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処方せん医薬品

水曜日, 8月 15th, 2007

2005年4月1日から施行される改正薬事法で、医療用医薬品のうち『要指示医薬品』を『処方せん医薬品』に再分類するための個別品目の指定が、2月10日に告示された。 厚生労働省は『処方せん医薬品』について「いかなる事情があっても処方せんなしには販売を禁止すべき」もので、「違反行為には罰則規定を適用するなど厳格に対処する必要がある」としている。

違反者の罰金については「200万円以下」を「300万円以下」に引き上げる法改正も実施するという。 『処方せん医薬品』の指定基準は

  1. 医師等の診断に基づき、治療方針が検討され、耐性菌を生じやすい、または使用方法が難しい等のため、患者の病状や体質等に応じて適切に選択されなければ、安全かつ有効に使用できない医薬品(例:抗生物質製剤、ホルモン製剤、注射薬全般、麻薬製剤)
  2. 重篤な副作用等の恐れがあるため、その発現防止のために、定期的な医学的検査を行う等により、患者の状態を把握する必要がある医薬品(血糖降下剤、抗悪性腫瘍剤、血液製剤)
  3. 併せ持つ興奮作用、依存性等のため、本来の目的以外の目的に使用される恐れがある医薬品(精神神経用剤)

の3要件に該当する医薬品とされている。

具体的には全医薬品の6割以上を占める約3,200成分を指定。『要指示医薬品』との成分数比較でも倍増したことになるとする報道がされている。

『処方せん医薬品』以外の“非処方せん医薬品”については、罰則規定を適用するほどの「規制は過度」で、「行政指導ベースで規制する」と説明されているようである。ビタミン製剤や漢方薬、痔疾用剤等で、OTC薬として市販実績のある消化性潰瘍治療剤、含嗽剤等が移行されたという。

保険適用を継続する“医療用非処方せん医薬品”の零売に対しては、行政通知で規制する方向だとされるが、厚生労働省の考え通りに行くのかどうか。

今回の薬事法改正で『要指示医薬品』を『処方せん医薬品』に変更したのは、要指示医薬品の指定の意味が曖昧で、薬局で零売が行われており、その規制をしなければならないという反省に基づく行政対応だったはずである。

今回の改正で『処方せん医薬品』の零売は阻止できるかも知れないが、医療用医薬品でありながら“非処方せん医薬品”に分類された医薬品について、零売を止める理由がないのではないかと思われるがどうか。更に行政指導では罰則がなく、また罰則を強化したのでは、「過度の規制」をしないとする行政意思とも反することになる。

元々『要指示医薬品』は、医師の処方せん又は指示書がなければ販売してはならない医薬品であったはずである。

それがなぜ“容器や被包を開封して分割販売する”等ということが行われたのか。更にその行為を誰が『零売』等という言葉で表現するようになったのか。『要指示医薬品』であっても、医師の処方せんあるいは指示書がなければ、薬剤師の意思での販売は認めないという、規則の原初的な目的を徹底してさえいれば、広く零売が行われるような今日的結果は招かなかったはずである。

規則は、規制当局が断固として遵守するという姿勢を示さない限り、永年の間には風化するものである。更には小出しに踏み出してみて、相手の反応が鈍ければ、更に足は踏み出される。最後には、その行為を正当化するための理論が展開される。

その意味では、今回の“非処方せん医薬品”の行政通知による零売の禁止は、最初から守られないことを前提に決めたようなものである。一般用として販売する薬はOTCがある。医療用医薬品を零売するという行為は、薬の持つ危険性の意味を形骸化しかねない。儲けたいという人間の欲望のために制度が歪められることのないよう、当初から規制内容は明確にしておくべきである。

(2005.2.16.)


  1. RISFAX,第4310号,2005.2.10.
  2. 薬事衛生六法;薬事日報社,2004