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ローヤルゼリー摂取による血圧上昇

火曜日, 8月 14th, 2007

KW:健康食品・ローヤルゼリー・ロイヤルゼリー・royljelly・副作用・血圧上昇・王乳・オウニュウ・蜂乳・ホウニュウ・王奬・オウショウ・乳奬・ニュウショウ・デセン酸・ビオプテリン・アピラック・Apilacum・インスリン作用物質

Q:ローヤルゼリー喫食中の患者の血圧が上昇したが、ローヤルゼリー中にそのような成分は含まれているか。

A:royljellyについて、次の報告がされている。

royljellyは、日本では王乳(オウニュウ)、中国では蜂乳(ホウニュウ)とも呼ばれ、蛋白質、炭水化物、脂肪酸(デセン酸等)、必須アミノ酸、ビタミン、ミネラル等を含んでおり、躰に活力を与える。

  • 蜂乳(ホウニュウ)
  • 異名:王奬(オウショウ)、乳奬(ニュウショウ)
  • 基原:ミツバチ科の昆虫、中華蜜蜂(チュウカミツホウ)等の働き蜂の唾液腺が分泌する乳白色の膠状物質と蜂蜜で製造した液体。
  • 成分:女王蜂の幼虫の特殊な食物であるroyljellyは平均して
水分 66%  
無機質 0.82% カリウム、マグネシウム、カルシウム、銅、鉄、リン
蛋白質 12.34% アルブミン、β-グロブリン、γ-グロブリン、不溶性蛋白質
脂肪 5.46% 特殊な脂肪酸のω-ヒドロキシ-Δ2-デセン酸があり、含有量はかなり高い。

油脂類:ステアリン酸グリセリンエステル、リン脂。

還元性物質総量 12.49%  
未知物質 2.84%  

を含み、この組成は幼虫の成長によって異なる。

royljellyは5種類の糖を含むがそのうち4種類は果糖、ブドウ糖、ショ糖及びリボースである。royljellyには豊富なビタミンが含まれているが、このうちB1の含有量が安定しており、その他のビタミンB群は日によって変動がかなり大きい。一説ではB1、B2は貯蔵時に次第に減少し、その他のビタミンB群含有量は一定であるとされている。

幼虫が発育して72時間すると微量のビタミンAが含まれる。royljellyは遊離及び結合したビオチン、豊富なパントテン酸、葉酸、イノシトールをも含む。又、アセチルコリン類似物質である

[1]2-アミノ-4-ヒドロキシ-6(L-エリトロ-1,2-ジヒドロキシプロピル)-プテリジン=ビオプテリン

[2]アデニンヌクレオチド類似物質

の2種類を見いだしたものもある。

イタリア蜂のroyljellyは、アルギニン、アスパラギン酸、グルタミン酸、リジン、プロリン、β-アラニン等14種のアミノ酸を含み、リジン、プロリン、β-アラニンの3種の含有量が最も多い。また、royljellyはFAD(フラビン-アデニン-ジヌクレオチド)、FMN(フラビン-モノヌクレオチド)、ビタミンB2及びキヌレニンを含み、キヌレニンの含有量は172.21mg/g迄に達する。又、アセチルコリンも含む。

  • biopterin:自然界に広く存在するプテリジン誘導体。ある種の昆虫の成長因子であるほか、ヒト尿からも単離される。ピラゾール環部位が還元されたテトラヒドロビオプテリンは、フェニルアラニン、トリプトファン、チロシン等の芳香環の水酸化反応において、電子供与体になる。この反応において生成するp-キノイドジヒドロビオプテリンは、N-ADPH存在下、ジヒドロビオプテリンレダクターゼの作用により、テトラヒドロビオプテリンに再生される。
  • kynurenine:無色板状晶、トリプトファンの中間代謝産物。3-ヒドロキシキヌレニンは昆虫の眼の色素オンモクロームの前駆体であるほか、その抱合体は哺乳動物の尿中に見られる。

薬理

  1. 生体の抵抗力を強化し、成長を促進する作用。本品には細胞の再生作用があるが、主に新生細胞が老衰細胞変換し、組織呼吸、酸素消費量を増加させ、代謝を促進させる。しかし、少量投与では成長を促進させるが、大量投与では成長を抑制するとする報告。
  2. .内分泌への影響:中国国外の報告によると胸腺を萎縮させ、副腎皮質刺激ホルモン様作用があるとされる。中国の研究では、この作用を否定するが、副腎中のビタミン含有量は増加する(特に還元性ビタミン)ため、組織酸化現象が強まる。又、幼若ラットの甲状腺重量が増し、結晶及び甲状腺中の蛋白結合ヨードも著しく増加し、かつメチルチオウラシルが抑制する甲状腺のヨード吸収能力も高まる。性腺刺激ホルモン様物質が含まれ、21日でマウスの卵胞を早熟化させるの報告。
  3. 循環器系に対する影響:本品には2種のアセチルコリン様物質が含まれており、ネコ・イヌに静脈注射すると血圧の急激な下降を惹起し、降圧曲線はアセチルコリンと類似し、1mgの本品の降圧作用は1μgのアセチルコリンに相当する。この作用はアトロピンで拮抗されるが、フィゾスチグミンによって強まり、血清コリンエステラーゼはこれを破壊し、アドレナリン及びエフェドリンの昇圧作用に対しては影響がない。1日5mg/kgの本品を連続2週間皮下注射しても腎臓型高血圧のイヌには降圧作用がない。本品の製剤(アピラック: Apilacum)は、慢性冠脈機能不全の患者に使用されるとする報告が見られる。
  4. 造血器官への影響:本品はマウスの6-メルカプトプリンによる死亡率を低下させ、延命効果があり、かつ骨髄抑制作用を軽減する。血中鉄分含有量を著しく増加させる。これは鉄の運搬を刺激することによって起こる。
  5. 血糖に対する影響:本品は正常ラット・マウス及びアロキサン糖尿病のラットの血糖を低下させる他、アドレナリンの正常なマウスに対する血糖上昇作用に部分的に拮抗する。
  6. 抗癌作用:本品のエーテル可溶部分のω-ヒドロキシ-Δ2-デセン酸は、AKR白血病、6C3HEDリンパ癌、TA3乳腺癌及び多種のエールリッヒ腹水癌等の癌細胞成長を強烈に抑制する作用がある。
  7. 抗菌作用:ω-ヒドロキシ-Δ2-デセン酸には抗菌作用があるの報告。
  8. その他の作用:鎮痛作用、摘出腸の収縮作用(アトロピンが拮抗)、摘出子宮収縮作用。
  • 毒性:本品はマウス、ウサギ、イヌ、ネコに対し毒性を持たない。しかし大量のビタミンとホルモンを含むので、過量では中毒を招くことがある。マウス、モルモットにアレルギー反応が起こることがあるが、100℃で15分間、3回加熱すると、そのアレルギー作用は消失する。
  • 薬効:病後の衰弱、小児の栄養不良、老人の衰弱、伝染性肝炎、高血圧病、リウマチ性関節炎、十二指腸潰瘍。
  • 副作用:好酸球増多、洞性不整脈、皮疹、下痢。一過性の口渇、頭痛、大便乾燥等が報告されている。

その他の報告として、royljellyは、間脳の老化を防止し、自律神経中枢の調整作用もあることから、更年期障害をはじめとする不定愁訴に有用ではないかとする報告も見られる。

又、royljellyにインスリン作用物質を見いだし、10-ハイドロキシデセン酸が相当することが明らかにされている。更に生体内昇圧物質であるアンギオテンシンII生成抑制作用のあることが見いだされている。

以上の報告からroyljelly の喫食が、血圧上昇に直接影響するとは考えられないが、他に該当する理由がないとすれば、1日の喫食量等の問題を検討するとともに、患者の状態によっては、一時喫食を中断し血圧の変動を見る等の対応が必要となる可能性も考えられる。

[065.ROY:2000.5.15.古泉秀夫・2005.5.27.改訂]


  1. ローゼリーゴールド内服液添付文書:中外製薬,ABG207
  2. 上海科学技術出版社・編:中薬大辞典 第4巻;小学館,1985
  3. 薬科学大辞典 第2版:廣川書店,1990
  4. 最新医学大辞典 第2版:医歯薬出版株式会社,1996
  5. 奥田拓道:健康・栄養食品事典;東洋医学舎,2000-2001