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ワーファリンとパラミジンの相互作用

火曜日, 8月 14th, 2007

Q:ワーファリン錠の副作用を防止する目的として、パラミジンカプセルの併用処方が出された。両剤の添付文書によれば「併用注意」となっているが、調剤可能か。

A:両剤の添付文書中に記載されている相互作用に関連する事項は、下記の通りである。

商品名(会社名) ワーファリン錠(エーザイ) パラミジンCap.(グレラン製薬)
warfarin potassiumの併用が必要な場合、本剤の投与量を減らすこと。 抗凝血剤の作用を増強することがある。






1.過敏症[蕁麻疹、皮膚炎、発熱等]。

2.肝臓[黄疸、血清トランスアミナーゼの上昇等]。
3.消化器[悪心・嘔吐、下痢等]。
4.皮膚[脱毛等]。
5.その他[抗甲状腺作用]

1.血液[白血球減少、出血傾向、血小板減少]
2.過敏症[発疹]
3.消化器[食欲不振、悪心、胃痛、腹痛、下痢、胃部不快感、口内炎、嘔吐、軟便、腹部不快感、口渇]

4.精神神経系[眠気、頭痛、ふらつき感]

5.その他[発熱、胸部灼熱感]

剤の添付文書によれば、warfarin potassiumとbucolomeは「併用注意」となっているが、併用注意は処方医がその薬剤を使用する際に漫然と使用しないよう注意を喚起する目的の注意事項であり、注意事項に基づいて両剤を併用することに問題はない。

しかし、両剤の添付文書に記載されている『承認適応症』を見る限りwarfarin potassiumの副作用防止あるいは作用増強目的でのbucolomeの使用は認められていない。

なお、warfarin potassiumとbucolomeの併用例について、次の報告がされている。

warfarin potassiumとbucolomeの併用療法について、bucolomeのwarfarinに及ぼす効果は、両者の蛋白結合における相互作用にあり、in vitroの実験で

1)bucolomeが蛋白と結合している状態にwarfarinを添加すると、warfarinの蛋白結合が著しく阻害される。

2)蛋白と結合しているwarfarinは、bucolomeの添加によって遊離し、蛋白結合の置換(displacement)が行われる。

ことが示されている

臨床上投与法として注意すべきことは、warfarin potassium数mgで予め維持されている場合でも、まずwarfarin potassium 1mg、bucolome 300mgから開始することで、warfarin potassiumの減量なく、bucolomeの添加は出血傾向ををほぼ必発する。

bucolomeの副作用は殆ど経験していない。また、本併用療法のT.T.O値の安定には2?3カ月を要することが多く、以後の安定性は非常によいと考える。

更にwarfarin potassiumとbucolomeの併用療法について、抗凝固療法として人工弁置換後の症例に最初から使用するのではなく、まずwarfarin potassiumのみを単独投与し、1日量で5?6mgまで増量してもその治療域で維持できないと判断された場合やwarfarin potassiumで術後コントロールされながらその遠隔期でwarfarin potassium単独では治療域に維持できなくなった場合に初めて実施される。

この際、外来受診の症例では、必ずwarfarin potassiumは1mgに減量し、bucolomeは300mgを併用する。warfarin potassiumを減量しないでbucolomeを加えると必ず3?4日後に出血症状をきたす。

入院中の場合は、warfarin potassiumは3mg程度まで減量し、bucolome 300mgを併用しながらT.T.Oを確実測定すれば、その抗凝固能は速やかに得られる。引き続きwarfarin potassiumを適切に微調整して維持量を決定する。

以上の調査結果からwarfarin potassium・bucolomeの併用療法は、承認適応外使用であり、この療法に使用された薬剤の保険請求は承認されない。

また、経口投与されるwarfarin potassiumは、腸内細菌叢によるビタミンKの生成、飲食物中のビタミンK等の外部要因により効果の安定確保が難しい薬剤であること。血漿アルブミンとの結合率が高く、血漿アルブミンが減少している患者では、遊離の薬物血中濃度が高くなる可能性があること、あるいは他の蛋白結合率の高い薬剤が併用された場合の影響、適応外使用によるbucolomeによる副作用の発現等を考えた場合、特殊な用例の処方せんは、院内対応とすべきであると判断する。

従って、処方発行医療機関の薬剤部あるいは薬局と協議し、院内対応とするよう申し入れることが必要であると考える。

[035.4WAR:2000.5.16.古泉秀夫]


  1. ワルファリン錠添付文書,1999.4.改訂
  2. パラミジンカプセル添付文書,1999.3.改訂
  3. 高久史麿・他監修:治療薬マニュアル;医学書院,2000
  4. グレラン製薬株式会社学術課・私信,2000.5.15.
  5. 坂下 勲・他:Starr-Edwardsボール弁 第3編の1 僧帽弁置換症例と抗凝固療法;日本胸部外科学雑誌,25(11):1395-1402(1977)
  6. 坂下 勲:抗凝固療法としてのwarfarin・paramidinの併用-人工弁置換症例を中心として-;グレラン製薬,No.1615:7-8