油水分配係数について
月曜日, 8月 13th, 2007KW:語彙解釈・分配係数・n-オクタノール/水分配係数・水溶性薬物・脂溶性薬物・薬物代謝酵素
Q:添付文書中に見られる「有効成分に関する理化学的知見」の項に記載されている油水分配係数について
A:油水分配係数とは、『n-オクタノール/水分配係数』のことである。これは個々の薬物について、油に溶解する割合が多いか、水に溶解する割合が多いかを示した数値で、『油水分配係数が1より大きければ脂溶性薬物、1より小さければ水溶性薬物』に分類される。 通常、分配係数の対数(logP)で示されているが、『水溶性薬物はマイナスになり、脂溶性薬物はプラス』で表記され、その薬物の脂溶性が高いほど、大きな値になる。水溶性薬物はその殆どが腎排泄型薬物であり、脂溶性薬物は肝排泄型薬物である。
薬品名 | 分配係数 | logP | 油/水 |
---|---|---|---|
cimetidine(タガメット) | 1.5 | 0.17 | 脂溶性 |
ranitidine hydrochloride(ザンタック) | 0.03 | -1.52 | 水溶性 |
famotidine(ガスター) | 0.15 | -0.82 | 水溶性 |
nizatidine(アシノン) | 0.70 | -0.15 | 水溶性 |
roxatidine acetate hydrochloride(アルタット) | 29.6* | 1.47* | 脂溶性 |
lafutidine(プロテカジン) | 2.48** | 0.39** | 脂溶性 |
*クロロホルム/緩衝液 **pH:6
脂溶性の薬物は肝臓で代謝され、血中から消失するが、水溶性の薬物は未変化体として腎臓から排泄され、消失する。脂溶性の薬物は薬物代謝酵素阻害や薬物代謝酵素誘導など、代謝に関係した相互作用が起き易いが、水溶性の薬物では薬物代謝酵素阻害や薬物代謝酵素誘導はあまり起きないとされている。
油水分配係数の相違を尿中未変化体排泄率(fu)で分類すると、脂溶性薬物は尿中未変化体排泄率(fu)が低い肝排泄型の薬物に、水溶性薬物は尿中未変化体排泄率(fu)が高い腎排泄型の薬物に相当する。
項目 | 脂溶性薬物 | 水溶性薬物 |
---|---|---|
胃腸管吸収 | 良い | 悪い |
初回通過効果 | 受け易い | 受け難い |
組織移行 | 良い | 悪い |
体外への消失 | 肝臓で代謝 | 腎臓から排泄 |
肝障害時血中濃度 | 上昇? | 変化無し |
肝障害時投与量 | 減量 | 不変 |
腎障害時血中濃度 | 変化無し | 上昇 |
腎障害時投与量 | 不変 | 減量 |
酵素誘導・阻害 | 影響大 | 影響少 |
透析による除去 | 否 | 可 |
中枢性副作用 | 頻度大 | 頻度少 |
[615.8.DIS:2005.1.25.古泉秀夫]
- 菅野 彊・編著:薬剤師のための添付文書の読み方;協和醗酵工業株式会社,2001
- 高久史麿・他監修:治療薬マニュアル;医学書院,2004
- 菅野 彊:薬物動態値からくすりの違いを比較し評価してみよう;都薬雑誌,22(5):38-41(2000)