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バイブル本のあきれた実態

水曜日, 8月 15th, 2007

魍魎亭主人

「がんに効く」アガリスク本で逮捕、出版社役員ら6人 薬事法違反容疑、 監修者書類送検へ [読売新聞,第46537号,2005.10.5.]の見出しを見て、やっとかよというのが率直な感想。

「アガリスクで末期ガンが消滅する」などとする書籍を出版し、キノコの一種のアガリスクから作った健康食品を販売していた事件で、警視庁生活環境課は2005年10月5日、出版元の役員ら5人と健康食品販売会社の社長の計6人を薬事法違反(未承認医薬品の広告禁止、無許可販売)の容疑で逮捕した。書籍で紹介された「ガンが消えた」の体験談は、大半が捏造だったとしている。書籍を広告ととらえた薬事法違反容疑で逮捕者が出たのは初めてとされている。

逮捕者を出した出版社は「史輝出版」(港区青山)、健康食品販売会社は「ミサワ化学」(新宿区四谷)の両社。調べによると2001年と2002年に出版した「速効性アガリスクで末期ガンが消滅」等と題した書籍2冊の中で、医薬品として国の承認を得ていない健康食品「速効性アガリスクS」について、「ガン抑制率100%」等と効能効果を標榜する広告をしていたというもの。これらの書籍には巻末の頁や挟み込んだしおりに、問い合わせ先として「アガリスク研究センター」と称する電話番号を掲載していたが、この番号に電話をすると、商品を販売しているミサワ化学に繋がり、商品の注文を受け付ける仕組みになっていたという。

「史輝出版」の取締役が表向きの社長で、実際には「史輝出版」の社長が経営しているとされる「ライブ出版」(世田谷区)では、「メシマコブでガンが消えた」とする書籍を出版、監修者には山梨県の医師を起用しているとされる [読売新聞,第46538号,2005.10.6.]。

白鳥の写真 『いわゆる健康食品』の効能を標榜するバイブル本の特徴は、一見すると科学的な資料を用いた解説がされていること。利用者の生の声と称する体験談が掲載されていること。監修者に医学博士で○○大学の教授や名誉教授、研究所の所長等の肩書きを持った人を必ず記載していることである。

今回の事例も東海大学名誉教授「師岡孝次」氏が監修者として名前を出しているが、警視庁生活環境課は、2005年10月7日薬事法違反(未承認医薬品の広告禁止)の容疑で書類送検したとされる [読売新聞,第46539号,2005.10.7.]。

ただし、今回の事例で甚だ不思議なことは、監修者の「師岡孝次」氏は医学部の出身者ではなく、医学博士の肩書きも、中国の学位だということである。氏の経歴を見ると、慶応大学の何学部を卒業したのか確認できない書き方をしているが、どうやら工学部の出身ではないかと思われる。しかし、もしそうだとすると、氏が癌について書かれた文書の監修者になることは甚だ問題であるといわなければならない。ハッキリいって病気について知識のない素人が、アガリスクは癌に効果があるとか、メシマコブは癌に有効であるなど、何を根拠にして判断したのか。ある意味、詐欺行為だといわれても仕方がない。

いずれにしろ『いわゆる健康食品』は氾濫している。医薬品ではないため薬効を標榜することは禁じられているはずであるが、インターネットのホームページを見る限り、効果を標榜していると受け取れるホームページは多い。更に新聞の折り込みにも、明らかに効果を標榜している『いわゆる健康食品』のチラシが見られる。更に今回、監修者が薬事法違反で書類送検されたが、今回の事例だけではなく、多くのバイブル本の共通事項であり、発行されているバイアル本の全てについて、精査することが必要ではないか。

いい加減なバイアル本を発行することで、効果のない『いわゆる健康食品』をあたかも効果があると思わせて、何億もの売り上げをあげているとすれば、詐術によって国民を騙すということだけではなく、患者の治療の機会を奪う行為であり、決して許されることではない。

(2005.10.9.)