薬の回収-原因は色々ありますが
水曜日, 8月 15th, 2007魍魎亭主人
『トローチに毛髪』
製薬メーカー「興和」(東京)は14日、「新コルゲンコーワトローチ」の錠剤中に毛髪が混入しているのが見つかったとして、同時に製造した 23,760箱を自主回収すると発表した。回収対象は昨年8月から10月に出荷され、箱の側面に「LH5C」という製造番号が記載されているもの
[読売新聞,第46728号,2006.4.15.]。
『子ども用風邪薬金属片混入で回収』
医薬品製造販売会社「池田模範堂」(富山県上市町)は25日、子ども用風邪薬「ムヒのこどもかぜ顆粒」に金属片が混ざっているのが見つかったとして、約14万箱の自主回収を始めたと発表した。
この製品は、第一薬品(富山市荒川)が製造、池田模範堂が販売。金属片は、生産時に使用していたステンレス製のふるいの一部が欠けたものという。回収対象製品は2004年8月から12月の間に出荷され、箱の外側に「T01」から「T09」の製造番号が記載されている
[読売新聞,第46739 号,2006.4.26,]。
企業にとって、製品に不純物が混入することは、間接的損失として製品回収経費、直接的損失として製品廃棄による損失等が考えられる。それだけに各製造工程は、徹底した管理が行われているが、それでも不純物が紛れ込むことは避けられない。
従前、病院の現場で、注射薬のアンプル内に小さな虫が入っているのを見つけたことがあるが、指摘された製薬企業は、工場の管理の徹底をあげつらい、考えられないと主張していたが、未開封のアンプル内に外部から虫を入れることは不可能であり、全ての製造工程が真空状態にでもなっていなければ、必ずヒトについて虫は入るという意見に、納得せざるを得ないということになった。
ところで、工場の管理の徹底について、次のような基準が定められている。
『ホ 次に掲げる場合には、バリデーションを行い、その記録を作成すること。
- 当該製造所において新たに生物由来製品等の製造を開始する場合
- 製造手順等に生物由来製品等の品質に大きな影響を及ぼす変更がある場合
- その他生物由来製品等の製造管理及び品質管理を適切に行うために必要と認められる場合
ヘ 製造作業に従事する者以外の者の作業所への立入りをできる限り制限すること。
ト 次に定めるところにより、作業員の衛生管理を行うこと。
(1) 現に作業が行われている無菌区域又は清浄区域への作業員の立入りをできる限り制限すること。
(2) 製造作業に従事する者を、使用動物(製造に使用するものを除く。)の管理に係る作業に従事させないこと。
チ 次に定めるところにより、清浄区域又は無菌区域で作業する作業員の衛生管理を行うこと。
(1) 製造作業に従事する者に、消毒された作業衣、作業用のはき物、作業帽及び作業マスクを着用させること。
(2) 作業員が材料又は製品を微生物等により汚染するおそれのある疾病にかかっていないことを確認するために、作業員に対し、六月を超えない期間ごとに健康診断を行うこと。
(3) 作業員が材料又は製品を異常な数又は種類の微生物により汚染するおそれのある健康状態(皮膚若しくは毛髪の感染症若しくは風邪にかかっている場合、負傷している場合又は下痢若しくは原因不明の発熱等の症状を呈している場合を含む。)にある場合には、申告を行わせること。
さて毎週土曜日の午後7:00-7:44分に放送されるNHK教育の「サイエンスZERO」第111回は『漢方薬の新潮流西洋医学との融合』という番組で、キャスターの“眞鍋かをり”氏が漢方薬メーカーで、118種類もあるという漢方薬の材料の生薬を見せてもらうという主旨のものである。
その番組に何で文句をいうのかといえば、真鍋氏の作業帽の被り方なのである。工場内 に入るときに被る作業帽は、おしゃれのために被るものではなく、 髪の毛を落とさないために被るものであり、その意味では真鍋氏の 被り方には違和感を感じるということである。
女の髪は象の足も繋ぐといわれている。一本でも落ちれば、探し 出すことは困難なのである。
誰の発案でこのような作業帽の被り方になったのかは知らないが、少なくとも科学番組と銘打って放送するからには、規定通りの被り方をするべきではなかったかということである。
このような意見に対して、細かなことに目くじらを立てるなという声があるかも知れない。しかし、人の口に入るものを製造する工場では、細かなことの積み重ねが、工程管理の基本なのである。番組の内容からいえば、彼女がスッポリ髪を隠すように作業帽を被ったとしても、何の問題もなかったと思われるだけに、基本的なところをないがしろにしていると見られる結果となったことは残念である。
(2006.5.11.)