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行政の減量とは何か

水曜日, 8月 15th, 2007

魍魎亭主人

政府の『行政減量・効率化有識者会議』(座長・飯田 亮セコム最高顧問)が、国家公務員を5年間で5% 以上純減するため、2006年2月20日までに削減計画の提示を求めていた4省8分野(公務員の総人件費削減の15分野のうち)について、刑務所、拘置所など行刑施設とハローワークの2分野がほぼ0回答。5分野は期限までに回答できない見通しだとする報道がされていた。

8分野について農林水産省、厚生労働省、法務、国土交通省の4省に対して、削減する事業と職員数の報告を求めていたものであるとされる。

その中で、厚生労働省はハローワークについて「失業手当の給付と職業紹介は密接に関連しており、紹介事業だけの民間委託は難しい」と回答。国立高度専門医療センターの独立行政法人化は受け入れるが、社会保険庁関係は「3月中旬の社会保険庁改革法案に具体案を盛り込む」と回答を先送りする。

事業分野 定員(人)
農林水産省 農林統計 5,008
  食糧管理 7,393
  森林管理 5,264
厚生労働省 ハローワーク 12,164
  社会保険庁 17,365
  国立高度専門医療センター 5,629
国土交通省 北海道開発 6,283
法務省 行刑施設 17,645

[読売新聞,第46673号,2006.2.19.]

政府は2006年2月13日、行政改革の一環として国立がんセンターなど6機関8病院からなる国立高度専門医療センターを2010年に独立行政法人化する方針を固めた。厚生労働省は当初、難病の治療・研究や感染症対策など、不採算分野を国の政策として担っていることを理由に独法化に難色を示していたが、国が引き続き関与できる仕組みの整備や財政支援などを条件に、受け入れに転じた。

高度専門医療センターは「がんセンター」「循環器病センター」「精神・神経センター」「国際医療センター」「成育医療センター」「長寿医療センター」で構成され、所属する国家公務員(定員)は2005年度末で5629人となっている。 一般の病院と同様に治療を行っているほか、がんや難病の研究、新たな診断や治療法の開発、医師らを対象とした先端医療の研修等、多様な機能を担っている。

2005年12月に閣議決定された政府の「行政改革の重要方針」は、国家公務員を5年間で5%純減する方針を決定。これを受け、中馬行革相が1月6日の閣僚懇談会で川崎厚生労働相に対し、高度専門医療センターの独法化の検討を要請していた。だが、厚労省は、同センターについて「先端医療の研究など、採算性を度外視した分野を国が政策として行っている」等と主張。 厚労省は独立行政法人化の受け入れに当たって、[1]感染症や難病対策など国が必要と判断した政策を実行できる連携の仕組みの整備、[2]人件費の水準維持や研究施設整備のための交付金、施設整備費補助金といった財政支援の充実等を訴える方針

[読売新聞,第46668号,2006.2.14.]。

国家として国民を守る手法は、軍隊による外圧対応の防衛のみではない。発生すれば、膨大な死者が予測される新たな感染症に対して、感染防御を図るための研究と治療対応の訓練等を日常的に行うとともに、未知の感染症の汎発性流行(pandemic)に際し、水際対策や患者の隔離治療に場所を提供するとともに、専門的に対応することも国民を守ることの一つである。 卑近な例でいえば、世界保険機構(WHO)が懸命に追跡している強毒性の鳥インフルエンザウイルス (H5N1型)による感染症である。本ウイルスの感染症である鳥インフルエンザによる死者は、2003年以来全世界で103人に達したとされる。未だ死亡した鳥からの感染が主体のようであるが、人にのみ感染するのではなく、英国では猫に感染したとする話も流れている。更に死者は一部の地域に限定して発生しているわけではなく、徐々に広がりを見せている。

報告ではヒトからヒトへの感染を惹起するウイルスの変化は未だ見られていないようであるが、一方では徐々に変化しつつあるような嫌な予感がするのである。鳥インフルエンザが、世界的に蔓延するようなことがあった場合、国家の根幹に係わる死者が出る可能性が予測されている。これら人類への脅威を排除するための対策の強化は国家がやることであって、その最も相応しい施設が国直轄のナショナルセンターである。 人類は未だ癌を征服していない。国民が癌で命を失うのは国家の大きな損失であり、その癌を撲滅するための研究・治療は、国の防衛線の一つである。少なくとも国の研究・治療機関として、運営することに国民は誰も避難はしない。

今回、国直轄のナショナルセンターを国立から外し、独立行政法人化するという。国家公務員の総枠抑制のためやむを得ない処置だという。しかし、考えようによっては本省関係の人員削減-行政職I関係の削減を避けるために、医療機関を犠牲にしたと見ることもできるのである。あるいは考え過ぎだといわれるかもしれないが、国直轄でなければ不採算医療-何時起こるかも解らないことに人手は割けない。つまり独立行政法人化されれば、不採算医療はできないということなのである。

(2006.3.22.)