ゾロの使用推進
水曜日, 8月 15th, 2007魍魎亭主人
いわゆる『ゾロ』の使用は、医療費の総枠抑制圧力の中、膨張し続ける医薬品費を何とか抑制できないかということで、厚生労働省が編み出した窮余の一策であるといえる。従って、その導入の根本は、あくまでも先発品に比較して値段が安いということである。更に従来は『ゾロ』という通称で呼ばれていた薬物が、専ら『ジェネリック』と称されているが、後発医薬品が突然変異を起こしたわけではなく、従来の薬物と何の変わりもない物なのである。
その意味でいえば、先日行われた『第4回ジェネリック研究学術大会』において、日本薬剤師会の漆畑氏が、後発医薬品の薬価算定について、『2004年度から初収載時の薬価が先発品の0.7掛けに引き下げられたことについて、手厳しかったか』との認識を示し、再考の必要性を示唆した。更に『後発品の評価について、剤形の工夫など患者にメリットをもたらす物については評価する仕組みも必要』との認識を示したとする報道がされていた。
しかし、この判断は、医療財源の厳しい状況の中で、甚だ甘い判断だといわざるを得ない。先発品との比較で、薬価にさほどの差がないのであれば、わざわざ後発医薬品を使用する意味がない。更に従来では考えられなかった厚生労働省の後押しで、後発医薬品の使用量は明らかに増大すると考えられている。そのような状況の中で、財政当局が後発医薬品の薬価を上げるなどという判断をするとは考えられない。
また、剤形上の工夫についていえば、製薬企業として患者の服用性向上のために努力することは当然のことであり、相当に利便性の高い剤形でなければ、それを理由にして薬価を上げるなどということも考えられない。
現在、後発医薬品に関連して吹いているジェネリック風は、あくまでも医療費の総枠抑制という財政事情に由来するものであり、薬価の引き上げ等ということは、期待しようもないことは誰もが承知しているはずである。
同じ大会において医療人権センターCOMLの辻本氏は、『知らないうちに後発医薬品に代えられていた』、『薬剤師に後発医薬品のことを質問しても「同じですよ」という返事だけ』、『医師に質問しても「安くなるから貴方にとって得」という返事だけ』といった患者からの声を紹介し、情報不足から患者は後発医薬品への不安を払拭しきれないのが現状であると指摘したとされるが、ここにも後発医薬品に対する誤解があるのではないかと思われる。
後発医薬品が専ら『ゾロ』という通称で揶揄的に呼称されていたのは、先発品の特許切れと同時に、雨後の竹の子並みにゾロゾロと販売されていたからである。その意味では、開発段階を飛ばしているため、基礎的な資料、臨床治験段階の資料等は存在しない。しかし、先発品の市販後に臨床現場で発生した副作用等は後発医薬品の添付文書にも反映されており、薬物の使用に支障を来さない程度の情報は存在する。従って添付文書の範囲内であれば、患者からの質問について、回答することは可能なのである。
またある意味で、現在のように後発医薬品に商品名を付けず、一般名(generic name)で市販されたと仮定すれば、同一成分である先発医薬品の情報を代替して読み替えることは可能であり、情報量は限りなく増大する。
後発医薬品をジェネリックと称するのは、一般名(generic name)で考えることが基本にあるからであり、後発医薬品を医師が処方する場合にも、商品名で記載するのではなく、一般名で記載するという方式を確立すべきである。医師が処方せんに一般名で記載すれば、患者に投与する薬物は薬剤師が選別することになるが、この際、薬価差益にのみ眼を向けることは止めて欲しいものである。
薬物の決定に際しては
- オレンジブックに収載されている物
- 通常の流通形態にある物(製品の安定供給に卸も一定の責任を果たす)
- 企業の社会的責任について認識している会社(副作用情報収集体制の確立)
等の基準に基づいて判断すべきである。
くどいようではあるが、後発医薬品の使用を選択するかどうかは、ある意味で医療の本質とは関係なく、医療費の抑制という財源問題なのである。医療関係者は勿論のこと、患者自身もその点を明確に認識し、後発医薬品の使用に協力すべきである。
(2005.9.21.)
- NEWS&TOPICS;調剤と情報,11(9):1138(2005.9.)