眉唾物の輸入代行業
水曜日, 8月 15th, 2007鬼城竜生
2005年6月9日厚生労働省医薬品食品局が『医薬品の個人輸入に関する注意喚起について』なる文書を出した。
今回、『医薬品個人輸入』をkey wordとしてYahoo!検索で検索したところ約39,800件の検索結果が得られた。電網のkey word検索は、厳密に規定されていないため、同一のHp.が何回も検索されている可能性があるため、Hp.全体の実数は、検索件数より少なくなる可能性はあるが、それにしても少ない数とはいえない状況にあることが予測できる。
嘗て大病院の近隣の電柱に手書きのポスターで『医薬品個人輸入』の広告がされているのを見たことがあるが、これなどは明らかに行き過ぎである。第一医療用の医薬品は、医師が処方することによって患者の手に入る薬であって、どの薬を使用するかは主治医の判断である。つまり医療用医薬品は、患者側に選択権はなく、患者の病状に併せて医師が選択するものである。つまり『医薬品個人輸入』が必要であるのは、医師であって、患者ではないはずである。
更に『医薬品個人輸入』代行業の存在そのものにも疑問を持たざるを得ない。外国の製薬会社といえども、金さえ渡せば、医療用医薬品を非専門家にも販売するとは考えられない。少なくとも医師の英文の依頼状がなければ、薬を出庫してもらえなかった経験を持っている。更に依頼してから入手できるまでの期間が、えらく短いと感じるのは、思い過ごしか?。
依頼を受けてから輸入申請を実施し、薬が当人の手に渡るとすれば、一定の期間を必要とするはずであるが、短期間に薬が当人の手に届くとすれば、前もって確保していた薬を販売しているのと変わらないことになる。しかし、医薬品販売業の許可なく医薬品を販売しているとすれば、それは法律違反であり、医療用医薬品を医師の処方せん無しに患者に直接販売する行為は、やはり法律に違反しているといわなければならない。
厚生労働省が出した文書の趣旨は、次の文書に要約されている。
『最近、インターネット等を介して、医薬品を個人輸入できることや、そのための手続きの代行を行うとの情報が流されています。また、個人輸入代行業者が店舗を構えて医薬品の個人輸入を希望する人の手続きを受け付けているケースもあります。
しかしながら、これらの個人輸入可能な医薬品の中には、医療用として医師、薬剤師の指導の下に使用するべきものがあり、また、その使用にあたって十分に注意しなければ健康被害を引き起こす可能性のある医薬品が見受けられます。この点から、医薬品を安易に個人輸入して使用することは大変危険な行為であり、絶対に行うべきではありません。
なお、個人輸入した場合は使用上の注意事項を遵守することは使用者個人の責任となります。輸入した医薬品の注意事項は添付文書に記載されていますが、例えば米国の医薬品の場合は、米国食品医薬品庁(FDA)が、添付文書の一般使用者向けの注意事項をホームページで公表していますので、そこで確かめることもできます。』
更にQ&Aのうち次の事項は重要である。
『Q.医薬品の個人輸入の案内広告や個人輸入代行業者から商品を入手することは薬事法上は問題ないのでしょうか。』
『A.最近、インターネット等を介して、我が国では未承認の医薬品を個人輸入により入手できることやそのための手続きの代行を行うことの情報が流されています。また、個人輸入代行業者が店舗を構えて医薬品の個人輸入を希望する人の手続きを受け付けているケースがあります。
これらの情報において、不特定多数の者に希望を募ることは広告に該当し、また、個人輸入の手続きの代行業者が商品の発送を行うことは販売に該当して、いずれも薬事法に違反するものですので、ご注意いただくとともに、このような事例をご存じでしたら都道府県庁の薬事担当課にお知らせいただくようお願いいたします。』
(2005.8.12.)