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新聞の不思議  

水曜日, 8月 15th, 2007

鬼城竜生

製薬大手三共と第一製薬との経営統合に、株主の村上ファンドが反対しているという記事の中に『 通産省(現経産省)OBの村上世彰氏が代表を務める「M&Aコンサルティング」(村上ファンド)』 [読売新聞,第46424号,2005.6.14.] という記載がされていた。

今回に限らず、この会社の絡む記事が出る度に、この注釈が付いているが、新聞社は、彼が官僚出身であるから信用ができるということを証明するために注釈を付けているのであろうか。一個人の経営する会社の社長が、官僚出身であることを延々と書くということは、特別何か含むところがあるということであろうか。

いずれにしろ大学卒業後、官庁に就職し、米国に留学して帰国、直ちに退職して、民間会社に高級で迎えられるか、あるいは自ら会社を始めたか、留学の経費を国に返戻せず、いわば食い逃げ同然の仕打ちが流行っているようであるが、あるいはその走りだったということを暗に比喩するために出身官庁を書き続けているのか。あるいは経済産業省の先輩や同期から情報を入手することのできる立場で、購入する株は絶対に外れがないということを示しているのか、考えてみれば親切なことである。

しかし、おかしなことに2005年6月22日付 [読売新聞,第46432号]の新聞では『大証の経営責任追及 村上氏、株主総会で』なる記事があり、大阪証券取引所は22日、大阪市中央区の大阪証券取引所ビルで、実質的な外部株主が初めて参加する株主総会を開いた

。筆頭株主である投資ファンド代表の村上世彰氏も出席し、システム障害のため、ヘラクレス市場の新規上場を一時凍結した経営責任を厳しく追及したとする記事が掲載されていたが、村上氏の出身については、何の記載もされていない。

記事の長さの関係なのか、あるいは最早氏の前職を書かなくても、世間一般に通ると考えたからなのか分からないが、2005年6月24日 [読売新聞,第46434号 ]付けで『経産省、研究費で裏金 残金3100万円 前室長、カネボウ株購入』の記事が掲載されていた。しかも、株の購入は、キャリア官僚が業務上掴んだ内部情報を基にして購入したとして、証券取引法違反(インサイダー取引)の疑いで告発というものである。

別に疑うわけではないが、この一連の流れを見ると、変に疑われてはいけないと考えたのか、あるいは情報源を内部に持っていたのを表沙汰にされたくないと考えたのか、いずれにしろ不思議な書き方に付き合わされたのは事実である。

(2005.6.24.)