人工呼吸器事故 3年で15人死亡-国立病院・療養所-長期装着急増で
水曜日, 8月 15th, 2007全国の国立病院機構傘下の病院で、人工呼吸器を巡る医療事故が3年間で23件発生、15人が死亡していたことが、機構の調査で解った。患者の多くは筋ジストロフィー、筋萎縮性側索硬化症(ALS)といった難病などで、長期間、人工呼吸器を装着していた。
調査は国立病院機構に所属する154病院を対象に、2001年から3年間の事故について実施された。
2001年11月(中部地方の病院)、人工呼吸器から患者に空気を送る管を交換した約2時間後、看護師が巡回した際、患者が酸欠状態になっているのを発見。交換の後、何等かの原因で管から空気が漏れていたが、異常を知らせる警報が鳴らず、発見が遅れた。蘇生措置を行ったものの、患者は死亡した。
2003年3月(九州の病院)、患者の体をふくなどの処置後、人工呼吸器から空気を送る管の接続部分が外れたのに気づくのが遅れ、患者が死亡した。
23件の事故の原因は、人工呼吸器の接続部の脱管が10件、気管内挿入管の抜け落ち3件等で、事故後に15人が死亡、2人が意識不明の重体に陥った。
人工呼吸器の誤操作の理由としては、同一施設内で操作法が異なる複数の機種の人工呼吸器が使用され、1病院当たり平均約5種類、最大14種類の機種が使用されていたことが理由の一つとして挙げられている。このため国立病院機構は、操作が簡便で安全性の高い機種に統一する方針を決めたとされている [読売新聞,第46186号,2004.10.18.]。
従来、肺の機能低下から呼吸困難に陥り死亡していた筋ジストロフィーや筋萎縮性側索硬化症の患者が、人工呼吸器の使用で長期生存が可能になり、1980 年代後半から装着する患者が増加、20年以上の装着者もいる。国立病院機構の病院でも呼吸器をつけた入院患者は約2,000人にのぼるとされる。しかし、人工呼吸器は、救急など急性期医療用に開発されたもので、長期間装着すると管が外れるなどの不具合が起きやすいとされている。
更に誤操作発生の大きな理由として、患者急増の一方で、病棟の看護師の配置人が少ないという、人員不足が挙げられている。
国直営の国立病院・療養所は、こと人員問題に関しては、国家公務員の総定員法の枠の中で七転八倒してきた。国を代表する医療機関でありながら、各職種の配置人員は最悪の状況下におかれていた。
国立病院機構に移管する際にも、人員については殆ど手当てされることなく移管したはずであり、国内の医療機関としては相変わらず最低の人員配置のはずである。更に国立病院時代の予算は、単年度会計であり、各施設は本省に対して毎年予算要求をするが、人工呼吸器のような直接収益に関係しない機器の予算は纏めて付くはずもなく、必要の都度1台、2台と買い足していくという手立てを採らざるを得ない。
しかも悪いことに、人工呼吸器の買い足しをするとき、人工呼吸器の操作に携わる看護師の意見を聞くこともなければ、機種の統一性を図る努力もなく、その時点で最も金額の安いものを何の計画性もなく購入してきた。
機種が異なり、操作性が異なる器械が、無計画に次々に購入されれば、それを使用する現場は、混乱に陥り、毎日が危うい綱渡りを強いられているのと同じだという想像力のなさが、患者の事故に繋がり、患者の命を縮めたということなのである。
あらゆる場面で予算がない、予算がないをいい訳にしてきた事務官、特に事務官の筆頭職は、医療事故の発生時には、医療職の白衣の陰に隠れて何の責任も取らないという体質があるが、自らの責任にならないからといって、日々の病院運営で責任を取らなくていいという理屈にはならない。
(2004.10.23)