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テレビ電話は薬剤師に代わり得るか

水曜日, 8月 15th, 2007

魍魎亭主人

ドン・キホーテが、薬剤師によるテレビ電話相談方式を導入し、夜間、薬剤師不在店舗での医薬品販売を実施しようとしたのに対し、厚生労働省は『薬事法違反』だとして販売を認めなかった。それに対してドン・キホーテ側は、同システムを用いて医薬品の無料配布を行い、無料で配布する以上『薬事法違反』ではないと称している。

一方、稼げれば何でも有りというこの行為に対し、石原都知事は「大いに奨励する」などと先走ったお節介談話を開陳して見せたが、行政の長としては、法律・規則を遵守させるという立場が基本であり、法の裏道をくぐるような行為に対し、甚だ不見識な談話であり、時と場所をわきまえない意見開陳は論外である。また、その発言を受けて、左顧右眄する東京都の役人も、“長い物には巻かれろ”の典型みたいなまねは止めた方がいい。

新聞報道では総合ディスカウントストアなどと書かれているが、言い換えれば単なる廉売屋であり、その廉売屋が薬を扱うことが出来るのは、薬剤師が配置され、薬剤師の管理の下に薬を取り扱うという大前提があるからである。その規則の下で薬の取扱いを許可されたのであれば、規則に従って薬剤師を雇用するのが筋である。また、頼みもしないのに24時間営業をしたいというのであれば、二交代なり三交代が可能な数の薬剤師を雇用するのが当然であり、人件費抑制のため薬剤師の採用を手控え、テレビ電話相談方式を導入して代替の手段としたいという発想は本末転倒であり、むしろ薬の販売から撤退するというのが、取るべき道である。

何かといえば、大衆的な要望を持出し、要望に応える必要性を強調して、社会正義は我が方に有りとする論調を振りかざすが、大衆の意見は常に同一方向を示すわけでわない。以前、ドン・キホーテの深夜営業を拒絶した地域の報道がされていたが、結局はなし崩しに営業を実施したのではなかったのか。都合のいいときにのみ世論を振りかざすのは、商道徳に則った対応とはいえない。

日本語には『常備薬』という言葉がある。緊急時に対応するため、前もって必要とされる状況を予測して準備しておく薬のことである。

ドン・キホーテの言い分によれば、夜間緊急に必要とする薬の購入希望に対応するため、薬剤師がテレビ電話で相談を受け、必要とする薬を販売するとしているが、これはあくまで平時の対応であって、真の意味での緊急対応とは違う。大きな災害が発生し、交通網が遮断されるというような状況が発生した場合、身動きが取れない中でどう対応するかが重要な課題であって、この様な問題を解決するためには、各家庭が日常的に『常備薬』を持つことが必要なのである。他人のポケットを当てにする対応を習慣づけることがいいとは限らない。

それに緊急で解熱を要する場合とはどの様な場合か。また緊急で風邪薬を服まなければならないとい状況とは、どの様な場合か。本来なら緊急に医師の診察を受けるべき者が、気付かずにそこにいるかもしれない。直接対面して、相手の顔色や状況から手に入れる情報に重要な情報がある。テレビ電話で手に入れられる情報は、あくまで情報のうちの極く一部だということを考えれば、そこまでドン・キホーテにサービスをしてもらう必要はない。

必要なら薬剤師を24時間体制で配置すべきである。

[2003.10.13.]