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有効と無効の間

水曜日, 8月 15th, 2007

魍魎亭主人

薬の効果の判定は難しい。プラセボであっても服用する患者が、処方する医師を信頼していれば、十分な睡眠効果が得られ、鎮痛効果が得られるのみならず、副作用も発現する。

しかし、原則論をいえば、100%の有効率を保証する薬は存在せず、副作用の発現率0等という薬は存在しない。その意味からすると、一体薬の有効率とは、どの程度の率を確保すれば、薬として一人前であると評価されるのか。ここに脳循環代謝剤の『再評価の臨床試験における試験薬及びプラセボの改善度比較』なる資料がある。

成分名 評価項目 有意差 改善率
試験薬投与群 プラセボ投与群
イデベノン 精神症状全般改善度改善以上 なし 32.4% 32.8%
塩酸インデロキサジン 自発性全般改善以上 なし 14.9% 20.9%
塩酸インデロキサジン 情緒改善度改善以上 なし 21.6% 24.9%
塩酸ビフェメラン 意欲・情緒全般改善度改善以上 なし 37.5% 30.8%
プロペントフィリン 精神症状全般改善度改善以上 なし 25.6% 30.0%

プラセボとの比較からいえば、有用性のある薬とはいえず、製造中止もやむを得ないが、むしろ問題なのは、これらの薬が、臨床治験によって得られたデータに基づいて、薬としての承認を得た上で、薬価基準に収載されたということである。

臨床治験段階で有効の評価を得た薬が、後から行われた二重盲検試験で、評価を逆転されたとすれば、それは明らかに臨床治験段階での試験デザインの失敗だということであり、如何に評価が困難であれ、40%を超えない程度の有効率の薬を、有効と評価することに無理があるのではないか。いずれにしろ治験段階のデータが、後から否定されるということでは、我国における治験の正当性が疑われる。

[2000.7.8.]