改正薬事法の意味
火曜日, 8月 14th, 2007鬼城竜生
平成17年9月18日(日)大学の同窓会城北支部の研修会が豊島区立勤福で開催された。本来の所属支部ではないが、御案内を戴いたのと演者が薬学部卒業者でありながら弁護士という経歴の持ち主、更に演題が『個人情報保護法と薬剤師』ということで参加をさせていただくことにした。
その時、枕に振られたのが、新薬事法の三位一体論で、薬事法は医薬品のEffect (効果)薬事法基本図.・Quality(品質)・Safety(安全)の3種を保証するための法律で ある。しかし、旧法ではE・Qに対する比重が大き く、Sは疎 略に扱われていたが、今回の改正によって、少なくともE・Qとの対比では対等以上の比率になったと考えられるというも のであった。
薬事法は平成14年7月に大幅に改正された法律が公布され、 平成17年4月より全面的に施行されることになった。それに伴 い多くの関連省令や告示が新たに出されたが、今回の改正の最 大の特徴は、医薬品の承認・許可制度の抜本的な見直しと、それに伴う「品質管理基準(GQP)及び製造販売後安全管理基準(GVP)」省令の設定等がされたことである。
つまり今回の薬事法改正は、一般的に禁止された製造販売業を解除する際の特定要件として、薬事法第12条の2各号『品質管理基準(GQP)及 び製造販売後安全管理基準(GVP)』を定め、この基準に適合する者に対して製造販売業許可を 与える制度なったといわれており、従来より一層厳密な安全管理が求められることになったということのようである。
新旧法の概略を対照すると下記の通りである。
旧法 | 個別医薬品について、自ら製 造所を保有して製品化することを前提とした
『製造(輸入)承認』 *自ら保有する製造所において製造するとともに、卸売り販売業に販売する行為により構成される製造業(製薬企業) 『元売』 『市販後調査安全対策』 |
薬事 法□平成十七年四月一日 施行 | 個別医薬品について、製造所 の保有を前提としない許可体系に変更し、製薬企業を『製造行為』と『元売行為(製品を出荷・上市する行為)に分離することで、元売業の市販後調査安全対策を一層重視することになった。
『製造販売承認』 必ずしも自らその医薬品を製造・輸入する必要はない。 『製造販売』 『製造販売後安全管理』 |
新法 |
安全対策については遵守事項
「医薬品の市販後調査の基準(GPMSP(Good Post-marketing Surveillance Praction):厚生省令第10号)」→製造業者等の遵守事項(旧法第16条) |
処方せん医薬品等の製造販売 元における安全性確保をより確実なものにするため、製造販売業者における適正使用情報の収集、検討及び安全確保措置の実施等の市販後調査安全対策に関する部分として
『医薬品及び医療機器の製造販売後安全管理の基準(GVP:Good Vigilance Practice)』 と製造販売業者が再審査・再評価資料の収集・作成のために実施する試験・調査に係わる部分として 『再審査・再評価のための試験・調査に関する基準(GPSP:Good Postmarketig Study Practice)』 に分離された。 |
改正薬事法のGood Vigilance Practiceの『Vigilance』は、『警戒、用心、寝ずの番』等の意味であり、従来の『市販後調 査の基準』に比べると、今回の『製造販売後安全管理の 基準』は、明らかに『調査』から『監視』の方向に大きく踏み込んだということができる。
薬事法は、薬を管理するために薬剤師が主体的に運用する法律である。特に『安全性管理』は、薬剤師が臨床現場において主体的に係わっていかなければならない分野であるといえる。医師は患者の治療に際して、薬の効果を見がちであり、副作用については等閑視しがちである。従って、副作用については、薬剤師が全面的に係わり、監視を強化するとともに、常に新しい情報を収集するとともに、医師に伝達していかなければならない。
薬剤師が医療をになう者として法的に明記された。医療に貢献する姿勢として、GVPへの関与を強化しなければならない。
[2005.10.2.]
- 財団法人日本公定書協会・編:薬事衛生六法;薬事日報社,2005
- 三輪亮寿:法律実務講座-「個人情報保護法と薬剤師」;昭薬:東京城北支部,2005.9.18.資料