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メシマコブについて

月曜日, 8月 13th, 2007

Q:健康食品として取り扱われているメシマコブとはどの様なものか

A:「メシマコブ」は学名Phellinus linteus(Berk.et Curt)Aoshimaとされるタバコウロコタケ科キコブタケ属の担子菌類である。

学名中のAoshimaは発見者の青島清夫氏の名前に因むとされている。

桑の古木に寄生し、こぶ状から次第に扇状に育ち、傘の直径は8?12cm、最大で30cm程度になるとされている。

傘の裏側が黄色を示すことから漢方薬として『本草綱目』に収載されている「桑黄(ソウオウ)」がこれに相当するのではないかとされている。和名「メシマコブ」の由来は、長崎県男女群島の女島(メシマ)に多くの野生株が見られることによるとされる。

但し、『桑黄』については、

  • 別名:桑臣(ソウシン)、桑耳(ソウジ)、胡孫眼(コソンガン)。
  • サルノコシカケ科の植物、針層孔(シンソウコウ)の子実体。
  • 原植物:Phellinus igniarius(L.ex Fr.)Ouel.菌蓋は木質、扁平な半球形あるいは馬蹄形、浅肝褐色ないし暗灰色あるいは黒色。カワヤナギ、ヤナギ、シラカバ、クヌギなどの樹幹に生える。分布は中国東北、華北、西北及び四川、雲南等。
  • 成分:アガリシン酸(粗製品名:アガリシン)を約4%(菌糸体はアガリシン酸を含まない)、脂肪酸(主なものは C22・C24の飽和脂肪酸)、C23・C25の飽和炭化水素、アミノ酸(主要なものはグリシン、アスパラギン酸)、蓚酸、トリテルペン酸、芳香族酸、エルゴステロール及びキシローズ酸化酵素、カタラーゼ、ウレアーゼ、エステラーゼ、スクラーゼ、マルターゼ、ラクターゼ、セルラーゼ等多種の酵素を含む。
  • 薬理:アガリシン酸には汗腺の分泌を抑制する作用があり、海外ではかって盗汗(寝汗)の治療に使用された。数時間以内に作用が発現し、24時間持続する。投与量は30mg/回あるいは100mg/日を超過してはならない。
    通常、連続して1?5日間用いる必要があり、比較的良い治療効果が見られ、甚だしい副作用はない。唾液腺の分泌を抑制しない。局部に対して刺激性があり、大量に経口服用すると嘔吐、下痢を惹起し、また皮下注射はできない。
    ジギタリス様の作用があり、低濃度で平滑筋を興奮させ、大量では抑制作用を起こす。中毒量は延髄の血管運動中枢・呼吸中枢をまず興奮させた後麻痺させる等の報告がされている。
  • 性味:味は甘辛、無毒。
  • 適応:血崩、血淋、脱肛瀉血、帯下(こしけ)、月経閉止を治す。

以上の報告を見る限りメシマコブと桑黄は、全く別種の茸である可能性が推定できる。

メシマコブの薬効に初めて注目したのは元国立ガンセンター研究所の池川哲郎氏と東京大学薬学部の柴田承二氏の研究グループである。

1968年に国立ガンセンター研究所で行われた実験でマウス癌サルコーマ180に対する担子菌類・食用菌類の熱水抽出物による癌増殖阻止率の検討の結果メシマコブは96.7%の阻止率を示し、茸類で最も高い癌増殖阻止率を示した。

和名 腫瘍阻止率(% )
アラゲカワラタケ 65.0
ウスバシハイタケ 45.5
エノキタケ 81.1
オオシロタケ 44.8
オオチリメンタケ 49.2
カイガラタケ 23.9
カワラタケ 77.5
カンタケ 72.3
キクラゲ 42.6
コフキサルノコシカケ 64.9
シイタケ 80.7
チャカイガラタケ 70.2
ナメコ 86.5
ヒラタケ 75.3
ベッコウタケ 44.2
マツタケ 91.8
メシマコブ 96.7

メシマコブはその栽培・培養が困難であったため、簡単に入手することができなかったが、韓国の(株)韓国新薬と韓国科学技術省の共同研究により栽培に成功。メシマコブに少量含まれる抗ガン成分を有効量にまで高める培養法を確立した。

メシマコブの菌株中から最も強力で人体に無害な抗ガン免疫増強効果を発揮する画期的な物質としてメシマPL2・PL5の存在を確認。更にメシマコブ培養菌糸体の熱水抽出物から制ガン免疫賦活剤「Mesima」を開発した。

  • 作用機序:茸の多糖体を用いた癌治療用薬としてクレスチン(カワラタケ)、レンチナン(シイタケ)が既に実用化されているが、植物由来の抗腫瘍性多糖体に共通している特徴は癌細胞に直接作用する細胞毒ではなく、人が本来持っている免疫機能を活性化させる作用を示すということである。メシマコブには多種類の多糖類、核酸、脂肪酸、アミノ酸、酵素等が含まれている。現在までに解明されている作用機序は、マクロファージの活性を介し、T細胞を活性化し、インターロイキンを始め数種の免疫活性物質を放出することである。

メシマコブの培養菌糸体抽出物は、強力な抗腫瘍免疫増強作用を発揮し、免疫機能を担うリンパ球のB細胞やT細胞、 NK細胞等の働きを増大させ、サイトカイン産出を高める働きを示す。その結果、人体の免疫機能が高まり、抗ガン作用を発揮、癌に対しては予防効果が期待される他、化学療法剤との併用により副作用の発現を抑制する飲みでなく、抗ガン効果を増強する等の報告がされている。

[015.9MES.2000.4.7.古泉秀夫]


  1. 奥田拓道・監修:改訂新版 健康・栄養食品事典;東洋医学社,2000
  2. 上海科学技術出版・編:中薬大辞典 第3巻;小学館,1985
  3. 新しい免疫活性素材「メシマコブ」;健康産業流通新聞,1999.1.7.
  4. 山名征三:免疫アジュバント-メシマコブ多糖体の各種癌患者に対する使用経験;診療と新薬,27(6):1101-1106(1990)