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フェノチアジン系薬剤と有機リン系殺虫剤の相互作用

月曜日, 8月 13th, 2007

KW:相互作用・フェノチアジン系薬剤・有機リン系殺虫剤・ fluphenazine・抗コリンエステラーゼ作用・抗ChE作用・毒性

Q:フェノチアジン系薬剤の添付文書中に相互作用として有機リン系殺虫剤との接触注意の記載があるが、実際にそのような事例は存在するのか

A:フェノチアジン系薬物の添付文書中に記載されている有機リン系殺虫剤との相互作用は、下記の通りである。

■fluphenazine maleateの添付文書(フルメジン錠:三菱ウェルファーマ)参照

薬剤名 臨床症状・措置方法 機序・危険因子
接触注意(接触しないように注意すること)

有機燐殺虫剤

縮瞳、徐脈等の症状があらわれることがある。 本剤は有機燐殺虫剤の抗コリンエステラーゼ作用を増強し毒性を強めることがある。

この相互作用は、フェノチアジン系薬物及び有機リン系殺虫剤ともに抗コリンエステラーゼ作用(抗 ChE作用)を有するためであり、抗ChE作用を増強して縮瞳、徐脈等の症状が発現するとする記載がされている。

添付文書中に有機リン系殺虫剤との相互作用が記載されたのは、昭和50年以前に有機リン系の殺虫剤を使用していて中毒を発症した者が、フェノチアジン系薬剤を服用していたためとされているが、具体的な薬品名、服用量、症例数等の詳細は不明だとされている。

その他、フェノチアジン系薬剤は有機リン殺虫剤のコリンエステラーゼ阻害作用を増強し、その毒性を強めるとの報告がある一方、フェノチアジン系薬剤の抗コリン作用により、有機リン中毒の症状である縮瞳や徐脈が隠蔽されたとの報告もある。

また、ラットによる報告として、フェノチアジン誘導体によって有機リン系殺虫剤の中毒が増強されたとの報告がある。フェノチアジン誘導体であるクロルプロマジンとプロマジンを繰り返し投与した雄のラットで、パラチオンの単一用量の毒性を増強させた。

雌ラットでプロマジン5mg/kgの投与でパラチオンの毒性を増強させたが、ホスドリンの毒性には影響がなかったとしている。職業上有機リン系殺虫剤を使用する者では、注意を要する相互作用であるが、通常家庭で使用される園芸用の殺虫剤には、有機リン系殺虫剤を原料とする製品の使用はされていないとされている。

[015.2.CHE:2005.3.7.古泉秀夫]


  1. フルメジン糖衣錠添付文書,2004.4.改訂
  2. 高久史麿・他監修:治療薬マニュアル;医学書院,2005
  3. 国立国際医療センター医薬品情報管理室・編:医薬品情報,27(4): 324-326(2000)
  4. 仲川義人・編:医薬品相互作用 第2版;医薬ジャーナル社,1998