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ブスコパン注の授乳婦への投与

月曜日, 8月 13th, 2007

KW:臨床薬理・母乳中移行・ブスコパン注射液・臭化ブチルスコポラミン・scopolamine butylbromide・臭化水素酸スコポラミン・scopolamine hydrobromide・ハイスコ注・ADME・血中濃度

Q:ブスコパン注の母乳中移行について

A:ブスコパン注射液(日本ベーリンガーインゲルハイム)の組成等は次の通り報告されている。

成分・含量 臭化ブチルスコポラミン(scopolamine butylbromide) 20mg
添加物 塩化ナトリウム 6mg

本剤の適用部位は『静脈内又は皮下、筋肉内注射』である。1回の使用量は10-20mg。

なお、本剤の添付文書中に『授乳婦への投与』に関する注意事項は記載されていない。

scopolamine butylbromideについて、血中濃度の資料については『該当する資料がない』とされており、半減期・体内排泄動態等のADME(吸収 absorption・分布distribution・代謝metabolism・排泄elimination)に関連する資料の報告は見られない。

但し、作用発現時間については、次の報告がされている。

作用発現時間 作用持続時間
内服 20-30分 2-6時間
皮下・筋注 8-10分 2-6時間
筋注(検査領域) 5-10分 40分
静注 3-5分 ?
外用 15-30分 2-6時間

なお、他のスコポラミン製剤である臭化水素酸スコポラミン(scopolamine hydrobromide)[ハイスコ注(杏林)]で、母乳中移行性及び乳児への影響について『授乳期の婦人にスコポラミンを投与しても、乳汁中へは殆ど移行しない。』とされている。また、米国・小児科学会の報告として、scopolamine hydrobromideについて、『*米・小児科学会見解:通常授乳婦へ投与し得る薬剤』とする意見が、『乳児臨床的影響:non data』とする資料が報告されている。

以上の報告から授乳婦に投与する場合、可能であればscopolamine hydrobromideを使用することが考えられるが、同じscopolamine製剤と考えれば、scopolamine butylbromideにおいても、同様の判断が可能と考えるが、授乳婦に対する単回投与の場合、上記作用持続時間内の授乳は回避し、注射後第1回目の授乳時の貯留乳を搾乳し廃棄することで特に問題はないのではないかと考える。

[015.4SCO:2006.6.26.古泉秀夫]


  1. ブスコパン注射液添付文書,2005.4.改訂
  2. 厚生省薬務局研究開発振興課・監修:JPDI;薬業時報社,1996
  3. Committee on Drugs.American Academy of Pediatrics,The transfer of drugs and chemicals into human breast milk,Pediatrics,72:375-383(1983)
  4. Committee on Drugs.American Academy of Pediatrics,The transfer of drugs and chemicals into human milk,Pediatrics,93(1):137-150(1994)