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組織は生き物である

水曜日, 8月 15th, 2007

大阪府枚方市にある市立枚方市民病院で、医薬品納入をめぐる汚職事件に関連して、前病院長が再逮捕されたという記事が、報道されていた(読売新聞.2000年10月5日)。その中で「新薬選定の権限を持つ薬事委員会の委員長だった容疑者は」という記述がされていたが、未だにこんな施設があったのかと驚きを禁じ得ない。

院内の『薬事委員会』あるいは『薬剤委員会』は、病院長の諮問機関として設置されるものであり、通常は副院長が委員長を務め、病院長は出席しないことになっている。

院内に『薬剤委員会』を設置し、採用する医薬品の審査をするのは、不要不急の薬は買わないということと同時に、医薬品を購入する権限を医師個人に持たせることで、企業から金をもらったり、酒を飲まされたりという、いはゆる癒着を避けることが、最大の眼目だったはずである。

永年、『薬剤委員会』の事務局を勤めてきた立場からいわせて頂くならば、『薬剤委員会』の委員の任期は2年ということで持ち回りになっており、種々の論議を経て、原則的には1品目採用、1品目削除等の厳しい規約・規定で運営されており、個人の医師が特別な権限を持ち得るほどに恣意的な決定はできない仕組みになっている。

勿論諮問を受けた病院長が、委員会の決定を覆そうとすれば、できないわけではないが、明確な理由を付して委員会への差し戻しというところまでで、委員会の再審議の結果には従わざるを得ないことになっていた。

第一管理職である病院長は、管理業務に専念し、日常診療は一切しないことになっているため、処方を書かない病院長が、薬の新規購入の申請をする必要は全くなく、委員会をもませる気でもなければ、差し戻しなどしても仕方がない訳で、事務局としてそういう立場に立たされたことは一度もなかった。

更に枚方市の調査では「同病院の医師や看護婦ら約280人が、94年から今年4月にかけて、製薬会社20社から24回、計約370万円相当の「薬の勉強会」名目の飲食接待を受けていた」ということであるが、地方公務員である市立病院の職員が、何の疑問も持たずに院内で製薬企業の勉強会なるものを実施し、饗応を受けていたとすれば、その道徳観の欠如には驚かざるを得ない。

最も、病院長の諮問を受けるべき委員会の委員長に、自ら座っていた時代錯誤の病院長を頂点に戴く組織である。世間一般の常識は通用せず、いたとしても少数の常識派は、ものいえない状況にあったのかもしれない。しかし、それにしても、市から交代できていたであろう事務系の長はどうしていたのか。市の職員にすれば、病院に派遣されるということは、保守本流から外れたことになり、病院運営には意欲がわかず、早く市の方に戻りたいとでも考えていたとすれば、病院運営に意欲を燃やすということは無かったのかもしれない。

『組織は生き物である』。料理の作りようが悪ければ下痢をするし、腐っていれば食中毒を起こし、時には瀕死の重症に陥る。病院長にはっきりものがいえる人がいなかったということが、この病院にとっての最大の不幸である。

病院長の中には、管理職の何たるかを理解していない人が時に見受けられるが、管理者としての尊厳と裸の王様の独善とは異なるのである。あってはならない『薬剤委員会の委員長』に病院長が座るといったときに、断固として阻止できなかったという組織運営のありようが、根本的に間違っていたというべきである。

[2000.10.6.]