銭を稼げる芸になっているのか?
水曜日, 8月 15th, 2007毎回同じ薬に「情報提供料」院外薬局で「薬剤情報提供料17点」(1点=10円)をとられます。毎回同じ薬なので、いちいち説明の紙はいらないと訴えたら、なぜか、7点だけ減りました。(埼玉県・女性)
なしにすることも可能
情報提供料には二種類あります。 ひとつは、患者の求めに応じて「お薬手帳」に注意事項などが記載されて渡された場合で、17点です。もうひとつは、薬の説明を文書で渡された場合で、点数は10点です。前者は患者の同意を得て初めて出すことになっていますが、後者は薬剤師の判断で出すことになっています。7点分の減額は、前者から後者へ切り替えたという意味なのでしょう。
ご質問者は、手帳は要求していないし、もらってもいなかったということで、当初の請求自体もおかしかったといえます。 さらに説明文書も、毎回同じなので不要と判断されれば、なしにすることも可能です。薬局で相談してみて下さい。 [暮らし健康-医療の値段;読売新聞,第46080号,2004.7.4.]
調剤した薬について、薬剤師が説明するのは当たり前のことであり、薬を服むことで起こるかもしれない患者のもろもろの心配に対して、情報を提供するのは薬剤師としての義務である。職業上の義務に対して、なまじ点数を付けるから問題になるのであって、情報提供料などとして独立させるのではなく、基本業務の中に包括すべきではないか。
まして慢性疾患の場合、処方薬が頻繁に代わるということはない。症状が安定しているということは、薬が効いているということであり、同じ薬が継続して処方されるのは当然のことなのである。しかも継続して服用している薬であれば、ある程度、副作用の予測は可能であり、重篤な副作用もでないであろうとの判断ができるということである。 従って、診療報酬請求用のコンピュータシステムに、附録として付いているお仕着せの説明文書を使用している限り、同じ説明文書が延々と出てくるということになる。
このような結果に対して、何の疑念もなく、ただ繰り返しているだけということでは、薬剤師として『銭を稼げる芸』になっていないということである。
例えば「このお薬は、痛風の治療に用います。」という説明を、薬を受け取るたびに渡されたとすれば、これは一度だけで結構だというのが患者側の正直な気持である。
ましてこの薬の適応症は『痛風、高尿酸血症を伴う高血圧症における高尿酸血症の改善』であり、厳密には『痛風』の治療薬ではない。更に benzbromaroneの薬理作用は『尿細管における尿酸の再吸収を阻害し、尿酸の尿中への排泄を選択的に促進する』とされており、尿酸の排泄促進薬で、痛風への進行を抑制する役割を果たす薬である。
本剤の重篤な副作用として、『劇症肝炎』が報告されており、“投与開始6ヵ月以内に発現し、死亡等の重篤な転機に至る例も報告されているので、投与開始後少なくとも6ヵ月間は必ず定期的に肝機能検査を行うなど観察を十分に行い、肝機能検査値の異常、黄疸が認められた場合には投与を中止し、適切な処置を行うこと”とされている。
しかし、調剤薬局で手渡された上記の説明書には、劇症肝炎に関する患者としての注意点は何ら記載されていない。薬剤師は本剤の添付文書を、再度、熟読すべきであると申し上げておきたい。
添付文書の『警告』の(2)として『副作用として肝障害が発生する場合があることをあらかじめ患者に説明するとともに、食欲不振、悪心・嘔吐、全身倦怠感、腹痛、下痢、発熱、尿濃染、眼球結膜黄染等があらわれた場合には、本剤の服用を中止し、直ちに受診するよう患者に注意を行うこと。』の記載がされている。
少なくとも、医療チームへの参画を標榜する薬剤師であれば、第1回目の調剤の時に、肝炎に対する注意事項を伝達し、2回目の調剤時には、現在の患者の状況について具体的な説明を求め、最低限6ヵ月間は、医師を補完する情報の管理を行わなければならないのではないか。
本剤の副作用に関する説明を医師から聞いて承知していると患者が言えば、薬剤師が上乗せして説明する必要はなくなるが、僅かとはいえ情報提供料が付くからといって、ありきたりの説明をし続けることは、『芸のある人間』のやるべきことではない。同一事項以外に伝えるべき情報がないなら、『情報提供料』は請求しないという確固たる対応をすべきである。
そろそろ薬剤師も、現在やっている服薬指導の中身を、見直す時期に来ているのではないか。
(2004.7.7.)
- 高久史麿・他監修:治療薬マニュアル;医学書院,2004