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『医薬品販売の規制緩和』

火曜日, 8月 14th, 2007

医薬品情報 21

代表 古泉秀夫

[1]新たに医薬部外品に移行した医薬品

厚生労働省は、医薬品販売の規制緩和のため一般用医薬品のコンビニエンスストアなどでの販売を検討していたが、2004年7月16日、整腸剤や殺菌消毒薬など371品目を一般小売店で販売できる「医薬部外品」に移行、7月30日から販売できるようにすると発表した。

その他、対象となるのは健胃薬やうがい薬、ビタミン含有保健薬など。

移行品目には、説明文書をよく読むことや過剰摂取への注意などを外箱などに表示するよう、政省令で規定。製造所の責任技術者は薬剤師とすることなど、製造や品質の管理については、従来の一般用医薬品と同じ基準を設けた。

『新指定医薬部外品』

『新指定医薬部外品』といわれる医薬部外品は、1999年に新たに指定された医薬部外品であり、『医薬品販売規制緩和に係る薬事法施行令の一部改正等について』(医薬発第280号,都道府県知事・ 政令市市長・特別区区長宛、厚生省医薬局長発出)においてその詳細が示されている。

第1.指定告示に関する事項(新たに医薬部外品として指定されたものについて)

薬事法第2条第2項の規定に基づき、指定告示において、次に掲げるもので あって人体に対する作用が緩和なもの(以下単に「新指定物」という。)が新たに医薬部外品に指定されたこと。

  1. すり傷、切り傷、さし傷、かき傷、靴ずれ、創傷面等の消毒又は保護に 使用されることが目的とされている物(外皮用剤、きず消毒保護剤)
  2. ひび、あかぎれ、あせも、ただれ、うおのめ、たこ、手足のあれ、かさ つき等を改善することが目的とされている物(ひび・あかぎれ用剤、あせも・ただれ用剤、うおのめ・たこ用剤、かさつき・あれ用剤)
  3. のどの不快感を改善することが目的とされている物(のど清涼剤)
  4. 胃の不快感を改善することが目的とされている物(健胃清涼剤)
  5. 肉体疲労時、中高年期等のビタミン又はカルシウムの補給が目的とされ ている物(ビタミン剤、カルシウム剤)
  6. 滋養強壮、虚弱体質の改善及び栄養補給が目的とされている物(ビタミ ン含有保険剤)なお、個々の製品が医薬部外品に該当するか否かについては、薬事法第2条第 2項各号及び指定告示に指定された品目の範囲において、その有効成分の種類と分量、効能又は効果、用法及び用量又は剤型等を総合的に判断して決定するものであるが、新指定物の具体的範囲については、本日付け医薬発第283号当職通知の別添「新指定医薬部外品の製造(輸入)承認基準」(以下「新基準」という。)を参照されたいこと。
    なお、個々の製品が医薬部外品に該当するか否かについては、薬事法第2条第 2項各号及び指定告示に指定された品目の範囲において、その有効成分の種類と分量、効能又は効果、用法及び用量又は剤型等を総合的に判断して決定するものであるが、新指定物の具体的範囲については、本日付け医薬発第283号当職通知の別添 「新指定医薬部外品の製造(輸入)承認基準」(以下「新基準」という。)を参照されたいこと。

『新範囲医薬部外品』

2004年7月末からコンビニなどでの販売が可能になるOTC薬から新たに医薬部外品に移行することになった対象品目。

新範囲医薬部外品の指定については、平成16年7月16日に関係政省令の公布が行われ、平成16年7月30日より施行された。

  1. 本件は平成15年6月27日付閣議決定「経済財政運営と構造改革に 関する基本方針2003」を受けて、医学・薬学等の専門家によって「安全上特に問題がないもの」として選定された一般用医薬品を医薬部外品に移行させることにより、一般小売店での販売を可能とするものである。
    (註)薬事法第 2条第2項にいう医薬部外品とは、次の各号に掲げることを目的とされており、かつ人体に対する作用が緩和なものであって器具器械でないもの及びこれらに準ずるもので厚生労働省の指定するものをいう(ただし、医薬品としての用途に使用されることもあわせて目的とされている根のを除く)。
  2. 今般、専門家による検討結果を踏まえて、これまで一般用医薬品とし て薬局等で販売されていた371品目を医薬部外品に移行することによって、一般小売店での販売を可能とすることにした。
  3. 医薬部外品に移行する品目の範囲については、次の措置により、その 明確化を図った。ア.医薬部外品に移行する品目(以下、「移行品目」という)について、別紙 1に掲げるものであって人体に対する作用が緩和なものを、新たに医薬部外品として指定した。

    イ.平成15年度において製造実績があることが確認された371品目をリス ト化し、一般小売で販売可能なものとして明確化するとともに、医薬部外品としての範囲を示した。

    ウ.今後、医薬部外品としての範囲に該当するものとして、新たに製造を開始しようとするものについては、事前に厚生労働 省に届け出を行うこととした。

[2]移行品目の表示等について 

  1. 移行品目の表示については、その有効成分の名称及びその分量等を直接の容器又は直接の被包に記載しなければならないこと。 「医薬部外品」の文字は、購入者等から見て販売名の表示をあわせて見ることが可能となるよう、販売名と同一面に記載すること。
  2. また、移行品目の外箱等に対して、一般用医薬品として表示されている事項に加え、移行品目の各区分毎に次に掲げる事項等のうち必要な事項の表示を行うものであること。ア.特定の状態にある使用者に対して、使用前(服用前)に医師又は薬剤師に相談すること。

    イ.使用(服用)に際しては、説明文書をよく読むこと。

    ウ.直射日光の当たらない(湿気の少ない)、涼しい所に(密栓して)保管すること。

    エ.用法用量を守り、他の製品との同時使用等による過剰摂取に注意すること。

    オ.使用(適応)部位に関する注意 等

医薬部外品としての区分 区分の範囲
1 健胃薬 胃のもたれ、食欲不振、食べ過ぎ、飲み過ぎ等の諸症状を改善することが目的とされているものであって、内用剤であるもの。
2 整腸薬 腸内の細菌叢を整え、腸運動を調節することが目的とされているものであって、内用剤であるもの。
3 消化薬 消化管内の食物等消化を促進することが目的とされているものであって、内用剤であるもの。
4 健胃薬、消化薬又は整腸薬のうちいずれか二以上に該当するもの 食欲不振、消化促進、整腸等の複数の胃腸症状を改善することが目的とされているものであって、内用剤であるもの。
5 寫下薬 腸内に滞留・膨潤することにより、便秘等を改善することが目的とされているものであって、内用剤であるもの。
6 ビタミンを含有する保健薬 ビタミン、アミノ酸その他身体の保持等に必要な栄養素の補給等が目的とされているものであって、内用剤であるもの。
7 カルシウムを主たる有効成分とする保健薬 カルシウムの補給等が目的とされているものであって、内用剤であるもの。
8 生薬を主たる有効成分とする保健薬 虚弱体質、肉体疲労、食欲不振、発育期の滋養強壮等が目的とされている生薬配合剤であって、内用剤であるもの。
9 鼻づまり改善薬(外用剤に限る) むね又はのど等に適用することにより、鼻づまりやくしゃみ等のかぜに伴う諸症状の緩和が目的とされているものであって、外用剤であるもの。
10 殺菌消毒薬 手指及び皮膚の表面又は創傷部に適用することにより、殺菌すること等が目的とされているもの。
11 しもやけ・あかぎれ用薬 手指、皮膚又は口唇に適用することにより、しもやけや口唇のひびわれ・ただれ等を改善することが目的とされているもの。
12 含嗽薬 口腔内又はのどの殺菌、消毒、洗浄等が目的とされているものであって、うがい用として用いるもの。
13 コンタクトレンズ装着薬 ソフトコンタクトレンズ又はハードコンタクトレンズの装着を容易にすることが目的とされているもの。
14 いびき防止薬 いびきの一時的な抑制・軽減を目的とされているものであって、点鼻的に適用するもの。
15 口腔咽喉薬 のどの炎症による痛み・はれの緩和等が目的とされているものであって、口中に含み徐々に溶かして使用する又は口腔内に噴霧・塗布するもの。
医薬部外品としての区分 品目数 具体的な製品の例
(1) 健胃薬 10 エビオス錠(アサヒフード)
センブリ錠(紀伊国屋漢薬局)
(2) 整腸薬 33 新ビオフェルミンS錠(ビオフェルミン製薬)
ヤクルトBL整腸薬(ヤクルト)
(3) 消化薬 3 新タカジア錠(三共)
新ビオヂアス(明治薬品)
(4) 健胃薬、消化薬又は整腸薬のうちいずれか二以上に該当するもの 16 強力わかもと(わかもと製薬)
ミネ消化整腸薬(常盤薬品)
(5) 寫下薬 7 リズムラン(備前化成)
ベストール(佐藤製薬)
(6) ビタミンを含有する保健薬 148 キューピーコーワゴールドA(興和)
ポポンS(塩野義)
(7) カルシウムを主たる有効成分とする保健薬 16 カタセ錠A小児用(全薬工業)
新カルエースA(ジェーピーエス)
(8) 生薬を主たる有効成分とする保健薬 7 高麗人参エキス(カネボウ)
強力オキソレヂン糖衣錠(理研化学)
(9) 鼻づまり改善薬(外用薬に限る) 10 ヴィックスヴェボラップ(大正製薬)
カコナールかぜパップ(救急薬品)
(10) 殺菌消毒剤 66 カットバン・AC(祐徳薬品)
キズタッチU(共立薬品)
(11) しもやけ・あかぎれ用薬 17 近江兄弟社メンタームメディカルリップ(近江兄弟社)
メンソレターム(ロート製薬)
(12) 含嗽薬 8 コルゲンコーワうがいくすり123(興和)
アルペンうがい(東洋ファルマー)
(13) コンタクトレンズ装着薬 2 マイティアハードレンズ装着液(千寿)
スマイルコンタクトファインフィット(日東メディック)
(14) いびき防止薬 2 アンスノール(エスエス製薬)
ホームチン(牛津製薬)
(15) 口腔咽喉薬 26 Gトローチ明治(明治製菓)
ベンザブロックのどスプレー(堺化学)
品目数              計 371

[3]規制緩和-これまでの経緯

これまで医薬品類は、薬事法による規制・指導対象として[1]医薬品、 [2]医薬部外品、[3]化粧品、[4]医療用具に分類されてきた。

この分類に対して、「医薬品のうち人体に対する作用が緩和で販売業者による情報提供の努力義務を課すまでもない」ものについて、スーパーやコンビニをはじめとする 一般販売店での販売を認めるとし、新たに「新指定医薬部外品」・「新範 囲医薬部外品」というカテゴリーを設けることになった。

医薬品については、薬事法により薬局、薬店でしか販売できないという規制がされていた。

◆1994年:医薬品の販売規制に対し、風邪薬などの自由な販売を求めて、チェーンストア業界から規制緩和の要望、第一期規制緩和推進計画で検討開始。

◆1997年(3月28日):「規制緩和推進計画の再改訂について」の閣議決定、医薬品のカテゴ リーの見直しが盛り込まれる。

◆1997年(9月22日):新カテゴリーへの移行検討対象として23薬効群選定。催眠鎮静剤、総合感冒剤、解熱鎮痛剤等が含まれる。医薬品販売規制緩和特別部会にて23薬効群の移行の可否を審議し、15薬効群を移行可能と決定。

◆1998年(3月12日):中央薬事審議会常任部会は、医薬品販売規制緩和特別部会の報告を受け、「現行の医薬品区分から医薬部外品類似カテゴリーへの移行可能な15製品群」を承認。 2004年(7月26日):整腸剤や殺菌消毒薬など371品目を一般小売店 で販売できる「医薬部外品」に移行、7月30日から販売できるようにすると発表。

[4]規制緩和の問題点

医薬品を規制緩和する際の最大の根拠は『安全性上特に問題がないもの』ということのようである。しかし、『安全性上特に問題がないもの』とい うのは、一体誰が、どのような根拠に基づいて、保証するというのか、よく解らない所がある。現在、既に医薬部外品として販売されている製品も、全くなんの問題もなく、使用可能かといえば、ヒトによっては過敏症等の副作用が出ないとは限らない。医薬品であれ医薬部外品であれ、本来人体にとっては異物である。ヒトの機能は異物として認識したとき、防御するための反応を示す。普段の使用で何事も見られなかったとしても、その時の体調や環境変化によっては、思わぬ結果を招くこともあるのである。

規制緩和のもう一つの根拠は、医薬品のうち人体に対する作用が緩和で『販売業者による情報提供の努力義務を課すまでもない』ものとされている。しかし、消費者の立場からすれば、個別商品の情報提供は、単なる努力義務ではなく、確実に実施してもらわなければ困る重要なものである。消費者が必ずしも全ての商品の利用に精通しているわけでなく、配合されている成分についても、耳慣れない成分の表記がされている場合、 遠くにいる製造業者よりは近くにいる販売業者に質問するのは当然のことであり、店員が情報提供できないような製品を取扱うのは、甚だ無責任だといわなければならない。

薬剤師がこのような意見を述べると、直ちにやれ既得権の擁護だ、OTC薬 の説明は薬剤師もしていないではないかという声が聞こえてくるが、単に既得権の擁護で声を出しているわけではない。過去の薬害の歴史に鑑みて、油断をしてもらっては困るということで申し上げているのである。しかし、過去の薬学教育の中で、OTC薬に関する講座を持っていた薬科大学はないはずであり、その意味では、OTC薬をないがしろにしていたといわれれば、それはおっしゃる通りであり、OTC薬に関する情報管理を確立してこなかったということは、素直に反省しなければならない。

(2004.8.19.)