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レプチンについて

火曜日, 8月 14th, 2007

KW:薬名検索・レプチン・leptin・leptin受容体・ホルモン・成熟脂肪組織・食欲調節・抗肥満薬・代謝調節因子

Q:レプチンとは何か 

A:1994年Friedmanらによりob/ob*マウスの病因遺伝子であるobese geneのcDNAが単離同定された。

この遺伝子産物はギリシャ語の痩せを意味する“leptos”にちなみ、『leptin(レプチン)』と命名された。

leptinは主として成熟脂肪組織から分泌されるホルモンであり、末梢の脂肪貯蔵量を視床下部に伝達し、視床下部の摂食・代謝調節因子をコントロールし、体重を一定に保つ働きを有していると考えられている。

1995年にはdb/db*マウスの病因遺伝子であるdiabetes geneも同定単離され、diabetes geneは、leptin受容体をコードしていることが明らかとなった。

[*ob=obesity(肥満)、db=diabetes(糖尿病)]

このleptin・leptin受容体の発見を契機に、食欲調節の分子メカニズムに関する研究が急速に進展し、肥満の成因から治療に至る展望が開け てきた。leptinによって制御される摂食・代謝調節因子は、抗肥満薬とし重要である。

ob/ob*マウスにleptinを投与すると体重が減少する。その機序には、視床下部を介した食欲抑制と交感神経を介したエネルギー消費亢進の両作用、更には脂肪組織への直接脂肪分解作用によることが知られている。

既にleptin値が高い肥満動物へ、更に高濃度のleptinを投与すると、食事量はコントロール群と同じであるにもかかわらず、体脂肪組織含量が減少する。この結果はleptinの髄液移行が低下している肥満患者でも、leptinが脂肪組織に直接作用することで、脂肪分解を誘発し、体重を減少させたと解釈できるとされている。

その他、最近の報告としてleptinは成熟脂肪組織から分泌されるホルモンで、視床下部に存在するleptin受容体に作用することによって強力な飽食シグナルを伝達する。

このシグナルと同時に、leptinは交感神経活性化を介するエネルギー消費を促し、体重調節機構において重要な役割を果たしている。

更にleptinは栄養状態を感知し、摂食促進分子(神経ペプチドY、アグチ関連ペプチド、melanin-concentrating hormone、オレキシン等)と摂食抑制分子(α-メラニン細胞刺激ホルモン、cocaine and amphetamine-regulated transcript等)に作用することによって、体重を調節している。

これらのことから『leptinは摂食量やエネルギー収支を調節する脳部位である視床下部、特に弓状核において栄養状態を探知する伝達物質として考えられている』とする報告が見られる。

また、レプチン(leptin)とは、ヒト体内の脂肪組織、胃、胎盤で合成される146アミノ酸よりなるホルモン/サイトカインである。強力な摂食抑制とエネルギー消費増加作用(体温上昇、運動量や酸素消費量の増加、交感神経活動の亢進など)を有することからギリシャ語で「痩せる」を意味する leptosに由来して命名された。

脂肪滴を豊富に有する成熟脂肪組織より分泌されたレプチンは、視床下部に存在する受容体に結合し、その作用を発現する。種々の遺伝性や後天的肥満モデル動物及びヒト肥満者でレプチン遺伝子発現は亢進している。血中レプチン濃度も上昇しており、体格指数(BMI)や体脂肪率と正の相関を示すの報告がされている。

また、肥満の原因の一つに食欲コントロールの異常があげられる。レプチン遺伝子(ob遺伝子)は、遺伝性肥満マウス(obマウス)の病因遺伝子として発見された脂肪組織に、特異的に発現する遺伝子である。

この遺伝子産物レプチンが、主に視床下部に存在するレプチン受容体を介して食欲制御を行っていると考えられるが、obマウスでは正常に機能するレプチンが作られないため「もう食べなくて良い」という指令が中枢に伝達されず、その結果 過食と肥満が持続する。ヒトでも稀であるがレプチンやレプチン受容体遺伝子異常に起因する肥満が報告されている。

更に、従来は単なるエネルギー貯蔵庫として代謝的に不活発と考えられてきた脂肪組織で、生合成・分泌され、飽食因子として主に視床下部のレプチン受容体に作用することにより、強力に摂食を抑制し、エネルギー消費量を増大させることが明らかにされた。

レプチンは末梢の栄養状態のセンサーとしてその情報を中枢に直接伝達し、体脂肪量を一定に保つフィードバックグループを形成している大変ユニークな分子である等の報告がされている。

[011.1.LEP:2003.11.4.古泉秀夫・2004.5.18.・2005.9.30.修正]


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