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L-チロキシンナトリウム注射薬について

火曜日, 8月 14th, 2007

KW:院内特殊製剤・L-チロキシンナトリウム・L-thyroxine sodium・levothyroxine sodium・チラーヂンS・甲状腺機能低下症・クレチン症・レボチロキシン注射液・レボチロキシン坐薬・チラーヂンS注射液・チラーヂンS坐薬

Q:甲状腺機能低下症-特に粘液水腫に使用されるL-チロキシンナトリウム注射液について

A:国内で市販されているlevothyroxine sodiumの製剤は経口剤のみである。

商品名 会社名 含有量 添加物
チラーヂンS錠 あすか 25・50・100μg/錠(乾燥物) 部分アルファ化澱粉、トウモロコシ澱粉、D-マンニトール、三二酸化鉄、その他3成分
チラーヂンS散0.01% 0.1mg/g(無水物) トウモロコシ澱粉

levothyroxine sodiumの性状について、次の報告がされている。

微黄白色-淡黄褐色の粉末で、臭いはない。エタノール(95)に溶け難く、水又はジエチルエーテルに殆ど溶けない。水酸化ナトリウム試液に溶ける。光によって徐々に着色する。本品は定量するとき、換算した乾燥物に対し、levothyroxine sodium(C15H10I4NNaO4:798.85)97.0%以上を含む。

本品1gは水酸化ナトリウム試液400mLに澄明に溶ける。屋外光下48時間で微赤褐色になる。本品の保存は遮光して気密容器に保存とされている。

ヨウ素の理論量は63.55%。

levothyroxine sodiumの注射剤については、国内で市販されておらず、市販されていない製剤については、院内特殊製剤として調製することになるが、PL法施行後の院内特殊製剤調製については

  1. 院内倫理委員会の承認
  2. 特殊製剤使用に対する文書による同意取得

等の手続きが必要である。

L-thyroxine sodium注射剤

  • L-チロキシンナトリウム・5水和物–11.4mg
  • 0.1mol/L-水酸化ナトリウム–1mL
  • 注射用水–全量–100mL
  • 処方薬剤規格:L-チロキシンナトリウム・5水和物(試薬)、注射用水(局方品)、水酸化ナトリウム(試薬特級)。
  • 調製法:予め煮沸滅菌したシリンダーを注射用水で共洗いし、L-チロキシンナトリウム・5水和物を秤取し、0.1mol/L-水酸化ナトリウムで溶解後、注射用水で全量とし、メンブランフィルター(0.22μm,GV)で濾過し、褐色アンプルに充填・密閉して製する。
  • 容器及び貯法:1mL褐色アンプル、冷暗所保存。
  • 適応:甲状腺機能低下症(術後の経口摂取不能時)、脳下垂体機能低下症(術後の経口摂取不能時)。
  • 用法・用量:1日1アンプルを輸液に混合し、点滴静注する。
  • 使用期限:約3ヵ月
  • 特記事項:予めアンプルを窒素ガス置換しておく。酸性注射薬との配合でL-チロキシンナトリウムが析出する可能性があるので注意する。

なお、注射薬の院内調製が困難な場合、経口投与困難な患者を対象としてlevothyroxine sodium坐薬の調製法が紹介されているため、坐薬による投与を検討する。

  • levothyroxine sodium–0.5mg
  • ホスコE-75–8 g
  • ホスコH-15– 8 g
  • 以上—-坐薬 10個分
  • 処方薬剤規格:チラーヂンS錠(あすか)、ホスコE-75・ホスコH-15(丸石)
  • 調製法:チラーヂンS(50μg)10錠を粉砕、微粉末化後100メッシュ篩を用いて篩過し、融解したホスコE-75・ホスコH-15と混合撹拌後、坐薬コンテナ10個に分注する。
  • 規格・単位:50μg/個
  • 容器・貯法:1.9mL乳白無地坐薬コンテナ。冷所保存。
  • 適応:経口投与困難な患者への甲状腺ホルモン薬の投与。
  • 用法・用量:1日1回50μg

  [014.16.THY:2006.5.30.古泉秀夫]


  1. 高久史麿・他監修:治療薬マニュアル;医学書院,2006
  2. チラーヂンS錠添付文書,2005.10.
  3. チラーヂンS散添付文書,2005.10.
  4. 日本病院薬剤師会・編:病院薬局製剤 第5版;株式会社薬事日報社,2003.4.10.
  5. 和田京子・他:新生児マススクリーニング対象疾患の見直された治療法(6)-クレチン症;小児科,42(12):1897-1903(2001)
  6. 第14改正日本薬局方解説書;廣川書店,2001