いすかの嘴
火曜日, 8月 14th, 2007米国はイラクに攻め込む理由として、フセイン政権によるサリン、VXガスなどの化学兵器、生物兵器の保有、更には核兵器開発疑惑等をあげていた。しかし、イラク侵攻後、探せども探せども何も出ず、挙げ句の果てにフセインの身柄拘束もできない。しかも戦闘は終結せず、泥沼状態に陥っていた。何とかしなければ、何とかしなければの焦りが、捕虜の拷問や虐待に繋がったということではないのか。
ところで2004年5月18日付の読売新聞(第46033号)は、『イラク駐留米軍のキミット准将は17日、イラク国内で発見された砲弾一発から、神経ガス・サリンが微量、検出されたと発表した。旧フセイン政権崩壊後、米国がイラク戦争の根拠とした大量破壊兵器関連物質が実際に発見されたのは初めて』とする記事が報道された。
しかし、サリンは極めて少量で、曝露した爆発物処理担当者二名への健康への影響はないとされている。直径155ミリの砲弾内部は二つの部分で構成され、サリンを作り出す二つの化学物質がそれぞれに入っている旧式の「二種混合型」。准将は、旧政権時代から貯蔵されていたと考えられる兵器としているが、同政権が意図的に保有していたものなのか、同政権が1991年の湾岸戦争以前に保有していたサリン砲弾を、その後何者かが入手し、蓄えていたのかなどの詳細については明らかにしなかった。
米軍車列が通過した、イラク国内の道路脇で発見した手製爆弾の袋の中にあったという。イラクの大量破壊兵器探しを担う、米調査団が中の成分を調べ、17 日にサリンの存在を確認。砲弾は発見後、処理前に爆発、爆発処理担当者がサリンに曝露されたという。 もしガス弾として使用可能なものであれば、処理前に爆発した爆弾のガスに曝露した二人に、何も健康上の問題はないなどということはないはずである。それどころか近隣に居た他の人達にも影響があり、それこそ大騒ぎになっていたはずである。
幸いにというべきか、今回の砲弾は、何処かから拾ってきたほぼ空砲に近い砲弾で、鬼の首を取ったよう騒ぐほどの話しではなかったのかもしれない。いずれにしろ米国は最初の段階で大きな読み違いをしたということだろう。大アメリカが攻め込めば、イラクごときは木っ端のごとく吹き飛び、虐げられた民は諸手を挙げて解放軍、自由の戦士、救世主として迎えてくれると考えていたのだろう。
しかし、当初目標の大量破壊兵器は見つからず、フセインは拘束したものの、戦闘終結を宣言した後の方が、戦闘は激化している。完全にイラク人の国民感情からかけ離れたところで米国流の正義を果たしている。この戦闘の最終的な結末をどうする気なのか知らないが、サッサとイラク人に主権をわたし、引き上げる以外解決の方法はないのではないか。最初の出発点で、米国は大きく情報を読み間違った。一度曲がってしまった嘴は、最早正常には戻らない。
(2004.5.20.)