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枇杷種子について

月曜日, 8月 13th, 2007

KW:健康食品・枇杷種子・ビワ種子・枇杷葉・枇杷仁・アミグダリン・amygdalin・ビタミンB・レートリル・レアトリル・ laetrile

Q:枇杷の種子に含まれる成分は癌に有効か

A:枇杷はバラ科(rosaceae)の植物

学名:Eriobotrya japonica Lindl.。

枇杷葉は枇杷の葉を乾燥したもので、含有成分として次のものが報告されている。

  • 精油としてtransnerolidol、α-pinene、camphene、trans-trans-farnesol 等
  • トリテルペノイ ドのursolic acid、oleanolic acid
  • 糖類としてD-glucose、D-fructose、sucrose等
  • 有機酸としてtartaric、citric acid等
  • その他alkaloid、tannin、amygdalin(20ppm)、vitamin B、vitamin C、sarbitol、ceryl alcohol等

を含んでいる。

暑気当たり、健胃薬として用い、民間ではあせもや湿疹に湯浴料として用いる。

薬理作用

  1. 抗菌作用
  2. 鎮咳去痰抗喘息作用
  3. 健胃作用
  4. 止血作用
  5. 弱い持続性の利胆作用

等が報告されている。

枇杷仁(ビワニン)

枇杷の種子で、amygdalinを含み、杏仁水の代用とされたこともあるが、市場性は少ない。

ただし、枇杷仁中の amygdalinの含有量は、種子成分の約3%に相当し、100g中に3.5gのamygdalinが存在する。これは葉中のamygdalinの約 2000倍に相当する。

アミグダリン[amygdalin] C20H27NO11、配糖体の一種。

β-ゲンチオビオースとD-マンデルニトリルとからなる。

バラ科植物の杏子(アンズ)、モモ、苦扁桃などの実、葉、木質部に含まれる。

扁桃油(へんとう油)の有効成分。

無色の結晶、融点210℃。

β-グルコシダーゼ(エムルシン)で加水分解され、D-glucose、シアン化水素(HCN)、ベンズアルデヒドを生ずる。

vitamin B17 (amygdalin)

アンズの種子から発見されたvitamin様物質で、レートリル又はレアトリル(Laetrile)の名称で表記されている。抗癌作用があるとして、米国では多くの州で、癌の治療薬として認められているとされるが、一方で効果に関する評価は確定していないとされている。

vitamin B17 の抗癌作用は、本品中に含まれるシアン化合物が、シアンに分解され、正常細胞は攻撃せずにがん細胞のみを攻撃するためとされているが、シアンは毒性物質であるため、大量摂取は危険である。

なお、Laetrile・amygdalin・vitamin B17に 関係する報道を次に紹介する。

『アンズの核の“制がん剤”「レアトリル」で警告-FDA』(2000年9月 27 日)

アンズや桃の核から取った成分を調合してつくった薬剤が、がんに効くといわれインターネットでこれを購入するがん患者が米国で増えている。

FDA(米食品医薬品局)は、9月6日、この薬は効用が証明されていない違法な薬剤だとして厳重な警告を出した。

この薬は「レアトリル」(laetrile)と呼ばれ、70年代にがんに効くとして患者の間でブ?ムが起きた。

この時は何万人という米国人患者がlaetrileを求めてメキシコに渡った。その後、NCI(米国立がん研究所)の試験によって、laetrileはがんには効かないことが証明され、FDAはこの薬を違法と断定した。

また、このレアトリルは効かないばかりか毒性のあるシアン化合物(青酸カリなど)が含まれている可能性があるとされ、80年ごろまでに laetrile・ブームは沈静化した。

ところが、最近になって今度はインターネットを通じでlaetrileの販売が始まり、ふたたびこの薬に頼る患者が増え始めたのである。しかも、今度はlaetrileでなく「アミグダリン」(amygdalin )とか、「ビタミンB17」(vitamin B17 )といった名前で販売されている。

これに対してフロリダの裁判所がlaetrileの販売は違法であるとして、インターネットで販売していた3社に販売中止命令を出した。

FDAのスポ?クスマンは、「laetrileは、安全性も有効性も証明されていない。患者がこれに頼って、正規のがん治療法を受けないとなったら大変だ」と述べている。

(参考サイト)http://www.cancernet.nci.nih.gov/cam/laetrile.htm

がんの薬としてlaetrileを販売していた業者に長期の拘留判決 [Lengthy Jail Sentence for Vendor of Laetrile-A Quack Medication to Treat Cancer Patients(June 22, 2004)]

(参考サイト)http://www.fda.gov/bbs/topics/news/2004/NEW01080.html

がん患者に効き目のない毒性の高い薬物laetrile(別名:amygdalin、vitamin B17、アプリコットピッツ)を広告・販売していたニューヨークの 会社の社長に2004 年 6 月 18日、懲役63ヵ月と監視下の保釈 3 年の判決が下された。社長はlaetrileの違法販売によって少なくとも50 万ドルを得ている。

FDA のコミッショナー代理は、「laetrileには抗がん作用があるという科学的証拠はなく、がん患者に間違った希望を与え、患者は通常の治療を受ける機会を逸してしまう。今回の 判決は、偽の薬を我々はもはや容認しないという強力なメッセージである。」と述べている。

[015.9.AMY:2004.10.6.古泉秀夫]


  1. 曾野維喜:続東西医学臨床漢方処方学;南山堂,1996
  2. 薬科学大辞典 第2版;広川書店,1990
  3. 志田正二・代表編:化学辞典;森北出版,1999
  4. 中村丁次・監修:からだに効く-栄養成分バイブル;主婦と生活社,2001
  5. http://medwave.nikkeibp.co.jp/health/news/200009/2000092701.html, 2004.10.5.