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スイッチOTC薬

水曜日, 8月 15th, 2007

魍魎亭主人

2006年6月28日厚生労働省は薬事・食品衛生審議会一般用医薬品部会を開き、副腎皮質ホルモン剤の[商]アフタッチA(帝人ファーマ)の製造承認について審議し、了承されたという。「アフタッチA」は、トリアムシノロンアセトニドの製剤で、医療用の「アフタッチ」からのスイッチOTC薬(一般薬)で、効能・効果は口内炎である。

口内炎の部分に貼付すると、溶解して消失する。製剤の濃度、用法・用量は医療用と同様である。

承認条件として『3年間の安全性等に関する製造販売後調査』が義務付けられている。 また一般薬として初めて再審査が義務付けられたミノキシジル[リアップ(大正)]の再審査結果についても了承された。

minoxidilは 2000年に国内で初のダイレクトOTC薬として、医療用医薬品としての使用経験なしにOTC薬として承認され、6年間の再審査期間が義務付けられた。今回ミノキシジルの6年間の再審査期間は終了したが、分科会では『引き続き薬剤師による副作用情報の提供の徹底など、現在の安全対策を継続することが適当である』。

ミノキシジルの『安全性評価、有効性評価については、それぞれカテゴリー1(現在の効能・効果、用法・用量の承認事項を変更する必要はない)と判定』され、総合評価についても『カテゴリー1』とする判定結果を報告、了承されたとされる。

この他の報告事項として、イブプロフェン、アセトアミノフェン、アリルイソプロピル、アセチル尿素、無水カフェインを配合した配合製剤について審査の結果承認した。効能・効果、用法・用量は解熱鎮痛薬の承認基準と同様。承認条件として『3年間の安全性等に関する製造販売後調査』が義務付けられた[日刊薬業,2006.6.29.]。

minoxidilは1965 年に降圧薬として開発された。米国では降圧薬として承認されているとされるが、国内では治験段階で降圧薬としての開発は中断された。minoxidilが生体内で代謝を受け、生じた活性代謝物がATP-感受性 K チャンネルを活性化することにより、細胞形質膜が過分極し、血管平滑筋が弛緩することにより血圧が低下する。

minoxidilを降圧薬として使用した患者に、副作用として多毛が発現することが報告された。顔、背部、腕あるいは足に多毛が生じ、この機序については、ATP-感受性 Kチャンネルの活性化及びその結果生じる局所血流の増加によるのではないかとされているが、作用機序の詳細は不明である。

この副作用を主作用として承認を取ったのが、発毛剤として販売されている製剤であるが、局所に適応した患者の中に、狭心発作を起こす人もいるため、例え局所投与であっても吸収されて、全身性の副作用が発現すると考えられている。

つまりminoxidilは医療用医薬品としての使用経験が全くないにもかかわらず、OTC薬(一般用医薬品)として承認された最初の薬であり、最初の『direct-OTC薬』といわれる所以である。従ってOTC薬でありながら、『6年間の再審査期間』が義務付けられた訳である。

更に今後とも『引き続き薬剤師による副作用情報の提供の徹底など、現在の安全対策を継続することが適当である』とする分科会の決定は、頭皮から吸収され、全身性の副作用を発現する可能性のある一般用医薬品であるminoxidilとしては当然のことである。

switch-OTC薬を考える場合、可能な限り増やして欲しいというのが率直な思いである。つまり一々医師に行く手間暇を考えたら、相当のところまで自己診断で対応したいという思いは誰にでもあるのではないか。

勿論、素人が薬を勝手に選別することは危険である。従って薬剤師が相談に応じるという前提条件が必要になるが、真に薬の専門家としての薬剤師が育てば、自己治療(Self-Medication)の可能性は更に広がるのではないかと思えるのである。

(2006.7.13.)