フコイダンの効用
月曜日, 8月 13th, 2007Q:健康食品としてフコイダンを含む清涼飲料水『アポイダン-U(宝酒造)』が市販されている。このフコイダンというのはどの様な食効がいわれているのか
A:『アポイダン-U』の原材料としてU-フコイダン含有昆布抽出物、麦芽糖、安定剤(ペクチン)、レモン果汁、香料、凍結乾燥梅肉粉末、ビタミンC、酸味料、紅麹色素が報告されている。
また、本品1本50mL当たり栄養成分標準値として
エネルギー | 蛋白質 | 脂質 | 糖質 | ビタミンC | ナトリウム | ヨウ素 |
---|---|---|---|---|---|---|
6 Kcal | 0.0g | 0.1g | 1.3g | 7.0mg | 13.0mg | 検出限界以下 |
の表示がされている。
フコイダン(Fucoidan)については、次の報告がされている。宝酒造株式会社バイオ研究所等で、褐藻類の複合多糖に2種類のフコイダン分子が存在することを見出した。一つは主に硫酸化フコース(糖の硫酸化物)からなるfucoidanで、他はグルクロン酸を約20%含むfucoidanである。硫酸化フコースからなるfucoidanをF-fucoidanと命名し、硫酸化フコース・マンノース・グルクロン酸からなるfucoidanをU-fucoidanと命名した。
U-fucoidanは、シャーレ上で活発に増殖するヒト前骨髄白血病細胞、ヒト急性リンパ芽球性白血病細胞、ヒト胃癌細胞、結腸癌細胞、結腸腺癌細胞の生存細胞数を限りなく減少させる作用があることが確認された。この作用は生命の設計図であるDNAが切断され、生存不能にするアポトーシス(細胞自殺)により惹起されることが確認された。一方、対照とした正常細胞に対し殆ど影響がないことも確認されている。
褐藻類として昆布、若布・モズク・ヒジキ等が存在するが、fucoidanは北海道産のガゴメ昆布から独自の方法で抽出し、過剰摂取が問題となるヨード・塩化ナトリウムを限外ろ過法により完全に除去し、凍結乾燥した粉末として提供している。fucoidanは分子内に多くの硫酸基を持つため、それぞれの硫酸基にカウンターイオンとしてカルシウムを保持しているが、通常の硫酸カルシウムのように不溶性ではなく、少なくとも5%以上の濃度で水に溶解する可溶性のカルシウムとして存在するとされている。
製品化されたfucoidanは、約100℃の熱水で抽出されているため、中性水溶液中100℃程度の処理で、殆ど変化しない。高温下で酸・アルカリ条件に曝すと、著しい低分子化が引き起こされるが、室温以下では殆ど影響を受けない。
fucoidanはカルシウム塩として供給しているので、リン酸、クエン酸、アルギン酸等を多量に含む食品に添加する際は、沈殿形成の可能性をあらかじめ考慮しておく必要がある。またfucoidanは様々な蛋白質と相互作用を起こすので、蛋白質含有液に添加すると著しく粘性を増したり、凝集物を形成することがあるので注意を要する。
血中コレステロール低下作用、血圧低下作用、抗アレルギー作用等が報告されている。これらの報告から『生活習慣病』やアレルギー性皮膚炎、アレルギー性鼻炎等に対する効用も期待されている。また、可溶性のカルシウムを含むため、カルシウムの補給にも期待がもたれている。
ヒト腸内にはfucoidanを消化分解する腸内細菌を持っていないので、fucoidanは他の食物繊維と同等以上の効果を持つものと考えられるの報告もされている。また、fucoidanがアルミニウムイオンを強力に捕捉する能力を持つことからアルミニウムの蓄積がアルツハイマー病に関与するとされていることを考えれば、fucoidanが腸内でアルミニウムイオンを除去することによって、痴呆症発症を防ぐ可能性も期待される。 fucoidanは過剰の鉄イオンとも強力に結合することから、過剰の鉄イオンが体内で発ガン性を持つ脂肪酸の過酸化物の生成を触媒するとされており、これの防止にも期待がもたれている。
以上の各報告から、鉄欠乏性貧血の患者では、食品中の鉄吸着の可能性があるため、摂食注意。また、鉄剤服用中の患者では、摂食時間注意。その他、薬剤服用中の患者では、服用薬剤の吸着が考えられるので、摂食時間を検討することが必要である。その他、金属イオンの吸着作用については、服用中の薬剤による副作用防御に利用の可能性があるのではないかと思われる。
この他、fucoidanについて、モズク由来のfucoidan入り化粧水が市販されており、保湿効果が見られるとする報告がされている。
[015.9FUC:2000.7.31.古泉秀夫]
- 健康は宝:宝酒造株式会社バイオ事業部門製品カタログ,00023K
- TAKARAバイオサイエンスNEWS
- 酒井 武・他:昆布由来フコイダンの特性と食品への利用;食品と科学,40(6),1998
- 株式会社沖縄醗酵化学;沖縄県糸満市西崎町5-2-2,発行資料