輸血後肝炎の検査時期
月曜日, 8月 13th, 2007KW:副作用・輸血・輸血後肝炎・検査・血液製剤使用指針・輸血療法実施指針・急性型副作用・遅発型副作用
Q:日本赤十字社から入手した血液を輸血した際、輸血後肝炎の発症を確認するための検査の時期について
A:厚生省医薬安全局長から都道府県知事宛に発出された『血液製剤の使用指針及び輸血療法の実施に関する指針について』(医薬発第715号 平成11年6月10日)に『VIII.輸血に伴う副作用・合併症』として次の記載が見られる。
*輸血副作用・合併症には、免疫学的機序によるもの、感染性のもの及びその他の機序によるものとがあり、さらにそれぞれ発症の時期により即時型(あるは急性型)と遅発型とに分けられる。輸血開始時及び輸血中ばかりでなく輸血終了後にも、これらの副作用・合併症の発生の有無について必要な検査を行う等経過を観察することが望ましい。
*これらの副作用・合併症を認めた場合には、遅滞なく輸血部門あるいは輸血療法委員会に報告し、その原因を明らかにするように努め、類似の事態の再発を予防する対策を講じる。特に人為的過誤(患者の取り違い、転記ミス、検査ミス、検体採取ミスなど)による場合は,その発生原因及び講じられた予防対策を記録に残しておく。
- 急性型副作用: 輸血開始後数分から数時間以内に発症してくる急性型(あるいは即時型)の重篤な副作用としては、型不適合による血管内溶血、アナフィラキシ?ショック、細菌汚染血輸血によるエンドトキシンショック(菌血症)、播種性血管内凝固症候群、循環不全などがある。このような症状を認めた場合には、直ちに輸血を中止し、輸血セットを交換して生理食塩液又は細胞外液類似輸液剤の点滴に切り替える。
- 遅発型副作用:遅発型の副作用としては、輸血後数日経過して見られる血管外溶血や輸血後紫斑病などがある。
- 輸血後植片対宿主病:本症は輸血後7?14日頃に発熱、紅斑、下痢、肝機能障害及び汎血球減少症を伴って発症する。本症の予防には放射線照射血液の使用が有効である。
- 輸血後肝炎:本症は、早ければ輸血後2?3週間以内に発症するが、肝炎の臨床症状あるいは肝機能の異常所見を把握できなくても、肝炎ウイルスに感染している場合がある。特に供血者がウインドウ期にあることによる感染が問題となる。このような感染の有無を見るためには、輸血後最低3カ月間、できれば6カ月間程度、定期的に肝機能検査と肝炎ウイルス関連マーカーの検査を行う必要がある。
- ヒト免疫不全ウイルス感染: 後天性免疫不全症候群(エイズ)の起因ウイルス(HIV)感染では、感染後2?8週で、一部の感染者では抗体の出現に先んじて一過性の感冒様症状が現われることがあるが、多くは無症状に経過して、以後年余にわたり無症候性に経過する。特に供血者がウインドウ期にある場合の感染が問題となる。感染の有無を確認するためには、輸血後2?3ヶ月以降に抗体検査等を行う必要がある。
- その他:輸血によるヒトTリンパ球向性ウイルスI型(HTLV-I)などの感染の有無や免疫抗体産生の有無などについても、問診や必要に応じた検査により追跡することが望ましい。
- その他、我が国では従来、『厚生省吉利班あるいは日本輸血学会の診断基準に基づき、輸血後引き続き2回以上GPT 100単位を超えるものを肝炎とした例が多いが、外国における報告では、輸血2週以後の引き続く2回以上の検査でGPTが正常の2倍あるいは2.5倍以上を示す場合』としたものが多く、いずれの場合も他の肝障害をきたす原因は全て除かれることが条件であるとする報告がされている。
『血液製剤の使用指針及び輸血療法の実施に関する指針』では、輸血後肝炎は速ければ『輸血後2-3週間以内に発症』とされていることから他家血輸血の場合、輸血2週経過後により肝機能検査を実施し、更に3-6カ月にわたって『肝炎ウイルス関連マーカーの検査を行う』ことが必要ではないかと考えるが、実施の最終的な判断は『主治医の判断』による。
[065.BLO:2003.8.26.古泉秀夫]
- 関口定美:輸血後肝炎の発症頻度;日本医事新報,No.3200,1985.8.24.