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ルンブロキナーゼとは何か

火曜日, 8月 14th, 2007

Q:『龍心』中に配合されているルンブロキナーゼとは何かの質問を受けたが、これはどの様な物質か

A:『龍心』[自然の館 福岡市博多区奈良屋町9-5 TEL.092-262-7138/FAX.092-262-7139]はルンブロキナーゼ・田七人参・ローヤルゼリー・馬鈴薯澱粉・乳糖・ゼラチンを原材料とする食品とされている。

ルンブロキナーゼ(lumbrokinase)については、血栓予防のため線溶酵素の研究を行ってきた宮崎医科大学第二生理学教室の美原 亘らが、古来中国で『地竜』の名称で漢方薬として使用されていたミミズの内臓部分から血栓を溶解する特殊な酵素を発見、1983年にストックホルムで開かれた国際血栓止血学会で、動物性蛋白質『ルンブリクス・ルベルスに含まれるルンブロキナーゼ』として発表したとしている。

『龍心』は健康食品であるため、薬効は標榜できないため、食効として「糖尿病・高血圧症・低血圧症・心筋梗塞・脳血栓・狭心症・肝臓障害・白内障・緑内障・静脈瘤・神経瘤・リューマチ・壊疽・更年期障害・生理痛・生理不順・前立腺肥大・関節痛・筋肉痛・肩こり・脳血管性痴呆症・床ずれ・白蝋病・スポーツ疲労回復」等を挙げているが、厳密な臨床治験の結果、確定した適応ではないため、標榜する適応の全てに蓋然性があるかは疑問である。

漢方薬の異名として『地竜・土竜・地竜子』等と呼称されるのは漢方名『キュウイン(蚯蚓)』と呼ばれるものである。

基原

フトミミズ科の動物、参環毛蚓[ジンカンモウイン:Pheretima aspergillum(E.Perrier)]あるいはツリミミズ科の動物、背暗異唇蚓[ハイアンイシンイン(和名:カショクツリミミズ):Allolobophora caliginosatrapezoides(Ant.Duges)]等の全体。

成分

各種の蚯蚓には、ルンブリフェブリン、ルンブリチン、テレストロ-ルンブリリジンが含まれている。広地竜はヒポキサンチン等を含む。

蚯蚓には含窒素化合物としてアラニン、バリン、ロイシン、フェニルアラニン、チロシン、リジン等のアミノ酸及びキサンチン、アデニン、グアニン、コリン、グアニジン等が含まれる。

蚯蚓(Lumbricus spencer)の脂肪類中にはステアリン酸、パルミチン酸、高度不飽和脂肪酸、奇数個の炭素原子よりなる直鎖脂肪酸及び分鎖脂肪酸、リン脂質、コレステロール等を含む。

蚯蚓(Lumbricus terrestris)の黄細胞組織には炭水化物、脂肪類、蛋白質及び色素を含み、塩基性アミノ酸としてヒスチジン、アルギニン、リジンを含有する。この黄色素はおそらくリボフラビンかそれに類似した物質である。蚯蚓はある種の酵素を含み、pH:8.0?8.2で蚯蚓を溶解させる。

薬理

  1. 降圧作用:広地竜チンキ剤、乾粉懸濁液、熱浸液、煎剤などは、各種動物に対し緩慢だが持続的な降圧作用を示す。地竜を静注した後の降圧作用は、急速な耐性現象を示すが、経口服用及び臨床応用では見られていない。降圧作用の原理は、脊髄から上の中枢神経系に直接作用するか、またはある種の内受容器を通し反射的に中枢に影響を与え、部分的に内臓血管を拡張させ血圧を下降すると考えられている。ヒポキサンチン除去地竜B は腎性高血圧の動物実験で顕著な降圧作用があるとされている。
  2. 平滑筋に対する作用:広地竜から抽出した含窒素性有効成分は、動物において顕著な気管支拡張作用を示す。ヒスタミン噴霧による喘息発作似たいし、保護作用が見られた。広地竜から抽出した吸湿性で淡黄色の針状結晶は摘出及び在位の子宮の緊張を増大させ、痙攣性収縮を起こす。また子宮瘻管の収縮波が明らかに増大する。更に動物の在位腸管に強烈な興奮を起こす。国内における検討では、地竜浸出液の直接作用は血管収縮であり、中枢作用は血管拡張であるとされている。
  3. 解熱作用:蚯蚓水浸剤及び蚯蚓解熱性塩基は、大腸菌毒素や熱穿刺によって起こした人工発熱に対し、共に良好な解熱作用がある。蚯蚓の解熱原理は体温中枢に作用し、続いて散熱を増大させる。これと同時に体内発熱も増加するが、散熱が体内発熱を凌駕するため体温は下降すると報告されている。
  4. 鎮静・抗痙攣作用:熱浸液、アルコール抽出溶液は、動物に対し鎮静作用がある。広地竜、皖地竜(カンヂリュウ)、地竜の内臓と表皮の抗痙攣作用の強度に差はない。地竜浸出液を注射すると血清中のカルシウム量は低下するが、血清カリウムとコリンエステラーゼの含有量には顕著な変化はない等の報告がされている。

以上の報告は蚯蚓全体を用いた場合の報告であり、lumbrokinaseに関する報告ではないが、参照として紹介する。

『龍心』の喫食に際しては、現に受診治療中の患者の場合、主治医と相談することが必要である。

なお、本品の喫食に際し、次の点に注意することが必要である。

  1. 本品源材料中にゼラチンが含まれているため、ゼラチンに過敏症の既往のある者では喫食してはならない。
  2. 抗血栓剤(alteplase、batroxobin、monteplase、nasaruplase、nateplase、thrombolyse、tisokinase、urokinase)、血小板凝集抑制剤(cilostazol、dalteparin sodium、heparin calcium、heparin sodium、limaprost alfadex、

    parnaparin sodium、sarpogrelate hydrochloride、sodium ozagrel、ticlopidine

    hydrochloride)、aspirin等の服用患者では、服用薬剤の作用増強の可能性があるため、本品の喫食は回避すべきである。

[011.1LUM:2000.7.6.古泉秀夫]


  1. 自然の館資料,www.sizen.co.jp/ryusinq & a.html,2000.7.5.現在
  2. 上海科学技術出版社・編:中薬大辞典;小学館,1998
  3. 高久史麿・他監修:治療薬マニュアル;医学書院,2000