副腎皮質ステロイド外用剤の催奇形性
月曜日, 8月 13th, 2007KW:副作用・催奇形性・催奇形作用・皮膚外用剤・副腎皮質ステロイド剤・デルモベート軟膏・トプシム軟膏・clobetasol propionate・fluocinonide
Q: デルモベート軟膏、トプシム軟膏の催奇形性について
A:皮膚外用剤の催奇形性については、『原則的に経皮吸収されない限り発現しない』と考えられる。両剤の経皮吸収等について調査した結果は、下 記の通りである。
商品名(会社名) | デルモベート軟膏 (GSK) | トプシム軟膏(田辺) |
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組成 | clobetasol propionate0.05% | fluocinonide0.05% (0.5mg) |
基剤 | 白色ワセリン(疎水性基剤)
プロピレングリコール |
白色ワセリン(油脂性基剤)
プロピレングリコール |
添加物 | セスキオレイン酸ソルビタン | 炭酸プロピレン ラノリンアルコール |
重要な基本的注意 | 大量又は長期にわた る広範囲の密封法(ODT)等の使用により、副腎皮質ステロイド剤を全身投与した場合と同様の症状があらわれることがある。 | |
副作用-全身性 | 本剤の使用により下 垂体・副腎皮質系機能抑制を来すことがあるので、短期の使用が望ましい。
特別の場合を除き、密封法(ODT)等の使用に際しては特に注意すること。 |
大量又は長期にわた る広範囲の使用、密封法(ODT)により、後嚢白内障、緑内障(頻度不明)があらわれることがある。 |
妊婦、産婦、授乳婦 への投与 | 妊婦又は妊娠してい る可能性のある婦人に対しては使用しないことが望ましい[動物実験(ラット:皮下投与)で催 奇形作用が報告されている。 ] | 妊婦又は妊娠してい る可能性のある婦人に対しては、大量又は長期にわたる広範囲の使用を避けること[動物実験(ラット・マウス:連日皮下投与)で催奇形作用(外形異常)があらわれたとの報告がある。] |
血中濃度 | ※ラットに3H- clobetasol propionate 0.15%含有軟膏、クリーム及び0.05%外用液を経皮投与した結果、いずれも血中濃度は投与後8時間まで上昇した後、その後96時間まではほぼ一定若しくは非常に緩やかに減少した。
※乾癬及び湿疹で入院中の患者各6例に、0.05%-clobetasol propionate軟膏25gを単回塗布したところ、最初の3時間でclobetasol propionateの血中濃度は急速に上昇し、最高血中濃度は0.6-15.8ng/mLであった。 ただし、本実験に参加した患者の体表面積に対する病変の割合は約50-65.3%であり、相当広範囲に塗布されたことになる。 |
資料無 |
clobetasol propionate及びfluocinonideの動物実験における催奇形の報告は、いずれも皮下投与の報告例であり、皮膚に塗布した結果ではない。また、clobetasol propionateの血中濃度測定事例は、25g軟膏を広範囲(体表面積の約50-60%)に塗布した例であり、通常副腎皮質ステロイド外用剤が使用される事例との比較で見ると大量・広範囲の部類に入るのではないかと考えられる。
一般に、副腎皮質ステロイド外用剤の大量を連用した場合の全身的影響の一応の目安として、プレドニゾロン軟膏1日20gを連用した場合、同剤 10mgを内服したのと同様の全身的影響を示すものと考えられているの報告がされている。
また、その他の報告として1日20-30gを全身又は極めて広い範囲に塗布した場合、全身性の副作用が報告されているが、小範囲の湿疹等に塗布 する場合、胎児の催奇形性について危惧する必要はないのではないかとする報告も見られる。
従って、妊娠中の副腎皮質ステロイド外用剤投与については、『大量又は長期にわたる広範囲の使用、密封法(ODT)』を回避する投与法を取る限り問題はないものと考えられる。
[065.DER:2003.10.21.古泉秀夫]
- 高久史麿・他監修:治療薬マニュアル;医学書院,2003
- デルモベート・軟膏添付文書,2001.1.改訂
- トプシムクリーム・軟膏添付文書,2003.4.改訂
- デルモベート軟膏・クリーム・スカルプインタビューフォーム,1996.9.改訂2版
- トプシムクリーム・軟膏インタビューフォーム,1995.1.改訂
- 野波英一郎:妊婦へのコルチコステロイド外用剤投与;日本医事新報,No.3146(1984.8.11.)
- 我妻 堯:妊婦への副腎 皮質ステロイド外用剤使用;日本医事新報,No.3151(1984.9.15.)