アガリスク、プロポリス………抗癌効果、安全性?
火曜日, 8月 14th, 2007魍魎亭主人
「がんが消えた」などと虚偽の体験談を載せた本を使い、キノコの一種、アガリクスの健康食品を販売した出版社と健康食品会社が薬事法違反容疑で摘発された。健康食品の市場は急成長している一方、肝心のがんなどへの効果ははっきりしないのが実態だ。だが、わらをもつかむ患者の心理につけ込む虚偽・誇大広告は後を絶たず、商品による健康被害の報告もある
[読売新聞,第46552号,10.20.2005]。
更に健康食品の売り上げは年々伸び、国内で年間1兆円を超えるとされる。多くのがん患者も使っており、厚生労働省研究班が 2002年度に患者約3000人に実施した全国調査では、4割強が健康食品を使用していた。今回問題になったアガリスクが61%と最も多く、次いでプロポリスの29%であった。
医師から「もう治療法がない」、「治らない」いわれ、最後の希望としてすがる患者も少なくない。患者は健康食品などの民間療法に月平均57,000円使っていた。こうした健康食品は「抗がんサプリメント」とも呼ばれるが、効果はあやふやだ。安全性や有効性の資料は、試験管内や動物実験が殆ど。実際に効果があるかどうかを調べるには、ヒトでの臨床試験が必要であるが、健康食品に関する臨床試験資料は極めて少ない。
健康食品による健康被害も起きている。国民生活センターによると、健康食品での「危害情報」は、中国製のダイエット食品での死亡例が相次いだ2000年度に1,200件と前年の3倍に達して以降、昨年度も622件と3年連続でトップだった。 昨年秋の日本肝臓学会では、中国製ダイエット食品を除く健康食品について、長期使用などにより黄疸や発熱等の肝障害を起こした例が89例が報告された。原因となったのはウコン(25%)、アガリクス(8%)の順。アガリクス服用者は全員がん治療中だった等の報告が見られる。
以上が新聞報道の内容であるが、ここで不思議に思うのは、これまで新聞各社は、アガリクスやプロポリスのバイブル本の広告は、一切掲載した経験はないとでもいうのであろうか。先日のTV報道では、『いわゆる健康食品』購入の動機は、バイブル本の新聞広告を見てという回答が最も多かったとされていたが、今頃になって効果がない等という報道をするというのは、バイブル本の広告を新聞に掲載して、効果のない『いわゆる健康食品』の効能を間接的に保証した格好になっていることへの懺悔の気持とでもいうのであろうか。
共同通信の2005年8月2日付の配信では
『「健康食品でがんが治る」などとうたう「バイブル本」には、虚偽誇大広告を禁じた健康増進法に抵触するものがあるとして、厚生労働省は1日までに、日本書籍出版協会、日本新聞協会、日本雑誌協会など7団体に慎重な取り扱いを求める異例の通知を出した。 5月に東京都内の出版社に初めて改善指導をしたが、その後も「バイブル本」が多く出回っていることから、宣伝や販売の過程で関連する主要な団体への大規模な通知に踏み切った。厚労省食品安全部長名の通知は「特定の食品や成分を摂取することで重篤疾病が自己治癒できるかのような情報は科学的根拠に乏しい」として虚偽誇大広告に当たると指摘。こうした内容を盛り込み、健康食品販売業者の連絡先を記載した「バイブル本」も、書籍の形を取った販売促進のための誇大広告としている。 書籍の巻末などに業者名を印刷せずしおりにして挟んだり、連絡先を架空の「研究所」名にしたりしているケースも該当するという。厚労省によると、新聞や雑誌などの媒体に書籍広告として掲載し、その媒体の「ブランド」を利用して消費者を信用させているが、広告掲載料を出版社ではなく健康食品業者が負担しているケースも確認された。』
としている。 厚生労働省が、日本新聞協会にも慎重な取扱とする通知を出したということは、日常的にバイブル本の広告が新聞に掲載されていたということの証明だろう。社会正義を標榜する新聞が、新聞社の信用性に依拠して商売をしようとするインチキ商売に手を貸しておきながら、恬然としているのはいかがなものか。
更に新聞の折り込みで入ってくるチラシの中にも、パーキンソン症候群、糖尿病・自律神経失調症、気管支喘息、坐骨神経痛・膝痛、子宮筋腫(粘膜下筋腫)等について、体験談もどきを掲載し、“頑固な慢性病でお悩みの方へ”なるものが印刷されたチラシが入れられているが、明らかに健康増進法に抵触する”いわゆる健康食品”の広告を、新聞社が配布に協力しているという図式は問題ではないか。
もしチラシの問題は新聞社の問題ではなく、販社の問題であるとおっしゃるのであるとすれば、新聞社には社会正義を振りかざすのを止めてもらはなければならない。
一般の読者には、全てまとめて新聞社なのである。更にいわせていただければ、新聞を購読する契約はしているが、チラシを受け取る契約はした覚えがない。にもかかわらず大量のチラシが入ってくるのはどういう仕組みによるものなのか。
(2005.12.29.)