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L-カルニチンについて

火曜日, 8月 14th, 2007

KW:薬名検索・L-カルニチン・carnitine・ビタミンBT・vitamine BT・動物性食品・体重抑制・脂肪酸抑制

Q:テレビ放映された『L-カルニチン』とはどの様なものか  

A:カルニチンは、殆ど全ての生物、各組織に存在する。動物では副精巣に最も高濃度に存在し、血漿中濃度がテストステロン投与で上昇するなど、生殖との関係も重視されている。量的には骨格筋に多く、その乾燥重量の約0.1%である。生体内のカルニチンはL-体で、D-体は拮抗阻害を示す。

  • [英]carnitine、[独]kanitin、[仏] carnitine。
  • 4-トリメチルアミノ-3-ヒドロキシ酪酸、4-トリメチル-3-ヒドロキシブチロベタイン。
  • C7H16NO3=162.21。

1905年肉エキスから発見された物質で、穀物害虫(Tenebriomolitor:茶色コメゴミムシダマシ)の発育に必須の物質であることが報告され、この虫の頭文字を取ってビタミンBT(vitamine BT)と名付けられた。

腎において蛋白質のリシンがトリメチルリシンとなり、これが遊離されてγ- ブチロベタインとなって肝臓に行きcarnitineになる。carnitineは比較的細胞膜を透過しやすく、各組織に分布するほか尿中にも排泄される。carnitine量はホルモンや栄養条件によって支配される。

ヒトではcarnitine欠乏症は認められず、生体内でも合成されるため、ビタミン様作用物質とされている。しかし、ある種の筋萎縮症ではその欠乏を来たし、筋細胞に脂肪の異常蓄積が起こる。

carnitineの生化学的役割は、脂肪酸がミトコンドリアの膜を通過するのに必要な物質で、脂肪酸がミトコンドリアで酸化を受け、エネルギーとして利用されるのに役立っている。

carnitineは動脈圧低下、心拍数低下、膵液、胃液等の分泌作用、利尿作用があり、臨床的に用いられる。carnitineとアセチルCoA が反応して生じるアセチルカルニチンは、神経を活性化させる作用があると報告されている。また、慢性疲労症候群にアセチルカルニチンの生成低下が関係しているとする報告もみられる。

その他、脂肪酸の炭素鎖長6-10のものはcarnitineに依存しないで内膜を通過しマトリックスで活性化されβ酸化されるが、長鎖脂肪酸のβ 酸化はcarnitineに完全に依存する。生体内でのβ酸化にはcarnitine濃度が律速的となり、例えば肝臓内のcarnitine濃度は糖尿、絶食などで増加するとする報告もある。

また、人体の肝臓内で必須アミノ酸のリジンとメチオニンから合成されるアミノ酸の一種。食事から摂取するリジン、メチオニンが欠乏している場合、十分量を補填できるとは限らない。

また、男性より女性、また肥満気味の人に不足の傾向が発現しやすいといわれている。食品では牛肉、羊肉などの動物性食品に含まれ(特に筋肉、内臓肉に多い)、植物性食品には含まれていない。 carnitineには脂肪を筋肉に運び代謝を調節するという働きがあり、中性脂肪と脂肪酸の燃焼を促進するので、体脂肪を蓄積させないという効果がある。

動物実験の結果では『carnitineの投与+運動』の併用により、体重、脂肪酸ともに増加が抑制されたという報告がされている。その他運動との併用で、コレステロールの増加抑制作用があることも報告されている。

[011.1.CAR:2005.4.13.古泉秀夫]


  1. 今堀和友・他監修:生化学辞典第3版;東京化学同人,1998
  2. 薬科学大辞典 第2版;広川書店,1990
  3. 糸川嘉則:最新ビタミン学-基礎知識と栄養実践の手引き;フットワーク出版,1998
  4. 中村丁次・監修:最新版からだに効く-栄養成分バイブル;主婦と生活社,2001