KW:副作用・ポカリスエット・Pocari Sweat・スポーツ飲料・虫歯・齲歯・dental caries・ポカリカリエス・pocari caries・ボトルカリエス・bottle caries・乳瓶齲歯・甘味料・糖アルコール・カルシウム補給食品・カルシウム強化食品
Q:重心の患児(者)の水分補給に、ポカ リスエットが飲み易いということで、ここ数年飲ませる事が増えていたらしいのですが、骨が脆くなる人、虫歯が増えた等の悪影響が見られ始めています。それ 以外の看護面での変更はしていません。
ポカリスエット内の糖類に問題が有るのではないかと考えています。運動後の糖類・水分補給には適している飲み物かも しれませんが、殆ど自発的に動く事の出来ない重心(重症心身障害者)にとっては、マイナスではないでしょうか?。
通常の食事をしている患者で、ポカリス エットを好んでいる患者に上記問題がみられます。その他、経管栄養では、濃厚流動食をソリタ顆粒と微温湯で薄めて投与しているのですが、そちらでの問題点 は未だ見られません。
患者は、甘いものを好む傾向に有り、一度味を覚えると、なかなか元には戻りません。ポカリスエットの身体に及ぼす影響とか、寝たきり 状態の重心患者に有効な、骨塩減少防止となる水分補給商品又はカルシウム補強食品など御存知であれば御教え下さい。
A:ポカリスエット(Pocari Sweat)等のスポーツ飲料を2年間に渡って朝・寝る前に飲用していた者で虫歯が18本発生した。
これは歯科医師の間でポカリカリエス(Pocari Caries)と呼ばれているもので、ポカリスエットと虫歯のカリエスを結合した造語である。ポカリカリエスは乳児に哺乳瓶でポカリスエットを飲ませた り、摂取障害を伴う障害児にポカリスエットを飲ませた場合、多数歯にカリエスが発生する。
スポーツ飲料は正しい摂取の場合、問題はないが、pH3.5という酸性度 や砂糖がかなり含まれていることを考えると、寝る前に飲むことや乳幼児に哺乳瓶で与えることは回避すべきである。寝る前に飲んだ場合には、再度歯磨きを行 うべきである。
その他、ボトルカリエス(Bottle Caries:哺乳瓶齲歯)としてポカリスエット等のスポーツ飲料を乳幼児に哺乳瓶で飲ませた場合、齲歯が見られ、特に前歯への影響が大きいとする報告が されている。
齲歯症(虫歯:Dental Caries)
歯のエナメル質、象牙質、セメント質が冒される病気である。表面のエナメル質が冒されたものはエナメル質齲歯といい、歯科検診でC1と いわれるものである。エナメル質が崩壊すると象牙質の齲歯が始まり(C2)、更に進行すると歯髄炎や歯根膜炎に進行する。
- 原因:歯に附着した食物残渣(糖分・澱粉類)が、口中の細菌(齲歯 原性細菌:Streptococcus mutans等)によって醗酵分解されて『酸』が発生し、それが歯のカルシウムを溶かす(脱灰=だつかい)ことから始まる。エナメル質はその殆どが無機質 から出来ているため齲歯は、脱灰によって柔らかくなった部位が他の細菌によって冒され、進行は一層早くなり、歯に穴が空くようになる。
- 齲歯の起こりやすい歯:乳歯では上顎の前歯と上下の臼歯、永久歯では上下 の大臼歯と上顎の前歯である。
次にポカリスエット及びポカリスエットステビアの組成を示す。
商品名 |
Pocari Sweat |
Pocari Sweat Stevia |
原材料 |
砂糖、ブドウ糖果糖液糖、果汁、食塩、酸味料、塩化カリウム、乳酸カルシウム、調味料(アミノ 酸)、香料、塩化マグネシウム、酸化防止剤(ビタミンC) |
果糖、果汁、砂糖、食塩、オリゴ糖、酸味料、塩化カリウム、乳酸カルシウム、調味料(アミノ 酸)、塩化マグネシウム、甘味料(スクラロース・ステビア)、香料、酸化防止剤(ビタミンC) |
エネルギー |
27kcal/100mL |
11kcal/100mL |
蛋白質・脂質 |
0g/100mL |
0g/100mL |
炭水化物 |
6.7g/100mL |
2.7g/100mL(糖質) |
ナトリウム |
49mg/100mL |
49mg/100mL |
カルシウム |
2mg/100mL |
2mg/100mL |
カリウム |
20mg/100mL |
20mg/100mL |
マグネシウム |
0.6mg/100mL |
0.6mg/100mL |
Na+ |
21mEq/L |
21mEq/L |
K+ |
5mEq/L |
5mEq/L |
Ca2+ |
1mEq/L |
1mEq/L |
Mg2+ |
0.5mEq/L |
0.5mEq/L |
Cl? |
16.5mEq/L |
16.5mEq/L |
citrate3? |
10mEq/L |
10mEq/L |
lactate? |
1 mEq/L |
1 mEq/L |
その他、Pocari Sweat・Pocari Sweat Steviaの糖含有量について、次の報告がされている。
商品名 |
Pocari Sweat |
Pocari Sweat Stevia |
糖分量 |
6g |
1.4g |
上表に見られるとおり両製品とも相当量の糖分を含んでいる。従って、飲用 後に歯をよく磨き、口中を清潔に保つことが行われなければ、齲歯が発生する。特に夕食後、就寝前の飲用時には注意が必要である。
糖のうち齲歯の発生に影響しないものとして、次のものが報告されている。
糖アルコールは砂糖代替甘味料であり、インスリンの誘発性が無く、カロリー の低減、食品の保湿目的で多くの食品に使用されているが、同時に糖アルコールの齲歯を起こさない性質を利用して齲歯になりにくい食品の主な甘味料として使用されている。
|
|
糖類 |
炭素数 |
有効エネルギー |
甘味度
(固形分基準) |
糖アルコール |
単糖アルコール |
エリスリトール |
4 |
0 |
0.70-0.80 |
キシリトール |
5 |
3kcal/g |
1.0 |
ソルビトール |
6 |
3kcal/g |
0.6-0.7 |
マンニトール |
6 |
2kcal/g |
0.7 |
二糖アルコール |
マルチトール |
? |
2kcal/g |
0.75-0.80 |
ラクチトール |
? |
2kcal/g |
0.30-0.40 |
パラチニット |
? |
2kcal/g |
0.45 |
|
二糖類 |
パラチノース |
? |
4kcal/g |
0.45 |
高甘味度甘味料 |
人工
甘味料 |
アスパルテーム |
? |
4kcal/g |
180 |
非糖質
甘味料 |
ステビオサド |
? |
0 |
100-180 |
次にカルシウムの補給について、検討した結果を以下に報告する。
第6次改訂日本人栄養所要量-食事摂取基準に示されているカルシウム (Ca)の摂取基準は以下の通りである。
許容上限摂取量 |
男子所要量 |
年齢(歳) |
女子所要量 |
許容上限摂取量 |
? |
200mg |
0?(月) |
200mg |
? |
? |
500mg |
6?(月) |
500mg |
? |
? |
500mg |
1?2 |
500mg |
? |
? |
500mg |
3?5 |
500mg |
? |
? |
600mg |
6?8 |
600mg |
? |
? |
700mg |
9?11 |
700mg |
? |
? |
900mg |
12?14 |
700mg |
? |
? |
800mg |
15?17 |
700mg |
? |
2,500mg |
700mg |
18?29 |
600mg |
2,500mg |
2,500mg |
600mg |
30?49 |
600mg |
2,500mg |
2,500mg |
600mg |
50?69 |
600mg |
2,500mg |
? |
600mg |
70以上 |
600mg |
? |
? |
|
妊婦 |
+300mg |
2,500mg |
? |
|
授乳婦 |
+500mg |
2,500mg |
人体内の所在 |
成人体内に約1kg含まれ、99%はリン酸塩・炭酸塩として骨・歯の成分となっている。
残りは血 液・筋肉・神経などの組織にイオン、種々の塩として含まれる。 |
生理作用 |
*骨・歯などの硬組織を作る。
*細胞の情報伝導に関係
*心筋の収縮作用を増す。
*筋肉の興奮性を抑制する。
*刺激に対する神経の感受性を静める。
*トリプシンなどの酵素作用を活性化する。 |
欠乏症・過剰症 |
欠乏症
*充分に成長しない。
*骨・歯が弱くなる。
*神経過敏となる。
*ビタミンDが不足するとカルシウムの吸収・利用が悪くなり、欠乏症状を 起こしやすい。
*骨にかかる負荷が低すぎる場合、所要量以上を摂取しても利用効率は低 い。
過剰症
*過剰に吸収されることは通常ない。
*ビタミンD過剰による過剰吸収では、高カルシウム血症になりやすい。 |
含有食品 |
小魚類、脱脂粉乳、牛乳、チーズ。
乳・乳製品に含まれるカルシウムは利用効率が高く、その他食品の約2倍。 乳・乳製品以外の食品のカルシウム利用率は、摂取量の20-30%程度。 |
カルシウムは食品によって、吸収率が異なるとされている。牛乳や乳製品で 約50%、小魚類で約30%、青菜が約18%である。牛乳からの吸収率が高いのは、牛乳に含まれる乳糖、リジン、アルギニン等のアミノ酸がカルシウムの吸 収を高めるからである。
更にカゼインが消化されるときに生じるカゼインホスホペプチド(caseinphosphopeptide;CPP)もカルシウム の吸収を促進する。CPPは工業的にも作られ、効率よくカルシウムを摂取するための補助剤として注目されている。酢やレモン、リンゴなどに含まれるクエン 酸もカルシウムの吸収率を高めるとされている。
この系統の特定保健用食品としてCCM(クエン酸リンゴ酸カルシウム;calcium citric-malic acid )が存在する。良質の蛋白質もカルシウムの吸収率を高めるが、過剰摂取の場合に逆に排泄量が増加するので注意する必要がある。
清涼飲料水に限定し、カルシウム吸収補助食品を紹介する。
カルシウムパーラー(宝酒造)CCM カルシウム含有量 75mg/100mL
こつこつカルシウム(アサヒ飲料)CPP カルシウム含有量約 71mg/100mL
配合されているその他の成分については調査していないため、使用されてい る糖分等も不明である。商品を選択する際には、詳細な検討を行った上で決定すること。
[065.POC:2003.8.17.古泉 秀夫]
- 成沢歯科クリニック;http: //www.narisawa.or.jp/sizu.html,2003.8.12.
- フレンド小児歯科;http: //www.denfriend.com/knowldg.htm,2003.8.12.
- 柳下徳雄・代表編:家庭の医学;株式会社小学館,2001
- 伊藤正男・他総編集:医学書院医学大辞典:医学書院,2003
- http: //www.otsuka.co.jp/product/pocarisweat/index.html,2003.8.12.
- http: //www.otsuka.co.jp/product/pocarisweat_s/index.html,2003.8.12.
- 松久保隆:エリスリトールの歯への影響と食品への応用;日本医事新報, No.3893(1998.12.5.)
- 古泉秀夫:健康食品Q&A;じほう,2003
- 香川芳子・監修:五訂 食品成分表;女子栄養大学出版部,2003
- 中村丁次・監修:からだに効く-栄養成分バイブル;主婦と生活社, 2001
- 澤 賀津子・他:サプリメント・ブック;日本文芸社,2003