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St.john’s Wortについて

火曜日, 8月 14th, 2007

Q:英国で健康食品と医薬品の相互作用に関する注意事項がでたとされるが、その健康食品の内容はどの様なものか

A:「英国において医療関係者並びに市民に対し、セント・ジョーンズ・ワート製品と医薬品との相互作用について注意喚起がされた」の情報は、日本薬剤師会のホームページ上に収載されている(www.nichiyaku.or.jp/)。なお、同HOMEから英国において公表された原報の入手も可能である。

なお、St.john’s Wort は、セイヨウオトギリソウの英名として紹介されている。

次にセイヨウオトギリソウについて調査した結果を示す。

  • 原植物:オトギリソウ科のセイヨウオトギリソウ(Hypericum perforatum L.)である。ヨーロッパと西アジアの野生種(旧ソ連、ブルガリア、ハンガリー、旧ユーゴスラビア及びルーマニアからの輸入品)。
  • 含有成分:hypericin(0.1?0.3%)、特にpseudohypericin、isohypericin、protohypericin等の hypericin類似物。DACによると少なくとも0.05%のhypericin、フラボノイド類、特にhyperosideとrutin及びビフラボン類、特にI3,II8-biapigenin、抗菌作用を有する成分中では、ホップの苦味質に構造的に似ているphloroglucin誘導体である hyperforinを3%迄。0.05?0.3の精油(n-アルカン、その他α-pineneやその他のモノテルペン類)、10%強までのタンニン、少量のプロシアニジン類。
  • 作用:本生薬やその製剤については、多くの医師の経験報告があり、穏和な抗鬱作用があることを述べている。実験的所見によれば、hypericinはモノアミンオキシダーゼ阻害剤に加えられる。油状のヒペリクム製剤は消炎作用を示す。
  • :神経症の抑鬱状態の比較的軽度の事例(更年期、神経疲労等)。本品による効力はこれまでhypericin類によるものと考えられていたが、ビフラボン類(Taxus baccataから分離されたビフラボン類は中枢神経系を鎮静する)とhyperforinも鎮静作用に関与していることを考慮に入れなければならない。 hypericinはモノアミンオキシダーゼを阻害する。
  • 民間療法:止瀉剤(タンニン酸含有)、 利尿剤(フラボノイド含有)として、また夜尿症、リウマチ、痛風に用いる。ヒペリクム油(オリーブ油、ヒマワリ油、麦芽油を用いて調製したエキス)の形で創傷治療剤として、また火傷に用いる。
  • 副作用:hypericinには光増感作用がある。大量投与する際は、光線過敏症に注意(太陽光線又は太陽灯を避ける)。特に白人の場合に光増感作用の可能性がある。なお、長期連用時には副作用に注意。
  • 茶剤調製:2?4gの細切生薬に沸騰したお湯を注ぎ5?10分後に濾過する(約150mL)。他に指示のない限り、朝夕カップ1?2杯の用時調製した茶剤を毎日服用。茶匙1杯=約1.8g。
  • 茶剤製剤:ティーバック(通常2g)も市販されている。
  • 禁忌:光線過敏症であることが解っている場合には、セイヨウオトギリソウ製剤は用いてはならない。
  • 相互作用:従来は知られていないとされていた。今回、次の注意事項が公表された。 下記の医薬品とセント・ジョーンズ・ワート製品を併用中の方は注意

[セント・ジョーンズ・ワートに含まれる成分が薬の分解に関与する酵素の活性を高めるため、医薬品によっては血中濃度が十分に上がらず、治療効果か減弱されるおそれがある。また本品の作用機序がSSRIと同様に脳のセロトニン作動精神系を活性化するとされている。従って、SSRIと併用した場合、セロトニンによる作用が増強され、副作用が発現しやすくなるの至適がされている。]

HIVプロテアーゼ阻害剤(インジナビル、サキナビル、リトナビル、ネルフィナビル)、HIV逆転写酵素阻害剤(エファピレンツ、ネビラビン)[医薬品の血中濃度レベルが低下し、HIV抑制作用が減弱されているおそれがあるので、セント・ジョーンズ・ワートの中止について医師に相談して下さい。]。

ワルファリン、ジゴキシン、テオフィリン、シクロスポリン、抗てんかん薬(フェニトイン、カルバマゼピン、フェノバルビタール)[医薬品の分解が促進され、作用が弱まっているおそれがあるが、セント・ジョーンズ・ワートを急に中止すると分解促進作用が無くなるため、医薬品の血中濃度が高くなり過ぎる危険があります。医師の検査を受けながら中止の判断を相談して下さい。ときには薬の量の調節が必要になるかもしれません。

経口避妊薬[避妊効果が得られないおそれがありますので、セント・ジョーンズ・ワートの使用を中止して下さい]。

SSRI(マレイン酸フルボキサミン等)[副作用が現れやすくなるおそれがあります。セント・ジョーンズ・ワートの使用を中止して下さい]。

なお、国内では市販されていないが、個人輸入あるいは健康食品の場合、海外からの持ち込み等が考えられるため、以下に関連商品及び海外におけるセント・ジョーンズ・ワートの同義語を紹介する。

製品名 剤形
向精神薬 Hyperforat

Psychatrin-Jossa

Psychotonin

Neurapas

糖衣錠、滴剤、アンプル剤

糖衣錠

チンキ剤

被覆した錠剤

泌尿器 Enuresibletten

Inconturina

Rhoival

糖衣錠

滴剤

糖衣錠、滴剤

*Blutkraut

*Feldhopfenkraut

*Herrgottablut

*Hexenkraut

*johannisblut

*johanniskraut

*Konradskraut

*Mannskraft

*Sonnwendkraut

*Tupfelhartheu

*Waldhopfenkraut

*Walpurgiskraut

*Hardhay

*Saint Johns Wort

*Herbe de millepertuis

[015.9SAI:2000.3.16.古泉秀夫]


  1. 井上博之・監訳:西洋生薬;広川書店,1999
  2. http://www.nichiyaku.or.jp/news/n000310.html,2000.3.15.