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『合法ドラッグ』って何?-この不思議な命名

水曜日, 8月 15th, 2007

鬼城竜生

「『合法ドラッグ』コカインと勘違い 3少年、最長12日拘束 警視庁」という記事が、読売新聞(第45932号、2004.2.7.)に掲載されていた。

コカインを所持していた疑いで逮捕した高校3年生ら少年3人が、実際に所持していたのは『合法ドラッグ』だったとして、警視庁は6日、3人を保釈したと発表した。3人は最長12日間、不当に拘束されていた。警視庁科学捜査研究所で本鑑定したところ『合法ドラッグ』だったことが判明、その日のうちに3人を保釈したというものである。

新聞の論調は、どちらかといえば、誤認逮捕に異議を唱えているやに見受けられたが、一体、報道関係者は『合法ドラッグ』なる言葉を、どの様な立場でお使いになっているのか、若干の疑念を持ったところである。

ヒトが服用することを目的とする薬物で、合法的といえる薬物は、認知された生薬、あるいは厚生労働大臣の製造承認を得たOTC薬、医師の指示書・処方せんにより手に入れることの出来る医療用医薬品であり、それ以外の、ヒトが飲むことを目的とする薬物は、少なくとも薬事法違反-未承認薬の販売に相当するのではないか。

現在までに『合法ドラッグ』としてインターネットを使った裏市場で流通していた薬物の多くは、次々に麻薬及び向精神薬取締法の規制を受けることになり、まだ、残っている一部の薬物も、法律の枠を被せるのが遅れているだけで、薬物の構造や作用は『脱法ドラッグ』と位置付けられる薬物群に含まれるものである。

明らかに裏市場を構成する薬物を『合法ドラッグ』として報道することは、その薬物が免罪符を与えられたもの、販売等の行為に、免罪符が与えられたものとの誤解を与えかねないということである。

『合法ドラッグ』と呼ばれる薬物は、どの法律に照らして『合法』であると判断されるのか。『法律で規制されていないから所持が合法』なのではなく、『法律で規制されていないから所持が非合法』とする発想こそが、この手の薬物の流通を阻止するために、最も重要なのことではないのか。

第一今回の少年たちは、何の目的で訳の分からない薬物を所持していたのか。どう考えても、何の目的も無しに、薬物を所持していたとは考えられない。何等かの影響があることを、期待して所持していたはずである。

その所持の意図が、他の『脱法ドラッグ』同様、全身が軽やかになり、頭が冴え、感覚が鋭敏になるなどの麻薬的効果を期待したものであれば、『合法ドラッグ』の所持などという同情的な報道はやめなければならない。

あくまで正当な経路に乗って流通していない薬物は、『脱法ドラッグ』であり、その所持・販売・使用等について厳しく取り締まる姿勢を見せない限り、国の薬物汚染は改善されない。

実際問題として『脱法ドラッグ』といわれる薬物を合成する化学の専門家が、地球上に存在するのかどうか知らないが、明らかに同一系統の化合物を系統立てて修飾し、新しい化合物を創製しているとしか思えない状況にあり、法に基づく規制措置が追いついていないというのが現状なのである。追いつかない法規制がされていないから『合法ドラッグ』であるという解釈は、少なくとも報道機関が取るべき立場ではない。本来持つべきではない『魔の薬』であり、『脱法ドラッグ』という名称こそが相応しいのではないか。

[2004.2.8.記載]