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処方せん医薬品の不正販売

水曜日, 8月 15th, 2007

厚生労働省医薬食品監視指導・麻薬対策課は2006年6月27日、処方せん医薬品の不適正販売が行われていたとして、5社のドラッグストア企業を発表したが、処方せん医薬品の不正販売を報告した企業は12社に達した[日刊薬業,2006.6.29.]。 各企業で販売されていた薬は、どういう訳か、全て同じ薬である。

商品名(会社名) 成分名 規制区分 承認適応症
アタラックスPカプセル(ファイザー) hydroxyzine pamoate 指定医薬品 処方せん医薬品 蕁麻疹、皮膚疾患に伴うそう痒(湿疹・皮膚炎、皮膚そう痒症)

神経症における不安・緊張・抑うつ

ウナセルス(イセイ) nalidixic acid ? 処方せん医薬品 膀胱炎、腎盂腎炎、前立腺炎(急性症、慢性症)、淋菌感染症、感染性腸炎
ウロナミン腸溶錠(大日本住友) hexamine ? 処方せん医薬品 尿路感染症(膀胱炎、腎盂腎炎)
コンバントリン錠・ドライシロップ(ファイザー) pyrantel pamoate ? 処方せん医薬品 蟯虫、回虫、鈎虫、東洋毛様線虫の駆除
ネオフィリン錠(エーザイ) aminophylline 指定医薬品 処方せん医薬品 気管支喘息、喘息性(様)気管支炎、閉塞性肺疾患(肺気腫、慢性気管支炎など)における呼吸困難、肺性心、うっ血性心不全、心臓喘息(発作予防)

上表に見るとおり、『hydroxyzine pamoate』以外は、従来何の規制もなく、『hydroxyzine pamoate』についても『指定医薬品』の規制のみである。

指定医薬品とは薬事法第29条(指定医薬品の販売禁止)『薬種商販売業の許可を受けた者(以下「薬種商」という。)は、厚生労働大臣の指定する医薬品を販売し、授与し、又は販売若しくは授与の目的で貯蔵し、若しくは陳列してはならない。』とする規定で、指定されるのは、特にその取扱いについて高度な薬学の知識を必要とする医薬品、薬理作用が非常に激しく使用方法の難しいもの、その医薬品のもつ化学的性質、薬理的性質を十分に知らなければ危険性の大きいもの等。薬剤師以外の者に取り扱わせることによって保健衛生上危害を生ずる恐れがある医薬品ということである。

但し、上表の医薬品は、『要指示医薬品』の指定はされていないとはいえ、いずれも医療用医薬品として承認されたものであり、医師の処方せん無しには販売できない医薬品であることは間違いない。

むしろ何故、これらの医薬品が、法令上の販売規制を受けていなかったのか甚だ不思議であるが、これを逆手にとって医師の処方せん無しに薬剤師が販売したとしても、法的な指導を行う根拠がなかったということになる。

そこで今回、より解りやすい区分ということで『処方せん医薬品』なる区分を新に制定し、医療用医薬品の多くを『処方せん医薬品』に指定したということである。 『処方せん医薬品の販売』については薬事法第49条に次の規定が定められている。

第49条 薬局開設者又は医薬品の販売業者は、医師、歯科医師又は獣医師から処方せんの交付を受けた者以外の者に対して、正当な理由なく、厚生労働大臣の指定する医薬品を販売し、又は授与してはならない。

ただし、薬剤師、薬局開設者、医薬品の製造販売業者、製造業者若しくは販売業者、医師、歯科医師若しくは獣医師又は病院、診療所若しくは飼育動物診療施設の開設者に販売し、又は授与するときは、この限りでない。

2 薬局開設者又は医薬品の販売業者は、その薬局又は店舗に帳簿を備え、医師、歯科医師又は獣医師から処方せんの交付を受けた者に対して前項に規定する医薬品を販売し、又は授与したときは、厚生労働省令の定めるところにより、その医薬品の販売又は授与に関する事項を記載しなければならない。

3 薬局開設者又は医薬品の販売業者は、前項の帳簿を、最終の記載の日から2年間、保存しなければならない。 少なくとも法律で規制するということは、それなりの根拠があって規制されているはずである。薬事法の規定を薬剤師が遵守しないなどということはあってはならない。薬剤師が守らなければ、他人に薬事法を守れ等ということがいえなくなるからである。

(2006.7.15.)