錠(大正富山)
横紋筋融解症(頻度不明) *発症機序不明。本症の発症 には原因が何であれ骨格筋の障害が必須である。筋組織内のミトコンドリアにおけるATPの障害、過度の運動後のK欠乏などが原因と考えられているが定説は
ない。
[218]clinofibrate
リポクリン錠(住友)
横 紋筋融解症 * フィブラート系薬剤で、腎機能障害を有する患者において横紋筋融解症が発現し、急激に腎機能が悪化[添付文書,1999.6]。
*発症原因として、薬剤の筋への直接的障害と薬剤により誘発された低K血症、痙攣発作などが原因する二次的なものが考えられている。高脂血症薬では、筋細
胞膜中のコレステロール含量低下、細胞中ユビキノンの低下、膜のClイオンの透過性低下が考えられている。
[218]clofibrateヒポセロールカプセル(扶桑)
[117]clomipramine hydrochloride
アナフラニール錠・注
(ノバルティス)
横紋筋融解症 *発症機序不明。抗精神病薬 投与中に発症する横紋筋融解症には、抗精神病薬の過量投与、薬剤による直接的な筋障害、多飲による水中毒、悪性症候群、抗利尿ホルモン不適合分泌症候群
等、様々な要因が関与していると考えられる[JPA-DI,2(5):6-9(1999)]。
[211]choline theophylline
テオコリン錠(エーザイ)
横紋筋融解症 *発症原因として、薬剤の筋 への直接的障害と薬剤により誘発された低カリウム血症、痙攣発作などが原因する二次的なものが考えられている。キサンチン系薬剤では、細胞内Caイオンの
流入増加などが関与していると報告されている。
[399]ciclosporin
サンディミュンカプセル
(ノバルティス)
横紋筋融解症 *発症機序不明。本剤に起因 するmyopathyの症例報告が最近見られるの報告。
[114]diclofenac sodiumボルタレン錠(ノバルティス) 横紋筋融解症 *本剤による横紋筋融解症の 発症機序は不明。本剤投与患者で、本剤との関連を否定できない横紋筋融解症の症例報告が、1994年以降6例(自発報告5例、学会報告1例)報告されてい
る。
*非ステロイド性抗炎症剤(NSAIDs)による横紋筋融解症発症の機序は明確ではない。しかし、NSAIDsをエンドトキシンなどと一緒に動物に投与す
るとNSAIDsの濃度の上昇に伴ってTNF-α(腫瘍壊死因子)が増加することが知られている。従って、感染症の解熱目的でNSAIDsを使用すると一
端は解熱するが、 TNF-αを増加してサイトカイン類が増加し、多臓器不全を起こしやすくなる危険があると考えられ、多臓器不全の一つとして筋肉障害を起こす可能性がある
[JPA-DI,5(4):16-20(2002)]
[211]diprophylline
ネオフィリンM末・注(エーザイ)
横紋筋融解症 *類薬 (theophylline)で報告。
*発症原因として、薬剤の筋への直接的障害と薬剤により誘発された低カリウム血症、痙攣発作などが原因する二次的なものが考えられている。キサンチン系薬
剤では、細胞内カルシウムイオンの流入増加などが関与していると報告されている。
[119]donepezil hydrochloride
アリセプト錠・D錠・細粒(エーザイ)
横紋筋融解症 *発症機序不明。本剤投与に 起因すると思われる横紋筋融解症の患者発現。死亡例1例報告[PMDSI,No.214,2005.6.]
[624]enoxacin
フルマーク錠(大日本)
横紋筋融解症 *発症機序不明。ニューキノ ロン系薬剤では服用後1-6日間と短期間の服薬で急激に発症するの報告がされている。
[117]etizolam
デパス錠(三菱ウェルファーマ)
横紋筋融解症 *発症機序不明。抗精神病薬 投与中に発症する横紋筋融解症には、抗精神病薬の過量投与、薬剤による直接的な筋障害、多飲による水中毒、悪性症候群、抗利尿ホルモン不適合分泌症候群
等、様々な要因が関与していると考えられる[JPA-DI,2(5):6-9(1999)]。
[232]famotidine
ガスター錠・注(アステラス)
横紋筋融解症 *発症機序不明。国内におい て横紋筋融解症の副作用が報告された。
[613]faropenem sodium
ファロム錠(アステラス)
横紋筋融解症(頻度不明) *発症機序不明。本症の発症 には原因が何であれ骨格筋の障害が必須である。筋組織内のミトコンドリアにおけるATPの障害、過度の運動後のK欠乏などが原因と考えられているが定説は
ない。
[218]fenofibrate
リパンチルカプセル(グレラン)
横紋筋融解症 *発症原因として、薬剤の筋 への直接的障害と薬剤により誘発された低カリウム血症、痙攣発作などが原因する二次的なものが考えられている。高脂血症薬では、筋細胞膜中のコレステロー
ル含量低下、細胞中ユビキノンの低下、膜のClイオンの透過性低下が考えられている。
[624]fleroxacin
メガロシン錠(杏林)
横紋筋融解症 *発症機序不明。ニューキノ ロン系薬剤では服用後1-6日間と短期間の服薬で急激に発症するの報告がされている。
[112]flunitrazepam
サイレース錠・注(エーザイ)
横紋筋融解症(市販後報告) *発症機序不明。一般的に薬 剤による横紋筋融解症の発症は、薬剤の筋細胞への直接的障害と、薬剤により誘発された低K血症、痙攣発作などが原因で発症する二次的なものが考えられてい
る[JPA-DI,5(7):24-25(2002)]。
[218]fluvastatin sodiumローコール錠
(ノバルティス)
横紋筋融解症 *HMG-CoA還元酵素阻 害薬では服用後1年以内の発症が殆どであり、4カ月以内が50%以上とする報告が見られる。
*発症原因として、薬剤の筋への直接的障害と薬剤により誘発された低K血症、痙攣発作などが原因する二次的なものが考えられている。高脂血症薬では、筋細
胞膜中のコレステロール含量低下、細胞中ユビキノンの低下、膜のClイオンの透過性低下が考えられている。
[625]foscarnet sodium hydrateホスカビル注(アストラゼネカ) 横紋筋融解症(頻度不明) *発症機序不明。本症の発症 には原因が何であれ骨格筋の障害が必須である。筋組織内のミトコンドリアにおけるATPの障害、過度の運動後のK欠乏などが原因と考えられているが定説は
ない。
[624]gatifloxacin hydrate
ガチフロ錠(杏林)
横紋筋融解症(外国) *発症機序不明。本症の発症 には原因が何であれ骨格筋の障害が必須である。筋組織内のミトコンドリアにおけるATPの障害、過度の運動後のK欠乏などが原因と考えられているが定説は
ない。
[117]haloperidol
セレネース錠・注(大日本)
横紋筋融解症(文献報告7 例) *発症機序不明。抗精神病薬 投与中に発症する横紋筋融解症には、抗精神病薬の過量投与、薬剤による直接的な筋障害、多飲による水中毒、悪性症候群、抗利尿ホルモン不適合分泌症候群
等、様々な要因が関与していると考えられる[JPA-DI,2(5):6-9(1999)]。
[117]haloperidol decanoate
ハロマンス注(大日本)
横紋筋融解症(類薬) *類薬 (haloperidol等)で報告。
*発症機序不明。抗精神病薬投与中に発症する横紋筋融解症には、抗精神病薬の過量投与、薬剤による直接的な筋障害、多飲による水中毒、悪性症候群、抗利尿
ホルモン不適合分泌症候群等、様々な要因が関与していると考えられる[JPA-DI,2(5):6-9(1999)]。
[232]lafutidine
プロテカジン錠(大鵬)
横紋筋融解症 類薬(他のH2受 容体拮抗剤)で報告[添付文書,2002.8]。
[625]lamivudineエピビル錠(GSK) 横紋筋融解症(頻度不明) *発症機序不明。本症の発症 には原因が何であれ骨格筋の障害が必須である。筋組織内のミトコンドリアにおけるATPの障害、過度の運動後のK欠乏などが原因と考えられているが定説は
ない。
[624]levofloxacin
クラビット錠(第一)
横紋筋融解症 *発症機序不明。ニューキノ ロン系薬剤では服用後1-6日間と短期間の服薬で急激に発症するの報告がされている。
[117]lithium carbonate
リーマス錠(大正富山)
横紋筋融解症 *発症機序不明。抗精神病薬 投与中に発症する横紋筋融解症には、抗精神病薬の過量投与、薬剤による直接的な筋障害、多飲による水中毒、悪性症候群、抗利尿ホルモン不適合分泌症候群
等、様々な要因が関与していると考えられる[JPA-DI,2(5):6-9(1999)]。
[624]lomefloxacin hydrochloride
ロメバクトカプセル(塩野義)
横紋筋融解症(頻度不明) *発症機序不明。ニューキノ ロン系薬剤では服用後1-6日間と短期間の服薬で急激に発症するの報告がされている。
[214]losartan potassium
ニューロタン錠(万有)
横紋筋融解症 *アンジオテンシンII受容 体拮抗剤による発症機序は不明。一般的に薬剤による横紋筋融解症の発症機序は、薬剤の筋細胞への直接的障害と、薬剤により誘発された低K血症、痙攣発作な
どが原因で発症する二次的なものが考えられている。
[117]maprotiline hydrochlorideルジオミール錠(ノバルティス) 横紋筋融解症 *発症機序不明。抗精神病薬 投与中に発症する横紋筋融解症には、抗精神病薬の過量投与、薬剤による直接的な筋障害、多飲による水中毒、悪性症候群、抗利尿ホルモン不適合分泌症候群
等、様々な要因が関与していると考えられる[JPA-DI,2(5):6-9(1999)]。
[391]monoammonium glycyrrhizinate・DL-methionine・aminoacetic acid
グリチロン錠(ミノファーゲン)
横紋筋融解症の症状 *脱力感、筋力低下、筋肉 痛、四肢痙攣・麻痺等の横紋筋融解症の症状発現[添付文書,2001.3]。
*本剤に含まれる甘草の成分であるグリチルリチンにより、偽アルドステロン症が起こる可能性があることは知られているが、添付文書改訂の根拠となった4症
例ではCPKの上昇を伴った横紋筋融解症を併発している[JPA-DI,1(3):13-14(1998)]。
[232]nizatidine
アシノンカプセル(ゼリア)
横紋筋融解症 類薬(他のH2受 容体拮抗剤)で報告。
[624]norfloxacin
バクシダール錠(杏林)
横紋筋融解症 * 発症機序不明。ニューキノロン系薬剤では服用後1-6日間と短期間の服薬で急激に発症するの報告がされている。
[624]ofloxacin
タリビット錠(第一)
横紋筋融解症(頻度不明)
[232]omeprazole
オメプラール腸溶錠
(アストラゼネカ)
横紋筋融解症 *発症機序不明。本症の発症 には原因が何であれ骨格筋の障害が必須である。筋組織内のミトコンドリアにおけるATPの障害、過度の運動後のK欠乏などが原因と考えられているが定説は
ない。
[122]pancuronium bromide
ミオブロック注(三共)
横紋筋融解症 *発症機序不明。本症の発症 には原因が何であれ骨格筋の障害が必須である。筋組織内のミトコンドリアにおけるATPの障害、過度の運動後のK欠乏などが原因と考えられているが定説は
ない。
[624]pazufloxacin mesilate
パシル注(大正富山)
横紋筋融解症 *発症機序不明。本症の発症 には原因が何であれ骨格筋の障害が必須である。筋組織内のミトコンドリアにおけるATPの障害、過度の運動後のK欠乏などが原因と考えられているが定説は
ない。
[613]piperacillin sodium
ペントシリン注(大正富山)
横紋筋融解症 *発症機序不明。本症の発症 には原因が何であれ骨格筋の障害が必須である。筋組織内のミトコンドリアにおけるATPの障害、過度の運動後のK欠乏などが原因と考えられているが定説は
ない。
[232]pipethanate hydrochloride・甘草抽出物・magnesium aluminometasilicate
ゲシュウル(テイコクメディックス)
横紋筋融解症
の症状(1例報告)
*脱力感、筋力低下、筋肉 痛、四肢痙攣・麻痺等の横紋筋融解症の症状発現[添付文書,2002.2]。
*本剤に含まれる甘草の成分であるグリチルリチンにより、偽アルドステロン症が起こる可能性があることは知られているが、添付文書改訂の根拠となった4症
例ではCPKの上昇を伴った横紋筋融解症を併発している[JPA-DI,1(3):13-14(1998)]。
[449]pranlukast hydrate
オノンカプセル(小野)
横紋筋融解症 *発症機序不明。本症の発症 には原因が何であれ骨格筋の障害が必須である。筋組織内のミトコンドリアにおけるATPの障害、過度の運動後のK欠乏などが原因と考えられているが定説は
ない。
[218]pravastatin sodiumメバロチン錠・細粒(三共) 横紋筋融解症 *HMG-CoA還元酵素阻 害薬では服用後1年以内の発症が殆どであり、4カ月以内が50%以上とする報告が見られる。
*発症原因として、薬剤の筋への直接的障害と薬剤により誘発された低カリウム血症、痙攣発作などが原因する二次的なものが考えられている。高脂血症薬で
は、筋細胞膜中のコレステロール含量低下、細胞中ユビキノンの低下、膜のクロールイオンの透過性低下が考えられている。
[218]probucol
シンレスタール錠・細粒(第一)
横紋筋融解症 *発症原因として、薬剤の筋 への直接的障害と薬剤により誘発された低K血症、痙攣発作などが原因する二次的なものが考えられている。高脂血症薬では、筋細胞膜中のコレステロール含量
低下、細胞中ユビキノンの低下、膜のClイオンの透過性低下が考えられている。
[259]propiverine hydrochloride
バップフォー錠(大鵬)
横紋筋融解症 *発症機序不明。本症の発症 には原因が何であれ骨格筋の障害が必須である。筋組織内のミトコンドリアにおけるATPの障害、過度の運動後のK欠乏などが原因と考えられているが定説は
ない。
[111]propofol
ディプリバン注(アストラゼネカ)
横紋筋融解症(0.1%未 満) *発症機序不明。麻酔薬の作 用によって骨格筋細胞内の筋小胞体からCaイオンが異常に遊離されて細胞内Ca2+濃度が異常に上昇し、骨格筋が過度に収縮して筋原性の発熱が生ずるとす
る報告が見られる。
[211]proxyphylline
モノフィリン錠・注(日医工)
横 紋筋融解症 * 類薬(theophylline)で報告。
*発症原因として、薬剤の筋への直接的障害と薬剤により誘発された低K血症、痙攣発作などが原因する二次的なものが考えられている。キサンチン系薬剤で
は、細胞内Caイオンの流入増加などが関与していると報告されている。
[222]proxyphylline・ ephedrine hydrochloride・phenobarbitalアストモリジンM錠(マルホ)
アストモリジンD錠(マルホ)
[232]ranitidine hydrochloride
ザンタック錠・注(GSK)
横紋筋融解症 *発症機序不明。国内におい て横紋筋融解症の副作用が報告された。1996-2000の注射剤・経口剤の報告例7例[JPA-DI,4(12):16-18(2001)]。
[117]risperidone
リスパダール錠(ヤンセン)
横紋筋融解症 *発症機序不明。抗精神病薬 投与中に発症する横紋筋融解症には、抗精神病薬の過量投与、薬剤による直接的な筋障害、多飲による水中毒、悪性症候群、抗利尿ホルモン不適合分泌症候群
等、様々な要因が関与していると考えられる[JPA-DI,2(5):6-9(1999)]。
[259]ritodrine hydrochloride
ウテメリン錠(キッセイ)
横紋筋融解症(注:6例、 錠:3例) *詳細は不明であるが、一般 的に横紋筋融解症発現原因の一つとして低K血症が挙げられていることから本剤のβ2 刺激作用による血清Kの低下が一部関与している可能性が推定される[JPA-DI,2(39:6-7(1999)]。
[232]roxatidine acetate hydrochlorideアルタットカプセル(帝国臓器) 横紋筋融解症(頻度不明) 類薬(他のH2受 容体拮抗剤)で報告[添付文書, 2001.4]。
[118]salicylamide・ acetaminophen・anhydrous caffeine・chlorpheniramine maleate
ペレックス顆粒(大鵬)
横紋筋融解症(3例集積) * 発症機序不明。ただし国内症例のうち1例はDLST陽性であったことから、アレルギー性の機序による発症も考えられる。*国内において本剤との因果関係が否定できない横紋筋融解症が3例集積(過量服用症例1例含む)。また、海外ではacetaminophenによる横紋筋
融解症が1例報告されている[JPA-DI,5(5)19-20(2002)]
[118]salicylamide・ acetaminophen・anhydrous caffeine・promethazine methylenedisalicylate
PL顆粒(塩野義)
横紋筋融解症
(頻度不明)
[111]sevoflurane
セボフレン液(ダイナボット)
横紋筋融解症 *発症機序不明。麻酔薬の作 用によって骨格筋細胞内の筋小胞体からCaイオンが異常に遊離されて細胞内Ca2+濃度が異常に上昇し、骨格筋が過度に収縮して筋 原性の発熱が生ずるとする報告が見られる。
[218]simfibrate
-製造中止-
横 紋筋融解症
(類薬)
* フィブラート系薬剤で、腎機能障害を有する患者において横紋筋融解症が発現し、急激に腎機能が悪化
*HMG-CoA還元酵素阻害薬では服用後1年以内の発症が殆どであり、4カ月以内が50%以上とする報告が見られる。
*発症原因として、薬剤の筋への直接的障害と薬剤により誘発された低K血症、痙攣発作などが原因する二次的なものが考えられている。高脂血症薬では、筋細
胞膜中のコレステロール含量低下、細胞中ユビキノンの低下、膜のClイオンの透過性低下が考えられている。
[218]simvastatin
リポバス錠(万有)
[113]sodium valproate
デパケン錠・細粒(協和醗酵)
横紋筋融解症 *発症機序不明。本症の発症 には原因が何であれ骨格筋の障害が必須である。筋組織内のミトコンドリアにおけるATPの障害、過度の運動後のK欠乏などが原因と考えられているが定説は
ない。
[624]sparfloxacin
スパラ錠(大日本)
横紋筋融解症(0.1%未 満) *発症機序不明。ニューキノ ロン系薬剤では服用後1-6日間と短期間の服薬で急激に発症するの報告がされている。
[629]sulfamethoxazole・ trimethoprimバクタ錠・顆粒(塩野義) 横紋筋融解症(頻度不明) *発症機序不明。本症の発症 には原因が何であれ骨格筋の障害が必須である。筋組織内のミトコンドリアにおけるATPの障害、過度の運動後のK欠乏などが原因と考えられているが定説は
ない。
[122]suxamethonium chloride
サクシン注(アステラス)
横紋筋融解症 *発症機序不明。本症の発症 には原因が何であれ骨格筋の障害が必須である。筋組織内のミトコンドリアにおけるATPの障害、過度の運動後のK欠乏などが原因と考えられているが定説は
ない。
[613]tazobactam・ piperacillin hydrateタゾシン注(大鵬-大正富山) 横紋筋融解症(頻度不明) *発症機序不明。本症の発症 には原因が何であれ骨格筋の障害が必須である。筋組織内のミトコンドリアにおけるATPの障害、過度の運動後のK欠乏などが原因と考えられているが定説は
ない。
[225]theophylline
テオロング錠・顆粒(エーザイ)
横紋筋融解症 *発症原因として、薬剤の筋 への直接的障害と薬剤により誘発された低K血症、痙攣発作などが原因する二次的なものが考えられている。キサンチン系薬剤では、細胞内Caイオンの流入増
加などが関与していると報告されている。
[624]tosufloxacin tosilate
オゼックス錠(大正富山)
横紋筋融解症(頻度不明) *発症機序不明。ニューキノ ロン系薬剤では服用後1-6日間と短期間の服薬で急激に発症するの報告がされている。
[214]trandolaprilオドリック錠(アベンティス) 横紋筋融解症 *発症機序不明。本症の発症 には原因が何であれ骨格筋の障害が必須である。筋組織内のミトコンドリアにおけるATPの障害、過度の運動後のK欠乏などが原因と考えられているが定説は
ない。
[241]vasopressin
ピトレシン注(三共)
横紋筋融解症 *発症機序不明。横紋筋融解 症の発症原因として水中毒に続発する症例が報告されている。本剤による横紋筋融解症も同様の理由によることが推定される。
[122]vecuronium bromide
マスキュラックス静注用(三共)
横紋筋融解症 *発症機序不明。本症の発症 には原因が何であれ骨格筋の障害が必須である。筋組織内のミトコンドリアにおけるATPの障害、過度の運動後のK欠乏などが原因と考えられているが定説は
ない。
[625]zidovudine・ lamivudine
コンビビル錠(GSK)
横紋筋融解症 *発症機序不明。本症の発症 には原因が何であれ骨格筋の障害が必須である。筋組織内のミトコンドリアにおけるATPの障害、過度の運動後のK欠乏などが原因と考えられているが定説は
ない。
[520]芍薬甘草湯エキス 顆粒
(ツムラ)
横 紋筋融解症の症状(各1例報告) * 脱力感、筋力低下、筋肉痛、四肢痙攣・麻痺等の横紋筋融解症の症状発現[添付文書,1998.10]。
*本剤に含まれる甘草の成分であるグリチルリチンにより、偽アルドステロン症が起こる可能性があることは知られているが、添付文書改訂の根拠となった4症
例ではCPKの上昇を伴った横紋筋融解症を併発している[JPA-DI,1(3):13-14(1998)]。
[520]小柴胡湯エキス顆 粒(ツムラ)

[015.11.RHA:2003.6.2.古泉秀夫・2005.6.27.訂正]


  1. 高久史麿・他監修:治療薬マニュアル;医学書院,2003
  2. 日本病院薬剤師会・編:重大な副作用回避のための服薬指導情報集[1];薬業時報社,1997
  3. 真木正博・他監修:メイラー医薬品の副作用大事典;西村書店,1998
  4. 高橋隆一・責任編:第2版 薬の副作用チェックマニュアル;中外医学社,1998

塩酸モルヒネ(morphine hydrochloride)の毒性

木曜日, 8月 16th, 2007
対象物 塩酸モルヒネ(morphine hydrochloride)
成分 morphine hydrochloride;モルヒネ塩酸塩。毒薬。麻薬。
一般的性状 アヘン中に含まれるalkaloidの一種。C17H19NO3・3H2O=375.84。本品は定量するとき、換算した脱水物に対 し、塩酸モルヒネ(C17H19NO3・HCl=321.80)98.0-102.0%を含む。本品 は白色の結晶又は結晶性の粉末である(本品は麻薬であるため味の試験はしていない)。水分含量の理論値は14.3%である。本品は蟻酸に溶け易く、水にやや溶け易く(1g→17.5mL)、メタノールにやや溶け難く、エタノール(95)に溶け難い。本品は稀水酸化ナトリウム試液に溶ける。本品は光によって変化する。保存条件:気密容器、遮光保存。モルヒナン系鎮痛薬。
名称:morphine hydrochloride[英]、morphinhydrochlorid、morphine(chlorhydrate
de)[仏]。
morphineについては、一般的には1805年独逸の薬剤師 Sert

エチルクロライド(ethyl chloride)の毒性

木曜日, 8月 16th, 2007
対象物 クロルエチル(ethyl chloride)
成分 クロルエチル(ethyl chloride)
一般的性状 [英] ethyl chloride。[独]chlor

エーテルの毒性

木曜日, 8月 16th, 2007
対象物 吸入麻酔薬
成分 麻酔用エーテル(anesthetic ether)、ジエチルエーテル(diethylether)。
一般的
性状
エーテルは1540年コーダス(Cordus V)により合成された。1842年になりクラーク(Clarke WE)やロング(Long CW)がエーテル麻酔に成功し、1846年モートン(Morton WTG・米国)がエーテル麻酔下に公開手術を行い成功を収めてから、世界的に使用されるようになった。血圧はよく保たれ、呼吸も抑制されにくい。麻酔導入と覚醒に時間がかかる。喉頭痙攣を起こしやすい。術後の嘔気、嘔吐が多い。高血糖を起こす。可燃性があるなどの欠点がある。
2個のアルコールないしフェノールから水がとれた構造をもつ化合物の総称。た だし、狭義にはエチルエーテルを指す。エチルエーテル(C2H5OC2H5)は無色澄明の流動しやすい液で特異な臭いがある。揮発しやす く、引火性。局方にはエーテルと麻酔用エーテルanesthetic ether)があり、ともにエチルエーテルである。[局]麻酔用エーテルは外科手術において、吸入麻酔薬として全身麻酔に使用する。安定剤を加えてあるが、容器から取りだした後、24時間以上経過したとき麻酔用に使用できない。エーテルガス及び空気の混合物は、引火すると激しく爆発する。麻酔用エーテルはC4H10O:96-98%を含む。本品は無色澄明、流動しやすい液で 特異な臭気があり、甘いようなまた灼ける様な味がする。本品は約35℃で沸騰し、極めて揮発しやすく、引火しやすい。空気、湿気及び光によって徐々に酸化され、過酸化物を生ずる。本品の蒸気と空気との混合物は引火するとき激しく爆発する。本品1ccは水約12ccに溶ける。本品はアルコール、ベンゼン、クロロホルム、石油ベンジン、精油又は脂肪油に混和する。貯法:遮光した気密容器に全満せずに入れ火気を避け、なるべく25℃以下で貯えなければならない
(光、熱によって aldehyde と peroxyde が生じるため密封して冷暗所保存が必要)。
薬理作用:中枢神経抑制、麻酔性、粘膜刺激性、クラーレ様筋弛緩作用
毒性 ヒ ト(経口)致死量30mL。急性毒性:LD50(ラッ ト)経口3560mg/kg。LD50(ラット)経口 1700mg/kg、LDL0(ラット)腹腔 2000mg/kg。LDL0:最小致死量。
症状 第 I 期:痛覚鈍麻
第II 期:意識混濁、自制心消失、うわごと、反射亢進
第III期:反射機能の消失、骨格筋弛緩
第IV期:呼吸中枢抑制、呼吸停止
処置 * 酸素吸入
*外部より保温
*酸素欠乏による痙攣にはチオペンタールナトリウム静注、他の痙攣にはグルコン酸カルシウム静注。
事例 「お まえさんは、去年の夏、江戸への初舞台を機会に、尾花新九郎をお茶の水の堀り割へ呼び出して、麻薬をかがせて眠らせたうえ、ぬれ紙を鼻の上に当てて呼吸の根を断った」
伝七は、まるで現場を見ていたのかのように、ずばりと、何のよどむところもなくいってのけるのでした。「わたしはついに、新九郎に会うことができました。新九郎の家の近くでです。さすがに新九郎は驚きましたが、わたしに旧悪を暴かれるのを恐れて、あの夜青山大膳様のお能の帰りに、お茶の水で会うことを約束しました。わたしは暗い掘り割りの岸で、新九郎に会うや、長崎のオランダ医からもらった、腑分け用の麻酔薬を新九郎にかがせ、その後でぬれ紙で鼻や口をふさいで完全に殺してしまいました、………………」 [陣出達郎:伝七捕物帖(一)-敵討ち蝉;信陽堂,1997]
備考 物 語は天保11年(1840年)頃の話しである。エーテル麻酔下の公開手術が米国で行われたのが1846年で、当時の時間経過からいえば、天保11年にエーテルが江戸で手に入れることができたかどうか。更に保存がやっかいであり、素人が取り扱うのはちょいと無理ではないかというのが感想である。原作は単に吸入麻酔薬と書かれているだけで、それを勝手に麻酔用エーテルと決めてしまったが、クロロホルムが吸入麻酔薬として初めて使用されたのは1847年ということで、麻酔用エーテルにしただけである。
文献 1) 伊藤正男・他総編集:医学書院医学大辞典,2003
2)薬科学大辞典 第2版;広川書店,1990
3)第六改正日本薬局方註解;南江堂,1954
4)西 勝英・監修:薬・毒物中毒救急マニュアル 改訂6版;医薬ジャーナル,2001
5)大阪府病院薬剤師会・編:全訂医薬品要覧;薬業時報社,1984
6)http://www.anesth.hama-med.ac.jp/004.10.7.
7)後藤 稠・他編:産業中毒便覧;医歯薬出版株式会社,1992
調査者 古泉秀夫 記入日 2004.10.7.

漆(varnish-bearing sumach)の毒性

木曜日, 8月 16th, 2007
対象物 ウルシ(varnish-bearing sumach)
成分 フェノール性化合物のウルシオール(urushiol)、ハイドロウルシオールの他、マンニトール、ゴム質を含む。その他、urushiolはデヒドロウルシオールと共に存在する。構造式中のRはC15の飽和及 び不飽和アルキル基。無色粘稠な液対。ウルシの成分はこの他にもあり、安南ウルシやビルマウルシの主成分はlaccol及びthitsiolであるとする報告が見られる。
一般的性状 ウルシ(学名:Rhus verniciflua Stokes):ウルシ科ウルシ属の落葉高木。
分  布:中国、インド、ヒマラヤの原産で、日本には奈良時代に渡来し、各地で栽培される。
形  態:幹は太く、樹高は10m位。樹皮は灰色で、老生すると裂け目を生じる。雌雄異株。葉は奇数複葉で枝の先に互生し、秋に紅葉する。6月頃葉腋の円
錐花序に多数の黄緑色の小さな花が咲く。
別  名:漆樹、漆
薬用部分:樹脂(乾漆<カンシツ>)。生漆(キウルシ)は樹幹に切傷を付け浸出した液汁で、暗褐色濃稠の液体。乾漆(カンシツ)は生漆を乾燥したもの。漆は漆性皮膚炎で知られている。薬効・薬理:urushiolはラッカーゼによって酸素と結合し、黒色樹脂状に変わり、急性皮膚炎を起こさせる成分となる。urushiolは大量に投与すると脳中枢神経系の原繊維を強く傷つける。乾漆を駆虫、通経、鎮咳薬に応用する。
使用法:扁桃腺炎には、乾漆を火にくべて煙を吸入する。処方に配合するときは、胃腸壁を損なわないために乾漆を搗き砕いて炒り熱して用いるが、生漆を煎じ
て乾燥させたものの方が安全とされている。
その他:生漆は漆器に塗られるが、そのままでは薬用、服用に向かない。日本では薬用の乾漆は生産されていない。
塗料としての漆は主成分であるurushiolが空気中の酸素と接したとき、 漆中に含まれるラッカーゼと呼ばれる酵素の作用で酸化縮重合することにより、乾燥・硬化する。漆かぶれは、このurushiol原因となって生じるアレル
ギー性接触皮膚炎である。
漆が乾燥・硬化するためには酸素との接触が必須であるが、高湿度であるほど ラッカーゼ活性が高まり、乾燥・硬化が速くなる。漆器製造工程では、漆風呂(ムロ)と呼ばれる高湿度環境(15-25℃・65-85%RH)を保った乾燥室で乾燥が行われる。高温である方が乾燥が速くなるが、高温になりすぎると表面性状・色合い・透明性に不良が生じる。乾燥・硬化して完成した漆器製品表面には、微量の未反応urushiolが残存しているため、漆器製品によるかぶれが報告されている。ただし、高温で乾燥した物ほど、残存urushiolは減少しており、かぶれは生じ難い。また生漆中に蛋白質加水分解物を添加することにより、かぶれ難くした漆が開発されている。
毒性 漆中のurushiolが接触性皮膚炎の原因であり、生漆中に約60-70%が含まれる。パッチテス ト用のurushiolは0.002%であるが、漆かぶれのテストに使用した場合、強陽性を呈する者がある。ただし、仕事で生漆を常時使用する者では、当
初、漆かぶれを経験する事例があるが、その後継続使用することでかぶれに対する耐性あるいは慣れ(hyposensitization)が起こる。漆を経口摂取した場合、全身性の皮膚炎や消化管で吸収されなかった漆により肛 門周囲にかぶれを生じた例も報告されている。
症状 接 触性皮膚炎(漆性皮膚炎):顔面、両上肢、両手などの露出部皮膚に、痒みを伴う激しい紅斑・浮腫・水疱・糜爛を生じる。また、漆皮膚炎を惹起した者では、
マンゴー、ギンナン、カシューナッツによって同様の皮膚炎を惹起する。
処置 かぶれの程度にもよるが、副腎皮質ホルモン剤の使用により、局所の皮膚炎応を抑え、痒みの強い場合に は抗ヒスタミン剤や抗アレルギー剤の内服を行う。
漆が手に付いた場合[1]ラッカーシンナー、アセトン、エタノール等の溶剤で十分に拭き取る。
[2]その後漆付着部をサラダオイルあるいは天ぷら油を付けて揉むように油で洗い、石鹸と流水で洗い流す(溶剤で殆ど取れるが、一部の漆は皮膚に浸透し、かぶ
れの原因となるため油で漆をとる)。
[3]漆を洗浄した後、皮脂の脱落が見られ、乾燥肌になり易い。 白色ワセリン、アズノール軟膏等を塗布し、肌荒れを予防する。
事例 「東吾さんじゃありませんか」
店の奥から、畝源三郎の声がした。
その隣に長助と、蒼白になった若者の顔が見える。「さては、おるいさんが心配しておられるのですな」
源三郎が苦笑し、東吾は傘をつぼめて、上がりかまちに腰を下ろした。
「宮越屋に、なにがあったんだ」
訊かなくとも、青くなっている若者が新助だと想像がつく。
「それが………どうやら、漆でかぶれたらしいですよ」
いささか当惑げに、源三郎がいう。
「漆………」 [平岩弓枝:御宿かわせみ(11)-二十六夜待の殺人-錦繍中山道;文春文庫,2003.1.25.]
備考 殺人目的の毒物として使用されたわけではない。
物語は世話物の世界で、特に殺人の必要はない作品であるが、『漆』が重要な意味を持っているので、毒薬の一つとして参照させていただいた。更に接触性アレルギーの原因として重要な対象物であり、その治療法を調べておくことは、情報を必要とするときに直ちに役立つと思われるので、それなりに意味があるだろうということである。
文献 1) 薬科学大辞典 第2版;広川書店,1990
2)三橋 博・監修:原色牧野和漢薬草大図鑑;北隆館,1988
3)河合敬一:漆器製造従事者にみられる漆かぶれ;日本医事新報,No.4183:92-93(2004.6.26.)
4)河合敬一:漆かぶれの処置と予防;日本医事新報,No.3957(2000.2.26.)
調査者 古泉秀夫 記入日 2004.8.11.

一酸化炭素(carbon monoxide)の毒性

木曜日, 8月 16th, 2007

象物
炭(練炭)燃焼ガス、炭火。
成分 一酸化炭素、[英]carbonmonoxide、[独]Kohlenmonoxyd、[仏]monoxyde de carbone。分子式:CO:28.01。
一般的性状 炭素又は可燃性炭素化合物が不完全燃焼するとき発生する。また家庭に現在供給されている都市ガスの中にも数%含まれている。燃料、有機合成工業では水素との混合物のまま使用されることが多い。無色・無味・無臭の気体。空気に対する比重は0.967。融点:?205℃、沸点:?191.5℃、水に難溶、20℃で100mLの水に2.3mL(STP)。活性炭に容易に吸着される。空気中で点火すれば燃えて二酸化炭素になる。還元性を有し、各種の重金属酸化物を還元して金属にする。鉄、ニッケル、コバルトなどの遷移金属又はその塩と反応して揮発性の金属カルボニル化合物を作る。触媒の存在下で塩素と反応してホスゲンを生じる。
アルカリ水溶液と反応させるとギ酸塩を生じる。
血液中のヘモグロビンと結合してカルボニルヘモグ
ロビンとなり、ヘモグロビンの機能を阻止するので、極めて有毒であり、空気中10ppmでも中毒を起こす。
ヘモグロビンとの結合力は酸素の200-210倍
(約250倍とする報告)の強さを示すので、一酸化炭素を吸入すると中毒を起こし、血液の酸素運搬能力を失わせ、細胞の呼吸を止める。
毒性 空気中10ppmの存在で中毒発現。職場環境気中の許容濃度は50ppm。一酸化炭素がヘモグロビンと結合するため、血液による酸素運搬が障害されることによる。
血液中のCO-Hb(carboxyhemogrobin)が20-40%で重篤な障害が生じ、60-66%になると死亡する。空気中に10-100ppm程度以上あると中毒症状が起こり、1000ppm程度で死に至る。

低濃度で息切れ、頭痛、頭重感、皮膚血管拡張、嘔気、嘔吐、脱力感、疲労感、注意散漫、悪心、眩暈、視力障害、呼吸促進、頻脈等の症状が発現する。
高濃度で失神する。
急性一酸化炭素中毒で死亡した場合、死斑はCO-Hbにより特徴的な鮮紅色を呈する。中毒死したヒトの肌は、体表面から見て鮮やかなピンク色を呈する。
処置 初期治療
速やかに非再呼吸式リザーバ付きフェイスマスクで、又は気管挿管して、100%酸素を投与する。
意識障害、神経症状、一酸化炭素ヘモグロビン(CO-Hb)濃度の高値があれば高圧酸素療法を施行する。
*症状が消失するかCO-Hb濃度が5%以下になるまで、CO-Hb濃度を2-4時間毎に測定する。来院時のCO-Hb濃度で重症度を評価しない。来院時のCO-Hb濃度が正常値であってもCO中毒を否定しない。
対症療法
痙攣・昏睡については対症療法を行う。

「しかし橘屋の佐兵衛どの、口裂け女の噂など、おそらくただの噂に過ぎまい。それらしいことがあったとしても、だいたい幽霊の正体見たり枯れ尾花の、たとえの類であろう。見た者の度胸の程度と語り具合で、小さなことが大きくなり、さらに尾鰭がつき、世の中に広まってしまうのよ。この世で起きている奇怪なできごとを突き詰めれば、謎めいた事件の原因が、ほぼ解明できるはずじゃ。例えば冬には心中が多かろう。心中せねばならぬ理由のない男女が、なんの毒を飲んでやら、待合で心中しておる」
「去年の暮れからこの春までに、京の待合で17組も、心中があったそうどすなあ」
「町奉行所では、簡単に心中と片付けてしまっておるが、寒いからと申し、狭い部屋の障子戸や襖を、ぴたっと閉めているのがよくないのじゃ。夢中で睦み合っているうち、身動きがとれなくなる。土御門家のお屋形さまは、手焙りの炭火の中から、人を死にいたらしめるなにかが、放出されているのではないかともうされておる。くだいていえば悪い気、呪毒じゃな。障子戸を少し開けておけば、呪毒は外に出て人に害を与えない。不可解な心中のもそれだけのことじゃ」
平九郎のいう呪毒とは、一酸化炭素であった。
「なるほど、赤く燃えている炭火が、呪毒を持っているのでございますか」
「さればこそ、火は尊ばねばならぬ。あれほどありがたいものでありながら同時に恐ろしいものはないわ」
「ほんまにそうでございますなあ」
橘屋佐兵衛は、感心した顔でつぶやいた [澤田ふじ子:土御門家・陰陽事件簿-大盗の夜;光文社,2005.12.20.]
備考 一酸化炭素を用いた殺人が行われた訳ではなく、話題として取り上げられただけで、しかも『呪毒』なる言葉で表されている。勿論この当時一酸化炭素中毒者が出たとしても手の施しようはなかったはずである。
しかし、江戸時代の庶民の住居である長屋では、空気の流通が良すぎるのと、暖房に炭や豆炭を使うなどということが出来たのかどうか。ただ今回の例え話は、待合の話で、建物は相当頑丈に造られており、密閉性が高いということと、暖房完備ということなのかもしれない。
今までに読んだ推理小説の中で、一酸化炭素が殺人の道具として使用されたのは、煙突に鳥が巣を作り、その巣の材料で詰まった煙突のおかげで不完全燃焼が起
こり室内に居た人間が死ぬというものである。
一酸化炭素中毒に対する治療法は限定されており、殺人目的で利用された場合には、あるいは救命は難しいかもしれない。
文献 1)薬科学大事典 第2版;廣川書店,1990
2)志田正二・代表編:化学辞典;森北出版株式会社,1999
3)Anthony T.Tu・編著:毒物・中毒用語辞典;化学同人,2005
4)相馬一亥・監修:急性中毒診療ハンドブック;医学書院,2005
調
査者
古泉秀夫 分類 015.11.CAR 記入日 2007.1.4.

イチイ(水松)の毒性

木曜日, 8月 16th, 2007
対象物 イチイ(一位・ 櫟)。別名:アララギ・オンコ・マオウノキ。
成分 アルカロイドのタキシン(taxine)、タキソール(taxol)
一般的性状 イチイ科イチイ属。学名:Taxus baccata。英名:Yew。和名:一位、櫟、水松。イチイの学名であるタクスス(Taxus)は、ギリシャ語の弓を意味するタキソン(taxon)に由来し、英語の毒(toxin)の語源であるといわれる。赤く熟した生の実の部分(果肉)は毒を持っていない。
国内では北海道から九州の深山に生息する。高さ20mにもなる高木で、幹は直 立し、樹皮は赤褐色で、縦に浅く避ける。葉は1.5-3cmの線形、雌雄異株である。赤い果実はへそのある特殊な形をしている。
毒性 イ チイの毒成分は葉(落葉)、枝、種に含まれている。致死量は家畜の種類によって異なるが、牛の場合、生の葉は1-10g/kg体重、馬では約0.5-2g/kg体重、他の動物の感受性は更に低いとされている。
taxineのマウスに対するLD50は硫酸塩として19.7mg/kg(経口)とする報告がされ ている。
taxineは心臓毒、イチイの揮発性油は強烈な刺激性がある。
症状 taxineは急速に胃腸管より吸収される。特に絶食中に経口摂取した場合、吸収が速い。イチイの揮 発性油は、それと認められるほど吸収されないが、消化器壁に局所刺激を及ぼす。消化器から吸収された毒成分は、心臓に作用するが、中毒症状は家畜種だけではなく、個体差が大きい。嘔吐、下痢、酷い腹痛、筋肉衰弱。末梢神経性循環障害、低体温・湿潤した青ざ めた皮膚を伴う。譫妄と痙攣、昏睡と呼吸又は循環障害により死に至る。ただし、死んだように見えた牛が5分後に起きあがり、その後何事もなく過ごした例があるとされる。
処置 * 基本的措置 [催吐は行わない。活性炭/胃洗浄]。
*対症療法 [特に呼吸循環管理]、保存的療法。強い嘔吐の後に輸液、呼吸困難には酸素と補助呼吸。
活性炭・緩下剤の投与(参照):活性炭の投与は薬毒物の摂取後1時間以内が有 効であるが、以下の特徴を持つ薬物では、24-48時間にわたり2-6時間毎に繰り返し投与する方法が推奨されている。
活性炭を繰り返し投与の適応は、分布容量(Vd)が小さく、蛋白結合率の低い物質で、脂溶性、血中でイオン化していない、腸肝循環する、若しくは腸溶剤(徐放剤)である物質(例:テオフィリン、三環系抗うつ薬、フェノバール、オピオイドなど)。
処方例活性炭  50gを微温湯300-500mL(小児では1g/kgの活性炭を生理食塩水10-20mL)に溶解し、服用させる。
その後、半量を3時間毎に24時間まで繰り返し投与。
下剤としてD-ソルビトール液(75%)2mL/kgを投与し、6時間後に排便がなければ半量を繰り替えし使用(保険適用外)。
事例 「ただしこれは、あくまで私の私的な意見だから、そのつもりで聞いてくれたまえ」
「ええ、ええ。心得てますよ。で、やはり毒殺ですか?」
「むろん毒殺にきまっとる。それに、これもやはり私の私的意見だから、きみとわたしのあいだだけのことにしておいてもらわにゃならんが………わしには、その毒の性質もわかっておる」
「え? それはほんとうですか」「タキシンという毒だよ。いいかね、タキシンだ」
「タキシン?聞いたことのない毒ですね」
「そうだろう。めずらしい毒だ!。わたしだって、偶然、三、四週間前に同じような患者を扱ったばかりだから、すぐに気がつきはしたが、ほんとうにめずらしい毒なんだ。そのときは、子供達がままごとをやっていて、水松(イチイ)の木の実を採ってお茶の代用にしたのだ。それが恐ろしい中毒作用を起こしおってね」
「水松の実が?」
「実も葉も、両方ともに有毒なんだ。しかも非常な劇毒でね。もちろん、タキシンというのは植物毒(アルカロイド)だが、まだわたしは、それを毒殺に使用した例を聞いたことがない。したがって、この事件は異常であるとともに、興味深いというものだ………なにからどうやって採ったのかわからんが、使用された毒がタキシンであるのは断言できる。むろん、だれにだって間違いはあるものだから、わたしの言葉をそのまま鵜呑みにしてもらっては困るが、まずわたしの眼に狂いはないと信じるね。きみとしてもおもしろい事件だろう。すぐにその手配に移りたまえ!」 [アガサ・クリスティー(宇野利泰・訳):ポケットにライ麦を;早川書房,2003]
備考 我 が国では生薬としても使用され、神社や庭の植木あるいは生垣にも使用されているということからすると、毒草であるという意識はあまり強くないのではないかと思われるが、英国では毒草としての認識は高いようである。ただし、学名はTaxus baccataと同じであるが、Yew:ヨーロッパイチイされており、英国産のイチイはその生活環境から我が国で生育するイチイと比較して、あるいは毒性が強いのかもしれない。
更に、植物を用いたのではなく、イチイから抽出したtaxineそのものが使用されたのであれば、極く少量でも毒性を発揮するということになるのだろうが、今度は誰がtaxineの純品を抽出したのかということが問題になる。しかし、小説としては、その辺の細事はどうでもいいということかもしれない。
文献 1) 植松 黎:毒草を食べてみた;文藝春秋,2000
2)海老原昭夫:知っておきたい身近な薬草と毒草;薬事日報社,2003
3)小川賢一・他監修:危険・有毒生物;(株)学習研究社,2003
4)鵜飼  卓・監修:第三版急性中毒処置の手引き;薬業時報社,1999
5)白川  充・他共訳:薬物中毒必携 第2版;医歯薬出版株式会社,1989
6) 写真で見る家畜の有毒植物と中毒;http://ss.niah.affrc.go.jp/2005.7.2.
7)奥本裕昭・訳:イギリス植物民俗事典;八坂書房,2001
調査者 古泉秀夫 記入日 2005.7.2.

石見銀山鼠取りの毒性(石見銀山ねずみ取り)

木曜日, 8月 16th, 2007
対象物 石見銀山鼠取り
成分 三酸化砒素(arsenic trioxide)、亜砒酸。As2O3=197.82。『毒薬』。
いわゆる白砒石として天然に産する。700年代に硫化砒素を大気中で熱して製したといわれているが、1000年代になって初めて確実に知られた。医薬品としては15世紀に使われ始め、当初本品を癌の腐食薬として使用し、16世紀には梅毒に、17世紀には再帰熱に、19世紀には癌に対して内用された。
一般的性状 本品を乾燥したものは定量するとき三酸化砒素99.5%を含む。本品は白色の粉末で、臭いはない。本品1gは水60mL又は熱湯15mLに溶け、グリセリンに溶け易くエタノール又はエーテルに殆ど溶けない。本品は塩酸、水酸化ナトリウム試液又は炭酸ナトリウム試液にやや溶け易い(新鮮なときは無晶形で白色の多少透明ガラス様の塊であるが、湿った空気中で乳白色不透明となり、結晶性に変化して比重は小さくなる。無晶形のものは熱するとき、一旦融解して揮散するが、結晶性のものは融解しないで揮散する)。
三酸化砒素には、非晶系、等軸晶系、単斜晶系の結晶又は無色粉末の3種類の態種がある。これらは還元され易く、また酸化されやすい。
[1]非晶系(砒石ガラス:vitreous arsenic):無色、無定型、ガラス状物質。不安定であって徐々に等軸晶系に変形する。As2O3。溶解性:結晶系のものより水に溶け易い。[2]砒華(arsenolite):白色、等軸八面体の小結晶(粉末)。常温において最も安定である。135℃で昇華し、221℃で単斜晶系に転移する。
As2O3。溶解性:水(2.0g/100g水、20℃)に可溶。塩酸、 アルカリ、エタノールに可溶(両性酸化物)。
[3]単斜砒華(claudetite):無色、単斜晶系に属する針状結晶。221℃以上の温度において安定である。As2O3。溶解性:水、酸、アルカリ、エタノールに可溶。
毒性 致死量・中毒量経口(ヒト)LD50: 1.43mg/kg。吸入(ヒト)TCL0: 0.11mg(As)/m3。
経口(マウス)LD50:45mg/kg。皮下(マウ ス)LD:11-13mg/kg。
砒素化合物は無機性あるいは有機性のものでも、SH酵素系に対する代謝障害作用によって微生物の生活過程に干渉する性質のあることが知られている。
常用量:1日1-5mg・極量:1回5mg 1日15mg
慢性骨髄性白血病に対して内服。各種慢性疾患に対して変質剤として用いられた。
鉛、シアン化物と並んで本品は昔から中毒の多い物質である。大量を一度に摂取した場合にみられる急性中毒については、大人に対する中毒量は5-50mg、致死量は100-300mgといわれ、大量しかも吸収が甚だ速い場合には、著しく急激な経過をたどり(電撃型)、血圧低下、頻脈、浅脈など虚脱症状を示す循環障害と、痙攣、麻痺、昏睡など中枢神経障害を起こして、速いものでは24時間以内に死亡する。急性中毒の定型的なものは胃腸型と呼ばれるもので、摂取後速いものでは2-3時間、遅い場合には数日後から発症するが、頑固な嘔吐、下痢が現れ、この嘔吐、下痢は甚だ激しくてコレラに類似するのでコレラ型とも称される。頻回の下痢によって体内水分の消失を来たし、蛋白尿が現れて腎障害を思わせ、また横断などの肝障害の徴候を現す

少量の砒素を長期連用して起こる慢性砒素中毒では、発熱、消化管の慢性炎症による嘔吐、下痢、腹痛などを訴え、特異な皮膚の変化すなわち黒皮症、発疹、角化などがみられ、骨髄が障害されて貧血、無顆粒細胞症(agranulocytosis)を起こす。また神経が侵されて多発性神経炎の起こることもある。
肝臓、腎臓、心臓など重要臓器の変性を起こす。

症状 急 性及び亜急性中毒の症状として、刺激作用及び腐食作用があり、呼吸器系症状として咳嗽、呼吸困難、胸痛の他、眩暈、頭痛、四肢脱力感、その後、嘔気、嘔吐、腹部疝痛、下痢、全身疼痛、麻痺などがある。三酸化砒素を含む粉塵、フュームに曝露することによりしばしば皮膚及び粘膜の刺激症状が伴い、“亜砒まけ”、“砒素まけ”と俗称される接触性及びアレルギー性皮膚炎、鼻炎、喉咽頭炎、気管炎、気管支炎及び結膜炎を示す。
一般に成人で70-180mgの三酸化砒素が致死量と考えられている。
主症状
ニンニク臭、嚥下困難、頸部絞扼感、咽頭・食道・胃の灼熱感は、服毒直後から出現。嘔吐、激しい下痢、眩暈、不穏、昏睡、脱水による循環障害。痙攣、末梢
神経麻痺。
全身性金属味、口腔・咽頭の乾燥感。
嚥下困難、嘔気、嘔吐、腹部疝痛、下痢、腹鳴、数時間-1日後にコレラ様便、 脱水、黄疸、乏尿。
咳嗽、呼吸困難、胸痛。
眩暈、頭痛、四肢脱力感、四肢疼痛、痙攣、昏睡、精神異常。
循環不全。
局所性

接触性・アレルギー性皮膚炎。
鼻炎、喉咽頭炎、気管炎、気管支炎。
結膜炎。

処置 胃 洗浄の後、塩類下剤投与。腹痛にモルヒネ筋注。BAL 5mg/kg/4時間を時間続ける。輸液、呼吸管理、腎機能障害高度なら人工透析。
全身管理低血圧が伴っていることが多く、まず酸素吸入、大量輸液とともに必要に応じてカテコラミンを投与して血圧の維持を図る(意識清明で重症感がないことがあり注意を要する)。
砒素体内からの排泄
経口摂取の場合、一般の薬物中毒に準じて胃洗浄、活性炭及び下剤の投与を行うが、悪心・嘔吐が強く胃洗浄が必要ないこともある。砒素は尿中への排泄が良好であり、腎不全の徴候が見られない限り血液透析は必要ない。
薬物療法
BAL(British anti-Lewisite dimercaprol バル注)を用いたキレート療法を行う。症状がある場合は、砒素の測定結果を待つことなく可能な限り早期から使用する。
バル注 :1回2.5-5mg/kg  4時間毎に筋注、2日目からは1回2.5mg/kg4時間毎に1-2日間投与、以降は、症状と尿中への砒素排出量をみながら減量していく。キレート療法は尿中の砒素排出量が50μg/日以下になるまで継続する。
バル注の副作用として、悪心・嘔吐、高血圧、頻脈、頭痛、発汗などがあり、中毒症状との鑑別に注意。
事例 「死 因は、なんだった」
「石見銀山のねずみ取りだろうと………」
人形を扱う店で、なによりも恐れるのは、ねずみにかじられることであった。
「十軒店町の店では、どこも石見銀山のねずみ取りを使っているそうで………」
肩を並べて大通りを歩き出した。
「源さん、まず、翁屋から行ってみたいが………」
[平岩弓枝:御宿かわせみ(16)吉野家の女房;文藝春秋,1997]
備考 岩 見銀山とは、1533年代に現在の島根県太田市で開山された銀山の名称で、銀や鉛を採掘する際に黒灰食の土塊状の鉱石が産出するが、この鉱物は大量の砒素化合物を含み、砒石と呼ばれていた。この砒石を細かに砕いて殺鼠剤としたものが「岩見銀山」と呼ばれて販売されていた。
別名:砒石、白砒、砒霜(ひそう)、亜砒酸。
文献 1) 新明解国語辞典 第5版;三省堂,1997
2)第7改正日本薬局方解説書;広川書店,1961
3)後藤 稠・他編:産業中毒便覧(増補版);医歯薬出版株式会社,19924)西 勝英・監:薬・毒物中毒救急マニュアル改訂第6版;医薬ジャーナル社,2001
5)山口 徹・総編集:今日の治療指針;医学書院,2004
調査者 古泉秀夫 記入日 2004.3. 10.

一般用医薬品(眼科用薬)の催奇形性について

木曜日, 8月 16th, 2007

KW:催奇形性・催奇性・奇形児・眼科用薬・一般用医薬品・OTC・妊婦・ 絶対過敏期・相対過敏期

「眼科用薬の製造(輸入)承認基準」(昭和61年7月29日)において、眼 科用薬の範囲・基準が規定されている。使用上の注意については、「昭和61年7月29日付文書が報告されているが、「妊婦への投与」については、特に医 師・薬剤師への相談事項としての記載はされていない。但し、点眼された薬剤が涙腺を経由し、口腔内に排出され、全身性の副作用を惹起することがあるとの報 告が見られるため、使用者からの質問があった場合、回答の根拠となるデータが必要であると考え、調査したので以下に報告する。

  • 妊娠1カ月:最終月経の開始日を0週0日とし、4週間が1カ月、0週0日-3週6日まで
  • 妊娠2カ月:4週0日?7週6日まで
  • 安 全 期 :月経周期28日型の場合、月経初日から33日目(3週末まで)→残留性のない薬剤の場合、催奇形性の可能性はない。
  • 絶対過敏期:最終月経開始日から28日-50日目(妊娠4週-7週末まで)→胎児の中枢神経、心臓、消化 器、四肢などの重要臓器が発生・分化し、催奇形に対し最も敏感な時期。
  • 相対過敏期:51日-84日目
[分類]・薬剤名 評価 概要
[239]allantoin

アラントイン

[適]消炎・収斂剤。抗刺激剤・抗

アレルギー剤

別名:

5-ureidohydantoin

5-carbamidohydantoin

glyxyldiureide

cordianine

data未詳

推定無影響

■19世紀のはじめ、ウシの羊膜(Allantois)の分泌液中にアラントインを発見し、この名 が付けられた。アラントインの治療的性質は、それ以前から知られており、昔農夫らが湿地に生える多年生植物の地下茎を傷や潰瘍の治療に用いており「仲直り させる性質を持っている」のギリシャ語から転化したSymphtumという名称 を付した。これがComfrey(和名: ヒレハリソウ)である。この植物の根を砕いて得た汁を、吐血患者に服用させると出血が止まり、痛風で痛む部分の全面に塗布すると 疼痛を緩和させる作用があることも知られていた。Saint-Quentinの戦争で蛆のわ いている戦傷は、そうでない傷よりも速やかに治癒することが認められ、一時は”ウジ療法”という名前まで付いてもてはやされた時代もあった。アラントイン は、細胞の増殖が盛んに行われている場合に、しばしば見受けられる。本品は壊死組織又は鱗屑を除去(剥離)する作用があると同時に、新しい正常な皮膚組織 を助長するので、酷い病状の部分に対すると同様に正常皮膚にも使用できる。

■本品は創傷、潰瘍、火傷等の手当、湿疹等の皮膚疾患に用いられ、速やかな経過を取り、膿汁集積を 敏にし最後に膿汁が全体として消失し、多くの場合切開の必要がないので治癒も速い。アラントインの癒傷の特徴として瘢痕組織が柔軟で、ケロイド形成がない ことである。また刺激性あるいはアレルギー性のものを使用しても、抗刺激作用を示すので刺激性やアレルギー作用を抑制する。化粧品原料として口紅の刺激 性・アレルギー性軽減目的に0.075-0.1%のアラントインが配合されるとする報告がされている(13。

■上記の報告からアラントイン配合の口紅を使用している女性から、特に奇形児出生の増加が見られた とする報告は知られていない。

[261]alkylpolyaminoethylglycine

アルキルポリアミノエチルグリシ ン

[適]殺菌消毒剤

data未詳 ■本薬の塩酸塩を配合するハイパールNo.3・No.20(大日本)の添付文書(1995.9.改 訂)中に妊婦への投与に関する注意事項は何等記載されていない。本薬は経口摂取を目的としない消毒剤であり、催奇形性に関する資料の入手はできなかった。
[332]ε-aminocaproic acid

イプシロン-アミノカプロン酸

[適]抗プラスミン剤

data未詳 ■動物において催奇形性のあることが報告されているが、ヒトにおける先天性奇形の報告はない。原発 的な繊維素溶解によって惹起されたと証明されうる凝血症が発生していないならば、妊娠中に使用されるべきではない(7。

■「妊娠中の投与に関する安全性は確立していないので、妊娠又は妊娠している可能性のある婦人には 投与しないことが望ましい」[イプシロンG(第一)添付文書,1996.3.改訂]

[221]aminoethylsulfonic acid

アミノエチルスルホン酸

[適]肝・循環機能改善剤

data未詳

原則無影響

■本薬を主薬とするタウリン散(大正製薬)の添付文書(1995.11.改訂)中に妊婦への投与に 関する使用上の注意は何等記載されていない。本薬は含硫アミノ酸であり、ヒトを含め各種動物の体内に存在することが認められると報告されている。その意味 では本剤の使用が直ちに胎児に障害をもたらすとは考えられない。
[239]azlene sulfonate

アズレンスルホン酸ナトリウム

[適]消炎剤

推定無影響 ■キク科植物カミツレ(Matricaria Chsodium amomilla L.)の有効成分である。本薬を主薬とするアズノールST(日本新薬)の添付文書(1996.5.改訂)中に、妊婦への投与に関する使用上の注意は何等記 載されていない。ラット、ウサギの妊娠前、妊娠初期及び胎仔の器官形成期に10-100mg/kg/日を経口投与して、母体と胎仔ならびに新生仔の発育に 対する影響を検討した試験では、本剤はいずれの項目においても特記すべ き異常所見を示さず、催奇形作用も認められていない(3。
[231]berberine chloride

塩化ベルベリン

[適]止瀉剤

推定無影響 ■塩化ベルベリンの製剤であるフェロベリン散(カネボウ薬品)の添付文書(1997.6. 改訂)中に妊婦への投与に関する使用上の注意事項は何等記載されていない。

■(ベルベリンとして)OTC薬の消化管用剤を、奇形発生危険度が高い絶対過敏期に服用した4例 で、いずれも奇形などない健常児を出産(3。

[231]berberine sulfate

硫酸ベルベリン

[適]止瀉剤

[131]boric acid

ホウ酸

[適]殺菌・防腐剤

data未詳 妊婦への投与については「規定した資料に、該当する記載がない」とされている(5。
[321]calcium chloride

塩化カルシウム

[適]電解質補正用剤

原則無影響 ■カルシウムは体内構成成分の一つであり、豆腐製造の際の凝固剤として食品添加物として承認されて いる(12。

■炭酸カルシウムとして:妊娠中期・後期における炭酸カルシウムの使用は、慢性的大量投与が行われ ない限り安全である。胎児の低マグネシウム血症、深部腱反射の更新および筋トーヌスの更新が報告されている(7

[313]calcium pantothenate

パントテン酸カルシウム

[適]パントテン酸欠乏症

□推奨されている1日投与量以上又は服用時期によって→C

A→C

C→

1日推奨許容量の範囲内であれば原則無影響

A:ヒトの妊娠初期3カ月間の対照試験で、胎児への危険性は証明されず、またその後の妊娠期間でも 危険であるという証拠はない[FDA](3。

C:動物生殖試験では、胎仔に催奇形性、胎仔毒性、その他の有害作用があることが証明されており、 ヒトでの対照試験が実施されていないもの。あるいはヒト、動物ともに試験は実施されていないもの。この分類に属する薬剤は、潜在的な利益が胎児への潜在的 危険性よりも大きい場合にのみ使用すること[FDA](3。

[441]chlorpheniramine maleate

マレイン酸クロルフェニラミン

[適]抗ヒスタミン薬

C →

A→

推定無影響

C:動物生殖試験では、胎仔に催奇形性、胎仔毒性、その他の有害作用があることが証明されており、 ヒトでの対照試験が実施されていないもの。あるいはヒト、動物ともに試験は実施されていないもの。この分類に属する薬剤は、潜在的な利益が胎児への潜在的 危険性よりも大きい場合にのみ使用すること[FDA](3。

A:妊婦又は妊娠可能な年齢層の女性多数例に使用されてきたが、使用によって奇形発現の頻度が増加 したという証拠は得られておらず、ヒト胎児に対する他の直接的・間接的な有害作用も証明されていない[ADEC](4。

■妊娠中の投与に関する安全性は確立していないので、妊婦又は妊娠している可能性のある婦人には、 治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること(5。

■ラットとウサギでヒト常用量の数十倍に当たる量を投与した試験で、催奇形性は認めなかった(3。

■妊婦の使用に関して、催奇形性あるいは胎児毒性を示唆する症例報告あるいは疫学調査はない(3。

■chlorpheniramineに体内で曝露された児に、先天性の奇形がみられる頻度は増加し ないとするレトロスペクティブな調査が報告(3。

■奇形発生の高い絶対過敏期あるいは相対的過敏期に、本剤配合薬を服用した4例で健常児出産(3。

[131]cyanocobalamin

シアノコバラミン

[適]ビタミンB12欠乏症

□推奨されている1日投与量以上又は服用時期によって→C

A→C

C→

1日推奨許容量の範囲内であれば原則無影響

A:ヒトの妊娠初期3カ月間の対照試験で、胎児への危険性は証明されず、またその後の妊娠期間でも 危険であるという証拠はない[FDA](3。

C:動物生殖試験では、胎仔に催奇形性、胎仔毒性、その他の有害作用があることが証明されており、 ヒトでの対照試験が実施されていないもの。あるいはヒト、動物ともに試験は実施されていないもの。この分類に属する薬剤は、潜在的な利益が胎児への潜在的 危険性よりも大きい場合にのみ使用すること[FDA](3。

[441]diphenhydramine hydrochloride

塩酸ジフェンヒドラミン

[適]抗ヒスタミン薬

C →

A→

ジフェンヒドラミンとして

C:動物生殖試験では、胎仔に催奇形性、胎仔毒性、その他の有害作用があることが証明されており、 ヒトでの対照試験が実施されていないもの。あるいはヒト、動物ともに試験は実施されていないもの。この分類に属する薬剤は、潜在的な利益が胎児への潜在的 危険性よりも大きい場合にのみ使用すること[FDA](3。

A:妊婦又は妊娠可能な年齢層の女性多数例に使用されてきたが、使用によって奇形発現の頻度が増加 したという証拠は得られておらず、ヒト胎児に対する他の直接的・間接的な有害作用も証明されていない[ADEC](4。

■妊娠中の投与に関する安全性は確立していないので、妊婦又は妊娠している可能性のある婦人には投 与しないことが望ましい(5。

■diphenhydramine の服用により兎唇の発生が高まる可能性を無視できないとの疫学調査結果が報告されている(5。

■50,282組の母子に関する調査で第1三半期に595組が本剤に曝露された。また、妊娠中何ら かの時期に本剤に曝露された母子が、2,948組あった。いずれの群においても奇形との関連性を示唆する証拠は認められなかった。また数種の奇形と関連し ている可能性はあるが、統計的な有意さは明らかでない(3。

■599例の口蓋裂を有する児の群と590例の口蓋裂のない児の群を比較した調査では、第1三半期 に子宮内でdiphenhydramineに曝露されたのは 前者で20例、後者では6例と有意差がみられた。母親のdiphenhydramine服用と口蓋裂の発生に統計的に有意な関連が認められたの報告(3。

■1971年の奇形を有する児の調査では、第1三半期に抗ヒスタミン剤に曝露された児に、奇形のみ られる頻度は対照群と比較してむしろ少なかったとの報告。本調査でdiphenhydramineは2番目に繁用されていた(3。

■6,509人の母親の調査で、第1三半期に本剤を使用した270例では、薬剤の使用と催奇形に、 関連性は認められなかった(3。

■妊娠中にジフェンヒドラミンを毎日150mg/kg服していた母親から産まれた子供に、離脱症状として全身のふるえと下痢が発生したとの報告がある。フェノバルビタールに よる治療で症状は改善した(3。

[221]ephedrin hydrochloride

塩酸エフェドリン

[適]気管支拡張薬・喘息治療薬

C →

A→

推定無影響

C:動物生殖試験では、胎仔に催奇形性、胎仔毒性、その他の有害作用があることが証明されており、 ヒトでの対照試験が実施されていないもの。あるいはヒト、動物ともに試験は実施されていないもの。この分類に属する薬剤は、潜在的な利益が胎児への潜在的 危険性よりも大きい場合にのみ使用すること[FDA](3。

A:妊婦又は妊娠可能な年齢層の女性多数例に使用されてきたが、使用によって奇形発現の頻度が増加 したという証拠は得られておらず、ヒト胎児に対する他の直接的・間接的な有害作用も証明されていない[ADEC](4。

■(OTC鎮咳去痰剤として)第1三半期に本剤を使用した373例と妊娠の時期に関係なく使用した 873例では、大小の奇形や個々の欠損との関連は示されなかった。しかし、第1三半期に交感神経刺激剤を使用した場合は、小奇形(生命には別状のない奇 形、皮膚欠損)、鼠径ヘルニア、内反足との関係が見られた(3。

■交感神経作動剤の妊娠中の使用は一般に安全であるが、本態性高血圧あるいは妊娠中毒症の患者にお いては、全身血圧を上昇させる可能性があるので、これらでは避けられるべきである。また、胎児予備能が低い状態においては、避けられるべきである(子宮内 のジストレスが促進される)。妊娠に特有な母体の副作用はない。これらの物質は胎盤関門と脳血液関門を通過し、胎児の中枢神経効果として、母体への投与後 に活動亢進やや興奮性が現れることがある。胎児はまた頻脈を発生することがある。OTC製剤中の交感神経作動薬の使用と関連した先天性奇形は報告されてい ない(7。

[131]epinephrine

エピネフリン

[適]血管収縮剤

C→ C:動物生殖試験では、胎仔に催奇形性、胎仔毒性、その他の有害作用があることが証明されており、 ヒトでの対照試験が実施されていないもの。あるいはヒト、動物ともに試験は実施されていないもの。この分類に属する薬剤は、潜在的な利益が胎児への潜在的 危険性よりも大きい場合にのみ使用すること[FDA](3。
[131]epinephrine hydrochloride

塩酸エピネフリン

[適]血管収縮剤

 
[131]flavin adenine dinucleotide sodium

フラビンアデニンヌクレオチドナトリウム

[適]ビタミンB2欠乏症治療剤

A→

1日推奨許容量の範囲内であれば原則無影響

A:ヒトの妊娠初期3カ月間の対照試験で、胎児への危険性は証明されず、またその後の妊娠期間でも 危険であるという証拠はない[FDA](3。

■中程度の欠乏により、囓歯類の胎仔奇形が発生しているが、ヒトにおいては、その欠乏と奇形の間の 関連性は認められていない(7。

[323]glucose

ブドウ糖

[適]糖質用剤

原則無影響 ■栄養源として、飲食物等からの摂取がされるものであり、ブドウ糖の使用により奇形児の発生が増加 したとする報告は知られていない。
[131]glycyrrhizinate dipotassium

グリチルリチン酸二カリウム

[適]抗アレルギー薬

原則無影響 ■グリチルレチン酸として:妊娠中に使用した場合の有害作用、及び安全性を示唆する疫学調査の報告 はない(3。

■グリチルリチン酸二ナトリウムは、食品添加物として承認されている。本剤は甘草中の成分であり、 味噌及び醤油の甘味料として添加されている(12。従って、妊娠初期又は妊娠期間中、グリチルリチン酸に全く曝露しないとは考えられず、そのことにより奇 形発生率が増加したとする報告も知られていない。

[799 ]hydroxy ethylcellulose

ヒドロキシエチルセルロース

[適]安定化剤・乳化剤

推定無影響 ■容積増量剤の妊娠中の使用は安全である。妊娠に特有な母体への作用はない(7。
[799 ]hydroxy propyl methylcelluloseヒドロキシプロピルメチルセルロ ース

[適]安定化剤・乳化剤

[131]lysozyme chloride

塩化リゾチーム

原則無影響 ■医療用医薬品の添付文書中に、妊婦に対する注意事項の記載無し。ラットの妊娠前・初期、器官形成 期、周産・授乳期に50-4000mg/kg/日をそれぞれ経口投与したところ、催奇形性は認められず、新生児の発育も順調であった(6。

■リゾチームは涙液・鼻汁・白血球等生体内に広く分布するものであり、また本剤は卵白から生成した 製剤であるため、曝露による催奇形性の可能性は殆どないと考えられる。

[321]magnesium L-asparate

L-アスパラギン酸マグネシウム

[適]マグネシウム補給剤

原則無影響 ■本薬を主剤とするアスパラ-CA錠(田辺製薬)の添付文書(1996.7.改訂)中に、妊婦への 投与に関する注意事項は何等記載されていない。妊娠中特別に配慮する事項はない(7。

■マグネシウムは飲食物を経由して生体内に取り込まれる物質であり、そのことを理由にして催奇形性 発現の可能性を示唆する報告は知られていない。

[124]magnesium sulfate

硫酸マグネシウム

[適]緩下剤

原則無影響 ■天然には海水、鉱泉中に含まれる。醸造用添加物として、醸造用水のマグネシウム補給用の硬化剤と して使用する。醗酵助成剤、醗酵時の微生物無機栄養源(12。

■鉱泉中に含まれるとされており、その意味では、妊娠中の女性が本薬に全く曝露されなかったという ことは考えられない。またその結果奇形児の発生が増加したとする報告も知られていない。

[799]methycellulose

メチルセルロース

[適]安定化剤・乳化剤

推定無影響 ■容積増量剤の妊娠中の使用は安全である。妊娠に特有な母体への作用はない(7。
[222]dl-methylephedrine hydrochlor ide

dl-塩酸メチルエフェドリン

[適]局所血管収縮剤

C→

A →

推定無影響

C:塩酸エフェドリンとして→動物生殖試験では、胎仔に催奇形性、胎仔毒性、その他の有害作用があ ることが証明されており、ヒトでの対照試験が実施されていないもの。あるいはヒト、動物ともに試験は実施されていないもの。この分類に属する薬剤は、潜在 的な利益が胎児への潜在的危険性よりも大きい場合にのみ使用すること[FDA](3。

A:妊婦又は妊娠可能な年齢層の女性多数例に使用されてきたが、使用によって奇形発現の頻度が増加したという証拠は得られておらず、ヒト胎児に対する他の直接的・間 接的な有害作用も証明されていない[ADEC](4。

■妊娠中の投与に関する安全性は確立していないので、妊婦又は妊娠ている可能性のある婦人には、療 上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること(5。

■生薬エキス製剤については、生殖試験の報告はされていない(3。

[132]naphazoline hydrochloride

塩酸ナファゾリン

[適]局所血管収縮剤

data未詳 ■妊娠中の投与に関する安全性未確立治療上の有益性(5。

■ヒトについての問題は実証されていない。本剤は全身性に吸収されるので、治療上の有益性が危険性 を上回ると判断される場合のみ投与すること(8。

[132]naphazoline nitrate

硝酸ナファゾリン

[適]局所血管収縮剤

[131]neostigmine methylsulfate

メチル硫酸ネオスチグミン

[適]抗コリンエステラーゼ剤

B2 → B2:ネオスチグミンとして→妊婦又は妊娠可能な年齢層の女性に対する使用経験はまだ限られている が、奇形発現頻度の増加はなく、ヒト胎児に対する直接的・間接的有害作用は観察されていない。-まだ不適切・不十分な動物試験しか行われていないという懸 念はあるが、現在入手しうるデータでは、胎児に対する有害作用の頻度を増大するという証拠は得られていない[ADEC](4。
[313]panthenol

パンテノール

[適]パントテン酸欠乏症治療剤

□推奨されている1日投与量以上又は服用時期によって→C

A→C

C→

1日推奨許容量の範囲内であれば原則無影響

A:ヒトの妊娠初期3カ月間の対照試験で、胎児への危険性は証明されず、またその後の妊娠期間でも 危険であるという証拠はない[FDA](3。

C:動物生殖試験では、胎仔に催奇形性、胎仔毒性、その他の有害作用があることが証明されており、 ヒトでの対照試験が実施されていないもの。あるいはヒト、動物ともに試験は実施されていないもの。この分類に属する薬剤は、潜在的な利益が胎児への潜在的 危険性よりも大きい場合にのみ使用すること[FDA](3。

■水溶性ビタミン剤。食事からの摂取が行われる物質であり、催奇形性の原因となり得る証拠はない。

[131]phenylephrine hydrochloride

塩酸フェニレフリン

[適]昇圧剤・血管収縮剤

B2 → B2:フェニレフリンとして→妊婦又は妊娠可能な年齢層の女性に対する使用経験はまだ限られている が、奇形発現頻度の増加はなく、ヒト胎児に対する直接・間接的有害作用は観察されていない。-まだ不適切・不十分な動物試験しか行われていないという懸念 はあるが、現在入手しうるデータでは、胎児に対する有害作用の頻度を増大するという証拠は得られていない[ADEC](4。

■外用で使用した場合の催奇形性に関する報告はないが、幼児の両眼に点眼したところ、顔面蒼白とな り血圧が上昇したという報告がある。3)

[711]polyvidone→povidone

ポリビニルピロリドン→ポビドン

[適]粘結剤・皮膜形成剤・分散剤・懸濁剤(製剤原料)

data未詳

原則無影響

■ポリビニルピロリドンは、1930年にイツで合成され、第二次世界大戦中、代用血漿として広く使 用されていたビニルピロリドンの重合体で、分子量約25000、約40000及び約120000のものが局方で用いられる。現在医療用には錠剤の粘結剤・ 皮膜形成剤等として使用(14されており、仮に本品が奇形発生の原因物質とすれば、既に多くの報告がされているはずであるが、現在までにそのような報告は 知られていない。
[711]polyvinyl alcohol

ポリビニルアルコール

[適]製剤原料

[321]potassium L-asparate

L-アスパラギン酸カリウム

[適]カリウム補給剤

原則無影響 ■妊娠中の投与に関する安全性は確立していないので、妊婦又は妊娠している可能性のある婦人には治 療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること[アスパラK散・錠添付文書,1996.9.改訂]

■世界的にはシーズニングの添加剤、ゼリーなどに用いられるカラギーナンのゲル化剤として以前から 広く使用されているが、最近、高血圧の予防、肥満の予防を目的として家庭用塩味料とされている。他にパン類、サラダドレッシング類、ソース、ケチャップ、 ドライミート、チーズ、ソーセイジ、粉末調味料、ポテトチップス等加工食品に用いられた例も報告されている。また、人体には170-180gのカリウムが 存在する(12とする報告から、広範な摂取が考えられるが、その結果、奇形発生が増加したとする報告は知られていない。

[322]potassium chloride

塩化カリウム

[適]カリウム補給剤

[321]potassium・magnesiumL-asparate

L-アスパラギン酸マグネシウム・ カリウム

[適]マグネシウム・カリウム補給剤

data未詳 ■妊娠中の投与に関する安全性は確立していないので、妊婦又は妊娠している可能性のある婦人には治 療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること[アスパラ注射液添付文書,1995.9.改訂]
[321]potassium phosphate monobasic

リン酸二水素カリウム

[適]カリウム補給剤

原則無影響 ■醸造用、食品製造用、調味料、強化剤として用いられる。清酒醸造の際、洗米、浸漬などによって失 われるカリウムの強化に用いられる。カリウム10ppmの強化には水100Lに3.5g、リン酸10ppmの強化には1gが加えられる。カリウムの不足は 麹菌、酵母の増殖を妨げる。合成清酒の味覚調整の目的に0.005-0.01%使用される。乳製品、肉製品にも用いられる(12とする報告から、広範な摂 取が考えられるが、その結果、奇形発生が増加したとする報告は知られていない。
[313]pyridoxine hydrochloride

塩酸ピリドキシン

[適]ビタミンB6製剤

□推奨されている1日投与量以上、又は服用時期によって→C

A→C

C→

1日推奨許容量の範囲内であれば原則無影響

A:ヒトの妊娠初期3カ月間の対照試で、胎児への危険性は証明されず、またその後の妊娠期間でも危 険であるという証拠はない[FDA](3。

C:動物生殖試験では、胎仔に催奇形、胎仔毒性、その他の有害作用があることが証明されており、ヒ トでの対照試験が実施されていないもの。あるいはヒト、動物ともに試験は実施されていないもの。この分類に属する薬剤は、潜在的な利益が胎児への潜在的危 険性よりも大きい場合にのみ使用すること[FDA](3。

■食物から摂取されるビタミン剤であるため、広範な摂取が考えられるがその結果、奇形発生が増加し たとする報告は知られていない。

[311]retinol acetate

酢酸レチノール

[適]ビタミンA製剤

A→X

X→

D →

1日推奨許容量の範囲内であれば原則無影響

A:ヒトの妊娠初期3カ月間の対照試験で、胎児への危険性は証明されず、またその後の妊娠期間でも 危険であるという証拠はない[FDA](3。

X:動物又はヒトでの試験で胎児異常が証明されている場合、あるいはヒトでの使用経験上胎児への危 険性の証拠がある場合、又はその両方の場合で、この薬剤を妊婦に使用することは、他のどんな利益よりも明らかに危険性の大きいもの。ここに分類される薬剤 は、妊婦又は妊娠する可能性のある婦人には禁忌である。

D:ヒト胎児に作用して奇形あるいは可逆的障害の発現頻度を高める薬、あるいは、高めたことが推定 される薬、あるいは高めるであろうことが強く疑われる薬。これらの薬は薬理学的な副作用を伴うことがある。過量のビタミンA摂取は、先天障害を引き起こす ことがある。飲む前に、ビタミンAを補う必要があるのかどうかを考えてみること。通常、オーストラリア人の食事は、ビタミンAの1日標準必要量 2500I.U.を十分に含んでいる[ADEC](4。

■FDAリスクファクターでは、1日10000I.U.以上で[X]、8000I.U.では[A] に分類。疫学調査及び症例報告で、実際に奇形が報告されている用量は、1日25000I.U.以上で、潜在的催奇形性を示す用量は1日25000I.U. 以上とする見解も見られる(3。

[311]retinol palmitate

パルミチン酸レチノール

[適]ビタミンA製剤

□ビタミンA主薬製剤の場合1日最大分量はビタミンAとして4000I.U.。1日最少分量は 2000I.U.

□主薬製剤以外のビタミンA配合の場合、1日最大分量はビタミンAとして2000I.U.。1日最 少分量は500I.U.。

[234]sodium bicarbonate

炭酸水素ナトリウム

[適]制酸剤

原則無影響 ■ヒトにおける報告はないが、慢性的な使用は、全身性アルカローシスになる恐れがある。また、ナト リウム貯留により浮腫や体重増加の恐れがあるので、治療の有用性が有益性を上回るか否かを考慮する(5。

■妊娠初期3カ月-制酸剤は薬物監視予測研究薬の中には含まれていない。しかしながら、ある症例で は妊娠56日間の制酸剤の服用と、重度あるいは軽度の先天異常児の発生との間には相関があるとする回顧的な比較症例がある。しかし、先天異常児の発生の増 加と特定の制酸剤との間には個々の関係はない。

■重質炭酸イオンは全身的に吸収されるので、治療上の有益性が危険性を上回ると判断さる場合のみ投 与すること。長期使用により全身性アルカローシスが生じることがある。吸収されたナトリウムは浮腫や体重増加の原因になることがある。非経口用剤、動物あ るいはヒトにおいての研究はなされていないので、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合のみ投与すること(8。

■膨張剤として単独又は配合して使用される。単独で用いる場合には、炭酸ナトリウムが残って食品を アルカリ性にする。ベーキングパウダーには殆ど本品が主剤として使用されている(12。

[321]sodium carbonate

炭酸ナトリウム

[適]無機塩類

原則無影響 ■アミノ酸醤油-醤油製造時に中和剤として大量に用いられる。また「かんすい」の主要原料として炭 酸カリウム、リン酸類のカリウム若しくはナトリウム塩などと共に用いられる。特に「固形かんすい」は、大部分炭酸ナトリウムが主成分(12と報告されてい る。その意味では広範な摂取が考えられるが、その結果、奇形発生が増加したとする報告は知られていない。
[321]sodium chloride

塩化ナトリウム

[適]無機塩類

原則無影響 ■塩化ナトリウムは、通常食品から摂取される。その意味では広範な摂取が考えられるが、その結果、 奇形発生が増加したとする報告は知られていない。
[234]sodium chondroitin sulfate

コンドロイチン硫酸ナトリウム

[適]コンドロイチン硫酸欠乏症の予防・治療

原則無影響 ■コンドロイチン硫酸は、軟骨、骨、血管壁その他の結合組織に含まれ、動物体内に広く分布してい る。本品は魚肉ソーセージ、マヨネーズ、ドレッシングに対してのみ使用が認められ乳化安定剤、保水剤として添加(12.

■日常的に摂食する食品に添加、その意味では広範な摂取が考えられるが、その結果、奇形発生が増加 したとする報告は知られていない。

[313]sodium pantothenate

パントテン酸ナトリウム

[適]パントテン酸欠乏症の予防 ・治療

□推奨されている1日投与量以上又は服用時期によって→C

□主薬製剤以外の配合の場合、1日最大分量はパンテノール、パントテン酸カルシウム、パントテン酸 ナトリウムとして30mg、1日最少分量は5mg。

A→C

C→

1日推奨許容量の範囲内であれば原則無影響

A:ヒトの妊娠初期3カ月間の対照試験で、胎児への危険性は証明されず、またその後の妊娠期間でも 危険であるという証拠はない[FDA](3。

C:動物生殖試験では、胎仔に催奇形性、胎仔毒性、その他の有害作用があることが証明されており、 ヒトでの対照試験が実施されていないもの。あるいはヒト、動物ともに試験は実施されていないもの。この分類に属する薬剤は、潜在的な利益が胎児への潜在的 危険性よりも大きい場合にのみ使用すること[FDA](3。

■パントテン酸は、水溶性ビタミンでCoenzyme Aの構成成分の一つである。パントテン酸カルシウムは、使用基準が定められており、食品の製造又は加工上必要不可欠な場合、又は栄養の目的に使用する以外は使用してはならない。その量は Caとして1%以下である(12。

■食品に添加されており、その意味では広範な摂取が考えられるが、その結果、奇形発生が増加したと する報告は知られていない。

[321]sodium phosphate dibasic

リン酸水素ナトリウム

[適]無機塩類

原則無影響 ■「リン酸二水素ナトリウム」は醸造用、食品製造用として緩衝剤、中和剤に用いられる。その他チー ズ等の乳製品、ハム、ソーセージなどの食肉・魚肉製品に安定剤、結着剤として使用され、コンビーフには0.4%くらい用いられる(12。

■食品に添加されており、その意味では広範な摂取が考えられるが、その結果、奇形発生が増加したと する報告は知られていない。

[321]sodium phosphate monobasic

リン酸二水素ナトリウム

[適]無機塩類

[621]sodium sulfisomidine

スルフィソミジンナトリウム

[適]サルファ剤

B → B:サルファ剤として、動物生殖試験での胎仔への危険性は否定されているが、ヒト妊婦での対照試験 は実施されていないもの。あるいは、動物生殖試験で有害な作用(又は出生数の低下)が証明されているが、ヒトでの妊娠初期 3カ月の対照試験では実証されていない。またその後の妊娠期間でも危険であるという証拠はなもの[FDA](3。
[621]sulfamethoxazole

スルファメトキサゾール

[適]サルファ剤

C→ C:サルファ剤は血漿アルブミンに結合したビリルビンを置換してしまうため、生後の最初の1カ月間 は新生児核黄疸を引き起こす場合がある。従って、できるなら妊娠最終月にはサルファ剤の投与を控えるべきである[ADEC] (4。
[621]sulfamethoxazole sodium

スルファメトキサゾールナトリウ ム

[適]サルファ剤

[612]sulfisoxazole

スルフィソキサゾール

[適]サルファ剤

B → B:サルファ剤として、動物生殖試験では胎仔への危険性は否定されているが、ヒト妊婦での対照試験 は実施されていないもの。あるいは、動物生殖試験で有害な作用(又は出生数の低下)が証明されているが、ヒトでの妊娠初期 3カ月の対照試験では実証されていない。またその後の妊娠期間でも危険であるという証拠はなもの[FDA](3。
[139]tetrahydrozoline hydrochloride 塩酸テトラヒドロゾリン

[適]局所血管収縮薬

data未詳 ■妊娠中に使用することの安全性を確立するための、ヒトでの資料は不十分である(15。
[315]tocopherol acetate

酢酸トコフェロール

[適]ビタミンE剤

□推奨されている1日投与量以上又は服用時期によって→C

A→C

C→

1日の推奨許容量の範囲内であれば、原則無影響

A:ヒトの妊娠初期3カ月間の対照試験で、胎児への危険性は証明されず、またその後の妊娠期間でも 危険であるという証拠はない[FDA](3。

C:動物生殖試験では、胎仔に催奇形性、胎仔毒性、その他の有害作用があることが証明されており、 ヒトでの対照試験が実施されていないもの。あるいはヒト、動物ともに試験は実施されていないもの。この分類に属する薬剤は、潜在的な利益が胎児への潜在的 危険性よりも大きい場合にのみ使用すること[FDA](3。

■米国・国立アカデミーの食品栄養協議会が勧告した妊婦における1日推奨許容量は16mgであり、 これ以下の量を服用した場合[A]。この用量を超えて服用した場合の危険度について、危険性を示唆した報告も安全性を示唆した報告もない(3。

■dl-α-トコフェロール:油脂、バター若しくはこれらを使用した食品の酸化防止剤として使用 (12。食品に添加されており、その意味では広範な摂取が考えられるが、その結果奇形発生が増加したとする報告は知られていない。

[322]zinc lactate

乳酸亜鉛

[適]消炎・収斂剤

原則無影響 ■「硫酸亜鉛」を妊娠マウスに0、0.3、1.4、6.5及び30mg/kgを妊娠第6-15日間 与えても、胎仔の奇形発生を認めず、ハムスターでは妊娠第6-10日に0、0.9、4.1、19及び88mg/kg投与により同様に着床、胎仔生存率器官 や骨の異常を認めなかった。またウサギの妊娠第6-18日にわたり0.6、2.8、13及び60mg/kg/日経口投与で催奇形性を認めていない(12。

■亜鉛も銅も自然界に広く分布しており、日本人の場合、食事からの亜鉛の1日摂取量は8-14mg といわれている(12。

■食品中に含有される亜鉛を摂取しており、その意味では広範な摂取が考えられるが、その結果、奇形 発生が増加したとする報告は知られていない。また、乳酸については雑菌の繁殖を防止する作用を有する 酸味料として、清酒及び合成清酒の醸造、清涼飲料水の酸味料、製菓、佃煮、ソース、製パン、漬物等に添加されている。

[322]zinc sulfate

硫酸亜鉛

[適]消炎・収斂剤

[015.11.TER.1998.8.27. 古泉秀夫・2004.1.17.改訂]


  1. 高久 史麿・他監修:治療薬マニュアル;医学書院, 1998
  2. 薬名検索辞典;薬業時報社, 1991
  3. 佐藤 孝道・他編:実践 妊婦と薬;薬業時報社, 1992
  4. JPDI;薬業時報社, 1996
  5. ノイチーム錠・細粒・顆粒添付文書, 1996.12.改訂
  6. 柳沼

一般用医薬品(滋養強壮保健薬)の催奇 形性について

木曜日, 8月 16th, 2007

KW:催奇形性・催奇性・奇形児・滋養強壮保健薬・ビタミン主薬製剤・ビタ ミン剤・一般用医薬品・OTC ・妊婦・絶対過敏期・相対過敏期

「ビタミン主薬製剤の製造(輸入)承認基準」(昭和63年2月1日改正)に おいて、ビタミン主薬製剤の範囲・基準等が規定されている。使用上の注意については、昭和63年2月1日付文書が報告されているが、妊婦への投与について は、何ら注意事項の記載はされていない。ただし、ビタミン剤の中には大量摂取による危険の可能性を指摘する報告もあり、注意が必要である。

相談された医師・薬剤師が、何に依拠して回答するのか、根拠の一助とすべく 報告されている資料の整理を行った。

  • 妊娠1カ月:最終月経の開始日を0週0日とし、4週間が1カ月、0週0日-3週6日まで
  • 妊娠2カ月:4週0日-7週6日まで
  • 安 全 期:月経周期28日型の場合、月経初日から33日目(3週末まで)→残留性のない薬剤の場合、催奇 形性の可能性はない。
  • 絶対過敏期:最終月経開始日から28日-50日目(妊娠4週?7週末まで→胎児の中枢神経、心臓、消化器、 四肢などの重要臓器が発生・分化し、催奇形に対し最も敏感な時期。)
  • 相対過敏期:51日-84日目
[分類]・薬剤名 評価 概要
[314]ascorbic acid

アスコルビン酸

[適]ビタミンC欠乏症の予防・治療

A → C

1日推奨許容量の範囲内であれば原則無影響

C→

A:ヒトの妊娠初期3カ月間の対照試験で、胎児への危険性は証明されず、またその後の妊娠期間でも 危険であるという証拠もないもの。但し、推奨されている1日投与量以上、又は服用時期によって→C[FDA](3。

C:動物生殖試験では、胎仔に催奇形性、胎仔毒性、その他の有害作用があることが証明されており、 ヒトでの対照試験が実施されていないもの。あるいはヒト、動物ともに試験は実施されていないもの。ここに分類される薬剤は潜在的な利益が胎児への潜在的危 険性よりも大きい場合にのみ用いる[FDA](3。

■本品は必須ビタミンの一つであり、食品添加物としてビタミン強化、酸化防止剤として、果実類の ジュース、果実缶詰、ジャム、ドロップ等に添加されており、酸化防止剤として食肉等に添加されている(6。従って、許容範囲内であれば、本品による奇形児 出生率の増加はないと考えられる。

[314]ascorbate calcium

アスコルビン酸カルシウム

[適]ビタミンC欠乏症の予防・治療

[314]ascorbate sodium

アスコルビン酸ナトリウム

[適]ビタミンC欠乏症の予防・治療

■ビタミンC主薬製剤の場合:1日最大分量はアスコルビン酸として2000mg、1日最少分量は 50mg。

■主薬製剤以外のビタミンC配合の場合:1日最大分量はアスコルビン酸として500mg、1日最少 分量は50mg。

[312]benfotiamine

ベンフォチアミン

[適]ビタミンB1欠乏症の予防・治療

■ビタミンB1主薬製剤の場合:1日最大分量は、塩酸チアミンとして100mg、1日最少分量は 5mg。

■主薬製剤以外のビタミンB1配合の場合:1日最大分量は、塩酸チアミンとして25mg、1日最少 分量は1mg。

A → C

ビタミンB1として

C→

1日推奨許容量の範囲内であれば原則無影響

A:ヒトの妊娠初期3カ月間の対照試験で、胎児への危険性は証明されず、またその後の妊娠期間でも 危険であるという証拠もないもの。但し、推奨されている1日投与量以上、又は服用時期によって→C。

C:動物生殖試験では、胎仔に催奇形性、胎仔毒性、その他の有害作用があることが証明されており、 ヒトでの対照試験が実施されていないもの。あるいはヒト、動物ともに試験は実施されていないもの。ここに分類される薬剤は、潜在的な利益が胎児への潜在的危険性よりも大きい場合にのみ用いる[FDA] (3。

[319]biotin

ビオチン

[適]ビタミンH欠乏症の予防・治療

■主薬製剤以外のビオチン配合の場合:1日最大分量は500μg、1日最少分量は10μg。

data未詳 ■通常、腸内細菌によって合成され、分泌されるため欠乏症はない。動物の肝臓、肉、乳、卵、酵母に 含まれる。妊娠初期又は妊娠期間中の女性が、これらの食品を経由して本薬に全く曝露しなかったとは考えられず、また、その結果、催奇形性発現の頻度が増加 したとする報告も知られていない。
[312]bisbenthiamine

ビスベンチアミン

[適]ビタミンB1欠乏症の予防・治療

■ビタミンB1主薬製剤の場合:1日最大塩酸チアミンとして100mg、1日最少分量は5mg。

■主薬製剤以外のビタミンB1配合の場合:1日最大分量は塩酸チアミンとして25mg、1日最少分 量は1mg。

   
[312]bisibuthiamine

ビスイブチアミン

[適]ビタミンB1欠乏症の予防・治療

■ビタミンB1主薬製剤の場合:1日最大分量は100mg、1日最少分量は5mg。

■主薬製剤以外のビタミンB1配合の場合:1日最大分量は25mg、1日最少分量は1mg。

   
[312]bisthiamin nitrate

硝酸ビスチアミン

[適]ビタミンB1欠乏症の予防・治療

■ビタミンB1主薬製剤の場合:1日最大分量はチアミンジスルフィドとして30(10)mg、1日 最少分量は1(1)mg。

■主薬製剤以外のビタミンB1配合の場合:1日最大分量はチアミンジスルフィドとして25(10) mg、1日最少分量は1mg。

A → C

ビタミンB1として

C→

1日推奨許

容量の範囲内であれば原則無影響

A:ヒトの妊娠初期3カ月間の対照試験で、胎児への危険性は証明されず、またその後の妊娠期間でも 危険であるという証拠もないもの。但し、推奨されている1日投与量以上、又は服用時期によって→C。

C:動物生殖試験では、胎仔に催奇形性、胎仔毒性、その他の有害作用があることが証明されており、 ヒトでの対照試験が実施されていないもの。あるいはヒト、動物ともに試験は実施されていないもの。ここに分類される薬剤は、潜在的な利益が胎児への潜在的危険性よりも大きい場合にのみ用いる[FDA] (3。

[321]calcium gluconate

グルコン酸カルシウム

[適]カルシウム欠乏症の予防・治療

■主薬製剤以外のカルシウム配合の場合:1日最大分量はカルシウムとして300mg、1日最少分量 は30mg。

data未詳 ■味噌、豆腐、コンニャク等、食品にカルシウム強化剤として使用(6。

■日常的に摂食する食品であり、妊娠初期あるいは妊娠期間中の女性が全 く曝露しなかったとは考えられない。またそのことにより奇形児出生率の増加がみられたとする報告も知られていない。

[321]calcium glycerophosphate

グリセロリン酸カルシウム

[適]カルシウム欠乏症の予防・治療

■主薬製剤以外のカルシウム配合の場合:1日最大分量はカルシウムとして300mg、1日最少分量 は30mg。

data未詳 ■パン、小麦、麺類、味噌等にカルシウム強化剤として使用(6。

■日常的に摂食する食品であり、妊娠初期あるいは妊娠期間中の女性が全く曝露しなかったとは考えら れない。またそのことにより奇形児出生率の増加がみられたとする報告も知られていない。

[321]calcium lactate

乳酸カルシウム

[適]カルシウム欠乏症の予防・治療

■主薬製剤以外のカルシウム配合の場合:1日最大分量はカルシウムとして300mg、1日最少分量 は30mg。

data未詳 ■主として栄養強化カルシウム剤として使用。その他、パン、菓子等に緩衝剤、膨張剤として使用 (6。

■日常的に摂食する食品であり、妊娠初期あるいは妊娠期間中の女性が全く曝露しなかったとは考えら れない。またそのことにより奇形児出生率の増加がみられたとする報告も知られていない。

[311]cholecalciferol

コレカルシフェロール

[適]ビタミンD欠乏症の予防・治療

■ビタミンD主薬製剤の場合:1日最大分量はビタミンDとして400I.U.、1日最少分量は 200I.U.。

■主薬製剤以外のビタミンD配合の場合:1日最大分量はビタミンDとし て200I.U.、1日最少分量は50I.U.。

A → D

D→

1日推奨許容量の範囲内であれば原則無影響

A:ヒトの妊娠初期3カ月間の対照試験で、胎児への危険性は証明されず、またその後の妊娠期間でも 危険であるという証拠もないもの。但し、推奨されている1日投与量以上、又は服用時期によって →D[FDA](3。

D:ヒトの胎児に明らかに危険であるという証拠があるが、危険であっても妊婦への使用による利益が 容認されるもの(例えば生命が危険にさらされているとき、又は重篤な疾病で安全な薬剤が使用できないときあるいは効果がないとき、その薬剤をどうしても使 用する必要がある場合)[FDA](3。

■米・国立科学アカデミーの食品栄養協議会が勧告した妊婦におけるビタミンDの1日推奨許容量は 400-600IU(アルファカルシドールとして2.0-3.0μg、カルシトリオールとして1.0-1.5μgに相当)であり、これ以下の量を服用した 場合[A] 。妊婦に高用量のビタミンDを投与しても奇形が発生するとする確実な証拠はない。但し、妊娠中の高用量投与は、新生児の特発性高カルシウム血症を惹起とす る症例報告(3。

■食品としては調製粉乳、乳飲料若しくは栄養剤に広く使用。

[311]cod liver oil

肝油・強肝油

[適]ビタミンA欠乏症の予防・治療

■ビタミンA主薬製剤の場合:1日最大分量は、ビタミンAとして4000I.U.、1日最少分量は 2000I.U.。

■主薬製剤以外のビタミンA配合の場合:1日最大分量はビタミンAと して2000I.U.、1日最少分量は500I. U.。

data未詳

(ビタミンAとして1日推奨許容量の範囲内で)

■本品はマダラ又はスケトウダラの新鮮な肝臓及び幽門垂から得た脂肪油であると局方中に規定されて いる。両魚の肝臓等は食物としても摂食され、その意味では妊娠初期又は妊娠期間中の女性が全く曝露される機会がないとは考えられない。また、タラ肝臓の摂 食により奇形児の発生がみられたとする報告も知られていない。
[313]cyanocobalamin

シアノコバラミン

[適]ビタミンB12欠乏症の予防・治療

■ビタミンB12主薬製剤の場合:1日最大分量はシアノコバラミンとして1500μg、1日最少分 量は60μg。

■主薬製剤以外のビタミンB12配合の場合:1日最大分量はシアノコバラミンとして60μg、1日 最少分量は1μg。

A → C

C→

1日推奨許容量の範囲内であれば原則無影響

A:ヒトの妊娠初期3カ月間の対照試験で、胎児への危険性は証明されず、またその後の妊娠期間でも 危険であるという証拠もないもの。但し、推奨されている1日投与量以上、又は服用時期によって→C[FDA](3。

C:動物生殖試験では、胎仔に催奇形性、胎仔毒性、その他の有害作用があることが証明されており、 ヒトでの対照試験が実施されていないもの。あるいはヒト、動物ともに試験は実施されていないもの。ここに分類される薬剤は、潜在的な利益が胎児への潜在的 危険性よりも大きい場合にのみ用いる[FDA](3。

[312]cycotiamine

シコチアミン

[適]ビタミンB1欠乏症の予防・治療

■ビタミンB1主薬製剤の場合:1日最大分量はシコチアミンとして100mg、1日最少分量は 5mg。

■主薬製剤以外のビタミンB1配合の場合:1日最大分量はシコチアミンとして25mg、1日最少分 量は1mg。

A → C

ビタミンB1として

C→

1日推奨許容量の範囲内であれば原則無影響

A:ヒトの妊娠初期3カ月間の対照試験で、胎児への危険性は証明されず、またその後の妊娠期間でも 危険であるという証拠もないもの。但し、推奨されている1日投与量以上、又は服用時期によって→C[FDA](3。

C:動物生殖試験では、胎仔に催奇形性、胎仔毒性、その他の有害作用があることが証明されており、 ヒトでの対照試験が実施されていないもの。あるいはヒト、動物ともに試験は実施されていないもの。ここに分類される薬剤は、潜在的な利益が胎児への潜在的 危険性よりも大きい場合にのみ用いる[FDA](3。

[399]L-cysteine

L-システイン

[適]システイン欠乏症の予防・治療

data未詳 ■L-塩酸システインは生体内で合成される含硫アミノ酸の一種で、L-システインとの間に還元-酸 化の相互転換をする。パン製造における成熟促進と天然果汁に限定使用(6。

■日常的に摂食する食品であり、妊娠初期あるいは妊娠期間中の女性が全く曝露しなかったとは考えら れない。またそのことにより奇形児出生率の増加がみられたとする報告も知られていない。

[399]L-cysteine hydrochloride

L-塩酸システイン

[適]システイン欠乏症の予防・治療

■主薬製剤以外のシステイン配合の場合:1日最大分量は160mg、1日最少分量は30mg。

[321]dibasic calcium phosphate

リン酸水素カルシウム

[適]カルシウム欠乏症の予防・治療

data未詳 ■主にカルシウム強化の目的で使用。米、麦、パン、味噌、漬物、菓子等(6。

■日常的に摂食する食品であり、妊娠初期あるいは妊娠期間中の女性が全く曝露しなかったとは考えら れない。そのことにより奇形児出生率の増加がみられたとする報告も知られていない。

[321] (anhydrous)dibasic calcium phosphate

(無水)リン酸水素カルシウム

[適]カルシウム欠乏症の予防・治療

■主薬製剤以外のカルシウム配合の場合:1日最大分量はカルシウムとして300mg、1日最少分量 は30mg。

[312]dicethiamine hydrochloride

(cetotiamine hydrochloride)

塩酸ジセチアミン (塩酸セトチアミン)

[適]ビタミンB1欠乏症の予防・治療

■ビタミンB1主薬製剤の場合:1日最大分量塩酸チアミンとして100mg、1日最少分量は 5mg。

■主薬製剤以外のビタミンB1配合の場合:1日最大分量は塩酸チアミンとして25mg、1日最少分 量は1mg。

A → C

ビタミンB1として

C→

1日推奨許容量の範囲内であれば原則無影響

A:ヒトの妊娠初期3カ月間の対照試験で、胎児への危険性は証明されず、またその後の妊娠期間でも危 険であるという証拠もないもの。但し、推奨されている1日投与量以上、又は服用時期によって→C[FDA](3。

C:動物生殖試験では、胎仔に催奇形性、胎仔毒性、その他の有害作用があることが証明されており、 ヒトでの対照試験が実施されていないもの。あるいはヒト、動物ともに試験は実施されていないもの。ここに分類される薬剤は、潜在的な利益が胎児への潜在的 危険性よりも大きい場合にのみ用いる[FDA](3。

[311]ergocalciferol

エルゴカルシフェロール

[適]ビタミンD欠乏症の予防・治療

■ビタミンD主薬製剤の場合:1日最大分量はビタミンDとして400I.U.、1日最少分量は 200I.U.。

■主薬製剤以外のビタミンD配合の場合:1日最大分量はビタミンDとして200I.U.、1日最少 分量は50I.U.。

A → D

1日推奨許容量の範囲内であれば原則無影響

D→

A:ヒトの妊娠初期3カ月間の対照試験で、胎児への危険性は証明されず、またその後の妊娠期間でも 危険であるという証拠もないもの。但し、推奨されている1日投与量以上、又は服用時期によって →D[FDA](3。

D:ヒトの胎児に明らかに危険であるという証拠があるが、危険であっても妊婦への使用による利益が 容認されるもの(例えば生命が危険にさらされているとき、又は重篤な疾病で安全な薬剤が使用できないときあるいは効果がないとき、その薬剤をどうしても使 用する必要がある場合)[FDA](3

■米・国立科学アカデミーの食品栄養協議会が勧告した妊婦におけるビタミンDの1日推奨許容量は、 400-600IU(アルファカルシドールとして2.0-3.0μg、カルシトリオールとして1.0-1.5μgに相当)であり、これ以下の量を服用した 場合[A] 。妊婦に高用量のビタミンDを投与しても、奇形が発生するとする確実な証拠はない。但し、妊娠中の高用量投与は新生児の特発性高カルシウム血症を惹起とす る症例報告(3。

■食品としては調製粉乳、乳飲料若しくは栄養剤に広く使用。

[313]flavin adenine dinucleotide

sodium

フラビンアデニンジ

ヌクレオチドナトリウム

[適]ビタミンB2欠乏症の予防・治療

■ビタミンB2主薬製剤の場合:1日最大分量はフラビンアデニンジヌクレオチド45mg、1日最少 分量は5mg。

■主薬製剤以外のビタミンB2配合 の場合:1日最大分量はフラビンアデニンジヌクレオチド として12mg、1日最少分量は2mg。

A

原則無影響

A:ヒトの妊娠初期3カ月間の対照試験で、胎児への危険性は証明されず、またその後の妊娠期間でも 危険であるという証拠もないもの[FDA](3 。

■強化剤として小麦粉、味噌、乳製品、醤油などに使用。1日摂取基準量は成人1.2mg(6。日常 的に摂食する食品であり、妊娠初期あるいは妊娠期間中の女性が全く曝露しなかったとは考えられない。またそのことにより奇形児出生率の増加がみられたとす る報告も知られていない。

[312]fursultiamine

フルスルチアミン

[適]ビタミンB1欠乏症の予防・治療

A → C

ビタミンB1として

C→

1日推奨許容量の範囲内であれば原則無影響

A:ヒトの妊娠初期3カ月間の対照試験で、胎児への危険性は証明されず、またその後の妊娠期間でも 危険であるという証拠もないもの。但し、推奨されている1日投与量以上、又は服用時期によって→C[FDA](3 。

C:動物生殖試験では、胎仔に催奇形性、胎仔毒性、その他の有害作用があることが証明されており、 ヒトでの対照試験が実施されていないもの。あるいはヒト、動物ともに試験は実施されていないもの。ここに分類される薬剤は、潜在的な利益が胎児への潜在的 危険性よりも大きい場合にのみ用いる[FDA](3。

[312]fursultiamine hydrochloride

塩酸フルスルチアミン

[適]ビタミンB1欠乏症の予防・治療

■ビタミンB1主薬製剤の場合:1日最大分量はフルスルチアミンとして100mg、1日最少分量は 5mg。

■主薬製剤以外のビタミンB1配合の場合:1日最大分量はフルスルチアミンとして25mg、1日最 少分量は1mg

[391]glucuronamide

グルクロン酸アミド

[適]グルクロン酸欠乏症の予防・治療

■主薬製剤以外のグルクロン酸アミド配合の場合:1日最大分量は1000mg、1日最少分量は 200mg。

推定無影響 ■グルクロン酸に関する動物実験の結果では、催奇形性について何ら報告されていない(7。また、本 品の発売以降妊娠初期又は妊娠期間中の女性が、全く本剤に曝露しなかったとは考えられないが、ヒトにおける催奇形の原因物質として指摘された報告は見られ ない。
[391]glucuronolactone

グルクロノラクトン

[適]グルクロン酸欠乏症の予防・治療

■主薬製剤以外のグルクロノラクトン配合の場合1日最大分量は1000mg、1日最少分量は 200mg。

[313]hydroxocobalamin(hydrochloride)

ヒドロキソコバラミン(塩酸)

[適]ビタミンB12欠乏症の治療剤

■ビタミンB12主薬製剤の場合:1日最大分量は1500μg、1日最少分量は60μg。

■主薬製剤以外のビタミンB12配合

の場合、1日最大分量は60μg、1日最少分量 は1μg。

A → C

C→

1日推奨許容量の範囲内であれば原則無影響

A:ヒトの妊娠初期3カ月間の対照試験で、胎児への危険性は証明されず、またその後の妊娠期間でも 危険であるという証拠もないもの。但し、推奨されている1日投与量以上、又は服用時期によって→C[FDA](3。

C:動物生殖試験では、胎仔に催奇形性、胎仔毒性、その他の有害作用があることが証明されており、 ヒトでの対照試験が実施されていないもの。あるいはヒト、動物ともに試験は実施されていないもの。ここに分類される薬剤は、潜在的な利益が胎児への潜在的 危険性よりも大きい場合にのみ用いる[FDA](3。

[313]hydroxocobalamin acetate

酢酸ヒドロキソコバラミン

[適]ビタミンB12欠乏症の治療剤

■ビタミンB12主薬製剤の場合:1日最大分量はヒドロキソコバラミンとして1500μg、1日最 少分量は60μg。

■主薬製剤以外のビタミンB12配合の場合:1日最大分量はヒドロキソコバラミンとして60μg、 1日最少分量は1μg。

[217]inositol hexanicotinate

イノシトールヘキサニコチネート

[適]ニコチン酸・イノシトール欠乏症の予防・治療

■主薬製剤以外のイノシトールヘキサニコチネート配合の場合:1日最大分量は400mg、1日最少 分量は80mg。

data未詳 ■血中でイノシトールとニコチン酸に分解。ニコチン酸については、1日推奨許容量の範囲内であれ ば、特に問題ないものと考えられている。またイノシトールは生体細胞内で生合成されるとしており、体外からの摂取により催奇性の発現頻度が増大するとは考 え難い。
[313]nicotinic acid

ニコチン酸(ナイアシン)

[適]ニコチン酸欠乏症の予防・治療

A → C

C→

B2 →

1日推奨許容量の範囲内であれば原則無影響

A:ヒトの妊娠初期3カ月間の対照試験で、胎児への危険性は証明されず、またその後の妊娠期間でも 危険であるという証拠もないもの。但し、推奨されている1日投与量以上、又は服用時期によって→C[FDA](3。

C:動物生殖試験では、胎仔に催奇形性、胎仔毒性、その他の有害作用があることが証明されており、 ヒトでの対照試験が実施されていないもの。あるいはヒト、動物ともに試験は実施されていないもの。ここに分類される薬剤は、潜在的な利益が胎児への潜在的 危険性よりも大きい場合にのみ用いる[FDA](3。

B2:妊婦又は妊娠可能な年齢層の女性に対する使用経験はまだ限られているが、奇形発現頻度の増加は なく、ヒト胎児に対する他の直接・間接的有害作用は観察されていない。-まだ不適切・不十分な動物試験しか行われていないという懸念はあるが、現在入手し うるデータでは、胎児に対する有害作用の頻度を増大させるという証拠は得られていない[ADEC](4。

■ビタミン強化用として、食品や清涼飲料などに添加。また、ニコチン酸は腸内細菌によって合成 (6。

■日常的に摂食する食品であり、妊娠初期あるいは妊娠期間中の女性が全く曝露しなかったとは考えられない。またそのことにより奇形 児出生率の増加がみられたとする報告も知られていない。

[313]nicotinamide

ニコチン酸アミド

[適]ニコチン酸欠乏症の予防・治療

■主薬製剤以外のニコチン酸又はニコチン酸アミド配合の場合:1日最大分量は60mg、1日最少分 量は12mg。

[322]magnesium and potassium L-asparate

アスパラギン酸カリウム・マグネシウム等量混合物

[適]K・Mg欠乏症の予防・治療

■主薬製剤以外のアスパラギン酸カリウム・マグネシウム配合の場合:1日最大分量は400mg、1 日最少分量は200mg。

data未詳 ■アスパラギン酸は蛋白質中に含まれており、ナトリウム塩として果汁飲料、炭酸飲料、蒲鉾、化学調 味料等に使用。

■日常的に摂食する食品であり、妊娠初期あるいは妊娠期間中の女性が全く曝露しなかったとは考えら れない。またそのことにより奇形児出生率の増加がみられたとする報告も知られていない。

[312]octotiamine

オクトチアミン

[適]ビタミンB1欠乏症の予防・治療

■ビタミンB1主薬製剤の場合:1日最大分量はオクトチアミンとして100mg、1日最少分量は 5mg。

■主薬製剤以外のビタミンB1配合の場合:1日最大分量はオクトチアミ ンとして25mg、1日最少分量は1mg。

A → C

ビタミンB1として

C→

1日推奨許容量の範囲内であれば原則無影響

A:ヒトの妊娠初期3カ月間の対照試験で、胎児への危険性は証明されず、またその後の妊娠期間でも 危険であるという証拠もないもの。但し、推奨されている1日投与量以上、又は服用時期によって→C[FDA](3。

C:動物生殖試験では、胎仔に催奇形性、胎仔毒性、その他の有害作用があることが証明されており、 ヒトでの対照試験が実施されていないもの。あるいはヒト、動物ともに試験は実施されていないもの。ここに分類される薬剤は、潜在的な利益が胎児への潜在的 危険性よりも大きい場合にのみ用いる[FDA](3。

[236]orotic acid

オロチン酸

[適]オロチン酸欠乏症の予防・治療

■主薬製剤以外の配合の場合:1日最大分量はオロチン酸として200mg、1日最少分量は 60mg。

data未詳 ■オロチン酸(オロト酸):ビタミンB13。牛乳中の核酸の大部分を示す。ヒトは体内で生合成でき るので真のビタミンではなく、ビタミン様作用物質である。中毒性の肝疾患の治療に用いられるが、多量に投与するとプリンヌクレオチドとのバランスが崩れ肝 障害を起こすといわれる。食品成分として存在するため、妊娠初期又は妊娠期間中の女性が、全く本品に曝露しなかったとは考えられないが、ヒトにおける催奇 毒性を指摘する報告は見られない。
[218]γ-oryzanol

ガンマーオリザノール

[適]ガンマーオリザノール欠乏症の予防・治療

■主薬製剤以外の配合の場合:1日最大分量はオロチン酸として10mg、1日最少分量は5mg。

data未詳 ■本薬に関する動物実験の結果では、催奇形性について何ら報告されていない(7。

■本品の発売以降、妊娠初期又は妊娠期間中の女性が、全く本薬に曝露しなかったとは考えられない が、ヒトにおける催奇形の原因物質として指摘する報告は見られない。

[313]panthenol

パンテノール

[適]パントテン酸欠乏症の予防・治療

A → C

1日推奨許容量の範囲内であれば原則無影響

C→

A:ヒトの妊娠初期3カ月間の対照試験で、胎児への危険性は証明されず、またその後の妊娠期間でも 危険であるという証拠もないもの。但し、推奨されている1日投与量以上、又は服用時期によって→C[FDA](3。

C:動物生殖試験では、胎仔に催奇形性、胎仔毒性、その他の有害作用があることが証明されており、 ヒトでの対照試験が実施されていないもの。あるいはヒト、動物ともに試験は実施されていないもの。ここに分類される薬剤は、潜在的な利益が胎児への潜在的 危険性よりも大きい場合にのみ用いる。

■パントテン酸は、水溶性ビタミンで、Coenzyme Aの構成成分の一つである。パントテン酸カルシウムは、使用基準が決められており、食品の製造又は加工上必要不可欠な場合、又は栄養の目的に使用する以外 は使用してならない。その量はCaとして1%以下である(6。

■日常的に摂食する食品であり、妊娠初期あるいは妊娠期間中の女性が全く曝露しなかったとは考えら れない。またそのことにより奇形児出生率の増加がみられたとする報告も知られていない。

[313]pantothnate calcium

パントテン酸カルシウム

[適]パントテン酸欠乏症の予防・治療

[313]pantothnate sodium

パントテン酸ナトリウム

[適]パントテン酸欠乏症の予防・治療

■主薬製剤以外の配合の場合:1日最大分量はパンテノール、パントテン酸カルシウム、パントテン酸 ナトリウムとして30mg、1 日最少分量は5mg。

[234]precipitated calcium carbonate

沈降炭酸カルシウム

[適]カルシウム欠乏症の予防・治療

■主薬製剤以外のカルシウム配合の場合:1日最大分量はカルシウムとして300mg、1日最少分量 は30mg。

data未詳 ■パン、味噌、菓子、納豆などにカルシウム強化剤として使用。その他、醸造用水の硬度剤、酒の脱酸 剤、アメの中和剤、野菜類漬物などに食塩と混ぜて使用。使用基準が定められており、カルシウムとして食品の1%以下。チューインガムに限り2%以下(6。

■日常的に摂食する食品であり、妊娠初期あるいは妊娠期間中の女性が全く曝露しなかったとは考えら れない。またそのことにより、奇形児出生率の増加がみられたとする報告も知られていない。

[312]prosultiamine

プロスルチアミン

[適]ビタミンB1欠乏症の予防・治療

■ビタミンB1主薬製剤の場合:1日最大分量はプロスルチアミンとして100mg、1日最少分量は 5mg。

■主薬製剤以外のビタミンB1配合の場合:1日最大分量はプロスルチア ミンとして25mg、1日最少分量は1mg。

A → C

ビタミンB1として

C→

1日推奨許容量の範囲内であれば原則無影響

A:ヒトの妊娠初期3カ月間の対照試験で、胎児への危険性は証明されず、またその後の妊娠期間でも 危険であるという証拠もないもの。但し、推奨されている1日投与量以上、又は服用時期によって→C[FDA](3。

C:動物生殖試験では、胎仔に催奇形性、胎仔毒性、その他の有害作用があることが証明されており、 ヒトでの対照試験が実施されていないもの。あるいはヒト、動物ともに試験は実施されていないもの。ここに分類される薬剤は、潜在的な利益が胎児への潜在的 危険性よりも大きい場合にのみ用いる[FDA](3。

[313]pyridoxine hydrochloride

塩酸ピリドキシン

[適]ビタミンB6欠乏症の予防・治療

■ビタミンB6主薬製剤の場合:1日最大分量は塩酸ピリドキシンとして100mg、1日最少分量は 10mg。

■主薬製剤以外のビタミンB6配合の場合:1日最大分量は塩酸ピリドキシンとして50mg、1日最 少分量は5mg。

   
[313]pyridoxine hydrochloride

塩酸ピリドキシン

[適]ビタミンB6欠乏症の予防・治療

■ビタミンB6主薬製剤の場合:1日最大分量は塩酸ピリドキシンとして100mg、1日最少分量は 10mg。

■主薬製剤以外のビタミンB6配合の場合:1日最大分量は塩酸ピリドキシンとして50mg、1日最 少分量は5mg。

A → C

ビタミンB6として

C→

1日推奨許容量の範囲内であれば原則無影響

A:ヒトの妊娠初期3カ月間の対照試験で、胎児への危険性は証明されず、またその後の妊娠期間でも 危険であるという証拠もないもの。但し、推奨されている1日投与量以上、又は服用時期によって→C[FDA](3。

C:動物生殖試験では、胎仔に催奇形性、胎仔毒性、その他の有害作用があることが証明されており、 ヒトでの対照試験が実施されていないもの。あるいはヒト、動物ともに試験は実施されていないもの。ここに分類される薬剤は、潜在的な利益が胎児への潜在的 危険性よりも大きい場合にのみ用いる[FDA](3。

■強化剤として調製粉乳100g中に0.1mg規定度添加(6。

[313]pyridoxal phosphate

リン酸ピリドキサール

[適]ビタミンB6欠乏症の予防・治療

■ビタミンB6主薬製剤の場合:1日最大分量はリン酸ピリドキサールとして60mg、1日最少分量 は10mg。

■主薬製剤以外のビタミンB6配合 の場合:1日最大分量はリン酸ピリドキサールとして60mg、1日最少分量は5 mg。

[311]retinol acetate

酢酸レチノール

[適]ビタミンA欠乏症の予防・治療

A → X

X→

D →

1日推奨許容量の範囲内であれば原則無影響

A:ヒトの妊娠初期3カ月間の対照試験で、胎児への危険性は証明されず、またその後の妊娠期間でも 危険であるという証拠もないもの。但し、推奨されている1日投与量以上、又は服用時期によって→X[FDA](3。

X:動物又はヒトでの試験で、胎児異常が証明されている場合、あるいはヒトでの使用経験上、胎児へ の危険性の証拠がある場合、又はその両方の場合で、この薬剤を妊婦に使用することは、他のどんな利益よりも明らかに危険性の方が大きいもの。ここに分類さ れる薬剤は、妊婦又は妊娠している可能性のある婦人には禁忌である[FDA](3。

D:ヒト胎児に作用して奇形あるいは非可逆的障害の発現頻度を高める薬、あるいは高めたことが推定 される薬、あるいは高めるであろうことが強く疑われる薬、これらの薬は薬理学的な副作用を伴うこともある。→過量のビタミンA摂取は、先天障害を引き起こ すことがある。服用前にビタミンAを補う必要があるかどうかを考えること。通常、オーストラリア人の食事はビタミンAの1日標準必要量2500IUを充分 に含んでいる[ADEC](4。

■FDAリスクファクターでは、1日10000IU以上で[X]、8000IUでは[A]に分類。 疫学調査及び症例報告で実際に奇形が報告されている用量は1日25000IU以上であり、潜在的催奇形性を示す用量は1日25000IU以上という見解も みられる(3 。

[311]retinol palmitate

パルミチン酸レチノール

[適]ビタミンA欠乏症の予防・治療

■ビタミンA主薬製剤の場合:1日最大分量はビタミンAとして4000I.U.、1日最少分量は 2000I.U.。

■主薬製剤以外のビタミンA配合の場合:1日最大分量はビタミンAと して2000I.U.、1日最少分量は500I.U.。

[313]riboflavin

リボフラビン

[適]ビタミンB2欠乏症の予防・治療

A→

ビタミンB2として

原則無影響

A:ヒトの妊娠初期3カ月間の対照試験で、胎児への危険性は証明されず、またその後の妊娠期間でも 危険であるという証拠もないもの[FDA](3。

■強化剤として小麦粉、味噌、乳製品、醤油等に添加。1日摂取基準量は成人で1.2mg。

■日常的に摂食する食品であり、妊娠初期あるいは妊娠期間中の女性が全く曝露しなかったとは考えら れない。またそのことにより奇形児出生率の増加がみられたとする報告も知られていない。

[313]riboflavin sodium phosphate

リン酸リボフラビンナトリウム

[適]ビタミンB2欠乏症の予防・治療

■ビタミンB2主薬製剤の場合:1日最大分量はリボフラビンとして 30mg、1日最少分量は2mg。

■主薬製剤以外のビタミンB2配合の場合:1日最大分量はリボフラビンとして12mg、1日最少分 量は2mg。

[313]riboflavin tetrabutyrate

酪酸リボフラビン

[適]ビタミンB2欠乏症の予防・治療

■ビタミンB2主薬製剤の場合:1日最大分量は酪酸リボフラビンとして20mg、1日最少分量は 5mg。

■主薬製剤以外のビタミンB2配合の場合:1日最大分量は酪酸リボフラビンとして12mg、1日最 少分量は2mg。

[234]sodium chondroitin sulfate

コンドロイチン硫酸ナトリウム

[適]コンドロイチン硫酸欠乏症の予防・治療

■主薬製剤以外の配合の場合:1日最大分量はコンドロイチン硫酸ナトリウムとして900mg、1日 最少分量は180mg。

data未詳 ■コンドロイチン硫酸は、軟骨、骨、血管壁その他の結合組織に含まれ、動物体内に広く分布してい る。本品は魚肉ソーセージ、マヨネーズ、ドレッシングに対してのみ使用が認められ、乳化安定剤、保水剤として添加(6。

■日常的に摂食する食品であり、妊娠初期あるいは妊娠期間中の女性が全く曝露しなかったとは考えら れない。またそのことにより奇形児出生率の増加がみられたとする報告も知られていない。

[312]thiamin disulfide

チアミンジスルフィド

[適]ビタミンB1欠乏症の予防・治療

■ビタミンB1主薬製剤の場合:1日最大分量はチアミンジスルフィドとして30(10)mg、1日 最少分量は1(1) mg。

■主薬製剤以外のビタミンB1配合の場合:1日最大分量はチアミンジスルフィドとして25(10) mg、1日最少分量は1mg。

A → C

ビタミンB1として

C→

1日推奨許容量の範囲内であれば原則無影響

A:ヒトの妊娠初期3カ月間の対照試験で、胎児への危険性は証明されず、またその後の妊娠期間につ いても、危険であるという証拠がないもの。但し、推奨されている1日投与量以上、又は服用時期によって→C[FDA](3。

C:動物生殖試験では、胎仔に催奇形性、胎仔毒性、その他の有害作用があることが証明されており、 ヒトでの対照試験が実施されていないもの。あるいはヒト、動物ともに試験は実施されていないもの。ここに分類される薬剤は潜在的な利益が胎児への潜在的危 険性よりも大きい場合にのみ用いる[FDA](3。

*塩酸チアミン:白米、押麦、小麦粉、パン、ゆで麺、醤油、味噌、乾麺、菓子、清涼飲料水等に強化剤として使用(6。

*硝酸チアミン:同上(6。

*チアミンセチル硫酸塩:押麦、麺、小麦粉、マーガリン、カレールウ、マヨネーズ等に強化剤として 使用(6。

■日常的に摂食する食品であり、妊娠初期あるいは妊娠期間中の女性が、全く曝露しなかったとは考え られない。またそのことにより奇形児出生率の増加がみられたとする報告も知られていない。

[312]thiamin dicetylsulfate

(チアミンセチル硫酸塩)

チアミンジセチル硫酸エステル塩

[適]ビタミンB1欠乏症の予防・治療

■ビタミンB1主薬製剤の場合:1日最大分量は硝酸又は塩酸チアミンとして30(10)mg、1日 最少分量は1(1)mg。

■主薬製剤以外のビタミンB1配合

の場合1日最大分量は硝酸又は塩酸チアミンとして25(10)mg、1日 最少

分量は1mg。

[312]thiamin hydrochloride

塩酸チアミン

[適]ビタミンB1欠乏症の予防・治療

[312]thiamin nitrate

硝酸チアミン

[適]ビタミンB1欠乏症の予防・治療

■ビタミンB1主薬製剤の場合:1日最大分量は硝酸又は塩酸チアミンとして30(10)mg、1日 最少分量は1(1)mg。

■主薬製剤以外のビタミンB1配合の場合:1日最大分量は硝酸又は塩酸チアミンとして25(10) mg、1日最少分量は1mg。

[315]d-α-tocopherol

d-α-トコフェロール

[適]ビタミンE欠乏症の予防・治療

A → C

1日推奨許容量の範囲内であれば原則無影響

A:ヒトの妊娠初期3カ月間の対照試験で、胎児への危険性は証明されず、またその後の妊娠期間でも 危険であるという証拠もないもの。但し、推奨されている1日投与量以上、又は服用時期によって→C[FDA](3。

C:動物生殖試験では、胎仔に催奇形性、胎仔毒性、その他の有害作用があることが証明されており、 ヒトでの対照試験が実施されていないもの。あるいはヒト、動物ともに試験は実施されていないもの。ここに分類される薬剤は、潜在的な利益が胎児への潜在的 危険性よりも大きい場合にのみ用いる[FDA](3。

■米国・国立科学アカデミーの食品栄養協議会が勧告した妊婦における1日推奨許容量は16mgであ り、これ以下の量を服用した場合[A]。この用量を超えて服用した場合の危険度について、危険性を示唆した報告も安全性を示唆した報告もない(3。

■dl-α-トコフェロール:油脂、バター若しくはこれらを使用した食品の酸化防止剤として使用。

■日常的に摂食する食品であり、妊娠初期あるいは妊娠期間中の女性が全く曝露しなかったとは考えら れない。またそのことにより奇形児出生率の増加がみられたとする報告も知られていない。

[315]dl-α-tocopherol

dl-α-トコフェロール

[適]ビタミンE欠乏症の予防・治療

[315]d-α-tocopherol acetate

酢酸d-α-トコフェロール

[適]ビタミンE欠乏症の予防・治療

[315]dl-α-tocopherol acetate

酢酸dl-α-トコフェロール

[適]ビタミンE欠乏症の予防・治療

[315]d-α-tocopherol succinate

コハク酸d-α-トコフェロール

[適]ビタミンE欠乏症の予防・治療

[315]dl-α-tocopherol succinate

コハク酸dl-α-トコフェロール

[適]ビタミンE欠乏症の予防・治療

[315]dl-α-tocopherol calcium succinate

コハク酸dl-α-トコフェロールカルシウム

[適]ビタミンE欠乏症の予防・治療

■ビタミンE主薬製剤の場合:1日最大分量はトコフェロール又は酢酸トコフェロールとして300 (100)mg、1日最少分量は100(50) mg。

■主薬製剤以外のビタミンE配合 の場合:1日最大分量はトコフェロール又は酢酸トコフェロールとして100mg、1日最少分量は10mg。

[236]ursodesoxycholic acide

ウルソデスオキシコール酸

[適]利胆作用・チアミン、リボフラビンの吸収増大、アスコルビン酸の肝 腎内への蓄積増加

■主薬製剤以外の配合の場合:1日最大分量はウルソデスオキシコール酸として60mg、1日最少分 量は10mg

data未詳 ■動物試験の結果、本薬に催奇毒性は認められなかったが、胎仔毒性(吸収胚増加・胎仔吸収)が報告 されている。従って妊婦又は妊娠している可能性のある婦人には投与しないことが望ましいの報告(7。

■本品は日本産ツキノワ熊の胆嚢(熊の胆)の薬効成分を化学的に合成したもので、胆汁酸の一種。

■本薬の発売以降、妊娠初期又は妊娠中の女性が全く曝露されたことがないとは考えられない。また、催奇形性との因果関係を証明する報告も知られていない。

[311]vitamin A oil

ビタミンA油

[適]ビタミンA欠乏症の予防・治療

■ビタミンA主薬製剤の場合:1日最大分量はビタミンAとして4000I.U.、1日最少分量は 2000I.U.。

■主薬製剤以外のビタミンA配合の場合:1日最大分量はビタミンAと して2000I.U.、1日最少分量は500I.U.。

A → X

X →

D →

1日推奨許容量の範囲内であれば原則無影響

A:ヒトの妊娠初期3カ月間の対照試験で、胎児への危険性は証明されず、またその後の妊娠期間でも 危険であるという証拠もないもの。但し、推奨されている1日投与量以上、又は服用時期によって →X[FDA](3。

X:動物又はヒトでの試験で、胎児異常が証明されている場合、あるいはヒトでの使用経験上、胎児へ の危険性の証拠がある場合、又はその両方の場合で、この薬剤を妊婦に使用することは、他のどんな利益よりも明らかに危険性の方が大きいもの。ここに分類さ れる薬剤は、妊婦又は妊娠している可能性のある婦人には禁忌である[FDA](3。

D:ヒト胎児に作用して奇形あるいは非可逆的障害の発現頻度を高める 薬、あるいは高めたことが推定される薬、あるいは高めるであろうことが強く疑われる薬、これらの薬は薬理学的な副作用を伴うこともある。→過量のビタミン A摂取は、先天障害を引き起こすことがある。服用前にビタミンAを補う必要があるかどうかを考えること。通常、オーストラリア人の食事はビタミンAの1日 標準必要量2500IUを充分に含んでいる[ADEC](4。

■FDAリスクファクターでは、1日10000IU以上で[X]、8000IUでは[A]に分類。 疫学調査及び症例報告で実際に奇形が報告されている用量は1日25000IU以上であり、潜在的催奇形性を示す用量は1日25000IU以上という見解も みられる(3。

■強化剤として使用。味噌、マーガリン、魚肉ハム・ソーセージに使用。その他、強化乳等の乳製品、 スープの素、カレールウー、ハヤシルー、チョコレートなどの菓子類に添加。

■日常的に摂食する食品であり、妊娠初期あるいは妊娠期間中の女性が全く曝露しなかったとは考えら れない。またそのことにより奇形児出生率の増加がみられたとする報告も知られていない。

[510]加工大蒜(ダイサン)

[適]強壮薬

■主薬製剤以外の配合 の場合:1日最大分量は加工大蒜として200mg、1日最少分量は20mg。

data未詳 ■大蒜(ニンニク)は、食品又は香辛料として摂食されており、現在までに妊娠初期又は妊娠中の女性 が全く曝露される機会がなかったとは考えられない。そのことにより奇形児の発生頻度が増加したとする報告も知られていない。
[510]ニンジン(人参)

[適]健胃強壮薬

■主薬製剤以外の配合の場合:1日最大分量はエキスの場合(原生薬換算量)として3g、1日最少分 量は0.6g。粉末の場合1日最大分量1.5g、1日最少分量0.3g。

data未詳 ■人参は各種漢方薬に配合されており、また、健康増進目的で料理等に加えて摂食されている。現在ま でに妊娠初期又は妊娠中の女性が全く曝露される機会がなかったとは考えられない。また、そのことにより奇形児の発生頻度が増加したとする報告も知られてい ない。

[015.11.TER: 1998.4.17.古泉秀夫・2003.12.25.改訂]


  1. JAPIC・編:一般薬日本医薬品集;薬業時報社,1998-99
  2. 高久 史麿・他編:治療薬マニュアル;医学書院,1998
  3. 佐藤 孝道・他編:妊娠と薬;薬業時報社,1992
  4. 雨森 良彦・監修:妊娠中の投薬とそのリスク;医薬品・治療研究会, 1993
  5. 第十二改正日本薬局方解説書;廣川書店,1991
  6. 石館 守三・他監修:第5版 食品添加物公定書解説書;廣川書店, 1987
  7. 西村 秀雄・監:催奇形性等発生毒性に関する薬品情報 第2版;東洋書 店,1986

一般用医薬品(鼻炎用内服薬)の催奇形性について

木曜日, 8月 16th, 2007

KW:催奇形性・催奇性・奇形児・耳鼻科用薬・鼻炎用内服薬・一般用医薬 品・OTC ・妊婦・絶対過敏期・相対過敏期

「鼻炎用内服薬製造(輸入)承認基準」(平成5年1月29日改正)におい て、鼻炎用内服薬の有効成分・配合量等が規定されている。使用上の注意については、平成8年10月改訂文書が報告されているが、妊婦への投与については、

「1.次の人は服用前に医師又は薬剤師に相談すること。-(10)妊婦又は 妊娠していると思われる婦人」と記載されている。

相談された医師・薬剤師が、何に依拠して回答するのか、根拠の一助とすべく 報告されている資料の整理を行った。

  • 妊娠1カ月:最終月経の開始日を0週0日とし、4週間が1カ月、0週0日-3週6日まで
  • 妊娠2カ月:4週0日?7週6日まで
  • 安 全 期:月経周期28日型の場合、月経初日から33日目(3週末まで)→残留性のない薬剤の場合、催奇 形性の可能性はない。
  • 絶対過敏期:最終月経開始日から28日-50日目(妊娠4週-7週末まで→胎児の中枢神経、心臓、消化器、 四肢などの重要臓器が発生・分化し、催奇形に対し最も敏感な時期。)
  • 相対過敏期:51日-84日目
[分類]・薬剤名  評 価 概要
[441]alimemazine tartrate
酒石酸アリメマジン
[適]抗ヒスタミン剤
推定無影響 trimeprazineの動物での生殖実験とヒトでの臨床経験で、今日までのところどのような
催奇形性作用も発現していない[PDR]。

本薬の妊娠中の使用の安全性は、胎児の発生に関する予測される副作用の点で確立されていない。従って妊娠能力のある婦人に使用してはならない。妊娠期間中にフェノチアジン系薬物の投与を受けていた母親から生まれた乳児に黄疸と持続性の体外路症状が生じたとする報告(10。
妊婦への使用について、安全性を示唆する疫学調査は行われていない(3。
パリの12大学病院で1963-1969年の間に行われた調査では、妊娠第1三半期にフェノチア
ジン系薬剤を服用した315人の妊婦の出産結果は、11例(3.5%)に奇形があり、対照群の1.6%より有意に多かったという報告がある。この報告では
薬剤の構造による層別解析を行い、本剤を含めてα位に炭素数3の側鎖を有するフェノチアジン類にのみ奇形発生の有意な増加がみられたと報告。しかし、同様
な構造を有するフェノチアジン系薬剤クロルプロマジンに関する多くの報告では、明らかな催奇形性はみられないの示唆(3。
奇形発生の危険度が最も高い絶対過敏期に、本剤を3日間服用した1例と、相対過敏期に11日間服
用した1例は何れも健常児出産(3
[124]belladonna alkaloide
ベラドンナ(総)アルカロイド
[適]自律神経系作用薬 
B2  B2:妊婦又は妊娠可能な年齢層の女性に対する使用経験はまだ限られているが、奇形発現頻度の増加は
なく、ヒト胎児に対する他の直接的 ・間接的有害作用は観察されていない。-まだ不適切・不十分な動物試験しか行われていないという懸念はあるが、現在入手しうるデータでは、胎児に対する有
害作用の頻度を増大するという証拠は得られていない[ADEC](4。
   [124]belladonna extract
ベラドンナエキス
[適]自律神経系作用薬
(鎮痙薬・粘膜分泌抑制薬)
[395]bromrlain
ブロメライン [適]消炎酵素剤
推定無影響 マウス妊娠7日から第12日に、本剤10mg/kg/日、100mg/kg/日の2用量を経口投 与した生殖試験では、母動物及び胎仔に異常は認められず、新生仔の発育も良好の報告(3
奇形発生の危険度が高い絶対過敏期に、本剤含有配合剤を服用した2例は何れも健常児出産(3。
[211]caffeine
カフェイン
[適]強心薬(キサンチン系)
B → B:動物生殖試験では、胎児への危険性は否定されているが、ヒト妊婦での対照試験は実施されていないもの。あるいは動物生殖試験で有害な作用(又は出生数の低下)が証明されているが、ヒトでの妊娠初期3カ月の対照試験は実施されていない。またその後の妊娠期間でも危険であるという証拠はないもの[FDA](3。
[211]caffeine anhydrous
無水カフェイン [適]強心薬(キサンチン系)
[441]carbinoxamine diphenlsulfoneat
ジフェニルジスルホン酸
カルビノキサミン
[適]抗ヒスタミン薬
[441]d-chlorpheniramine maleate
d-マレイン酸クロルフェニラミン
[適]抗ヒスタミン薬
C →
C:動物生殖試験では、胎仔に催奇形性、胎仔毒性、その他の有害作用があることが証明されており、ヒトでの対照試験が実施されていないもの。あるいはヒト、動物ともに試験が実施されていないもの。ここに分類される薬剤は、潜在的な利益が胎児への潜在的危険性よりも大きい場合にのみ使用すること[FDA](3。 A:妊婦又は妊娠可能な年齢層の女性多数例に使用されてきたが、使用によって奇形発現の頻度が増加
したという証拠は得られておらず、ヒト胎児に対する他の直接・間接的な有害作用も証明されていない[ADEC](4。

妊婦の使用に関して催奇形性・胎児毒性を示唆した症例報告あるいは疫学調査はない(3。
[124]datura extract
ダツラエキス(マンダラエキス)
[適]鎮痛・鎮痙薬ダツラエキスはダツラアルカロイド(ヒヨスチアミンとして 0.95?1.15%を含む)。本品はロートエキスに代用したものである。
B2 → B2:ヒヨスチアミン→妊婦又は妊娠可能な年齢層の女性に対する使用経験は、まだ限られているが、奇
形発現頻度の増加はな く、ヒト胎児に対する他の直接的 ・間接的有害作用は観察されていない。-まだ不適切・不十分な動物試験しか行われていないという懸念はあるが、現在入手しうるデー
タでは、胎児に対する有害作用の頻度を増大するという証拠は得られていない[ADEC](4。

ダツラ(Datura)、マンダラ葉は、ヨウシュチョウセンアサガオ(Datura TatulaLinne)又はシロバナヨウシュチョウセンアサガオの花期の葉を乾燥したものである。喘息煙草(燻煙剤)
:ダツラ100・硝酸カリウム30を混和茶剤とする。1茶匙にマッチで点火しその煙を吸入。
[441]difeterol hydrochloride
塩酸ジフェテロール [適]抗ヒスタミン薬
data未詳 妊娠中の投与に関する安全性は確立されていないので、妊娠又は妊娠している可能性のある婦人には投与しないことが望ましい(10。
[441]diphenylpyraline hydrochloride
塩酸ジフェニールピラリン[適]抗ヒスタミン薬
B2 → B2:妊婦又は妊娠可能な年齢層の女性に対する使用経験はまだ限られているが、奇形発現頻度の増加は
なく、ヒト胎児に対する他の直接的・間接的有害作用は観察されていない。-まだ不適切・不十分な動物試験しか行われていないという懸念はあるが、現在入手
しうるデータでは、胎児に対する有害作用の頻度を増大するという証拠は得られていない[ADEC](4。
[441]diphenhydramine hydrochloride
塩酸ジフェンヒドラミン [適]抗ヒスタミン薬
  C:動物生殖試験では、胎仔に催奇形性、胎仔毒性、その他の有害作用があることが証明されており、ヒトでの対照試験が実施されていないもの。あるいはヒト、動物ともに試験は実施されていないもの。ここに分類される薬剤は、潜在的な利益が胎児への潜在的
危険性よりも大きい場合にのみ使用すること[FDA](3。
A:妊婦又は妊娠可能な年齢層の女性多数例に使用されてきたが、使によって奇形発現の頻度が増加したという証拠は得られておらず、ヒト胎児に対する他の直接・間接 的な有害作用も証明されていない[ADEC](4。
[131]glycyrorrhizinate dipotassium
グリチルリチン酸及びその塩類
[適]抗ヒスタミン薬
推定無影響 グリチルリチン酸二ナトリウムは、食品添加物として承認されている。本剤は甘草中の成分であり、味噌及び醤油の甘味料として添加されている。従って、妊娠初期又は妊娠期間中、グリチルリチン酸に全く曝露しないとは考えられず、そのことにより奇形発生率が増加したとする報告も知られていない。
[441]iproheptine hydrochloride
塩酸イプロヘプチン [適]抗ヒスタミン薬
data未詳 妊娠中の投与に関する安全性は確立していないので、妊婦又は妊娠している可能性のある婦人には投
与しないことが望ましい(10。  
[124]isopropamide iodide ヨウ化イソプロパミド
[適]自律神経系作用薬
(鎮痙薬・粘膜分泌抑制薬)
data未詳 妊婦への使用について、催奇形を示唆する症例及び疫学調査報告はない。50,282組の母子に関
する調査では、妊娠第1三半期にヨウ化イソプロパミドに曝露された1,071例について催奇形性との関連を示唆する証拠はみられなかった(3
[441]isothipendyl hydrochloride
塩酸イソチペンジル
[適]抗ヒスタミン薬
data未詳 妊娠中の投与に関する安全性は確立していないので、妊婦又は妊娠している可能性のある婦人には投与しないことが望ましい(10。
[395]lysozyme chloride
塩化リゾチーム
[適]消炎酵素剤
原則無影響 鶏卵白を原料とする蛋白質であり、生体防御の目的でヒト生体内にも存在する。従って、本剤に由来
する催奇形性の発生は予測しがたい。また、卵白自体、食物あるいは嗜好品として摂取されており、鶏卵の摂取量により奇形発生率の増加がみられたとする報告もみられない。
[441]methdilazine hydrochloride 塩酸メトジラジン
[適]抗ヒスタミン薬
B2 → B2:妊婦又は妊娠可能な年齢層の女性に対する使用経験はまだ限られているが、奇形発現頻度の増加はなく、ヒト胎児に対する他の直接的・間接的有害作用は観察されていない。-まだ不適切・不十分な動物試験しか行われていないという懸念はあるが、現在入手しうるデー タでは、胎児に対する有害作用の 頻度を増大するという証拠は得られていない[ADEC](4。    
[225]methoxyphenamine  hydrochloride
塩酸メトキシフェナミン
[適]気管支拡張薬・喘息治療薬
data未詳 催奇形性に関する資料の入手はできなかった。
[222]l-methylephedrine hydrochloride
l-塩酸メチルエフェドリン [適]気管支拡張薬・喘息治療薬
C → C:塩酸エフェドリンとして、動物生殖試験では、胎仔に催奇形性、胎仔毒性、その他の有害作用があ
ることが証明されており、ヒトでの対照試験が実施されていないもの。あるいはヒト、動物ともに試験は実施されていないもの。ここに分類される薬剤は、潜在
的な利益が胎児への潜在的危険性よりも大きい場合にのみ使用すること[FDA](3。
[132]phenylephrine hydrochloride
塩酸フェニレフリン
[適]局所血管収縮薬
(局所麻酔時の作用延長)
B2 →C → B2:妊婦又は妊娠可能な年齢層の女性に対する使用経験はまだ限られているが、奇形発現頻度の増加はなく、ヒト胎児に対する他の直接・間接的有害作用は観察されていない?まだ不適切・不十分な動物試験しか行われていないという懸念はあるが、現在入手しうるデータでは、胎児に対する有害作用の頻度を増大するという証拠は得られていない[ADEC](4。
C:動物による生殖試験は行われていない。本薬を妊婦に投与するとき、胎児障害を惹起するか否かは 未知である。本薬の妊婦への投与は、必要性が明確である場合にのみ限定すべきである[PDR](10。
[124]phenylpropanolamine
        hydrochloride
塩酸フェニルプロパノールアミン
(DL-塩酸ノルエフェドリン)
[適]自律神経系用薬
(鎮痙薬・粘膜分泌抑制薬)*2002年7月PPAによる脳出血・ クモ膜下出血の報告。pseudoephedrine(PSE)への切 換え指示。
C → C:動物生殖試験では、胎仔に催奇形性、胎仔毒性、その他の有害作用があることが証明されており、ヒトでの対照試験が実施されていな いもの。あるいはヒト、動物とも に試験は実施されていないもの。ここに分類される薬剤は、潜在的
な利益が胎児への潜在的危険性よ りも大きい場合にのみ使用するこ と[FDA](3。

本薬は、妊娠中あるいは授乳中の母親に使用してはならない[PDR]。8歳以下の小児には推奨で
きない[AMA-DE](10。
[441]promethazine hydrochloride 塩酸プロメタジン
[適]抗ヒスタミン薬
C → C:動物生殖試験では、胎仔に催奇形性、胎仔毒性、その他の有害作用があることが証明されており、ヒトでの対照試験が実施されていないもの。あるいはヒト、動物ともに試験は実施されていないもの。ここに分類される薬剤は、潜在的な利益が胎児への潜在的危険性よりも大きい場合にのみ使用すること[FDA](3。
C:催奇形性はないが、その薬理作用によってヒト胎児又は新生児に有害な作用を及ぼす。又は及ぼす可能性が疑われる薬剤。妊娠後期にフェノチアジン系薬を大量に投与すると、新生児に持続性の錐体外路障害を来すことがある[ADEC](4。
[132]pseudoephedrine hydrochloride
塩酸プソイドエフェドリン[適]血管収縮剤・充血除去剤
B2→ B2:妊婦又は妊娠可能な年齢層の女性に対する使用経験はまだ限られているが、奇形発現頻度の増加はなく、ヒト胎児に対する他の直接・間接的有害作用は観察されていない?まだ不適切・不十分な動物試験しか行われていないという懸念はあるが、現在入手しう
るデータでは、胎児に対する有害作用の頻度を増大するという証拠は得られていない[ADEC](4
[132]pseudoephedrine sulfate(PSE)
硫酸プソイドエフェドリン[適]血管収縮剤・充血除去剤
[124]scopolia extract
ロートエキス[適]自律神経系作用薬
(鎮痙薬・粘膜分泌抑制薬)
C → B2 → C:動物生殖試験では、胎仔に催奇形性、胎仔毒性、その他の有害作用があることが証明されており、ヒトでの対照試験が実施されていないもの。あるいはヒト、動物ともに試験は実施されていないもの。ここに分類される薬剤は、潜在的な利益が胎児への潜在的
危険性よりも大きい場合にのみ使用すること[FDA](3。 

B2
:妊婦又は妊娠可能な年齢層の女性に対する使用経験はまだ限られて いるが、奇形発現頻度の増加はなく、ヒト胎児に対する他の直接・間接的有害作用は観察されていない。-まだ不適切・不十分な動物試験しか行われていないという懸念はあるが、現在入手しうるデータでは、胎児に対する有害作用の頻度を増大するという証拠は得られていない[ADEC](4。
[441]thonzylamine hydrochloride 塩酸トンジルアミン[適]抗ヒスタミン薬 data未詳 妊婦又は妊娠している可能性のある婦人に投与する場合には、慎重に投与すること[アナヒスト錠・散・注(小野薬品)添付文書,1978.11.改訂]
[441]tripelennamine hydrochloride
塩酸トリペレナミン
[適]抗ヒスタミン薬
C → C:動物生殖試験では、胎仔に催奇形性、胎仔毒性、その他の有害作用があることが証明されており、ヒトでの対照試験が実施されていないもの。あるいはヒト、動物ともに試験は実施されていないもの。ここに分類される薬剤は、潜在的な利益が胎児への潜在的
危険性よりも大きい場合にのみ使用するこ と[FDA](3。 
[441]triprolidine hydrochloride
塩酸トリプロリジン
[適]抗ヒスタミン薬
C →A →

推定無影響

C:動物生殖試験では、胎仔に催奇形性、胎仔毒性、その他の有害作用があることが証明されており、ヒトでの対照試験が実施されていな いもの。あるいはヒト、動物ともに試験は実施されていないもの。ここに分類される薬剤は、潜在的な利益が胎児への潜在的危険性よりも大きい場合にのみ使用するこ と[FDA](3。
A:妊婦又は妊娠可能な年齢層の女性 多数例に使用されてきたが、使用 によって奇形発現の頻度が増加し
たという証拠は得られておらず、 ヒト胎児に対する他の直接・間接 的な有害作用も証明されていない
[ADEC](4。
[510]甘草
[適]鎮咳・去痰・鎮痙薬
原則無影響 奇形発生の危険度が高い絶対過敏期に服用した2例、絶対過敏期と相対過敏期にわたって服用した2
例及び相対過敏期に服用した1例において、健常児出産(2。
鎮痛・鎮痙薬、胃腸薬、去痰薬。種々の漢方製剤に配合されている。その意味では、現在までに妊婦が全く服用しなかったとする根拠はない。その結果、奇形児の出産が増加したとする報告もされていない。また、甘草は植物本体を摂取する事例があるが、その
結果、奇形児の出生が増加したとの報告もされていない。また、本品を食品として摂取する地方もあり、奇形発生が地域に偏在して発現したの報告もされていない。
[510]荊芥(けいがい)
[適]消炎・排膿薬
data未詳 荊芥連翹盪に配合。配合剤の添付文書中に「妊婦又は妊娠している可能性のある婦人には慎重投与」の記載がされている。
本剤の適応症である「蓄膿症、慢性鼻炎、慢性扁桃炎、にきび」から判断して、現在までに妊娠初期
又は妊娠期間中に本薬を服用した症例が全くないとは考えられず、たその結果、奇形発生が増加したとする報告も知られていない。
[510]細辛
[適]鎮咳・去痰・鎮痛薬
data未詳 小青竜盪に配合されており、配合剤の添付文書中に「妊婦又は妊娠している可能性のある婦人には慎重投与」の記載がされている。
本剤の「気管支喘息、鼻炎、アレルギー性鼻炎、感冒」等の適応症から、現在までに妊娠初期又は妊娠期間中に本薬を服用した症例が全くないとは考えられず、またその結果、奇形発生がみられたとする報告も知られていない。
[510] 生姜[適]健胃薬 原則無影響 ■本草綱目に妊婦禁忌の記載(2 。 奇形発生の危険度が高い絶対過敏期に服用した17例、相対過敏期に服用した1例において、いずれも健常児出産(2。
健胃薬。健胃薬の配合成分。その意味では、現在までに妊婦が全く服用しなかったとする根拠はない。その結果奇形児の出産が増加したとする報告もされていない。なお、ショウガは、食物として摂取されるが、本品の摂食により奇形児の出生が増加したとする報告もされていない。
[510]辛夷
[適]鎮静・鎮痛薬
data未詳 辛夷清肺湯に配合されており、配合剤の添付文書中に「妊婦又は妊娠している可能性のある婦人には
慎重投与」の記載がされている。

本剤の「鼻づまり、慢性鼻炎」等の適応症から、現在までに妊娠初期又は妊娠期間中に本薬を服用し
た症例が全くないとは考えられず、またその結果、奇形発生がみられたとする報告も知られていない。
[510]前胡[適]解熱・鎮痛・鎮咳・去痰薬 data未詳 参蘇飲(ジンソイン)に配合。配合剤の添付文書中に「妊婦又は妊娠している可能性のある婦人には慎重投与」の記載がされている。 本剤の適応症である「感冒、せき」から判断して、現在までに妊娠初期又は妊娠期間中に本薬を服用
した症例が全くないとは考えられず、またその結果、奇形発生が増加したとする報告も知られていない。
[510]びゃくし[適]鎮痛薬 data未詳 荊芥連翹盪に配合。配合剤の添付文書中に「妊婦又は妊娠している可能性のある婦人には慎重投与」の記載がされている。     
本剤の適応症である「蓄膿症、慢性鼻炎、慢性扁桃炎、にきび」から判断して、現在までに妊娠初期又は妊娠期間中に本薬を服用した症例が全くないとは考えられず、またその結果、奇形発生が増加したとする報告も知られていない。

[015.11.TER: 1998.4.10.古泉秀夫・2003.12.25.改訂]


  1. JAPIC・編:一般薬日本医薬品集;薬業時報社,1998-99
  2. 高久 史麿・他編:治療薬マニュアル;医学書院,1998
  3. 佐藤 孝道・他編:妊娠と薬;薬業時報社,1992
  4. 雨森 良彦・監修:妊娠中の投薬とそのリスク;医薬品・治療研究会, 1993
  5. 第十二改正日本薬局方解説書;廣川書店,1991
  6. 石館 守三・他監修:第5版 食品添加物公定書解説書;廣川書店, 1987
  7. 厚生省薬務局研究開発振興課・編:JPDI;薬業時報社,1996
  8. 堀岡 正義・他:薬剤投与情報;同朋舎,1985
  9. 西村 秀雄・監:催奇形性等発生毒性に関する薬品情報 第2版;東洋 書店,1986
  10. 第六改正日本薬局方注解;南山堂,1945
  11. 辛夷清肺湯エキス顆粒添付文書,1993.11.改訂
  12. 荊芥連翹盪エキス顆粒添付文書,1995.9.改訂
  13. 小青竜盪エキス顆粒添付文書,1996.3.改訂
  14. 参蘇飲エキス顆粒添付文書,1995.12.改訂

一般用 医薬品(鎮暈剤)の催奇形性について

木曜日, 8月 16th, 2007

KW:催奇形性・催奇性・奇形児・鎮暈剤・乗物酔防止薬・つわり用薬・一般 用医薬品・OTC ・妊婦・絶対過敏期・相対過敏期

「鎮暈剤の製造(輸入)承認基準」(昭和59年6月1日)において、鎮暈剤 (乗物酔防止薬、つわり用薬含む)の有効成分・配合量等が規定されている。使用上の注意については、「日薬連申し合わせ(平成9年2月20日付)」が報告 されているが、妊婦への投与については、

「2.次の人は服用前に医師又は薬剤師に相談すること。-(2)妊婦又は妊 娠していると思われる婦人」と記載されている。

相談された医師・薬剤師が、何に依拠して回答するのか、根拠の一助とすべ く、報告されている資料の整理を行った。

  • 妊娠1カ月:最終月経の開始日を0週0日とし、4週間が1カ月、0週0日-3週6日まで
  • 妊娠2カ月:4週0日-7週6日まで
  • 安 全 期:月経周期28日型の場合、月経初日から33日目(3週末まで)→残留性のない薬剤の場合、催奇 形性の可能性はない。
  • 絶対過敏期:最終月経開始日から28日-50日目(妊娠4週-7週末まで→胎児の中枢神経、心臓、消化器、 四肢などの重要臓器が発生・分化し、催奇形に対し最も敏感な時期。)
  • 相対過敏期:51日-84日目
[分類]・薬剤名  評 価 概要
[112]allylisopropylacetylurea
アリルイソプロピルアセチル尿素
[適]催眠・鎮静薬
D → D:ブロム化合物。ヒトの胎児に明らかに危険であるという証拠があるが、危険であっても妊婦への使
用による利益が容認されているもの(例えば、生命が危険にさらされているとき、又は重篤な疾病で安全な薬剤が使用できないとき、あるいは効果がないとき、
その薬剤をどうしても使用する必要がある場合)[FDA薬剤胎児危険度分類基準](3。

奇形発生の危険度が高い絶対過敏期に、本剤を服用した6例は、いずれも健常児を出産(3。
鶏胚を用いた尿素系催眠剤の実験では、催奇形作用は認められなかった(3。
[211]aminophylline アミノフィリン
[適]強心薬(キサンチン系)
C →
推定無影響
C:動物生殖試験では、胎児に催奇形性、胎児毒性、その他の有害作用があることが証明されており、ヒトでの対照試験が実施されていないもの。あるいはヒト、動物ともに試験は実施されていないもの。ここに分類される薬剤は、潜在的な利益が胎児への潜在的
危険性よりも大きい場合にのみ使用すること[FDA薬剤胎児危険度分類基準](3。

第1三半期にテオフィリンあるいはアミノフィリンを服用した193例に関する調査では、催奇形と の相関はみられなかった。 喘息治療の妊婦に継続使用されてきたが、奇形の危険性を増大させるとの報告はない。このためテオフィリンは、妊婦の喘息治療に使用する第一次選択薬剤であるとされている(3。
[124]anisotropin methylbromide(methyloctatropine bromide)
臭化メチルアニソトロピン(臭化メチルオクタトロピン)
[適]自律神経系作用薬 (鎮痙薬・粘膜分泌抑制薬)
C → C:動物生殖試験では、胎児に催奇形性、胎児毒性、その他の有害作用があることが証明されており、ヒトでの対照試験が実施されていないもの。あるいはヒト、動物ともに試験は実施されていないもの。ここに分類される薬剤は、潜在的な利益が胎児への潜在的危険性よりも大きい場合にのみ使用すること[FDA薬剤胎児危険度分類基準](3。      
[124]belladonna extract ベラドンナエキス
[適]自律神経系作用薬
(鎮痙薬・粘膜分泌抑制薬)
B2 → B2:妊婦又は妊娠可能な年齢層の女性に対する使用経験はまだ限られているが、奇形発現頻度の増加はなく、ヒト胎児に対する他の直接的・間接的有害作用は観察されていない。-まだ不適切・不十分な動物試験しか行われていないという懸念はあるが、現在入手しうるデータでは、胎児に対する有害作用の頻度を増大するという証拠は得られていない[ADEC](4。
[112]bromvalerylurea
ブロムワレリル尿素
[適]催眠・鎮静薬
D → D:allylisopropylacetylureaの項参照。 鶏胚を用いた尿素系催眠剤の実験では、催奇形作用は認められなかった(3。

妊婦への使用について、催奇形性を示唆する症例も疫学調査も報告されていない。また、本剤と催奇形の因果関係を否定する疫学調査も報告されていない(3。
胎児障害の可能性があるので、妊婦又は妊娠している可能性のある婦人には投与しないことが望ましい(5。
妊娠ラット・マウスへの投与で、奇形発生数等で対照群と比較し差異は認められていない(5。
[211]caffeine
カフェイン
[適]強心薬(キサンチン系)
B → A →

推定無影響

B:動物生殖試験では、胎児への危険性は否定されているが、ヒト妊婦での対照試験は実施されていないもの。あるいは動物生殖試験で有害な作用(又は出生数の低下)が証明されているが、ヒトでの妊娠初期3カ月の対照試験は実施されていない。またその後の妊娠期間でも危険であるという証拠はないもの[FDA薬剤胎児危険度分類基準](3。
A:妊娠又は妊娠可能な年齢層の女性多数例に使用されてきたが、使用によって奇形発現の頻度が増加
したという証拠は得られておらず、ヒト胎児に対する直接的・間接的な有害作用も証明されていない[ADEC](4。

   妊婦への使用について、催奇形性を示唆する症例も疫学調査も報告されていない。また、本剤と催奇
形の因果関係を否定する疫学調査も報告されていない。一方、コーヒー摂取と催奇形の因果関係を否定する疫学調査が報告(3。

1日量1,100?1,770mgの本薬を摂取した妊婦3名が出産した児に、両側欠指趾症、両側
又は一側性の指趾末節骨の欠損、顎前骨の低形成、鼻孔狭小、口蓋閉鎖不全等の奇形がみられた(3。

12,205名の妊婦を対象とした、コーヒーの摂取と子供の異常に関する調査がある。妊娠第1三 半期に1日4杯以上のコーヒー摂取と、低出生体重、早産、奇形との間に何ら関係は認められなかった(3。
動物とヒトの妊娠結果に及ぼすカフェインの影響について、120の文献を再評価した研究
(1988年)の結果、少量のカフェイン摂取が胎児に明らかな危険をもたらすことはないが、1日300mg以下の摂取に限定すれば、発育遅延の可能性も減
少と結論づけている(3。
[211]caffeine citrate
クエン酸カフェイン
[適]強心薬(キサンチン系)
[313]calcium pantothenate
パントテン酸カルシウム [適]ビタミン剤
A → C

原則無影響

A:ヒトの妊娠3カ月の対照試験で、胎児への危険性は証明されず、またその後の妊娠期間でも危険で
あるという証拠はないもの。ただし、推奨されている1日投与量以上又は服用期間によっては→Cの可能性[FDA薬剤胎児危険度分類基準](3。

原則的には食品からも摂取されるが、パントテン酸カルシウム含有量の多い食品を摂取したことにより奇形発生率が増加したとする報告は知られていない。
[121]cerium oxalate
シュウ酸セリウム
[適]鎮静・鎮吐
data未詳 鎮吐薬として悪阻に使用されるが、水に不溶性で、内服後吸収されないで局所に作用して嘔吐反射を抑えるものと考えられる。確実な作用機序は不明(7。
[441]d-chlorpheniramine maleate d-マレイン酸クロルフェニラミン
[適]抗アレルギー薬
(抗ヒスタミン薬)
C →
A →
推定無影響
C:aminophyllineの項参照。
A:caffeineの項参照[ADEC](4。
妊婦の使用に関して催奇形性・胎児毒性を示唆した症例報告あるいは疫学調査はない(3。
クロルフェニラミンに、体内で曝露された児に、先天性の奇形がみられる頻度は、増加しないとのレ
トロスペクティブな調査報告がある(3

50,282組の母子に関する調査で、第1三半期に1,070例が本剤に曝露されていた。また、
妊娠中のいずれかの時期に本剤に曝露された母子は3,931組あった。何れの群も催奇形との関連を示唆する証拠は認められなかった。数種の奇形と関連して
いる可能性がみられたが、統計的に有意であるかどうか明らかでない(3。
[441]dl-chlorpheniramine maleate
dl-マレイン酸クロルフェニラミン
[適]抗アレルギー薬
(抗ヒスタミン薬)
[123]dicyclomine hydrochloride(dicycloverine hydrochloride)
塩酸ジサイクロミン(塩酸ジシクロベリン)
[適]自律神経系作用薬・抗痙攣剤
鎮痙薬・粘膜分泌抑制薬)
data未詳 奇形児におけるいくつかの問題が予想されてきたが、過去の研究では胎児に影響を与えるという証拠
はない(7。
[133]difenidol hydrochloride
塩酸ジフェニドール
[適]抗めまい薬(脳血管拡張薬)
data未詳 規定した資料に、該当する記載はない(5。
妊娠マウス・ラット及び胎児に30?200mg/kgを6日間連続投与した結果、大量投与群で母
体に散瞳がみられたが、妊娠期間中の母体体重、摂餌量及び主要臓器に異常を認めず、胎児、新生児に対する影響も対照群との間で有意の差はみられなかった
(5。
[133]dimenhydrinate ジメンヒドリナート
[適]抗めまい薬(抗ヒスタミン薬)
・鎮吐薬
B →

A → 推定無影響

B:caffeineの項参照。
A:caffeineの項参照[ADEC](4。
50,282組の母子の調査では、第1三半期に319組の母子が本薬に曝露されていた。股、妊娠
中のいずれかの時期に本薬に曝露された母子が697組あった。何れの群も催奇形との関連性を示唆する証拠は認められなかった。鼠径ヘルニア、血管系の奇形
と関連する可能性はみられたが、統計的な有意差は不明(3。
[441]diphenhydramine fumarate
フマル酸ジフェンヒドラミン
[適]抗アレルギー薬
(抗ヒスタミン薬)
C →
A →
推定無影響
C:aminophyllineの項参照。
A:caffeineの項参照[ADEC](4。
50,282組の母子に関する調査では、第1三半期に595組が本薬に曝露されていた。また、妊
娠中の何らかの時期に本薬に曝露された母子が2,948組あったが、何れの群も奇形と関連性を示唆する証拠は認められなかった。数種の奇形と関連している
可能性はあるが、統計的に有意かどうかは不明(3。

599例の口蓋裂を有する子供群と590例の口蓋裂のない子供群を比較した調査では、第1三半期に子宮内でジフェンヒドラミンに曝露されたのは、前者20例、後者6例と有意差がみられた。母親のジフェンヒドラミン服用と口蓋裂の発生に統計的に有意な関連が認められたの報告(3。
1971年に行われた奇形を有する児に関する調査では、第1三半期に抗ヒスタミン剤に曝露された児に奇形のみられる頻度は対照群と比較してむしろ少なかったと報告されている。この調査ではジフェンヒドラミンは2番目に繁用されていた(3。
6,509人の母親の調査で、第1三半期に本剤を服用した270例では、薬剤の使用と催奇形に関
連性は認められなかった(3。

妊娠中にジフェンヒドラミンを毎日150mg/kg服用していた母親から産まれた子供に、離脱症
状として、全身の震えと下痢が発生したとの報告がある。フェノバルビタールによる治療で症状は改善(3。
[441]diphenhydramine hydrochloride
塩酸ジフェンヒドラミン
[適]抗アレルギー薬
(抗ヒスタミン薬)
[441]diphenhydramine salicylate
サリチル酸ジフェンヒドラミン
[適]抗アレルギー薬
(抗ヒスタミン薬)
[441]diphenhydramine tannaate
タンニン酸ジフェンヒドラミン
[適]抗アレルギー薬
(抗ヒスタミン薬)
[124]diphenylpiperidinomethyldioxolan iodide
ヨウ化ジフェニルピペリジノメチルジオキソラン [適]自律神経系作用薬
(鎮痙薬・粘膜分泌抑制薬)
data未詳 妊娠中の投与に関する安全性は確立していないので、妊婦又は妊娠している可能性のある婦人には、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること(9。
[441]diphenylpyraline hydrochloride
塩酸ジフェニールピラリン
[適]抗アレルギー薬
(抗ヒスタミン薬)
B2 → B2:妊婦又は妊娠可能な年齢層の女性に対する使用経験はまだ限られているが、奇形発現頻度の増加は
なく、ヒト胎児に対する他の直接的・間接的有害作用は観察されていない-まだ不適切・不十分な動物試験しか行われていないという懸念はあるが、現在入手しうるデータでは、胎児に対する有害作用の頻度を増大するという証拠は得られていない[ADEC](4。
妊婦への使用について、催奇形性を示唆する症例報告も疫学調査もない。50,282組の母子に関
する調査で、使用例の少ないその他の抗ヒスタミン剤として本剤を含む12種の薬剤を服用した 113例の調査結果があげられている。これらの薬剤に妊娠初期4カ月間に曝露されたことにより奇形の発生頻度は増加しないと報告。113例中本薬に曝露さ
れた母子は1組(3。 

奇形発生の頻度が高い妊娠初期に、本剤を服用した4例は、何れも健常児を出産(3。
[441]diphenylpyraline teoclate
テオクル酸ジフェニールピラリン
[適]抗アレルギー薬
(抗ヒスタミン薬)
[211]diprophylline
ジプロフィリン [適]強心薬(キサンチン系)
A → A:妊娠又は妊娠可能な年齢層の女性多数例に使用されてきたが、使用によって奇形発現の頻度が増加したという証拠は得られておらず、ヒト胎児に対する直接的・間接的な有害作用も証明されていない[ADEC](4。
本薬と構造及び作用の近似したテオフィリンでは、奇形発生の危険度の高い妊娠初期に服用した193例についての調査報告があるが、奇形との相関はみられていない(3。
[121]ethyl aminobenzoate
アミノ安息香酸エチル
[慣用名:アネステジン、ベンゾカイン]
[適]健胃消化薬(局所麻酔薬)
data未詳 benzocaine(パラアミノ安息香酸(PABA)誘導体エステル型局所麻酔剤)については、妊婦への投与に関する問題は実証されていない。大抵の局所適用する麻酔剤の試験は、動物、ヒトについて行われていない(7。 妊娠中の投与に関する安全性は確立していないので、妊婦又は妊娠している可能性がある婦人には、 治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与する(5。
[121]ethyliperidinoacetyl-
      aminobenzoate
ピペリジノアセチルアミノ安息香酸エチル [適]健胃消化薬(局所麻酔薬)
data未詳
[441]fenethazine tannate
タンニン酸フェネタジン
[適]抗アレルギー薬 (抗ヒスタミン薬)
data未詳 ?
[124]hyoscyaminum l-methylbromide
臭化メチル-l-ヒヨスチアミン [適]自律神経系作用薬
(鎮痙薬・粘膜分泌抑制薬)
B2 → B2:belladonna extractの項参照(4。
妊娠中の本剤服用によって、催奇形性は認められなかったとの疫学調査がある。一方、妊婦が非経口
的にスコポラミンを使用した場合、胎児及び新生児に頻脈などの影響がみられたの報告がある(3。

50,282組の母子の調査では、妊娠第1三半期にスコポラミン、アトロピン、ヒヨスチアミンをそれぞれ309例、401例、322例の妊婦が使用。何れの群でも薬剤使用と催奇形との関連は認められなかった(3。
スコポラミンは速やかに胎盤を通過。満期妊婦への投与により胎児に頻脈、心拍細変動の低下、心拍
数減少の抑制を起こした(3。
[124]isopropamide iodide
ヨウ化イソプロパミド
[適]自律神経系作用薬 (鎮痙薬・粘膜分泌抑制薬)
data未詳
推定無影響
妊婦への使用について、催奇形を示唆する症例及び疫学調査報告はない。50,282組の母子に関
する調査では、妊娠第1三半期にヨウ化イソプロパミドに曝露された1,071例について催奇形性との関連を示唆する証拠はみられなかった(3
[133]meclizine hydrochloride
塩酸メクリジン
[適]抗めまい薬(抗ヒスタミン薬)
・鎮吐剤
B →

A →

B:caffeineの項参照。
B:caffeineの項参照[ADEC](4。
A:meclizine及びその他の関連化合物は、動物で催奇形性があることが知られている。ヒト
での臨床試験では、常用量の範囲内では妊婦に投与しても奇形の発現率は統計的に有意の増加を示していない[ADEC](4。

妊娠中の本剤投与と口唇裂、口蓋裂などの奇形の発生の関連性を示唆したいくつかの報告があった。 しかし、その後の大規模調査では、何れも本剤のヒトにおける催奇形性は認められなかった(3。 50,282組の母子調査で、第1三半期に1,014組の母子が本薬に曝露されていた。また妊娠
中のいずれかの時期に本薬に曝露された母子が1,463組あった。何れの群も催奇性との関連を示唆する証拠は認められなかった。いくつかの催奇形性と関連する可能性がみられたが、統計的な有意性は確認できなかった(3。

妊娠中の本剤使用に関する疫学調査の再評価に基づき、FDAは本薬の妊娠中の使用制限を支持する情報はないと結論づけている(3。
[233]mentha oil
ハッカ油 [適]芳香性健胃薬
data未詳
原則無影響
本薬は芳香健胃薬の配合剤として用いられており、現在までに妊娠初期あるいは妊娠期間中に全く服用した事例がないとは考えられない。また、その結果、特に奇形児の発生率が上昇したとする疫学調査結果も報告されていない。食品あるいは嗜好品中にも添加
されているものがあり、それを理由として奇形児発生の増加は報告されていない。
[233]dl-menthol
dl-メントール
[適]芳香性健胃薬
[233]l-menthol l-メントール
[適]芳香性健胃薬
[124]methylbenactyzium bromide
臭化メチルベナクチジウム
[適]自律神経系作用薬 (鎮痙薬・粘膜分泌抑制薬)
data未詳 妊娠中の投与に関する安全性は確立していないので、妊婦又は妊娠している可能性がある婦人には、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与 する(5。  
[124]methylscopolamine bromide 臭化メチルスコポラミン
[適]自律神経系作用薬
(鎮痙薬・粘膜分泌抑制薬)
C →
B2 →
C:aminophyllineの項参照。 B2:belladonna extractの項参照(4。
妊娠中の本剤服用によって、催奇形性は認められなかったとの疫学調査がある。一方、妊婦が非経口
的にスコポラミンを使用した場合、胎児及び新生児に頻脈などの影響がみられたの報告がある(3。

50,282組の母子の調査では、妊娠第1三半期にスコポラミン、アトロピン、ヒヨスチアミンを
それぞれ309例、401例、322例の妊婦が使用。何れの群でも薬剤使用と催奇形との関連は認められなかった(3。

スコポラミンは速やかに胎盤を通過。満期妊婦への投与により胎児に頻脈、心拍細変動の低下、心拍数減少の抑制を起こした(3。
[124]metixene hydrochloride
塩酸メチキセン
[適]自律神経系作用薬
(鎮痙薬・粘膜分泌抑制薬)
data未詳 動物での繁殖試験では、陰性であるとはいえ、妊娠期間中の安全性の臨床的確認が行われるまでは、本剤の妊娠可能な婦人への使用は、医師が使用の利益性と危険性とを比較した結果、服用の可否を判断した場合を除き使用すべきでない(9。
[313]nicotinamide
ニコチン酸アミド
[適]ビタミン剤
A → C
B2 → 
原則無影響
A:calcium pantothenateの項参照。
B2:belladonna extractの項参照(4。 原則的には食品からも摂取されるが、ニコチン酸アミド含有量の多い食品を摂取したことにより奇形発生率が増加したとする報告は知られていない。 
[124]oxyphencyclimine
       hydrochloride
塩酸オキシフェンサイクリミン [適]自律神経系作用薬
(鎮痙薬・粘膜分泌抑制薬)
B2 → B2:妊婦又は妊娠可能な年齢層の女性に対する使用経験はまだ限られているが、奇形発現頻度の増加はなく、ヒト胎児に対する他の直接的・間接的有害作用は観察されていない-まだ不適切・不十分な動物試験しか行われていないという懸念はあるが、現在入手しうるデー タでは、胎児に対する有害作用の 頻度を増大するという証拠は得られていない[ADEC](4。
[124]papaverine hydrochloride
塩酸パパベリン
[適]自律神経系作用薬
(鎮痙薬・粘膜分泌抑制薬)
A → A:妊娠又は妊娠可能な年齢層の女性 多数例に使用されてきたが、使用 によって奇形発現の頻度が増加したという証拠は得られておらず、ヒト胎児に対する直接的・間接的
な有害作用も証明されていない[ADEC](4。
[441]pheniramine maleate
マレイン酸フェニラミン
[適]抗アレルギー薬 (抗ヒスタミン薬)
A → A:妊娠又は妊娠可能な年齢層の女性 多数例に使用されてきたが、使用 によって奇形発現の頻度が増加したという証拠は得られておらず、 ヒト胎児に対する直接的・間接的 な有害作用も証明されていない[ADEC](4。
[441]promethazine hydrochloride
塩酸プロメタジン
[適]抗アレルギー薬
(抗ヒスタミン薬)
C →

C →

C:aminophyllineの項参照。
C:催奇形性はないが、その薬理作用によって、胎児や新生児に有害作用を及ぼす。又は及ぼす可能性が疑われる薬剤。
妊娠後期にフェノチアジン系薬を大量に投与すると、新生児に持続性の錐体外路障害を来すことがあ
る[ADEC](4。

妊婦の使用について、催奇形性を示唆する症例報告も疫学調査もない(3。
先天性奇形を有する836人の乳児に関する調査で、妊娠第1三半期に母親が本薬を使用した群と使
用しなかった836人の対照群との間に有意差は認められなかった(3。
50,282組の母子に関する調査で、妊娠第1三半期に本剤に曝露され14人の新生児に奇形発生の危険度の増加はみられなかった(3
*妊娠第1三半期に本薬に曝露された165例に関する調査では、奇形発生 との相関は認められなかった(3。
陣痛期にプロメタジン及びペチジンが投与された母親から産まれた新生児に、血小板凝集能の障害が
起きた(3。
[441]promethazine methylendisalicylate
プロメタジンメチレンジサリチル酸塩
[適]抗アレルギー薬
(抗ヒスタミン薬)
[124]scopolamine hydrobromide 臭化水素酸スコポラミン
[適]自律神経系作用薬
(鎮痙薬・粘膜分泌抑制薬)
C →
B2 →
C:aminophylline の項参照。
B2:belladonna extractの項参照(4。
妊娠中の本剤服用によって、催奇形性は認められなかったとの疫学調査がある。一方、妊婦が非経口的にスコポラミンを使用した場合、胎児及び新生児に頻脈などの影響がみられたの報告がある(3。

50,282組の母子の調査では、妊娠第1三半期にスコポラミン、アトロピン、ヒヨスチアミンをそれぞれ309例、401例、322例の妊婦が使用。何れの群でも薬剤使用と催奇形との関連は認められなかった(3。 スコポラミンは速やかに胎盤を通過。満期妊婦への投与により胎児に頻脈、心拍細変動の低下、心拍数減少の抑制を起こした(3。
[124]scopolia extract
ロートエキス
[適]自律神経系作用薬 (鎮痙薬・粘膜分泌抑制薬)
C →
B2 →
C:aminophyllineの項参照。
B2:belladonna extractの項参照(4。
[234]sodium bicarbonate
炭酸水素ナトリウム
[適]制酸剤
data未詳 ヒトにおける報告はないが、慢性的な使用は全身性アルカローシスになるおそれがある。また、ナトリウム貯留により浮腫や体重増加のおそれがあるので、治療の有益性が危険性を上回るか否かを考慮する(5。
[211]theophylline
テオフィリン [適]強心薬(キサンチン系)
C →

A →
推定無影響

C:aminophyllineの項参照。 A:caffeineの項参照[ADEC](4。
喘息治療の妊婦に継続使用されてきたが、奇形の危険性を増大させるとの報告はない。このためテオフィリンは妊婦の喘息治療に使用する第一次選択薬剤であるとされる(3。 
[312]vitamin B1
ビタミンB1及びその誘導体 [適]ビタミン剤
A → C
原則無影響
A:calcium pantothenateの項参照。
原則的には食品からも摂取されるが、ビタミンB1・B2・B6含有量の多い食品を摂取したことにより奇形発生率が増加したとする報告は知られていない。 
[312]vitamin B2
ビタミンB2 [適]ビタミン剤
A →
原則無影響
[312]vitamin B6
ビタミンB6 [適]ビタミン剤
A → C
原則無影響

[015.11.TER:1998.4.3. 古泉秀夫・2003.12.14.改訂]


  1. JAPIC・編:一般薬日本医薬品集;薬業時報社,1998-99
  2. 高久 史麿・他編:治療薬マニュアル;医学書院,1998
  3. 佐藤 孝道・他編:妊娠と薬;薬業時報社,1992
  4. 雨森 良彦・監修:妊娠中の投薬とそのリスク;医薬品・治療研究会, 1993
  5. 厚生省薬務局研究開発振興課・監:JPDI;薬業時報社,1996
  6. 高木 敬次郎・他:薬物学;南山堂,1987
  7. 堀岡 正義・他監訳:薬剤投与情報;同朋舎,1985
  8. 第十二改正日本薬局方解説書;廣川書店,1991
  9. 西村 秀雄・監:催奇形性等発生毒性に関する薬品情報 第2版;東洋書 店,1986

一般用医薬品(外用痔疾用薬)の催奇形 性について

木曜日, 8月 16th, 2007

KW:催奇形性・催奇性・奇形児・外用痔疾用薬・一般用医薬品・OTC ・妊婦・絶対過敏期・相対過敏期

「外用痔疾用薬製造(輸入)承認基準」(平成7年3月22日改正)におい て、外用痔疾用薬の有効成分・配合量等が規定されている。使用上の注意については、平成7年3月22日付文書が報告されているが、妊婦への投与については、「2.次の人は使用前に医師又は薬剤師に相談すること。-(3)妊婦又は妊 娠していると思われる婦人[坐剤(軟カプセル剤を含む。以下同じ)及び注入の用法をもつ軟膏剤]」と記載されている。

相談された医師・薬剤師が、何に依拠して回答するのか、根拠の一助とすべく 報告されている資料の整理を行った。

  • 妊娠1カ月:最終月経の開始日を0週0日とし、4週間が1カ月、0週0日-3週6日まで
  • 妊娠2カ月:4週0日-7週6日まで
  • 安 全 期:月経周期28日型の場合、月経初日から33日目(3週末まで)→残留性のない薬剤の場合、催奇 形性の可能性はない。
  • 絶対過敏期:最終月経開始日から28日-50日目(妊娠4週-7週末まで→胎児の中枢神経、心臓、消化器、 四肢などの重要臓器が発生・分化し、催奇形に対し最も敏感な時期。)
  • 相対過敏期:51日-84日目
[分類]・薬剤名 評価 概要
[261]acrinol(ethacridin lactate)

アクリノール(乳酸エタクリジン)

[適]殺菌消毒薬

data未詳 規定した資料に、該当する記載がない(8。消化管 からの吸収は極めて悪い。200mg経口投与時、投与6?12時間後に最高血漿中濃度40?50ng/mL(5。
[261]alkylpolyaminoetilglycine

(Tego-51)

アルキルポリアミノエチルグリシン

[適]殺菌消毒薬

data未詳 ■本薬は陰・陽両イオンが共存する両性界面活性剤で優れた洗浄力・殺菌力を有する。

■本薬を主成分とする洗眼剤の添付文書中に、妊婦への使用に関する注意事項は記載されていない。ま た消毒剤の添付文書中に、妊婦への使用に関する注意事項は記載されていない。

[262]allantoin

アラントイン

[適]組織修復剤

data未詳 ■アラントイン=グリオキシルジウレイド、5-ウレイドヒダントイン。尿素。プリン体の代謝産物。 生体内では尿酸のウリカーゼによる酸化によって作られる。ヒトや霊長類を除く哺乳動物では、この酵素が肝臓にあるので、プリン代謝の最終産物である。

■生体内で、生成されるとすれば、原則的には、奇形発現の原因物質とはなり得ないのではと推定され る。

[262]aluminum chlorhydroxy allantoinate(alcloxa)

アルミニウムクロロヒドロキシアラントイネート(アルクロキサ)

[適]組織修復剤

data未詳 ■アルクロキサの褥瘡・皮膚潰瘍治療剤の添付文書中に、妊婦への投与に関する注意事項は記載されて いない。また、本薬はアラントインの形で経皮吸収されるの報告。

■本薬の組織修復作用を期待して散布剤の市販がされている。現在までに本剤が妊娠初期又は妊娠期間 中の女性に全く使用された経験がないとは考えられず、その結果として奇形児出生率の増加が見られたとする報告も知られていない。

[264]dried aluminumpotassium sulfate乾燥硫酸アルミニウムカリウム(明礬)

[適]局所収斂・分泌抑制作用

原則無影響 ■漬物類、煮物類の保色剤として使用。浄水剤(6。

■漬物類の保色剤・浄水剤として使用等から、妊娠初期又は妊娠中の女性が過去に全く曝露された経験 がないとは考えられない。またその結果奇形児の出生率が増加したとする報告も知られていない。

[261]benzalkonium chloride

塩化ベンザルコニウム

[適]殺菌消毒薬

data未詳 ■妊婦・授乳婦への投与:規定した資料に、該当する記載がない(8。
[261]berberine chloride

塩化ベルベリン

[適]殺菌消毒薬

data未詳 ■妊婦・授乳婦への投与:規定した資料に、該当する記載がない(8
[121]p-butylaminobenzoyl diethylaminoethyl hydrochloride

塩酸パラブチルアミノ安息香酸ジエチルアミノエチル

[適]局所麻酔薬

data未詳 ■催奇形性に関する資料は不明。
[264]d-camphor

d-カンフル

[適]消炎・鎮痛・鎮痒薬

data未詳 ■妊娠中の投与に関する安全性は確立していないので、妊婦又は妊娠している可能性のある婦人には治 療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与する。
[264]dl-camphor

dl-カンフル

[適]消炎・鎮痛・鎮痒薬

[261]cetrimide

セトリミド

[適]殺菌消毒薬

data未詳 催奇形性に関する資料は不明。
[261]cetylpyridinium chloride

塩化セチルピリジニウム

[適]殺菌消毒薬

A →

推定無影響

A:妊婦又は妊娠可能な年齢層の女性多数例に使用されてきたが、使用によって奇形発現の頻度が増加 したいう証拠は得られておらず、ヒト胎児に対する他の直接・間接的な有害作用も証明されていない[ADEC]。

■本薬のトローチ剤の添付文書中に、妊婦への投与に関する注意事項は記載されていない。

■本薬の抗菌作用を期待して、トローチ剤の市販がされている。現在までに本剤が妊娠初期又は妊娠期 間中の女性に全く使用された経験がないとは考えられず、その結果として奇形児出生率の増加が見られたとする報告も知られていない。

[261]chlorhexidine gluconate

グルコン酸クロルヘキシジン

[適]殺菌消毒薬

A →

推定無影響

A:妊婦又は妊娠可能な年齢層の女性多数例に使用されてきたが、使用によって奇形発現の頻度が増加 したという証拠は得られておらず、ヒト胎児に対する他の直接・間接的な有害作用も証明されていない[ADEC]。

■塩酸クロルヘキシジンを成分とするトローチ剤の添付文書中に、妊婦への投与に関する注意事項は記 載されていない。

■本薬の抗菌作用を期待してトローチ剤の市販がされている。現在までに本剤が妊娠初期又は妊娠期間 中の女性に全く使用された経験がないとは考えられず、その結果として奇形児出生率の増加が見られたとする報告も知られていない。

[261]chlorhexidine hydrochloride

塩酸クロルヘキシジン

[適]殺菌消毒薬

[441]chlorpheniramine maleate

マレイン酸クロルフェニラミン

[適]抗ヒスタミン薬

C →

A→

推定無影響

C:動物生殖試験では、胎仔に催奇形性、胎仔毒性、その他の有害作用があることが証明されており、 ヒトでの対照試験が実施されていないもの。あるいはヒト、動物ともに試験は実施されていないもの。ここに分類される薬剤は、潜在的な利益が胎児への潜在的危険性よりも大きい場合にのみ使用すること[FDA]。

A:妊婦又は妊娠可能な年齢層の女性多数例に使用されてきたが、使用によって奇形発現の頻度が増加 したという証拠は得られておらず、ヒト胎児に対する他の直接・間接的な有害作用も証明されていない[ADEC]。

■妊婦の使用に関して催奇形性・胎児毒性を示唆した症例報告あるいは疫学調査は ない(3。

■クロルフェニラミンに体内で曝露された児に、先天性の奇形がみられる頻度は増 加しないとのレトロスペクティブな調査報告がある(3

■50,282組の母子に関する調査で、第1三半期に1,070例が本剤に曝露されていた。また、 妊娠中のいずれかの時期に本剤に曝露された母子は3,931組あった。何れの群も催奇形との関連を示唆する証拠は認められなかった。数種の奇形と関連している可能性がみられたが、統計的に有意であるかどうか明らかでない(3。

[311]cod liver oil

肝油・強肝油

[適]ビタミンA欠乏症治療剤

data未詳

ビタミンAとして1日推奨許容量の範囲内であれば、原則無影響

■本品はマダラ又はスケトウダラの新鮮な肝臓及び幽門垂から得た脂肪油であると局方中に規定。両魚 の肝臓等は食物としても摂食されており、その意味では妊娠初期又は妊娠期間中の女性が全く曝露される機会がないとは考えられない。また、タラ肝臓の摂食により奇形児の発生がみられたとする報告も知られていない。
[264]crotamiton

クロタミトン

[適]消炎・鎮痛・鎮痒薬

C → C:動物生殖試験では、胎仔に催奇形性、胎仔毒性、その他の有害作用があることが証明されており、 ヒトでの対照試験が実施されていないもの。あるいはヒト、動物ともに試験は実施されていないもの。ここに分類される薬剤は、潜在的な利益が胎児への潜在的危険性よりも大きい場合にのみ使用[FDA]。

■本薬に関する動物での生殖試験は行われていない。本薬を妊婦に投与するとき、胎児障害を起こすか 否か、あるいは受胎能力に影響を及ぼすか否かは未知である。本薬を妊婦に投与する場合は、明確に必要である場合に限るべきである[PDR]。

[261]dequalinium chloride

塩化デカリニウム

[適]殺菌消毒薬

推定無影響 ■本薬はグラム陽性菌、真菌などに抗菌作用を示す。本薬のトローチ剤の添付文書中に妊婦への投与に 関する注意事項は記載されていない。

■本薬の抗菌作用を期待してトローチ剤の市販がされている。現在までに、本剤が妊娠初期又は妊娠期 間中の女性に全く使用された経験がないとは考えられず、その結果として奇形児出生率の増加が見られたとする報告も知られていない。

[121]dibucaine

ジブカイン

[適]局所麻酔薬

  ■妊娠中の投与に関する安全性は確立していないので、妊婦又は妊娠している可能性のある婦人には、 治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること(8。
[121]dibucaine hydrochloride

塩酸ジブカイン

[適]局所麻酔薬

[264]dimethyl isopropylazulene

(guaiazulene)

ジメチルイソプロピルアズレン

(グアイアズレン)

[適]消炎・鎮痛・鎮痒薬

推定無影響 ■カミツレ(Matricaria chamomilla L.)は、菊科植物で古くより民間薬として諸種の疾患に使用されている。カミツレの有効成分アズレン(azulene)は、特有の七員環構造を持つ化合物で、炎症組織に対する直接作用と各種の起炎物質に対する抑制作用を示す。グアイアズレンはアズレンの一種である(19・20。

■古くから外国において民間薬として使用されてきたということであり、この間に 妊娠初期又は妊娠期間中の女性が本薬に全く汚染される機会がなかったとは考え難い。また、そのことを理由として、奇形児出生率の増加が見られたとする報告は知られていない。

■本薬軟膏剤の添付文書中に、催奇形性に関する記載はされていない。

[441]diphenhydramine

ジフェンヒドラミン

[適]抗ヒスタミン薬

C →

A →

推定無影響

C:動物生殖試験では、胎仔に催奇形性、胎仔毒性、その他の有害作用があることが証明されており、 ヒトでの対照試験が実施されていないもの。あるいはヒト、動物ともに試験は実施されていないもの。ここに分類される薬剤は、潜在的な利益が胎児への潜在的危険性よりも大きい場合にのみ使用すること[FDA]。

A:妊婦又は妊娠可能な年齢層の女性多数例に使用されてきたが、使用によって奇形発現の頻度が増加 したという証拠は得られておらず、ヒト胎児に対する他の直接・間接的な有害作用も証明されていない [ADEC]。

■50,282組の母子に関する調査では、第1三半期に595組が本薬に曝露されていた。また、妊 娠中の何らかの時期に、本薬に曝露された母子が2,948組あったが、何れの群も奇形と関連性を示唆する証拠は認められなかった。数種の奇形と関連している可能性はあるが、統計的に有意かどうかは不明(3。

■599例の口蓋裂を有する子供群と590例の口蓋裂のない子供群を比較した調 査では、第1三半期に子宮内でジフェンヒドラミンに曝露されたのは、前者20例、後者6例と有意差がみられた。母親のジフェンヒドラミン服用と口蓋裂の発生に統計的に有意な関連が認められたとの報告(3。

■1971年に行われた奇形を有する児に関する調査では、第1三半期に抗ヒスタ ミン剤に曝露された児に奇形のみられる頻度は対照群と比較してむしろ少なかったと報告されている。この調査ではジフェンヒドラミンは2番目に繁用されていた(3。

■6,509人の母親の調査で、第1三半期に本剤を服用した270例では、薬剤の使用と催奇形に関 連性は認められなかった(3。

■妊娠中にジフェンヒドラミンを毎日150mg/kg服用していた母親から産まれた子供に、離脱症 状として、全身の震えと下痢が発生したとの報告がある。フェノバルビタールによる治療で症状は改善(3。

[441]diphenhydramine hydrochloride

塩酸ジフェンヒドラミン

[適]抗ヒスタミン薬

[441]diphenylpyraline hydrochloride

塩酸ジフェニールピラリン

[適]抗ヒスタミン薬

B2 → B2:妊婦又は妊娠可能な年齢層の女性に対する使用経験はまだ限られているが、奇形発現頻度の増加は なく、ヒト胎児に対する他の直接的・間接的有害作用は観察されていない。-まだ不適切・不十分な動物試験しか行われていないという懸念はあるが、現在入手しうるデータでは、胎児に対する有害作用の頻度を増大するという証拠は得られていない[ADEC]。

■妊婦への使用について、催奇形性を示唆する症例報告も疫学調査もない。50,282組の母子に関 する調査で、使用例の少ないその他の抗ヒスタミン剤として本剤を含む12種の薬剤を服用した 113例の調査結果があげられている。これらの薬剤に妊娠初期4カ月間に曝露されたことにより奇形の発生頻度は増加しないと報告。113例中本薬に曝露された母子は1組(3。

■奇形発生の頻度が高い妊娠初期に本剤を服用した4例は、何れも健常児を出産(3。

[222]ephedrin hydrochloride

塩酸エフェドリン

[適]局所血管収縮薬

C →

A →

C:動物生殖試験では、胎仔に催奇形性、胎仔毒性、その他の有害作用があることが証明されており、 ヒトでの対照試験が実施されていないもの。あるいはヒト、動物ともに試験は実施されていないもの。ここに分類される薬剤は、潜在的な利益が胎児への潜在的危険性よりも大きい場合にのみ使用すること[FDA]。

A:妊婦又は妊娠可能な年齢層の女性多数例に使用されてきたが、使用によって奇形発現の頻度が増加 したという証拠は得られておらず、ヒト胎児に対する他の直接・間接的な有害作用も証明されていない [ADEC]。

[245]epinephrine

エピネフリン液

[適]局所血管収縮薬

C → C:動物生殖試験では、胎仔に催奇形性、胎仔毒性、その他の有害作用があることが証明されており、 ヒトでの対照試験が実施されていないもの。あるいはヒト、動物ともに試験は実施されていないもの。ここに分類される薬剤は、潜在的な利益が胎児への潜在的危険性よりも大きい場合にのみ使用すること[FDA]。
[121]ethyl aminobenzoate

アミノ安息香酸エチル

[適]局所麻酔薬

data未詳 ■妊娠中の投与に関する安全性は確立していないので、妊婦又は妊娠している可能性のある婦人には、 治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること(8。
[264]eucalyptus oil

ユーカリ油

[適]消炎・鎮痛・鎮痒薬[賦香料]

data未詳 ■本薬はEucalyptus globulus Labillardiere又はその近縁植物(Myrtaceae)の葉を水蒸気蒸留して得た精油である。主成分はcineole (eucalyptol)約70%以上であり、その他p-cymene、terpineol 、cuminal、pineneなどであるが、品種によりcineole以外の含有成分に大差がある。少量成分として、低級脂肪族アルデヒド、 phellandrene、phellandral及びセスキテルペンなどが含まれる。
[264]glycyrrhetic acid

グリチルリチン酸

[適]消炎・鎮痛・鎮痒薬

原則無影響 ■食品添加物としてのグリチルリチン酸は、甘草又は同属植物を原料として作る。現在はナトリウム塩 として精製したものを使用することは稀で、甘草エキス又はエキスを粉末にしたものが使用される。本剤は甘草中の成分であり、味噌及び醤油の甘味料として添加されている。従って、妊娠初期又は妊娠期間中に、グリチルリチン酸に全く曝露する機会がなかったとは考えられず、またそのことにより奇形児発生率が加したとする報告も知られていない。
[263]homosulfamine

ホモスルファミン

[適]サルファ剤

B → B:サルファ剤として。動物生殖試験では胎仔への危険性は否定されているが、ヒト妊婦での対照試験 は実施されていないもの。あるいは動物生殖試験で有害な作用(又は出生数の低下)が証明されているが、ヒトでの妊娠初期3カ月の対照試験では実証されていない。又はその後の妊娠期間でも危険であるという証拠はないもの[FDA]。
[245]hydrocortisone

ヒドロコルチゾン

[適]副腎皮質ホルモン剤

C → C:動物生殖試験では、胎仔に催奇形性、胎仔毒性、その他の有害作用があることが証明されており、 ヒトでの対照試験が実施されていないもの。あるいはヒト、動物ともに試験は実施されていないもの。ここに分類される薬剤は、潜在的な利益が胎児への潜在的危険性よりも大きい場合にのみ使用すること[FDA]。

■催奇形性はないが、その薬理作用によってヒト胎児又は新生児に有害な作用を及ぼす、又は及ぼす可 能性が疑われる薬剤。この作用は可逆的な場合もある。

C:動物実験で は、副腎皮質ステロイドが口蓋裂、骨格奇形など種々先天奇形を来すことはよく知られているが、ヒトに関しては当たらないようである。しかし、長期の投与では、ヒト・動物何れも胎盤重量や生体体重の減少を来すという報告がある。長期投与で新生児の副腎皮質機能が抑制される危険性を考慮すれば、その投与は母体への必要性と児に対するリスクを比較して、十分に慎重でなければならない。呼吸速迫症候群の予防のため出産前に短期間の副腎皮質ステロイドを投与することは、胎児や新生児に対しリスクを負荷することにはならないようである。また産褥期や体液負荷に伴って、本剤が母体に肺水腫を来したという報告がある [ADEC]。

■第1三半期におけるコルチゾンを服用した34組の母子の調査で、先天性奇形発生の証拠は確認でき なかった。強力ポステリザン軟膏を妊娠初期(最終月経から17?31日に4日間服用)使用した1例で、健常児出産(3。

[245]hydrocortisone acetate

酢酸ヒドロコルチゾン

[適]副腎皮質ホルモン剤

[264]ichthammol

イクタモール

[適]消炎・鎮痒薬

data未詳 ■本薬はアンモニア(2.5%以上)、硫酸アンモニウム(8.0%以下)及び総イオウ10.0%以 上を含む。

■イヒチオール(イクタモール)は、ギリシャ語の魚からきた語で、前生期の魚類と海獣の残骸を含む 石塊(歴青質頁岩)を乾留して得られるイヒチオール油である。

[261]isopropylmethylphenol

イソプロピルメチルフェノール

[適]殺菌消毒薬

data未詳 ■催奇形性に関する資料は不明。
[212]lidocaine

リドカイン

[適]局所麻酔薬

A →

推定無影響

A:妊婦又は妊娠可能な年齢層の女性多数例に使用されてきたが、使用によって奇形発現の頻度が増加 したという証拠は得られておらず、ヒト胎児に対する他の直接・間接的な有害作用も証明されていない[ADEC]。
[212]lidocaine hydrochloride

塩酸リドカイン

[適]局所麻酔薬

[395]lysozyme chloride

塩化リゾチーム

[適]消炎酵素剤

原則無影響 ■鶏卵白を原料とする蛋白質。生体防御の目的でヒト生体内にも存在する。従って、本剤に由来する催 奇形性の発生は考え難い。また、卵白自体、食物あるいは菓子類等の嗜好品として摂取されており、鶏卵の摂取量により奇形発生率の増加がみられたとする報告もみられない。
[233]mentha oil

ハッカ油

[適]芳香性健胃薬

原則無影響 ■本薬は芳香健胃薬の配合剤として用いられており、現在までに妊娠初期あるいは妊娠期間中に全く服 用した事例がないとは考えられない。また、その結果、特に奇形児の発生率が上昇したとする疫学調査結果も報告されていない。食品あるいは嗜好品中にも添加されているものがあり、それを理由として奇形児発生の増加は報告されていない。
[233]dl-menthol

dl-メントール

[適]芳香性健胃薬

[233]l-menthol

l-メントール

[適]芳香性健胃薬

[121]mepivacaine

メピバカイン

[適]局所麻酔薬

A → A:妊婦又は妊娠可能な年齢層の女性多数例に使用されてきたが、使用によって奇形発現の頻度が増加 したという証拠は得られておらず、ヒト胎児に対する他の直接・間接的な有害作用も証明されていない[ADEC]。
[121]meprylcaine hydrochloride

塩酸メプリルカイン

[適]局所麻酔薬

data未詳 ■催奇形性に関する資料は不明。
[222]dl-methylephedrine hydrochloride

dl-塩酸メチルエフェドリン

[適]局所血管収縮薬

C →

A →

推定無影響

C:塩酸エフェドリンとして→動物生殖試験では、胎仔に催奇形性、胎仔毒性、その他の有害作用があ ることが証明されており、ヒトでの対照試験が実施されていないもの。あるいはヒト、動物ともに試験は実施されていないもの。ここに分類される薬剤は、潜在的な利益が胎児への潜在的危険性よりも大きい場合にのみ使用すること[FDA]。

A:塩酸エフェドリンとして→妊婦又は妊娠可能な年齢層の女性多数例に使用されてきたが、使用に よって奇形発現の頻度が増加したという証拠は得られておらず、ヒト胎児に対する他の直接・間接的な有害作用も証明されていない[ADEC]。

■妊娠中の投与に関する安全性未確立-治療上の有益性(8。

[132]naphazoline hydrochloride

塩酸ナファゾリン

[適]局所血管収縮薬

  ■妊娠中の投与に関する安全性未確立-治療上の有益性(8。

■ヒトについての問題は実証されていない。本剤は全身性に吸収されるので、治療上の有益性が危険性 を上回ると判断される場合にのみ投与すること(9。

[121]oxipolyethoxydodecan

オキシポリエトキシドデカン

[適]局所麻酔薬

data未詳 ■催奇形性に関する資料は不明。
[132]phenylephrine hydrochloride

塩酸フェニレフリン

[適]局所血管収縮薬

B2 → 2:妊婦又は妊娠可能な年齢層の女性に対する使用経験はまだ限られているが、奇形発現頻度の増加は なく、ヒト胎児に対する他の直接的・間接的有害作用は観察されていない。-まだ不適切・不十分な動物試験しか行われていないという懸念はあるが、現在入手しうるデータでは、胎児に対する有害作用の頻度を増大するという証拠は得られていない[ADEC]。
[245]prednisolone

プレドニゾロン

[適]副腎皮質ホルモン剤

B  →

C →

B:動物生殖試験では、胎仔への危険性は否定されているが、ヒト妊婦での対照試験は実施されていな いもの。あるいは動物生殖試験で有害な作用(又は出生数の低下)が証明されているが、ヒトでの妊娠初期3カ月の対照試験では実証されていない。又はその後の妊娠期間でも危険であるという証拠はないもの[FDA]。

C:催奇形性はないが、その薬理作用によってヒト胎児又は新生児に有害な作用を及ぼす、又は及ぼす 可能性が疑われる薬剤。この作用は可逆的な場合もある。

■動物実験では、副腎皮質ステロイドが口蓋裂、骨格奇形など種々先天奇形を来す ことはよく知られているが、ヒトに関しては当たらないようである。しかし、長期の投与では、ヒト・動物何れも胎盤重量や生体体重の減少を来すという報告がある。長期投与で新生児の副腎皮質機能が抑制される危険性を考慮すれば、その投与は母体への必要性と児に対するリスクを比較して、十分に慎重でなければならない。呼吸速迫症候群の予防のため出産前に短期間の副腎皮質ステロイドを投与することは、胎児や新生児に対しリスクを負荷することにはならないようである。また産褥期や体液負荷に伴って、本剤が母体に肺水腫を来したという報告がある[ADEC]。

■妊娠中プレドニゾロンを毎日2.5?30mg投与された喘息の母親から生まれ た小児に、奇形の発生頻度が増加したとの報告がある(3。

■妊娠中にプレドニゾロンあるいはプレドニゾンを投与された報告が多数ある。しかし、これらの薬剤 は胎児の発達にほとんど影響しない。これまでの知見から妊婦の種々の疾病をコントロールするのに、本剤を使用することが指示される(3。

[245]prednisolone acetate

酢酸プレドニゾロン

[適]副腎皮質ホルモン剤

[121]procaine hydrochloride

塩酸プロカイン

[適]局所麻酔薬

data未詳 ■妊娠中の投与に関する安全性は確立していないので、妊婦又は妊娠している可能性のある婦人には、 治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること(8。

■正常分娩で、胎盤に異常のない絨毛上皮ホモジネートの遠沈渣を局麻剤と培養し、その残存量の定量 からプロカインは胎盤で分解されるとしている。また分娩時妊婦40例に1?10mg/kgを静注し、分娩後の臍帯静脈、母動脈中で測定した場合、4mg以下では胎盤血中にプロカインは見られないがPABAは2mg投与でも見られるとしている(8。

[264]purified yolk lecithin

精製卵黄レシチン

[適]消炎・鎮痛・鎮痒薬

原則無影響 ■天然物乳化剤としてマーガリン、チョコレート、キャラメル、パン、ビスケット、ケーキ、饂飩、マ カロニ、佃煮、アイスクリーム類、味噌、醤油等に使用(6。

■鶏の卵黄から精製したレシチンで、本来食品として摂取されるものであり、鶏卵の摂食により催奇形 性の発現率が増加したとする報告は知られていない。

[261]resorcin(resorcinol)

レゾルシン

[適]殺菌消毒薬

医薬品(皮膚疾患治療薬)

化粧品原料基準

殺菌、鎮痒、表皮剥離、角質溶解剤として次の疾患に:脂漏、脂漏性湿疹、 被髪部乾癬、尋常性ざ瘡、批糠性脱毛症。

data未詳 ■フェノールに類似する殺菌作用を持つが、フェノールより局所刺激性、腐食性及び毒性は弱い。二価 フェノールの殺菌作用は、カテコール、ハイドロキノン、レゾルシンの順に弱くなるが毒性も低下する。濃厚液は強い疼痛を伴わずに腐食作用、角質溶解作用をもっている。本品は吸収されると解熱作用を現す。石炭酸計数:0.4。

■禁忌:過敏既往歴者、皮膚結核、真菌性皮膚疾患、単純疱疹、種痘疹、水痘、乳幼児、眼及び眼周 囲。

■副作用:長期連用・大量使用による経皮吸収により胃腸障害(悪心等)、中枢神 経障害(眩暈、痙攣等)、メトヘモグロビン血症、粘液水腫等の中毒症状。掻痒感、腫脹、水疱等の過敏症状(使用中止)。皮膚の真菌性及び細菌性感染症(使用中止)(19。

[311]retinol palmitate

パルミチン酸レチノール

[適]ビタミンA

A → X

X →

D →

1日推奨許容量の範囲内であれば推定無影響

A:ヒトの妊娠初期3カ月間の対照試験で、胎児への危険性は証明されず、またその後の妊娠期間でも 危険であるという証拠もないもの。但し、推奨される1日投与量以上、又は服用時期によって→X。

X:動物又はヒトでの試験で、胎児異常が証明されている場合、あるいはヒトでの使用経験上胎児への 危険性の証拠がある場合、又はその両方の場合で、この薬剤を妊婦に使用することは、他のどん な利益よりも明らかに危険性の方が大きいもの。ここに分類される薬剤は、妊婦又は妊娠している可能性のある婦人には禁忌である[FDA]。

D:ヒト胎児に作用して奇形あるいは非可逆的障害の発現頻度を高める薬、あるい は高めたことが推定される薬、あるいは高めるであろうことが強く疑われる薬、これらの薬は薬理学的な副作用を伴うこともある。→過量のビタミンA摂取は、先天障害を引き起こすことがある。服用前にビタミンAを補う必要があるかどうかを考えること。通常、オーストラリア人の食事はビタミンAの1日標準必要量 2500 I.U.を充分に含んでいる[ADEC]。

■FDAリスクファクターでは、1日10000 I.U.以上で[X]、8000 I.U.では[A]に分類。疫学調査及び症例報告で実際に奇形が報告されている用量は、1日25000 I.U.以上、潜在的催奇形性を示す用量は1日25000I.U.以上という見解もみられる(3。

[124]scopolia extract

ロートエキス

[適]自律神経系作用薬

(鎮痙薬・粘膜分泌抑制薬)

C →

B2 →

C:動物生殖試験では、胎仔に催奇形性、胎仔毒性、その他の有害作用があることが証明されており、 ヒトでの対照試験が実施されていないもの。あるいはヒト、動物ともに試験は実施されていないもの。ここに分類される薬剤は、潜在的な利益が胎児への潜在的危険性よりも大きい場合にのみ使用すること[FDA]。

B2:妊婦又は妊娠可能な年齢層の女性に対する使用経験はまだ限られているが、奇形発現頻度の増加は なく、ヒト胎児に対する他の直接・間接的有害作用は観察されていない- まだ不適切・不十分な動物試験しか行われていないという懸念はあるが、現在入手しうるデータでは、胎児に対する有害作用の頻度を増大するという証拠は得られていない[ADEC]。

[263]sulfadiazine

スルファジアジン

[適]サルファ剤

B  →

C →

B:サルファ剤として。動物生殖試験では胎仔への危険性は否定されているが、ヒト妊婦での対照試験 は実施されていないもの。あるいは動物生殖試験で有害な作用(又は出生数の低下)が証明されているが、ヒトでの妊娠初期3カ月の対照試験では実証されていない。又はその後の妊娠期間でも危険であるという証拠はないもの[FDA]。

C:催奇形性はないが、その薬理作用によってひと胎児又は新生児に有害な作用を及ぼす、又は及ぼす 可能性が疑われる薬剤。この作用は可逆的な場合もある。サルファ剤は血漿アルブミンに結合したビリルビンを置換してしまうため、生後最初の1カ月間は新生児核黄疸を引き起こす場合がある。従って、できるならば妊娠最終月には、サルファ剤の投与は控えるべきである[ADEC]。

[263]sulfisomidine

スルフイソミジン

[適]サルファ剤

B  → B:サルファ剤として、動物生殖試験では胎仔への危険性は否定されているが、ヒト妊婦での対照試験 は実施されていないもの。あるいは動物生殖試験で有害な作用(又は出生数の低下)が証明されているが、ヒトでの妊娠初期3カ月の対照試験では実証されていない。又はその後の妊娠期間でも危険であるという証拠はないもの[FDA]。
[263]sulfisomidine sodium

スルフイソミジンナトリウム

[適]サルファ剤

[264]tannic acid

タンニン酸

[適]局所収斂剤剤

原則無影響 ■規定した資料に、該当する記載はない(8。

■本品は通例、五倍子又は没食子から得たタンニンである。タンニン酸はゲンノショウコ、緑茶、コー ヒー等に含まれており、通常、飲料用として摂取されている。従って、妊娠初期又は妊娠中の女性が、タンニン酸に曝露される機会は多いが、そのことを理由として奇形児出生率の増加が見られたとする報告はされていない。

[139]tetrahydrozoline hydrochloride

塩酸テトラヒドロゾリン

[適]局所血管収縮薬

data未詳 ■妊娠中の使用の安全性を確立するためのヒトでの資料は不十分(10。
[315]tocopherol

トコフェロール

[適]ビタミンE

A → C

1日推奨許容量の範囲内であれば推定無影響

A:ヒトの妊娠初期3カ月間の対照試験で、胎児への危険性は証明されず、またその後の妊娠期間でも 危険であるという証拠もないもの。但し、推奨されている1日投与量以上、又は服用時期によって→C。

C:動物生殖試験では、胎仔に催奇形性、胎仔毒性、その他の有害作用があることが証明されており、 ヒトでの対照試験が実施されていないもの。あるいはヒト、動物ともに試験は実施されていないもの。ここに分類される薬剤は、潜在的な利益が胎児への潜在的危険性よりも大きい場合にのみ用いる[FDA]。

■米国・国立科学アカデミーの食品栄養協議会が勧告した、妊婦における1日推奨許容量は16mgで あり、これ以下の量を服用した場合[A]。この用量を超えて服用した場合の危険度について、危険性示唆した報告も安全性を示唆したを報告もない(3。

■トコフェロール:油脂、バター若しくはこれらを使用した食品の酸化防止剤とし て使用。日常的に摂食する食品であり、妊娠初期あるいは妊娠期間中の女性が全く曝露しなかったとは考えられない。またそのことにより奇形児出生率の増加がみられたとする報告も知られていない。

[315]tocopherol acetate

酢酸トコフェロール

[適]ビタミンE

[311]vitamin A oil

ビタミンA油

[適]ビタミンA

A → X

D →

1日推奨許容量の範囲内であれば無影響

A:ヒトの妊娠初期3カ月間の対照試験で、胎児への危険性は証明されず、またその後の妊娠期間でも 危険であるという証拠もないもの。但し、推奨されている1日投与量以上、又は服用時期によって →X。

X:動物又はヒトでの試験で、胎児異常が証明されている場合、あるいはヒトでの使用経験上胎児への 危険性の証拠がある場合、又はその両方の場合で、この薬剤を妊婦に使用することは、他のどんな利益よりも明らかに危険性の方が大きいもの。ここに分類される薬剤は、妊婦又は妊娠している可能性のある婦人には禁忌である[FDA]。

D:ヒト胎児に作用して奇形あるいは非可逆的障害の発現頻度を高める薬、あるい は高めたことが推定される薬、あるいは高めるであろうことが強く疑われる薬、これらの薬は薬理学的な副作用を伴うこともある。→過量のビタミンA摂取は、先天障害を引き起こすことがある。服用前にビタミンAを補う必要があるかどうかを考えること。通常、オーストラリア人の食事は、ビタミンAの1日標準必要量2500I.U.を充分に含んでいる[ADEC]。

■FDAリスクファクターでは、1日10000 I.U. 以上で[X]、8000 I.U.以下では[A]に分類。疫学調査及び症例報告で実際に奇形が報告されている用量は1日25000 I.U.以上であり、潜在的催奇形性を示す用量は1日25000 I.U.以上の見解もみられる(3 。

■強化剤として使用。味噌、マーガリン、魚肉ハム・ソーセージに使用。その他、強化乳等の乳製品、 スープの素、カレールウー、ハヤシルー、チョコレートなどの菓子類に添加(6。

■日常的に摂食する食品であり、妊娠初期あるいは妊娠期間中の女性が全く曝露し なかったとは考えられない。またそのことにより奇形児出生率の増加がみられたとする報告も知られていない。

[264]yolk lecithin

卵黄油

[適]消炎・鎮痛・鎮痒薬

原則無影響 ■卵黄油は昔から家庭で作られており、健康食品として利用されてきた。大正14年発行の「家庭にお ける実際的看護の秘訣」にも心臓病、若白髪が卵黄油によって改善された例が報告されている。痔にも有効とされている。鶏卵の黄身10個から約50gの卵黄油が取れる。レシチン及びリノール酸の生理効果を期待(15。

■卵黄油は蛋白質の加熱生成物を油で抽出したものであり、健康食品として旧来使用されてきたことか ら、妊娠初期又は妊娠期間中の女性が全く曝露されたことがないとは考えられない。またそのことにより奇形児の出生率が上昇したとする報告も知られていない。

[264]zinc oxide

酸化亜鉛

[適]消炎・鎮痛・鎮痒剤

推定無影響 ■規定した資料に、該当する記載がない(8。

■グルコン酸亜鉛・硫酸亜鉛については、食品添加物として、母乳代替品に限定して強化剤としての使 用が認められている(6。

■亜鉛本体はヒトに必要な微量金属で、食物を経由して摂取されるものであり、原 則的に催奇形性は考えられない。

[510]紫根(シコン)

[適]消炎・鎮痛・鎮痒剤

推定無影響 ■本品はムラサキ(Lithospermum erythrorhizon Siebold et Zuccarini(Boraginaceae)の根である。ナフトキノン系の色素acetylshikonin及びその同族体lithospermic acid 、青酸配糖体(lithospermoside)、allantoin 、多糖、フリルヒドロキノン誘導体などを含む。紫雲膏。

■神農本草経中品に収録、皮膚疾患用薬等に配合されてきた歴史的経過から見て、例えば経皮吸収した として、現在までに妊娠初期又は妊娠中の女性が全く曝露する機会がなかったとは考え難い。またその結果、本薬使用者に奇形児出生率の増加が見られたとする報告も知られてない。

[510]セイヨウトチノキ種子

[適]止血剤

セイヨウトチノキと呼ばれるマロニエ(ウマグリ)は、トチノキ (Aescalusturbinata Blume)と多少成分は異なるが、ドイツでは種子の水浸液を痔、子宮出血等の止血剤として使用。

推定無影響 ■動物による試験の結果、本薬を含む成分配合剤の投与により胎仔に何らの異常も認められなかった。

■セイヨウトチノキ種子乾燥エキス配合剤の添付文書中に、妊婦への投与に関する注意事項記載無し。

■本薬配合経口剤の適応として、月経障害に伴う下腹痛、腰痛があり、その意味では妊娠初期段階に気 付かずに服用した事例が皆無とは考えられない。また、本剤の服用により奇形児の出生率が増加したとする報告も知られていない。

[510]加工大蒜(ダイサン)

[適]強壮薬

原則無影響 ■大蒜(ニンニク)は、食品又は香辛料として摂食されており、現在までに妊娠初期又は妊娠中の女性 が全く曝露される機会がなかったとは考えられない。また、そのことにより奇形児の発生頻度が増加こしたとする報告も知られていない。
[510]ハマメリス

[適]消炎・鎮痛・鎮痒剤

hamamelis virginiana L.(マンサク科)の植物。アメリカマンサク。ハマメリスタンニン、フロバタンニン等を多量に含む(12%)。ハマメリスタンニンは結晶性酵素タナーゼによって没食子酸とハマメロースに分解される。この他サポニン、フラボノイド、微量の精油類を含む。ハマメリスタンニンは収斂性止瀉、収斂性消炎作用が認められる。

推定無影響 ■動物による試験の結果、本薬を含む成分配合剤の投与により、胎仔に何らの異常も認められなかっ た。

■ハマメリス皮乾燥エキス配合剤の添付文書中に、妊婦への投与に関する注意事項記載無し。

■本薬配合経口剤の適応として、月経障害に伴う下腹痛、腰痛があり、その意味では妊娠初期段階に気 付かずに服用した事例が皆無とは考えられない。また、本剤の服用により奇形児の出生率が増加したとする報告も知られていない。

[015.11.TER:1998.4.27.古泉秀夫・2003.12.28.改訂]


  1. JAPIC・編:一般薬日本医薬品集;薬業時報社,1998-99
  2. 高久 史麿・他編:治療薬マニュアル;医学書院,1998
  3. 佐藤 孝道・他編:妊娠と薬;薬業時報社,1992
  4. 雨森 良彦・監修:妊娠中の投薬とそのリスク;医薬品・治療研究会, 1993
  5. 第十二改正日本薬局方解説書;廣川書店,1991
  6. 石館 守三・他監修:第5版 食品添加物公定書解説書;廣川書店, 1987
  7. 厚生省薬務局研究開発振興課・編:JPDI;薬業時報社,1996
  8. 堀岡 正義・他:薬剤投与情報;同朋舎,1985
  9. 西村 秀雄・監:催奇形性等発生毒性に関する薬品情報 第2版;東洋 書店,1986
  10. 第六改正日本薬局方注解;南山堂,1945
  11. 薬科学大辞典;廣川書店,1990
  12. 厚生省薬務局審査第二課・監修:日本薬局方外医薬品成分規格;薬業時 報社,1989
  13. ベノプラント錠添付文書,1996.2.改訂
  14. 福山 忠男・編:健康食品便覧;食品と科学社,1995. p.126
  15. 三橋 博・監:原色牧野和漢薬草大図鑑;北隆館,1988
  16. 第十改正日本薬局方解説書;廣川書店,1981
  17. 薬科学大辞典 第2版;廣川書店,1990
  18. 大阪府病院薬剤師会・編:医薬品要覧 第5版;薬業時報社,1992
  19. アズノール軟膏添付文書,1996.3.改訂
  20. SPトローチ明治添付文書,1996.8.改訂
  21. ダントローチ・ヒビテン添付文書,1995.6.改訂
  22. スプロールトローチ添付文書,1989.1.改訂
  23. イサロパン添付文書,1996.8.改訂
  24. イルリガール添付文書,1996.6.改訂
  25. ハイパールNo.3添付文書,1995.9.改訂

アロンアルファの毒性

木曜日, 8月 16th, 2007
対象物 『アロンアルファA(三共)』
成分 1管(0.5g)中にシアノアクリレート系のα-cyanoacrylatemonomer(α-シアノアクリレートモノマー)を含有する無色透明な液体である。溶媒は含有しない。
一般的性状 *瞬間接着剤の接着作用は、空気、圧力、また僅かな水分の存在により直ちに重合(アルキル-α-シアノアクリレートモノマー → アルキル-α-シアノアクリレートポリマー)し、硬化して接着する。
*通常使用されている『アロンアルファ』は、医療用『アロンアルファA』と同様、その成分はα-cyanoacrylate
monomer単体である。しかし、合成の過程で用いられる原料薬は、医療用『アロンアルファA』とは異なる規格のものが使用されているといわれているが、その詳細については不明である。
*接着速度:使用個所と使用量により異なるが、およそ20秒-6分程度で硬化する。*耐薬品性及び耐組織液性:接着面は、水及び有機溶媒によりほとんど影響を受けず、また体液(血清、胃液)によっても影響を受けない。
毒性 接着剤による中毒は、主として有機溶剤によると考えられる。α-cyanoacrylatemonomer単体である瞬間接着剤は、粘膜、皮膚、眼瞼等が付着する以外の毒性は殆ど無い。
その他、次の報告がされている。
シアノアクリル酸系の瞬間接着剤で、光沢のある線維等を爪に貼り付けるものが出回っているが、シアノアクリル酸によるアレルギー性の爪囲炎を起こし、爪の異栄養と脱落を起こす。シアノアクリル酸系の瞬間接着剤の成分はシアノアクリル酸メチル、-エチル、-ブチルである。接触皮膚炎、アレルギー性鼻炎、喘息を起こすことがある。義歯の接着のため瞬間接着剤を使用していた39歳の男性が腸閉塞を起こし、開腹手術を行ったところ、小腸から白色粘着性の板状物が見つかり、瞬間接着剤による食餌性イレウスと診断された。
症状 経口:瞬間接着剤を服用した場合、直ちに口中や舌に付着して灰白色の斑点が生じる。咽頭や食道に到達し、付着することは殆ど無い(灰白色の斑点は自然に取れるので、そのまま様子を見る。)。
処置 経口の場合:通常、経口の場合、処置は不要。口内を水で濯ぐ。また、粘膜、皮膚、眼球、眼瞼等に付着した瞬間接着剤は、体組織を損傷することなく剥離する。
眼に入った場合:水で洗眼し、点眼液を点眼し、眼
帯をしておく。ほぼ24時間以内に眼球より剥離し、異物として取り除ける。眼を擦ることは避ける。その他直ちに流水を用いて洗眼する。洗浄後も疼痛、腫脹流涙、羞明などの症状があるときはFDA点眼液や炎症の防止に抗生物質の点眼をする。約1日程度で自然に眼球より剥離して異物(樹脂の塊)として排泄される。又は眼科を受診することでピンセット等で剥離してもらう。
事例 医療用の瞬間接着剤「アロンアルファA」を使用している時に、誤って眼に入ってしまった。この場合、どの様な処置を必要とするか。
備考 *適用上の注意-(1)使用時
2)本品は接着力が強く、組織を急速に接着するので、眼に入らないように注意すること。
3)本品が手術用具などに付着した場合は、アセトン(溶剤)で清拭すること。
文献 1)アロンアルファA添付文書,1998.10.改訂
2)鵜飼 卓・監修:第三版 急性中毒処置の手引き;薬業時報社,1999
3)国立国際医療センター薬剤部医薬品情報管理室・編:医薬品情報,26(1):42-43(1999)
4)内藤裕史:中毒百科-事例・病態・治療;南江堂,2001
調査者 古泉秀夫 記入日 2002.7.10.