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中華料理症候群について

日曜日, 8月 12th, 2007

KW:毒性・中毒・急性毒性・中華料理症候群・Chinese Restaurant Symptoms・CRS・Chinese Restaurant Syndrome・グルタミン酸ナトリウム・Monosodium L-Glutamate・MSG・食品添加物・安全性評価

Q:中華料理症候群とはどの様な疾患かをいうのか

A:1969年7月に米国上院栄養委員会で「グルタミン酸ナトリウム(MSG)の大量は、不測の条件が加わると乳児の脳障害を起こすおそれがあるので、これを乳児用食品に添加することは正当でない」と証言したことが報道され、論議を巻き起こした。

この証言の基礎となる実験は、スイスマウスの生後2?9日のものにMSGの0.5?4g/kgを単回皮下注射した結果、脳の特定部位(視床下部の弓状核)に神経細胞の障害をきたし、同様の障害は他系統のマウス及びラットでも見られたとするものである。

 *マウスの新生仔に大量のL-グルタミン酸ナトリウムを皮下注射すると、網膜(体重kg当たり4g以上投与時)、若しくは脳視床下部(体重kg当たり0.5g以上投与時)の一部に病変が起こることがそれぞれ報告された。

[Lucas,D.R.,et al.;Amer.Med.Ass.Arch.Ophthalmol.58:193(1957);Olney,J.W.:Science 164:719(1969)]

それ以後、病理組織、成長及び生殖機能上の影響-肥満・不妊などについて検討がされた。この病変は幼若マウス、ラット等齧歯類動物で認められるが、成熟に伴い起き難くなる。イヌ、サル等の高等動物での病変は確認されていない。病変の有無には投与経路の影響が大きく、病変が認められたのは非経口投与、若しくは強制経口投与に限られている。食餌混入若しくは飲水混入で、自由摂取させた場合、最も感受性の高いマウスが大量のL-グルタミン酸ナトリウムを摂取しても、脳、網膜の変化はなく、また成長、発育、繁殖上の異常も認められない等の報告がされている。 1970年米国のNational Academy of Sciences(NAS)及びFAO/WHOの専門委員会でMSGの安全性評価が行われている。

MSGについてのもう一つの問題は、中華料理症候群(Chinese Restaurant Symptoms,CRS)で、1968年Schaumburgらが報告したもので、灼熱感、顔圧迫感、胸痛、頭痛などを主徴とし、このような症候群が中華料理を食べた者に起こることから中華料理症候群と呼び、その原因はMSGの大量を空腹時に摂取したとき感受性の強いものに起こるとされている。

1972年東京で多量のGMSを含んだ酢コンブあるいは中華料理を食べた50人前後のヒトが、悪心・頭重感・頭痛・眩暈・頭部及び手足の痺れ、胸部圧迫感など中華料理症候群を発現し、失神寸前のものもあったが、このときのGMS推定摂取量は3.3?14.3gであったとされている。

1970年National Academy of Sciencesの下部機構であるFood Protection Committeeは、MSGの問題、特にベビーフード中のMSGを主課題として討議した結果として、次の見解を発表した。

「MSGの安全性評価を目的とした各種の動物実験、及び治療薬品としてあるいは調味料として摂取されたヒトでの広汎な観察の結果、通常の使用法ではこの物質が高い安全性を持っていることが確認できる。

この委員会で特に関心が持たれたのはベビーフードに添加されるMSGの安全性であって、実験動物の新生仔に大量のMSGを経口的にあるいは非経口的に与えると視床下部の弓状核及び網膜の特異な変化を生じるという公表文献の報告によるものである。マウス及びラットに関する限り1g/kg以上を生後10日迄に与えられた場合、おそらく前記異常が生ずることが認められる。この異常はイヌあるいはサルでは認められず、新生のサル及びおそらくイヌ、生後10日を過ぎた齧歯類がこのような変化を起こし難いのは脳及び網膜のMSG侵入に対する関門の発達と関連があるように考えられる。ヒトの出産時の神経系統の発生は齧歯類の発達より進んでおり、おそらく血液-脳、血液-網膜の両関門において同様である。

ベビーフードに添加されるMSG量は0.6%以下で少量であること、出産時は勿論生後2カ月以前にベビーフードが与えられることは考え難いこと、生後2カ月の時期では幼児の1日に摂取する全食事に占めるベビーフードの割合が少ないこと等を考慮に入れなければならない。

それらを考慮の上、委員会はベビーフードに添加されるMSGによる危険性は極めて少ないとの結論に到達した。しかし、ベビーフードにMSGを添加することに何等の利点も見いだし得ないので、特に乳幼児用を目的とする食品に添加しないことを勧告する。

成長した子供及び大人の食品に通常の常識的なMSGの使用は、特にMSGに敏感なヒトを除いて、悪害を及ぼすという証拠は得られなかった。従って委員会は、乳幼児以外のヒトの加工食品にMSGを使用することは、調味料として利点があり、差し支えないこと、そしてMSGの摂取を避けたいと思うヒトのために、そのような食品に本品添加を明瞭に表示することを勧告する。食堂あるいは家庭用として包装されたMSGの売買を制限する必要はない。」

その他、「中華料理症候群(Chinese Restaurant Syndrome)」について、次の報告がされている。

調味料として用いられているグルタミン酸ナトリウムを一時に大量摂取したとき、眩暈、吐き気を伴う症状を示す過敏症をいう。中華料理店でワンタンを食べたとき、この症状が現れたことからこのような名称が付けられた。

また、この事例に関し

「起床直後の空腹時に数g以上のグルタミン酸ナトリウムを添加したワンタンスープを摂取した場合、頭痛、灼熱感、顔面圧迫感、胸痛などを感じたことからこのような名称が付けられた。この症例について、多数の人による追試が行われた結果、空腹時に多量のグルタミン酸ナトリウムを摂取した場合に現れることがあるということが判明した。我が国における消費量は1人1日平均2gであり、1回の食事で1gを超えることはまず考えられない。従って1回に数gあるいは 10g以上を摂取することは実際にはあり得ないので、調味料として正当に使用される量であれば、この症状が発現することは考えられない」

とする報告もされている。

同様に

「米国ボストン近郊の中華料理店で食事をとった際、食後特定の一過性の症状(首から上肢にかけてのしびれ感、全身のだるさ等)が現れたとKwokが報告[Kwok,R.H.:N.Engl.J.Med.278:796(1968)]して以来この名が付いた。その後、本症状はワンタン・スープに多量に使用されたL-グルタミン酸ナトリウムが原因ではないかと疑われ、種々の臨床試験が行われた。L-グルタミン酸ナトリウムによる症状は、空腹時に多量のL-グルタミン酸ナトリウムを食べた後、15?25分を経て一部の過敏なヒトで灼熱感、顔面圧迫感、胸痛が起こり、約1時間以内で治まると報告されている。この症状は主観的かつ一過性のもので、血圧、心拍、心電図、血中グルタミン酸レベルなどの客観的指標上の変化は認められていない。二重盲検法による厳密な検討結果では、3.0?4.4gのグルタミン酸摂取では、発症とMSG摂取との関連は認められていない

L-グルタミン酸ナトリウム(Monosodium L-Glutamate):Ritthausen(1866)は小麦グルテンのエタノール可溶部分の硫酸分解物から、酸性アミノ酸を単離し、原料に因んでグルタミン酸と命名した。

Dittmer(1872)により構造が推定され、Wolf(1890)により初めて合成された。池田菊苗(1908)はコンブの熱水抽出によりグルタミン酸モノナトリウムを得て、これがコンブ出汁の旨味成分であることを発見し、新しい調味料を創製した。

本品は国内ではグルタミン酸ソーダ、海外ではMSGとも呼ばれている。昭和23年、食品添加物として指定された。我が国における調味料全体の食品用需要は約14万頓で、そのうちL-グルタミン酸ナトリウムは約8万噸(1987年推定)となっている。

本品は代表的な調味料として家庭用、料理飲食店用、食品加工用に広く使用されている。1990年の本品の推定需要量は8.3万噸、構成比で家庭用7%、業務用93%とされている。本品の閾値(最低呈味濃度)は0.03%で、食塩の0.2%、砂糖の0.5%に比較すると味の延びが極めて良い。

急性毒性(LD50:mg/kg)

マウス—経口—-16,200 ラット—–経口 >30,000(L-グルタミン酸)
ラット—-経口—–19,900 モルモット 腹腔 15,000

[63.009MSG:2000.3.23.古泉秀夫]


  1. 池田良雄・他編:中毒症-基礎と臨床-;朝倉書店,1975
  2. 薬科学大辞典 第2版:廣川書店,1995
  3. 浅野誠一・他編:食事療法事典;東京同文書院,1975
  4. 林 裕造・他監訳:食品添加物の安全性評価の原則;薬事日報社,1989
  5. 谷村顕雄・代表編:第7版 食品添加物公定書解説書;廣川書店,1999

脱法ドラッグの成分とその有害作用

日曜日, 8月 12th, 2007

KW:法律・規則・脱法ドラッグ・合法ドラッグ・有害作用・幻覚作用・催眠作用

Q:現在までに脱法ドラッグとして報告されているドラッグの成分とその有害作用について

A:「脱法ドラッグ」とは、幻覚・催眠作用があるとして販売されている薬物の総称。

麻薬と同じような効果があり、依存性も高いとされているにも係わらず、法的な規制がされていないため、所持・使用により罰せられることがないため、合法ドラッグとも呼ばれているが、合法ドラッグという呼称は、単なる欺瞞的呼称にすぎない。

通常、薬物は、含まれるている化学物質名を明示して、薬事法や麻薬取締法等に基づき規制されている。しかし、こうした物質と類似し、人体に同じような影響を与えることが解っても、規制対象物質でないため取締りの対象とすることができないでいる。厚生労働省はこのような現状に対して「別の物質を加えるなどして新しい薬物が次々と作られている。危険な作用のあるすべての薬物に網をかけることは難しい」という。

一方で厚生労働省は、脱法ドラッグが凶悪事件の引き金となったことを重視。使用された脱法ドラッグの種類が確認され次第、注意を喚起する方針であるとされている。

なお、厚生労働省では「摂取するのは人体実験をしているようなもの。絶対に使用しないでほしい」と呼びかけている。

■ 都の買い上げ調査で検出された医薬品成分

化学名<略名 > 起源/用途(*法規制) 有害作用 備考
麻黄

(ephedrine hydrochloride含有)

マオウ科の植物。地上茎を医薬品として使用。

主成分:エフェドリン

*地上茎を経口摂 取する製品は医薬品に該当

不眠

神経興奮

血圧上昇

頭痛

幻覚

不整脈

心停止

Ma-Huangと表示された製品に含有されていることが多い。
ephedrine hydrochloride 気管支喘息、感冒、肺結核、上気道炎などに伴う鎮咳。鼻粘膜の充血・腫脹治療剤

*経口摂取する製 品は医薬品に該当。

1個中25mgを超えて含有するものは、劇薬。また、10%を超えて含有するものは、覚せい剤取締法により、覚せい剤原料として規制される。

不眠

神経興奮

血圧上昇

頭痛

幻覚

不整脈

心停止

Ma-Huangの表示製品に含有されていることが多い。

Sida Cordifolia(1-a成分)を原材料とする製品から検出されることがある。

phenylpropanolamine hydrochloride 鼻炎用内服剤、鎮咳去痰用剤、感冒用剤、上気道炎治療剤に配合

*経口摂取する製 品は医薬品に該当。

フェニルプロパノールアミンとして50%を超えて含有するものは、覚せい剤取締法により、覚せい剤原料として規制される。

不眠

神経興奮

血圧上昇

頭痛

幻覚

不整脈

心停止

 
yohinbe アカネ科の常緑高木の樹皮を医薬品として使用する。主な成分としてyohimbinを含有

*経口摂取する製 品は医薬品に該当

発汗

吐き気

嘔吐

痙攣

呼吸麻痺

 
yohimbin hydrochloride 強精・強壮剤、精神衰弱性陰萎、衰弱性射精、老人性陰萎、血管拡張に使用

*経口摂取する製 品は医薬品に該当。劇薬

発汗

吐き気

嘔吐

痙攣

呼吸麻痺

 
pilocarpine hydrochloride pilocarpineはPilocarpus属植物の葉であるヤボランジ葉の主アルカロイドである。

*経口摂取する製 品は医薬品に該当。原体は毒薬、製剤は劇薬

発汗

下痢

嘔吐

呼吸麻痺

肺浮腫

 
2,5-dimethoxi

-4-thioethilph

enethylamine

<2-CT-2>

フェネチルアミン系の化合物。

天然には存在しない。

日本や欧米等では、医療上の用途で使用されていない。

*経口摂取する製 品は医薬品に該当。

2-CBは、イギリス、アメリカ、オランダ、ドイツ、日本等で麻薬に指定

強烈な吐き気

頭痛

排尿困難

幻覚サボテンに含まれるメスカリン(麻薬)と化学構造的に基本骨が同一
γ-hydroxybut

yric acid

<GHB>

平成13年11月25日以降麻薬として規制

*麻薬等は、その 所持や使用が禁止されている。

嘔吐

低呼吸

徐脈

妄想

意識消失

昏睡

死亡例有り

麻薬指定は、平成13年6月11日の国連の条例に基づく。
γ-butyrolactone

<GBL>

日本や欧米等では、医薬品として認可されていない。

*経口摂取する製 品は医薬品に該当。

米国では平成11年1月21日、消費者への使用禁止警告、また製造業者へは自主回収勧告が行われた

嘔吐

低呼吸

徐脈

妄想

意識消失

昏睡

死亡例有り

販売名に「G」がつく製品が多い。

GHBを含有する製品に同時に含まれていることが多い。

1,4-butanediol 日本や欧米等では、医薬品として認可されていない。

*経口摂取する製 品は医薬品に該当。FDAは健康有害物質にあたるとの警告を発している

嘔吐

意識消失

昏睡

呼吸障害

販売名に「G」がつく製品が多い。

成分表示に「hgh」と表示。

α-methltryptamine

<AMT>

日本では医薬品として承認されていない。

ロシアにおいてうつ病の治療薬として使用されていたことがある。

*経口摂取する製 品は医薬品に該当

嘔吐

呼吸障害

運動失調

昏睡

幻覚

精神分裂

麻薬に指定されているDMTとその構造が酷似している。
亜硝酸エステル類

(ester of nitro

us acid)

医薬品や化学工業原料として使用

亜硝酸メチル、亜硝酸エチル、亜硝酸アミル等。

亜硝酸アミル(平滑筋弛緩作用を有する血管拡張薬)。

嘔吐

眩暈

血圧低下

脳貧血

尿便失禁

失神

呼吸障害

皮膚接触によるただれ

易引火性。

勃起不能治療薬「バイアグラ」との併用で、急激な血圧低下の危険性警告。

chloroethane

(ethyl chlorid)

エーテルより麻酔力が強いが、手術期を安定に保つのが難しく、引火性のため大手術には不適。

化学工業原料として使用 *劇物(原体)

めまい

運動麻痺

意識消失

昏睡

皮膚接触による凍傷

極めて引火しやすい。
dextromethorp

han hydrobro

mide

日本では医薬品として承認例あり。

*経口摂取する製 品は医薬品に該当。デキストロメトルファンとして、1個中25mg、又は1日量中50mgを超えて含有するものは劇薬

不眠

悪心・嘔吐

頭痛

めまい

口渇

[局]収載、鎮咳薬
2,4,5-trimetho

xyamphetamin

e(TMA-2)

日本や欧米等では医療用途では使用されていない。

*経口摂取する製 品は医薬品に該当

幻覚・妄想を引き起こす恐れがある。 麻薬に指定されているTMAと化学構造が酷似
2,5-dimethoxi

-4-thiopropylp

henethlamine

<2-CT-7>

フェネチルアミン系の化合物。日本や欧米等では、医療上の用途で使用されていない。

*同様の物質に2 -CT-2がある。(前項参照)経口摂取する製品は医薬品に該当。2-CBは、イギリス、ア メリカ、オランダ、ドイツ、日本等で麻薬に指定

強烈な吐き気

頭痛

排尿障害

幻覚サボテンに含まれているメスカリン(麻薬)と化学構造的に基本骨格が同一
androstedione 男性ホルモンの一種。

日本において医薬品として承認前例あり。

*経口摂取する製 品は医薬品に該当

睾丸機能低下(男性)・月経異常(女性) 欧米では筋肉増強剤として流通している。

その他、平成13年度に行われた第1回の買上げ調査(30品目)を行い、都立衛生研究所で試験検査した結果、都の調査で初めて検出された成分を含む薬事法違反の製品を7品目発見した。都では、当該製品の販売業者等に対して製品回収等を指示するとともに、都民に対して使用の危険性について周知するとしている。

1 調査の背景

最近、インターネット、雑誌広告や都内アダルトショップ等の店頭で多幸感・快感等を高める、幻覚を味わえる、昏睡させることができる等と称する製品が多数販売されている。これらは主に若年者層を中心に乱用される傾向にあり、麻薬や覚せい剤等の不正薬物乱用の契機となることが危ぐされている。また、含有成分によっては重大な健康被害が発生したり、性犯罪等へ悪用されることも懸念される。

2 今回の調査品目

都内のアダルトショップ等の店頭で、経口で摂取する製品、計30品目を本年5月から6月までに購入した。

3 薬事法違反品の内訳

検査数 違反品目数 検出された成分【当 該成分を 含有する品目数】
30 7 エフェドリン類[3]

塩酸フェニルプロパノールアミン[2]

2,4,5-トリメトキシアンフェタミン(TMA-2)[1]

ヨヒンベ(塩酸ヨヒンビン)]1]

α-メチルトリプタミン(AMT)[1]

ダミアナ[1]

*今回検出されたエフェドリン類は、塩酸エフェドリン、塩酸プソイドエフェドリン及び塩酸メチルエフェドリンである。

4 危ぐされる健康被害

  1. エフェドリン類:頭痛、めまい、どうき等を起こすことがある。長期連用による不安や幻覚等の神経症状、大量服用による不整脈や心停止のおそれがある。
  2. 塩酸フェニルプロパノールアミン:頭痛、めまい、どうき等を起こすことがある。長期連用による不安や幻覚等の神経症状、大量服用による不整脈や心停止のおそれがある。
  3. 2,4,5-トリメトキシアンフェタミン(TMA-2):麻薬に指定されている3,4,5-トリメトキシアンフェタミン(TMA)と化学構造が類似しており、幻覚及び中枢神経興奮作用を有するおそれがある。
  4. ヨヒンベ(塩酸ヨヒンビン):大量使用によるけいれん、呼吸障害及び心停止のおそれがある。
  5. α-メチルトリプタミン(AMT):悪心、嘔吐、呼吸障害、運動失調、昏睡等が起こることがある。長期連用による精神分裂等の精神障害を来すおそれがある。
  6. ダミアナ:詳細は不明であるが、長期間にわたり大量に摂取すると、肝臓を害するとの説がある。

5 薬事法違反の適用条文

今回検出された「塩酸エフェドリン」等の医薬品成分を含有し経口で摂取する製品は、薬事法の規定により医薬品と見なされる。

当該品を同法に基づく承認許可を取得せずに製造、輸入、販売及び広告することは、薬事法第12条第1項(医薬品の無許可製造)、同法第22条第1項(医薬品の無許可輸入)、同法第24条第1項(無許可販売)、同法第55条第2項(無承認無許可医薬品の販売・授与等の禁止)及び同法第68条(承認前の医薬品の広告の禁止)に違反する。

6 都の対応

  1. 薬事法違反業者に対する措置 違反品の製造・輸入・販売の中止、市場からの回収及び製造・輸入・販売数量等の報告を指示した。
  2. その他の販売業者に対する指導 調査結果の概要を記載した文書を送付し、違反品等の販売について注意を求めた。
  3. 出版社等への情報提供 違反品の広告・記事掲載について注意を求めた。
  4. 関係団体への周知 広告業団体、健康食品関係団体、薬業関係団体等に対し情報を提供した。
  5. 都民への情報提供 違反製品名等を公表し、購入し使用することの危険性を周知する。

インターネットホームページ上で過去の違反製品を掲載するなど、情報の提供を継続的に行う。

4. その他(規制等)

(今回の報道発表内容は、後日掲載予定)

■ ephedrine hydrochloride類
及びphenylpropanolamine hydrochlorideを検出した製品

品名(製造元又は輸 入先国・ 内容量) 含有量
1 エクスプロアーXS

(米国・6粒/個)

塩酸エフェドリン 14.7mg

塩酸プソイドエフェドリン5.6mg

塩酸メチルエフェドリン0.8mg

塩酸フェニルプロパノールアミン0.2mg(1粒中)

2 Magic mushrooms

(米国・10粒/個)

塩酸エフェドリン1.6mg

塩酸プソイドエフェドリン0.9mg

塩酸メチルエフェドリン2.3mg(1粒中)

3 SMART XXX

(米国・4カプセル/個)

塩酸エフェドリン 78.3mg

塩酸プソイドエフェドリン6.6mg

塩酸メチルエフェドリン2.2mg

塩酸フェニルプロパノールアミン0.4mg(1カプセル中)

1. 薬理作用
交感神経興奮作用、中枢興奮作用、鎮咳(がい)作用、気管支拡張作用等がある。
2. 用途
国内で医薬品として承認前例がある。
〈効能効果及び用法用量〉 気管支ぜん息、感冒、肺結核、上気道炎等に伴う鎮咳(がい)、鼻粘膜の充血・腫脹(しゅちょう)治療剤 1回12.5-25mgを1日1-3回内服
3. 危ぐされる健康被害
不眠、神経過敏、震え、悪心・おう吐、頭痛、頭重、排尿困難及び口渇。長期連用によって、不安や幻覚を伴う精神症状が現れることがある。中枢興奮作用を有し、過量に用いると不整脈や心停止を起こすおそれがある。
4.その他(規制等)
エフェドリンとして1個中25mgを超えて含有する物(エリキシル剤にあっては1日量中50mgを超えて含有するもの)は、薬事法により劇薬として、また、10%を超えて含有するものは、覚せい剤取締法により、覚せい剤原料として規制される。

■ phenylpropanolamine hydrochloride

1. 薬理作用
交感神経興奮作用、中枢興奮作用、気管支拡張作用等エフェドリンと類似しているがエフェドリンより中枢性の作用は弱い。
2. 用途
国内で医薬品として承認前例がある。 〈効能効果及び用法用量〉

鼻炎用内服剤、鎮咳(がい)去たん用剤、感冒用剤及び上気道炎治療剤に配合されている。 配合量は1日量として50~100mg

3. 危ぐされる健康被害
不眠、神経過敏、震え、悪心・おう吐、頭痛、頭重、排尿困難及び口渇。長期連用によって、不安や幻覚を伴う精神症状が現れることがある。中枢興奮作用を有し、過量に用いると不整脈や心停止を起こすおそれがある。
4. その他(規制等)
フェニルプロパノールアミンとして50%を超えて含有するものは、覚せい剤取締法により、覚せい剤原料として規制される。 

■ 2,4,5-trimethoxyamphetamine(TMA-2)(TMA -2)を検出した製品

品名(製造元又は輸 入先国・ 内容量) 含有量
1 シークレットラブ(TMA- 2)

(不明・2カプセル/個)

2,4,5-トリメトキシア ンフェタミン(TMA-2) 17.2mg (1カプセル中)

■ 2,4,5-trimethoxyamphetamine(TMA-2)

1. 薬理作用
TMA-2は、麻薬に指定されているTMA(3,4,5-トリメトキシアンフェタミン)と化学構造が類似しており、人の脳に作用して幻覚・妄想等を引き起こすおそれがある。
2. 用途
日本及び諸外国で医療上の用途はない。
3. 副作用
TMAには依存症(薬物の摂取が自らの意志では止められなくなる作用)があるので、化学構造が類似するTMA-2についても同様に依存性を有するおそれがある。
4. 乱用・規制状況
TMAは平成元年11月より麻薬に指定されている。日本では現在、TMA-2は麻薬に指定されていないが、麻薬であるTMAの代用薬物として乱用されている。

■ yohinbe(yohimbin hydrochloride)を検出した製品

品名(製造元又は輸 入先国・ 内容量) 含有量
5 ECSTATIC

(オランダ・6粒/個)

ヨヒンベ

(塩酸ヨヒンビン)2.1mg(1粒中)

■ yohinbe(yohimbin hydrochloride)

1. 薬理作用
ヨヒンベは、アフリカ産アカネ科の常緑高木植物であり、樹皮を薬用とする。その主な成分が塩酸ヨヒンビンである。詳細な薬理作用は不明
2. 用途
適応は強精、強壮、神経衰弱性、陰萎(いんい)、衰弱性射精、老人性陰萎(いんい)等 用量は1回5~10mgを1日3回内服。10~20mg皮下注射
3. 危ぐされる健康被害
発汗、悪心、おう吐。大量投与により延髄麻痺(ひ)を来し、痙(けい)れんや呼吸麻痺、心停止に至るおそれがある。
4. その他(規制等)
欧米では、催淫ドラッグの原料として用いられている模様。日本では劇薬。

■ α-methltryptamine(AMT) を検出した製品

品名(製造元又は輸 入先国・ 内容量) 含有量
6 dt(day tripper)

(英国・不明/本)

α-メチルトリプタミン (AMT) 4.5mg/mL

■ α-methltryptamine(AMT)

1. 薬理作用
脳内のセロトニンと化学構造が類似しており、投与により強力な幻覚作用が発現する。
2. 用途
日本では医薬品として承認されていない。 ロシアにおいてうつ病の治療薬として使用されていたことがある。
3. 危ぐされる健康被害
悪心、嘔吐、呼吸障害、運動失調、昏睡等が起こる。乱用を続けると、長期にわたって精神分裂等の重篤な精神障害を来すことがある。
4. 乱用・規制状況
幻覚発現剤として乱用者がいる。麻薬に指定されているDMTとその化学構造が酷似している。

■damianaを検出した製品

品名(製造元又は輸 入先国・ 内容量) 含有量
7 Sexfix-prompt

(不明・12カプセル/個)

 

■damiana

1. 起源等
トルネラ科の植物。学名:トゥルネラ・アフロディジィアカ。テキサス、メキシコ、アフリカ等で収穫される。  
2. 用途
古くから、収穫地では強壮や弱い催淫目的で民間薬として使用されている。その他、男性・女性両用の精力増強や生殖機能向上と関連付けられ、抗欝、強壮、利尿、咳薬、緩下薬としても有効であるとも考えられている。熱湯で煮出してお茶代わりに用いたり、ウォッカ等に浸してリキュールとして用いる。 また、水パイプを用いて煙草様に使用することもある。
3. 危ぐされる健康被害
詳細は不明であるが、長期間にわたり大量に摂取すると、肝臓を害するとの説がある。

脱法ドラッグといわれる『違反化学物質』を取扱うネットワークは世界的に張り巡らされており、次々に新しい化学物質あるいは植物を探索し、導入しようとする努力がされている。一方、規制当局は、それぞれの物質を検証し、規制しているが、『違反化学物質』の全的な規制は困難なのが実情のようである。

なお、平成16年度中にインターネット市場で市販されている5-Meo-DIPT、AMTの2物質について、麻薬指定するため、「麻薬、麻薬原料植物、向精神薬及び麻薬向精神薬原料を指定する政令」の改正を行う予定とされている。

[615.1.EVA:2005.2.14.古泉秀夫]


  1. あぶないドラッグ-脱法ドラッグ対-東京都健康局食品医薬品安全部薬事監視課:http: //www.kenkou.metro.tokyo.jp/yakuji/kansi/datudora/top.html, 2004.7.23.
  2. 「合法ドラッグ」の現状と薬物の乱用防止 都薬雑誌、21(7):15-21(1999) 」
  3. 乱用が懸念される薬物(いわゆる「脱法ドラッグ」)の発見・回収について:東京都衛生局薬務部薬事指導課, 2003.8.16.(http://www.metro.tokyo.jp/INET/ETC/EISEI/yakuji/kansi/datudora/t op.html)
  4. 南山堂医学大辞典 18版,1998

卵アレルギーの小児への予防接種

日曜日, 8月 12th, 2007

KW:副作用・卵アレルギー・予防接種・アレルギー反応・インフルエンザHAワクチン・乾燥弱毒生麻しんワクチン

Q:卵アレルギーの小児に対する予防接種によって、インフルエンザワクチンと麻しんワクチンのどちらがアレルギー反応を発生しやすいか

A: 両剤の製剤特性等に関する添付文書の記載内容は下記の通りである。

商品名

(会社名)

インフルエンザHA ワクチン

(化血研-藤沢)

乾燥弱毒生麻しんワクチン

(武田)

製法の概要 本剤はインフルエン ザウイル スのA型及びB型株をそれぞれ個別に発育鶏卵で培養し、増殖したウイルスを含む尿膜腔液を蔗 糖密度勾配遠心法等により精製濃縮後、ウイルス粒子をエーテル等により処理してヘムアグルチニン画分浮遊液とし、ホルマリンで不活化した後、リン酸塩緩衝塩化ナトリウム液を用いて各株ウイルスのヘムアグルチニンが規定量含まれるよう希釈調製する。 本剤は弱毒生麻しん ウイルス (シュワルツFF-8株)を伝染性の疾患に感染していないニワトリ胚初代培養細胞で増殖させ、得たウイルス液を精製し、安定剤を加えて分注した後、凍結乾燥したものである。

本剤は製造工程でウシの血清、乳由来成分(ラクトアルブミン水解物)、ウマの筋肉及びブタの膵臓由来成分(トリプシン)を使用している。

添加物 ホルマリン 0.01w/v%以下(ホルムアルデヒドとして)

チメロサール 0.005mg

塩化ナトリウム 8.1mg

リン酸水素ナトリウム 2.5mg

リン酸二水素カリウム 0.4mg

乳糖(牛乳抽出物)25mg

グルタミン酸カリウム 0.24mg

リン酸水素ナトリウム 0.3125mg

リン酸二水素ナトリウム 0.13mg

D-ソルビトール7.3mg

硫酸カナマイシン2.5μg

フェノールレッド(着色剤)0.005mg

接種不適当者 (3) 本剤の成分によってアナフィラキシーを呈したことがあることが明らかな者
使 用上の注意

1.接種要注意者

(2)前回の予防接種で2日以内に発 熱の見られた者又は全身性発疹等のアレルギーを疑う症状を呈したことがある者
(5)気管支喘息の ある者

(6)本剤の成分又は鶏卵、鶏肉、その他鶏由来のものに対して、アレルギーを呈するおそれのある者

(5)本剤の成分に 対して、 アレルギーを呈するおそれのある者
2.重要な基本的注 意 (3)本剤は添加物 としてチ メロサール(水銀化合物)含有している。チメロサール含有製剤の投与(接種)により、過敏症(発熱、発疹、蕁麻疹、紅斑、掻痒等)があらわれたとの報告があるので、問診を十分に行い、接種後は観察を十分に行うこと。  
(1)重大な副反応 1)ショック、アナ フィラキ シー様症状:まれにショック、アナフィラキシー様症状(蕁麻疹、呼吸困難、血管浮腫等)があらわれることがあるので、接種後は観察を十分に行い、異常が認められた場合には適切な処置を行うこと[0.1%未満]。 1)まれにショッ ク、アナ フィラキシー様症状(蕁麻疹、呼吸困難、血管浮腫等)があらわれることがあるので、接種後は観察を十分に行い、異常が認められた場合には適切な処置を行うこと[0.1%未満]。
(2)その他の副反 応 1)過敏症:まれに 接種直後 から数日中に、発疹、蕁麻疹、紅斑、掻痒等があらわれることがある[0.1%未満]。 1)過敏症:まれに 接種直後 から翌日に過敏症状として、発疹、蕁麻疹、紅斑、掻痒、発熱等があらわれることがある[0.1%未満]。
臨床成績-安全性 インフルエンザHA ワクチン 接種後の主な副反応は発赤等の局所反応(11.4%)及び発熱等の全身反応であった。

高齢者(65歳以上)に対するインフルエンザHAワクチンの安全性を、国内5社のワクチンを用いて調査した。

1204例の対象者に2306回の接種が行われ、副反応の発現頻度を接種後3日間に被接種者が有害事象として認めた症状を記入する調査方法により調査した。

その結果、全被接種者の副反応は、発熱などの全身反応が11.3%、発赤などの局所反応が11.6%であった。

接種前麻しん抗体陰 性の健康 小児を対象に、承認時までに166例、市販後1373例について、ワクチン接種後の臨床反応を調査した。

接種後4-14日、特に7-12日を中心として 37.5℃以上の発熱が20%、39℃以上の発熱が約4%に、また軽度の発疹が約12%に認められた。その他の症状として、発熱に伴う咳、鼻汁、食欲減退、熱性痙攣等が見られた。

発熱及び発疹の持続日数は、3日間以内が約80%を占めた。

なお、卵アレルギー患者に対するワクチン投与について、次の報告がされている。

インフルエンザHAワクチンの接種上の禁忌の一つに、「鶏卵、鶏肉、その他鶏由来のものに過敏症を呈するおそれが明らかな者」がある。

これは本ワクチンの製造過程で鶏卵を使用することによる鶏卵成分(精製工程で極力除去しているが、完全とはいえない)の含有からくるものである。以前卵アレルギーがあった患者で、現在、生卵(焼く・茹でたもの含む)や鶏肉を摂食しても過敏症が全く出現しないのであれば、接種は可能である。

インフルエンザHAワクチン接種時に毎回どうするかということになるとすれば、過敏症試験を実施し、以後その結果に基づいてワクチンの接種を考えるのも一つの方法である。

食物アレルギー既往者(男児54例、女児21例・年齢1-8 歳)を対象に、麻しんワクチンの皮膚テストや副反応について検討した。ワクチン原液と10倍希釈液のプリックテスト、100倍希釈液の皮内テストを2種類以上組合せて、3種の皮膚テスト結果の関連性と副反応の予知に関する感度、特異度を比較した。

100倍希釈液の皮内テストは、偽陽性も含めると副反応の予知に対する感度が 88%、特異度が75%と高率であった。

皮膚テスト陰性で全量を一度に接種した通常群は49例、何れかの皮膚テストで偽陽性以上で分割漸増接種した分割群は26例であった。

両群間で年齢、性別、アレルギー疾患の有無、アナフィラキシーの有無、卵除去の有無には相違はなかったが、分割群には卵以外にも除去食品のある児童が多く、総IgE、卵白、牛乳、小麦、ネコのふけに対する特異的IgEが有意に高かった。

副反応が認められた症例は、通常群1、分割群7例であった。8例中6例にアトピー性皮膚炎を合併、5例に即時型反応の既往があった。

副反応の内訳は、入眠1、局所腫脹を伴った発赤7例であった。入眠例は後日抗体価の上昇が認められなかったため、再度分割接種が行われたが、0.2mL接種時点で局所の発赤が見られ、その時点で接種中止となった。

発赤7例中、 4例は全例接種できたが、3例は途中で中止となった。

以上、麻しんワクチンは100倍希釈液の皮内テストを行った上で、接種法を選択することが望ましいと考えられた。2種以上の多種抗原陽性者、又は2種以上除去食品のある者、卵白特異的IgEがclass 3以上、ネコのふけ特異的IgEがclass 1以上の何れかの条件を有する例は、麻しんワクチン接種による局所反応の要注意者と考えられた。

現行の麻しん、おたふくかぜワクチンはニワトリ胎児繊維芽細胞をもちいた組織培養由来で、卵白と交叉反応を示す蛋白は殆ど含まれていない。

このため米国では重度の卵アレルギーを有する小児でも、麻しん及びおたふくかぜワクチン (MMRワクチン含む)接種児童のアナフィラキシー反応のリスクは低く、事前の皮内テストを実施しなくとも接種できるとしている。

我が国でもほぼ同様の考え方であるが、口腔内がしびれて生卵が食べられない人、卵を食べると嘔吐するような重度の人、蕁麻疹のでる人等に対してはワクチン液による皮内反応を実施した方がよいと考える。

またインフルエンザワクチン及び黄熱ワクチンも微量ではあるが卵蛋白が含まれている。RASTスコア5-6、卵摂取後にアナフィラキシー反応などを認める人は、接種を中止するか、事前に接種ワクチン希釈液による皮内テストが要求されている。

皮内テストの方法は日本小児科アレルギー学会において推奨されている方式が一般的である。

アレルギー疾患を理由にかかりつけ医でワクチン接種が困難と判断され、当科ワクチン外来を受診した小児305名のうち、卵白RAST値が陽性の178名と、卵黄RAST値が陽性の115名につき検討した。

まず卵摂取で惹起された臨床症状、現在の卵摂取状況について問診。その後麻しんワクチン原液を用いたスクラッチテスト・100倍希釈液による皮内テストを実施(ゼラチンIgE陽性者にはゼラチンを含まない麻しんワクチン投与)。

  • 皮内テスト陰性者にワクチン接種。
  • 弱陽性者に抗ヒスタミン剤内服投与後ワクチン接種。
  • 強陽性者にはワクチン接種前1週間抗アレルギー剤の内服を行い反応の減弱を確認できた小児にワクチン接種。

上記の接種基準で接種した場合、アナフィラキシー反応を含む重篤な副反応を呈したものは存在しなかった。

卵特異RAST値と麻しんワクチン液による皮内テストの間に相関関係は認められなかった。麻しんワクチン製造過程で使用する細胞はニワトリ胚初代細胞で鶏卵そのものではなく、ワクチン液に含まれる卵白アルブミン量も0.1-052ng/mLと微量である。

今回の検討でも卵RAST値と麻しんワクチン液による皮内テストの間に明らかな相関は認められなかった。しかし、卵摂取によりアナフィラキシー症状を呈したことのある児に関しては、微量ながら卵白アルブミンが含まれることを考慮し、慎重な接種が重要である。

以上、各製剤の添付文書及び各報告からみて『乾燥弱毒生麻しんワクチン』については、卵アレルギーを理由として、接種不可とはされていない。

また、『インフルエンザHAワクチン』についても“接種要注意”であって、“接種不適当者”としては扱われていない。ただし、ワクチンの接種に問題があると考えられる場合、過敏症試験を実施する等の方策を採るべきであるといえる。

また卵アレルギーの小児に対する両者の予防接種によって、発現するであろうアレルギー反応の発生頻度は、報告されている限り同程度ではないかと判断される。

[065.VAC:2005.1.4.古泉秀夫]


  1. インフルエンザHAワクチン添付文書,2004.7.改訂
  2. 乾燥弱毒生麻しんワクチン添付文書,2003.5.改訂
  3. 廣田清明:インフルエンザワクチンの接種状況と副反応;日本医事新報,No.3633(1993.12.11.)
  4. 廣門未知子・他:アレルギー児に対する麻しんワクチン接種の検討[抄録];アレルギー,51(8):622-629(2002)
  5. 神谷 斉:アレルギー児への予防接種;小児科,45(7):1337-1343(2004)
  6. 岡田賢司:私の診療経験から-安全な予防接種のために;臨床と研究,80(11):2069-2074(2003)
  7. 天羽清子・他:卵アレルギー児における麻しんワクチン接種に関する検討;第3回日本ワクチン学会学術集会抄録集,1999.11.20.

代謝拮抗剤と脱毛

日曜日, 8月 12th, 2007

KW:副作用・代謝拮抗剤・脱毛・発現頻度・薬理作用・作用機序・UFT・ユーエフティー・tegafur・uracil

Q:UFT服用中の患者に脱毛が発現している。脱毛の発生頻度の少ない代謝拮抗剤は

A:現在市販中の代謝拮抗剤として、次の薬剤が報告されている。各薬剤の薬理作用及び脱毛の発生頻度は、下記の通りである。

一般名・商品名
(会社名)
作用機序 発現頻度
carmofur(HCFU)

ミフロール錠
(シエーリング)

[適]消化器癌(胃癌、結腸・直腸癌)、乳癌。

ピリミジン系代謝拮抗薬。

腸 管より速やかに吸収され、体内で徐々に5-FUを放出し、5-FUの代謝拮抗作用により抗腫瘍効果を発揮する。

0.1-5%未満
[添付文書, 2003.11]

0.49%

cytarabine(Ara-C)

キロサイド注(日本新薬)

[適]急性白血病。消化器癌(胃癌、胆嚢癌、胆道癌、膵癌、肝癌、結腸癌、直腸癌等)、肺癌、乳癌、女性性器癌(子宮癌、卵巣癌等)-ただし他抗腫瘍薬併用。

DNA polymeraseレベルでの阻害が確実視されている。

従来白血病に使用されてきたが、本剤を組入れた多剤併用療法が固形癌に対し治療効果を高めることが見出され、消化器癌、肺癌、乳癌、女性性器癌等に用いられている。

更にその後、本剤の膀胱内への直接注入療法による抗腫瘍効果が明らかになった。

頻度不明
[添付文書, 2001.9]
cytarabine ocfosfate

スタラシドカプセル
(日本化薬)

[適]成人急性非リンパ性白血病。骨髄異型性症候群(Myelodysplastic Syndrome)。

本剤はara-Cのプロド ラッグであり、体内で活性代謝物のara-Cに代謝された後、腫瘍細胞内でara-CTPとなり、DNAポリメラーゼを阻害することにより抗腫瘍作用を示す。 1-5%未満
[添付文書, 2002.12]

1.2%

doxifluridine(5′-DFUR)

フルツロンカプセル(中外)

[適]胃癌、結腸・直腸癌、乳癌、子宮頸癌、膀胱癌。

本薬は腫瘍組織で高い活性を 有する酵素、ピリミジンヌクレオシドホスホリラーゼ(PyNPase)により5-FUに変換され抗腫瘍効果を発揮する。

5-FUはFdUMPに代謝され、ウラシル由来のdUMPと拮抗し、チミジル酸合成酵素によるDNA合成経路を阻害する。

また、5-FUはFUTPに変換され、ウラシルと同じくRNAにも取込まれてF-RNAを生成し、RNAの機能を障害すると考えられている。

0.1-5%未満
[添付文書, 2002.10]

0.25%

enocitabine(BH-AC)

注射用サンラビン
(旭化成ファーマ)

[適]急性白血病(慢性白血病の急性転化含む)

ヒトの肝、脾、腎及び白血病 細胞で活性物質(シタラビン等)に徐々に変換・代謝されDNA合成を阻害により抗腫瘍作用を示す。 1-10%未満
[添付文書, 2003.10]

7.1%

fludarabine phosphate

フルダラ注(シエーリング)

[適]貧血又は血小板減少を伴う慢性リンパ性白血病。

DNA polymerase、RNA polymerase等を阻害し、DNA及びRNA合成を阻害することにより抗腫瘍効果を発揮する。 ?
[添付文書, 2003.10]
fluorouracil(5-FU)

5-FU錠・注(協和醗酵)

[適]消化器癌、乳癌、子宮頸癌、子宮体癌、乳癌等

抗腫瘍効果は主としてDNA 前駆体の合成阻害に基づくと考えられ、腫瘍細胞内に取り込まれた5-FUはウラシルと同じ経路でF-doxy UMPに転換され、doxy UMPと拮抗してチミジル酸合成酵素を抑制し、DNA合成を阻害する。

他方、5-FUはウラシルと同じくRNAにも組み込まれてF-RNAを生産すること、及びリボゾームRNAの形成を阻害する。

0.1-5%未満
[添付文書, 2004.4]

0.1% ・2%

gemcitabine hydrochloride

ジェムザール注
(イーライリリー)

[適]非小細胞肺癌、膵癌。

本剤(dFdC)は、主に DNA合成が行われているS期の細胞に対して特異的に殺細胞作用を示すプロドラッグであり、細胞内で活性型のヌクレオチドである二リン酸化物 (dFdCDP)及び三リン酸化物(dFdCTP)に代謝され、DNA合成が直接的及び間接的に阻害されるためと考えられている。 1%未満
[添付文書, 2004.3]
hydroxycarbamide(HU)

ハイドレアカプセル
(ブリストル)

[適]慢性骨髄性白血病。

リボヌクレオチドレダクター ゼ阻害により細胞内dNTP含量、特にプリン体(dATP、dGTP)含量を急激に低下させ、DNAの合成を阻害し、細胞増殖を抑制すると考えられている。 0.1-5%未満
添付文書, 2003.2]
mercaptopurine(6-MP)

ロイケリン散(ワイス)

[適]急性白血病、慢性骨髄性白血病

細胞増殖に重要な意義を持つ 核酸の生合成を阻害する。

メルカプトプリンは細胞内でinosinic acidのチオ同族体であるthioinosinic acid(TIMP)に変換し、このTIMPは主としてinosinic acidからのadenylosuccinic acid及びxanthylic acidへの転換を阻害し、adenine、guanine ribonucleotideの生合成を阻害する。

頻度不明 [添付文書,2003.12]
methotrexate

メソトレキセート錠・注
(ワイス)

[適]白血病、絨毛性疾患、乳癌、肉腫、悪性リンパ腫

methotrexate は、葉酸を核酸合成に必要な活性葉酸に還元させる酵素dihydrofolate reductase(DHFR)の働きを阻止し、チミジル酸合成及びプリン合成系を阻害して、細胞増殖を抑制する。正常細胞や感受性の高い癌細胞には能動的に取り込まれ、殺細胞作用を示す。 5-50%[注添付文書, 2004.1]

14%

tegafur(TGF)

フトラフールE錠・注(大鵬)

[適]消化器癌(胃癌、結腸・直腸癌)、乳癌。

経口投与により空腸及び回腸 からよく吸収され、生体内で抗腫瘍作用を有するフルオロウラシル等に徐々に変換される。

フルオロウラシルは、その代謝産物であるFdUMPが、DNA合成経路のdUMPからdTMPへの代謝に必要なチミジン酸合成酵素の活性を抑制することによるDNA合成阻害、及びFUTPがRNAへ取り込まれることによって生じるRNAの機能障害に基づき抗腫瘍作用を示すと考えられている。

0.1-0.5%未満[添付文 書,2003.2.改訂]

0.8%・0.18%・0.2%

tegafur・ gimeracil・oteracil potassium

ティーエスワンカプセル(大鵬)

(TS-1)

[適]胃癌、結腸・直腸癌、頭頚部癌。

本剤はFT、CDHP、 Oxoの3成分を含有する製剤であり、経口投与後の抗腫瘍効果は体内でFTから徐々に変換される5-FUに基づいている。

CDHPは主として肝に多く分布する5-FU異化代謝酵素のDPDを選択的に拮抗阻害することによって、FTより派生する5-FU濃度を上昇させる。

この生体内5-FU濃度の上昇に伴って腫瘍内では5-FUのリン酸化代謝酵素である5-フルオロヌクレオチドが高濃度持続し、抗腫瘍効果を増強する。

Oxoは経口投与により主として消化管組織に分布してorotatephosphoribosyltransferaseを選択的に拮抗阻害し、5-FUから5-フルオロヌクレオチドへの生成を選択的に抑制する。

その効果は本剤投与により5-FUの強い抗腫瘍効果を損なうことなく、消化器毒性が軽減されると考えられている。

5-FUの作用機序は主として活性代謝物であるFdUMPがdUMPと拮抗し、thymidylate synthase及び還元葉酸とTernay complexを形成することによるDNA生合成阻害による。

またFUTPに変換されて、RNA機能を障害するといわれている

0.1-0.5%未満[添付文 書,2004.6.改訂]
tegafur・ uracil

ユーエフティカプセル(大鵬)

(UFT)

[適]頭頚部癌、消化器癌(胃癌、結腸・直腸癌、肝臓癌、胆嚢・胆管癌、膵臓癌)、肺癌、乳癌、膀胱癌、前立腺癌、子宮頸癌

抗腫瘍効果はテガフールから 徐々に変換されるフルオロウラシルに基づいている。

ウラシルによるテガフールの抗腫瘍効果の増強はリン酸化及び分解酵素によるフルオロウラシルとウラシルの酵素学的な差によりフルオロウラシルの分解が抑制されることに起因し、特に腫瘍内においてフルオロウラシルとそのリン酸化活性代謝物が高濃度に維持されることによるものと考えられている。

0.1-0.5%未満[添付文 書,2003.7.改訂]

0.14%・0.10%(単独)

癌治療用の薬物は、細胞増殖を阻害する。従って、腫瘍細胞とともに、増殖する正常細胞、特に骨髄、胃腸管上皮、毛嚢において毒性が発現する。

悪性腫瘍では、正常組織における細胞分裂と異なり組成細胞がより高率に分裂を行っているので、細胞毒性薬の選択性が生じるとされている。

抗癌剤による脱毛は、毛根の胚細胞の障害に基づくと報告されている。特に頭髪が弱く、陰毛は比較的強い。

薬剤の種類と投与総量が関係するが投与総量が同じ場合少量連続投与より大量間歇投与のほうが起こりやすい。

代謝拮抗剤による脱毛の発生頻度は、上表に見られるとおり報告されているが、代謝拮抗剤の承認適応は全て同一ではないため、副作用発現頻度の少ない薬剤を選択肢として対象を選択することは困難である。

また、上記の報告通り抗癌剤の薬理作用に由来する副作用であり、頭皮中への薬剤移行濃度の減少を目的に、頭皮を冷却する等の工夫もされているが、期待する効果は得られていない。

[065.UFT:2004.12.6.古泉秀夫]


  1. 高久史麿・他監修:治療薬マニュアル;医学書院,2004
  2. 梅田悦生:常用医薬品の副作用 改訂第2版;南江堂,1999
  3. 麻生芳郎・訳:一目で分かる薬理学-薬物療法の基礎知識-第3版;メディカル・サイエンス・インターナショナル,1997
  4. 古泉秀夫・編:副作用発現名称による薬剤一覧;薬事新報社,1994

ダイドロネル錠の服用時間

日曜日, 8月 12th, 2007

KW:用法・用量・服用時間・ダイドロネル錠・エチドロン酸二ナトリウム・etidronate disodium・骨代謝改善剤

Q:ダイドロネル錠の記載がされた処方せんに、1日1錠とする指示のみが書かれているが、本剤の服用時間としては、何時がいいのか。就寝前では何か問題があるか。

A:ダイドロネル錠(住友製薬)は、1錠中にetidronate disodium(エチドロン酸二ナトリウム) 200mgを含有する骨代謝改善剤である。

患者個々人に対する服用方法の指示は、医師の処方の範囲であり、処方せんに記載されていない場合、原則的には処方医に確認することが求められる。

次に参照として、添付文書中に記載されている服用上の注意事項を紹介する。

骨粗鬆症の場合

  1. 本剤の吸収をよくするため、服薬前後2時間は食物の摂取を避けること。
  2. 通常、成人にはエチドロン酸二ナトリウムとして200mgを1日1回、食間に経口投与する。投与期間は2週間とする。再投与までの期間は10-12週として、これを1クールとして周期的間歇投与を行う。なお、重症の場合には400mgを1日1回、食間に経口投与することができる。投与期間は2週間とする。
  3. 相互作用-併用注意-同時(服用前後2時間)に併用(摂取)しないこと
  • 食物、特に牛乳や乳製品のような高カルシウム食
  • カルシウム、鉄、マグネシウム、アルミニウムのような金属を多く含むミネラル入りビタミン剤又は制酸剤等[本剤の投与前後2時間以内は摂取及び服用を避けること。本剤はカルシウム等と錯体を作ること、また動物実験で非絶食投与により、吸収が著しく低下することが確認されている。]

以上、添付文書中に『1日1回、食間』とする記載はされているが、特に服用時間の指定はされていない。更に実地医家の本剤処方時の服用時間の指示を見ると『本剤の経口投与での吸収率は極めて低く(1-10%)早朝空腹時の内服が勧められる。内服後の飲食・ジュース、コーヒーの飲用でも、更に40-60%吸収率が低下する。』とする報告がされている。

ただし、患者が遠距離通勤者である場合、午前6時に朝食を喫食するとすると午前4時に、午前7時に朝食を喫食するとすると午前5時に起床して薬を服用することになり、患者に与える負担が大きいと考えられる。本剤食間投与の理由は、胃内に食物等が存在することによる吸収率低下の回避であり、患者の生活習慣に合わせて服用時間を設定することに特に問題があるとは考えられない。従って、夕食後に2時間の間隔を開けることが困難でなければ、『就寝前』に服用時間を指示することに何等問題はないと考えられる。

[035.1.DTI:2004.9.27.古泉秀夫]


  1. ダイドロネル錠200添付文書,2002.6.改訂
  2. 伊東晴夫・他:疾患別処方解説-骨粗鬆症;http://www.medks.com./DIweb,2004.9.6.

帯状疱疹の治療薬

日曜日, 8月 12th, 2007

KW:薬物療法・帯状疱疹・herpes zoster・水痘-帯状疱疹ウイルス・varicella-zoster virus・VZV・神経痛・持続性神経痛・帯状疱疹後神経痛・post-herpetic neuralgia・PHN

Q:帯状疱疹の療治に使用される薬剤、特に鎮痛剤について

A:水痘-帯状疱疹ウイルス(varicella-zoster virus:VZV)の感染症である帯状疱疹(herpes zoster) は、片側性、末梢神経支配領域に沿って2-5mm大の小水疱が多発(疱疹)、激しい神経痛を伴う。一部では皮疹治癒後も、慢性、持続性神経痛(帯状疱疹後神経痛:post-herpetic neuralgia、PHN)が残り、頻度は60歳から急増する。

[1]抗ウイルス療法:皮疹出現5日以内に行う。

  • 軽症-中等症Rp.1)valaciclovir hydrochloride——500mg/錠——1回1000mg—–1日3回

    バルトレックス錠(GSK)

    *本剤はaciclovirのプロドラッグである。

  • 中等症-重症Rp.1)aciclovir—250mg/v—1回5mg/kg–1日3回—-点滴静注 7日間

    点滴静注用ゾビラックス(住友-GSK)又は

    Rp.2)vidarabine—-300mg/v—-1回5-10mg/kg–1日1回—-点滴静注 5日間

    アラセナ-A注(持田)

[2] 神経痛に対して

  • Rp.1)mefenamic acid—-250mg/C—–1日750mg

    ポンタールカプセル(三共)又は

    Rp.2)naproxen—–100mg/錠——–1日300mg

    ナイキサン錠(田辺)

NSAIDsの処方に対しては、消化器系の副作用を回避するため粘膜防御因子強化作用を有する胃炎・潰瘍治療薬(teprenone等)を併用する。皮疹及び神経痛を伴う場合、上記[1]及び[2]の処方を併用する。

なお、上記以外に『帯状疱疹』の適応が記載されているNSAIDs等として次記の薬物がある。

一般名 商品名(会社名) 1日投与量
flufenamic acid aluminium オパイリン錠(大正富山) 消炎 750mg/日
ketoprofen カピステンカプセル(キッセイ) 鎮痛・消炎
150mg/日
tiaramide hydrochloride ソランタール錠(藤沢) 鎮痛・消炎
300mg/日
vacciniavirua 接種家兎炎症皮膚抽出液 ノイロトロピン錠(日本臓 器) 帯状疱疹後神経痛16単位/ 日

その他、『症候性神経痛』又は『神経痛』の適応のある薬剤として、次記のものがある。

一般名 商品名(会社名) 1日投与量
acetaminophen カロナールカプセル(昭和薬化) 900-1500mg
aspirin バファリン錠(ブリストル) 4-12錠
アスピリン末(各社) 1-4.5g
diclofenac sodium ボルタレン錠(ノバルティス) 75-100mg
dibucaine hydrochloride ネオビタカイン注(三菱ウェルファーマ) 適量
epirizole メブロン錠(第一) 150-450mg
ibuprofen ブルフェン錠(科研) 600mg
indometacin インダシンカプセル(万有) 25-75mg
salicylamide サリチルアミド(岩城) 3-6g
sodium salicylate カシワドール注(三菱ウェル ファーマ) 1管
サルソニン注(扶桑) 0.5-1g/回適宜

[035.1.VAR:2004.1.26.古泉秀夫]


  1. 山口徹・他総編:今日の治療指針;医学書院,2003
  2. 高久史麿・他監修:治療薬マニュアル;医学書院,2003
  3. ノイロトロピン特号添付文書,2003.4.改訂

ダイヤサンについて

日曜日, 8月 12th, 2007

KW:薬名検索・ダイヤサン・ダイヤザン・ヨードホール・ヨウ素・ iodophors・povidone iodine・消毒剤

Q:消毒剤「ダイヤサン」とはどのような 薬剤か

A:ダイヤサン(旭硝子)について、iodophorsを主成分とする消毒 剤であるとする報告がみられる。但し、iodophors→povidone iodineの記載がされている。

有機ヨード化合物:ヨードホルム(ポピドンヨード、ポロクサマー・ヨード)とする報告もされており、更にpovidone-iodineについてpolyvinylpyrolidoneをキャリアーとして、ヨウ素を10%含有するヨードホールであるとする報告もみられる。

従ってiodophorsという名称は、物質の一般的名称ではなく、『ヨウ 素と高分子又は界面活性剤との複合体』を示す総称であるとすることができる。

なお、iodophorsについて次の報告がみられる。

『食品工場の床面やパイプの殺菌に多く使われている。市販されている iodophorsは

  • [1] 薬用-有効ヨウ素1.75%
  • [2] 食品工業用-有効ヨウ素1.75%及び3%

非イオン界面活性剤を(11%)をキャリアーとして、リン酸(10%)によ りpH:5に調整した内容の製剤である』。

その他、本品の商品名としてヨウ素と非イオン性界面活性剤を配合した『ダイ ヤザン、ダイヤザン・クリーン(伊勢化学)』とする報告もされている。

いずれにしろ現在医療機関で使用されている『povidone iodine』と類似のものであり、『povidone iodine』との比較で、より効力が強いということではないと考えられる。

[011.1.DAI:2003.12.9.古泉秀夫]


  1. 古泉秀夫・代表編:医薬品情報Q&A[3];株式会社ミクス, 1985
  2. 男全精一・他編:薬名検索辞典;薬業時報社,1984
  3. 日本防菌防黴学会事典編集委員会・編:防菌防黴剤事典;日本防菌防黴学 会,1986
  4. 高野光男・他:食品の殺菌-その科学と技術-;幸書房,2001

タラの木の薬効について

日曜日, 8月 12th, 2007

?KW:漢方薬・健康食品・タラノキ・タラの木・ウドモドキ・タラッポ・糖尿病・代替医療・伝承医療

Q:糖尿病に効果があるということで現在タラの木を削って服用している、本当に効果があるのか確認して欲しい。

A:タラの木[別名:ウドモドキ、タラッポ]タラノキ属、うこぎ科、怱木(怱は木偏)。Araliaelata(Miq.)Seem.。

薬用部分 樹皮、根皮(怱木皮;ソウボクヒ)。6?8月に樹皮・根皮を採集し水洗い後刻んで日干しにする。
成分 皮・樹皮にはサポニンのα-タラリン、β-タラリン、アラロサイドの他、プロトカテキュ酸、オレアノール酸、コリン、タンニン、β-シトステロール、スティグマステロールなどを含む。葉にはトリテルペノイドのα-ファストシン、β-ファストシンが含まれている。
薬効・薬理 怱木皮の水性エキスは、アドレナリン過血糖、ブドウ糖過血糖、アロキサン過血糖に対して制糖作用がある。煎剤のアドレナリン拮抗作用は、コリンによるもので、β-タラリンには制糖作用がなく、プロトカテキュ酸は正常なウサギに投与すると逆に血糖値が上昇する。日本では民間で健胃、利尿、抗糖尿病薬として糖尿病、腎臓病、胃潰瘍に用いられる。
使用法 糖尿病、腎臓病、胃腸病には、怱木(樹皮・根皮)1日量5?10gに400mLの水を加え、半量になるまで煎じつめて3回に分けて服用する。トゲの部分5?10gを500mLの水で煎じて服用すると高血圧症によいといわれるが、胃腸障害などの副作用に注意を要する。

その他、怱木について次の報告がされている。

  • 怱木根(ソウボクコン):9?10月。根を掘るか、根皮を剥ぎ、日干しにする。風湿を去る。小便を利す、お血を散らす、腫毒を消すの効能がある。リウマチ性関節炎、腎炎による水腫、肝硬化による腹水、急・慢性肝炎、胃痛、淋濁、血崩、打撲傷等を治す。
  • 怱木白皮(ソウボクハクヒ):怱木の樹皮部(二次皮部)。採集1年中。乾燥した樹皮は剥げやすく、ざらざらして縦横にしわがあり、堅い針刺がまばらにある。外面は灰白色から灰褐色、内面は黄白色で光沢がありなめらかである。断面は繊維状。樹枝には密に針刺がある。僅かに香りがあり、噛むと粘液性である。成分:茎皮、根皮はトリテルペノイド系サポニン、タンニン、コリン、精油を含む。薬効と主治:リウマチによる麻痺痛、打撲傷を治す。樹皮と根皮にはいずれも健胃・収斂・利尿・制糖作用がある。糖尿病、腎臓病、胃潰瘍を治す。

以上の各報告からタラの木が、糖尿病の民間療法に使用されているのは事実であるが、糖尿病の場合、治療の不徹底が致命的になる可能性もあり、あくまで補助的な療法に留めるべきである。

なお、本品の有用部分は、樹皮・根皮であり、木質部の幹の部分は、特に薬効は標榜されていない。従って、タラの木を切り取り灰白色部の外皮を水洗いした後、内皮を削り取って刻んだ後乾燥することが必要である。

 [1998.3.31.古泉秀夫]


  1. 三浦博・監修:原色牧野和漢草薬図鑑;北隆館,1988.p.338
  2. 上海科学技術出版社・編:中薬大辞典第3巻;小学館,1985.p.1606,1607.

タンポポの薬理作用

日曜日, 8月 12th, 2007

KW:漢方薬・タンポポ・蒲公英・薬理作用・薬効・?タラクサステロール・コリン・イヌリン・ペクチン

Q:タンポポから製造されたもので、糖尿病に有効なものがあると聞いたが、どの様なものか。

A:蒲公英(漢方名:ホコウエイ)の全草にはタラクサステロール、コリン、イヌリン及びペクチン等が含まれる。

同属植物の薬用蒲公英(taraxacumofficinale)の根はタラクソール、タラクセロール、φ-タラクサステロール、タラクサステロール、β-アミリン、スチグマステロール、β-シトステロール、コリン、有機酸、果糖、庶糖、ブドウ糖、グルコシド及び樹脂、ゴム等を含む。

葉はルテイン、ビオラキサンチン、プラストキノン、ビタミンC50?70mg/kg及びビタミンD5?9mg/100gを含む。

花はアルニジオール、ルテイン及びフラボキサンチンを含む。

花粉はβ-シトステロール、5α-スチグマスト-7-エン-3β-オール、葉酸及びビタミンCを含む。

緑色の萼にはプラストキノンを含み、花茎はβ-シトステロールとβ-アミリンを含む。

本品にはこれ以外にコウメストロール、ビタミンB21.43μg/g、カロチン7.7?8.8mg%を含む等の報告がされている。

蒲公英の薬理作用として注射液はinvitroで、黄色ブドウ球菌の耐性菌株、溶血性連鎖球菌に対し比較的強い殺菌作用がある。肺炎双球菌、脳膜炎菌、ジフテリア菌、緑膿菌、プロテウス菌、赤痢菌、チフス菌及びカタル菌にもかなりの殺菌作用がある。

蒲公英抽出液1:400はinvitroで結核菌を抑制するが、煎剤1:100は無効である。1:80の水煎剤はECHO11ウイルス細胞病変を延長緩和する。アルコール抽出物31mg/kgはレプトスピラを殺す作用があり、ある種の真菌にも抑制作用を持つ。

中国以外の研究では、動物に対して利胆作用を持ち、臨床上は慢性の胆嚢痙攣及び結石症に有効である。また利尿作用、特に門脈性水腫に有効であると考えられているが、恐らく植物中に大量のカリウムが含まれているためであろう。また根及び全草を苦味健胃剤や軽い下剤に用いることもある。葉の浸剤を内服するとヘビの咬傷を治療することができ、婦人の乳汁分泌にも有効であるとされる。

その他、白花蒲公英の全草成分について、タラクサステロール、タラキサンチン、タラキシン、コリン、イヌリン、マンニット、アスパラギン、イノシット、パルミチン酸、セロチン酸、オレイン酸、リノール酸、糖類、ゴム質、カリウム塩、カルシウム塩などを含むとする他、利胆、利尿作用、慢性胆嚢痙攣、結石症、門脈性水腫に対し有効で、この作用は植物中に大量に含まれるカリウム塩によると考えられる。

蒲公英は解熱、健胃、消炎、利尿、催乳薬として乳癰、消化不良、眼疾腫痛、皮膚潰瘍、小便不利、感冒、淋疾、乳汁不足などに用いられる。肝臓病、貧血病には全草1日量10gを煎じて服用するとする報告もみられる。

しかし、以上の各報告から判断する限り蒲公英が、直接糖尿病に有効であるとする証明は得られていないといえる。

また、健康食品等について調査したが、調査の範囲内で、健康食品として該当するものは検索できなかった。

[510.FD18.038.TAR][1991.11.18.・1999.4.9.一部修正.古泉秀夫]


  1. 上海科学技術出版・編:中薬大辞典[4];小学館,1985,p.2418
  2. 原色牧野和漢薬草大図鑑;北隆館,1988,p.578
  3. 国立国際医療センター薬剤部医薬品情報管理室・編:FAX.DI-News,No.233,1992.1.8.より転載

タコ・イカ・エビが原料として使用されている薬剤・健康食品

日曜日, 8月 12th, 2007

KW:健康食品・機能性食品・魚介類・イカ・タコ・エビ・タウリン・taurine・キチン・キトサン・動物性食物繊維・創傷被覆保護剤・人工皮膚・アレルギー

Q:アレルギーが心配ということで、薬剤あるいは健康食品で、タコ・イカ・エビが原料として使用されているものの調査依頼があったが、調査可能か。

A:イカ・タコ・エビ等が含有する成分のうち、医薬品原料として使用される成分にタウリンがある。タウリンについては、次の紹介がされている。

  • タウリン(taurine):タウリンは1846年Gmelinによって発見された。哺乳動物、魚類、軟体動物、甲殻類等の筋肉中に存在し、ウシ、ヒツジ、イヌ、ヒトの胆嚢にも胆汁酸と結合して存在する。1885年Jamesによって初めて合成された。牛の胆汁及び貝、イカ、タコ等の水性軟体、節足動物の肉汁エキス中に多量に存在している。
    現在、医薬品原料として使用されているタウリンは合成品であり、イカ・タコ・エビ等の抽出成分ではないが、タウリンに対するアレルギーがある患者の場合、イカ・タコ・エビ等に存在するタウリンによるアレルギーの発現は予測される。
  • キチン・キトサン:エビの殻から抽出された物質に、今まで全く知られていなかった特異的な有用性があることが次々と明らかになり、今やキチン・キトサンは、健康食品の代名詞ともいえる存在になっている。
    キチンはエビ、カニ等の甲殻類の外殻やイカ、貝類などの外皮に含まれる多糖類で、消化吸収されない動物性食物繊維であるが、本品は細菌細胞膜やキノコにも含まれると報告されている。
    キトサンは、キチンを高濃度の熱アルカリ溶液に浸すと変化してできる物質で、弱い酸に溶ける性質があり、これらを総称してキチン質と呼んでいる。
    主成分のキチンの生体親和性、抗菌性、保湿性を利用した人工皮膚の研究・開発の成果が広く知られるようになり、現在では、皮膚の創傷被覆保護剤として欠かせない存在になっている。その後の研究によりキチン・キトサンが、皮膚疾患の外用としてだけではなく、服用によっても治癒効果が高いことが判明し、火傷や創傷による皮膚の再生を促進させる作用が指摘されている。
    1992年エビの殻やカニの甲羅に含まれる食物組織・キトサンの血圧上昇抑制効果が新聞で報道されている。その他、現在ではコレステロール低下作用、免疫賦活作用等も報告されている。
    高濃度の熱アルカリ処理により精製された食物繊維を健康食品として摂取した場合、イカ・タコ・エビ等に対するアレルギーを有する患者にアレルギーが発現するか否かは、データが入手されていないため判定できない。

いずれにしろ、質問された内容に基づいて調査した結果、現段階で入手できた情報は、上記の通りである。


  1. 福山 忠男・編:健康食品便覧;食品と科学社,1985
  2. 症状別健康食品大百科;日正出版,1997

葱根及南蛮毛の薬効・薬理作用について

日曜日, 8月 12th, 2007

Q:葱根及び南蛮毛の薬効・薬理について

A:葱根とはウコギ科の植物葱木(AraliachinensisL.)の根又は根皮の異名である。

茎皮、根皮はトリテルペノイド系サポニン、タンニン、コリン、精油等を含む。リウマチ性関節炎、腎炎による水腫、肝硬変による腹水、急・慢性肝炎、胃痛、淋濁、血崩、打撲傷、瘰癧、癰腫を治す。

南蛮毛とはイネ科植物トウモロコシ属に属する玉蜀黍(ぎょくしょくしょ)の雌花の花柱の異名である。玉米鬚(ぎょくべいしゅ)。トウモロコシ(ZeamaysL.)の花柱。

成分として脂肪油2.5%、精油0.12%、植物ゴム質3.8%、樹脂2.7%、苦味配糖体1.15%、サポニン 3.18%、アルカロイド0.05%を含有する他、クリプトキサンチン、ビタミンC、パントテン酸、イノシトール、ビタミンK、シトステロール、スチグマステロール、リンゴ酸、クエン酸、酒石酸、蓚酸等を含む。

[薬理]

  1. 利尿作用:玉米鬚はヒトに対して利尿作用があり、塩化物の排出量を増加させるが、その作用は比較的弱いものである。この場合、水性エキスのメタノール不溶解部分を透析したものが最も強い利尿作用を持ち、投与経路に係わらず著しい効果を現す。この利尿作用は腎外性のもので、腎臓に対する作用は非常に弱い。
  2. 血糖降下作用:玉米鬚の醗酵製剤は、ウサギに対し非常に顕著な血糖降下作用を示す。
  3. 利胆及び止血作用:玉米鬚の製剤は、胆汁の排出を促すと共に、その粘度を下げ、胆汁色素の含有量を低下させるので、利胆薬として再発性慢性胆嚢炎や胆汁排出障害の胆管炎の患者に用いることができる。また、血液の凝固過程を速め、血液中のプロトロンビンの含量を増加し、血小板数を高めるので、止血剤と利尿剤をかねて膀胱及び尿路の結石に応用できる。
  4. その他、南蛮毛には利尿、血圧降下、胆汁分泌促進作用のあることが報告されている。南蛮毛は利尿、利胆薬として腎疾患水腫性の脚気、肝炎、胆道結石、黄疸等に用いられ、近年、糖尿病、高血圧にも有効であると報告されている。

日本では民間薬として単味で使用され、急性腎炎、妊娠時のむくみに南蛮毛1日量8?10gを500mLの水で煎じたものを3回に分けて服用する等の報告がされている。

[510.FD18.015.4ARA][1991.8.27.・1999.4.2.一部修正.古泉秀夫]


  1. 上海科学技術出版社・編:中薬大辞典第三巻;小学館,1985
  2. 上海科学技術出版社・編:中薬大辞典第一巻;小学館,1985
  3. 三橋博・監修:原色牧野和漢薬草大図鑑;北隆館,1988
  4. 国立国際医療センター薬剤部医薬品情報管理室・編:FAX.DI-News,No.156,1991.9.4.より転載

ソルティアについて

日曜日, 8月 12th, 2007

Q:病院からの院外処方箋中にソルティア錠の記載があるが、これはどのような薬剤か

A:処方箋に記載されているということであるが、薬剤としての検索は医療用・OTCを含めて検索できなかった。処方箋発行病院に確認したところ、本来「指示書」に記載し、院外薬局において患者自身が購入する健康食品であるの回答が得られた。

ソルティア(soltia)100錠/瓶

  • 輸入・発売元:(株)ベンファクト・コーポレーション
  • 東京都港区赤坂7-9-5赤坂Qビル4F
  • 電話(03)3583-7038FAX.(03)5563-1715

本品は、”ヒバマタ”から製造した栄養補助食品である。ヒバマタは、ノルウェー沖に成育するオリーブ色の海草である。ノルウェーでは、乾燥させてお茶として愛飲されているが、これはヒバマタが、生物を維持するために必要なミネラルを多く含んでいるからである。このヒバマタに含まれているミネラルを、そのまま冷凍乾燥して閉じこめたのが「ソルティア」であるとされている。

11種類のミネラルが含まれ、特に亜鉛、カルシウム、ヨウ素、鉄、銅、カリウムなど、日常の食事では不足しがちなミネラルが豊富。緑色の小さな粒を毎日1粒食べるだけで、自然のままのミネラルを補うことが可能であるとされている。

成分含有量
ミネラル
  • 亜鉛16.4mg
  • カリウム4.38mg
  • カルシウム8.67mg
  • ナトリウム6.2mg
  • マグネシウム1.50mg
  • 鉄0.29mg
  • ヨウ素110μg
  • マンガン5.3μg
  • 銅0.53μg
  • リン0.35mg
  • 硫黄12.8mg
繊維
  • 食物繊維205.5mg
ビタミン
  • カロチン0.25μg
  • ビタミンA0.45IU
  • ビタミンB10.10μg
  • ビタミンB20.70μg
  • ナイアシン2.7μg
  • パントテン酸0.7μg
  • ビタミンE30.5μg
標準成分
  • 水分7.8g
  • 蛋白質4.4g
  • 脂質3.3g
  • 炭水化物67.6g
  • 灰分14.7g
  • 標準成分100g当

[7319.011.1SO][1996.2.16.・1999.3.19.一部改訂.古泉秀夫]


  1. 日大板橋病院薬剤部医薬品情報管理室・私信,1996.2.16.
  2. (株)ベンファクト・コーポレーション・私信,1996.2.16.
  3. ソルティアパンフレット
  4. 国立国際医療センター薬剤部医薬品情報管理室・編:FAX.DI-News,No.1413,1996.11.6.より転載

セロベース錠の粉砕について

日曜日, 8月 12th, 2007

KW:物理化学的性状・特殊用例・粉末化・錠剤粉砕・セロベース錠・ドンペリドン・domperidone

Q:セロベース錠の粉末化又は簡易懸濁法による調剤は可能か

A:セロベース錠(日本ケミファ-日本薬品工業)は、1錠中にドンペリドン(domperidone)10mgを含有するフィルムコート錠である。

剤形 温度安定性 湿度安定性 光安定性 水溶解性 力価 融点 総合判定
×

domperidoneは白色-微黄色の粉末である。本品は氷酢酸に溶け易く、メタノール又はエタノールにやや溶け難く、イソプロパノール又は クロロホルムに極めて溶け難く、水又はエーテルに殆ど溶けない。融点:約243℃(分解)。

製剤の40℃-75%RH条件下におけるバラ錠のポリスチロール容器充填・密栓では6カ月間にわたって何等変化が見られなかったとする報告がさ れている。

ただし、原薬の温度・湿度・光安定性及び味・臭等に関する情報は、セロベース錠の資料からは入手できなかった。

domperidoneの他の資料によれば、本品原薬について『臭いはなく、わずかに苦い、吸湿性無し』とする報告がされているほか、室内散光下(約1000ルクス)無色・気密瓶保存3ヵ月で変化なく、同条件の太陽光下保存では3日でわずかな外観変化が認められるとしている。また、pH:2・ 4・6・8の水溶液について、無色アンプル保存で、室温散光下(約1000ルクス)の場合、7日保存で薄層クロマトグラフィーに変化が認められたの報告もされている。

以上の各報告から本剤を粉末化し、用時水を加えて懸濁状にすることに特に問題はないと考えられるが、domperidoneのドライシロップを水で懸濁し、液シロップと配合した場合、domperidoneが遊離し苦味を呈するとする報告が見られる。経管投与の場合、味覚変化は問題がないと考えるが、粉末化した製剤を懸濁液の状態で保存することは、避けるべきである。なお、他剤と混合し懸濁液化した場合の配合変化情報については、入手不能。

[014.4.DOM:2004.9.28.古泉秀夫]


  1. セロベース錠添付文書,2004.3.作成
  2. セロベース錠インタビューフォーム,2004.1.
  3. ナウゼリン錠・ドライシロップ・細粒1%インタビューフォーム,1992.7.

雪茶について

日曜日, 8月 12th, 2007

KW:健康食品・雪茶・セツチャ・ムシゴケ科・地茶・ジチャ・太白茶・タイハクチャ・Snow Tea

Q:最近TVで話題となった雪茶について

A:雪茶(セツチャ)は、ムシゴケ科の植物、雪茶の地衣体と報告されている。

  • 異名:地茶(ジチャ)、太白茶(タイハクチャ)。Snow Tea、Xue^ Cha’。
  • 原植物:Thamnolia vermicularis(Ach.)Asahina。地衣体は白色あるいは灰白色で、管状をなし、単一のものと僅かな分枝を持つものがあり、先端がやや湾曲し、回虫状を呈し、高さ3-7cm。断面は中空、質は少し柔らかい。臭いはなく、味は苦く茶に似ている。雪茶は太く、しっかりとしており、白色で、味が苦いものがよいとされている。産地は雲南、四川。
  • 成分:タムノール酸、スクァマト酸、ベオミセス酸が含まれる。更にD-アラビトール、マンニトールが含まれる。
  • 薬効・主治:清熱し渇きを解く、脳を醒まし神を安らかにするの効能がある等の報告がみられる。

その他、雪茶とはチベット高原から雲南省北西部標高4000m以上の夏でも積雪の残る高地にしか生息しない貴重なもので、石岩などに自生するムシゴケ科の地衣植物。

豊富なビタミンやミネラル成分以外に雪茶特有の成分「雪茶素」(中国化学院昆明植物研究所の分析の結果発見された雪茶の構成主成分地茶酸、D-アラビトール、マンノースなどから構成されるデプシド酸類化合物で特にすぐれた種々の活性作用を持ち、健康増進若さの維持などには極めて有益な成分)を含み、地衣類の中でも雪茶は古来より健康維持の為に飲まれている健康茶である。

明の時代から皇帝に献上され宮廷秘茶として飲まれていた。

雪茶は豊富なビタミンやミネラル成分(アミノ酸18種類、ミネラル微量元素9種類、ビタミン6種類)以外に雪茶特有の成分「雪茶素(vermicuarim)」を含み、この成分が胃腸で行われる脂肪分の消化・吸収に直接働き、脂肪分を中和分解させる等の報告も見られる。

ただし『雪茶』をほぼ3カ月飲用した女性でGOT、GPTの急激な上昇と動悸、倦怠感が、約4カ月飲用した女性で急激な食欲減退とともに体重減少が見られ、医療機関の受診によりGOT、GPTの上昇と黄疸が見られたため、雪茶の飲用を中止させたところ、症状の消失が見られたとの医師からの報告があったとされているため、『健康バラエティー番組』の放送内容を鵜呑みにし大量に飲用することは避けるべきである。

[015.9.SNO:2004.1.27. 古泉秀夫]


  1. 上海科学技術出版社・編:中薬大辞典;小学館,1998
  2. http://www.holos- web.com/yukicya2/,2004.1.12.
  3. 都道府県等から報告されたいわゆる健康食品に係わる健康被害例について(お知らせ);厚生労働省食品安全部基準審査課新開発食品保健対策室,平成15年12月22日(資料-00501)

生石灰の毒性について

日曜日, 8月 12th, 2007

KW:毒性・中毒・生石灰・quick lime・酸化カルシウム・calcium oxide・乾燥剤・脱水剤

Q:乾燥剤としても使用される生石灰の毒性について

A:生石灰(quick lime)は、酸化カルシウム(calcium oxide)の別名である。

  • 本品を強熱したものは定量するとき、酸化カルシウム(CaO)98.0%以上を含む。
  • 本品は白色の堅い塊で粉末を含み臭いはない。
  • 本品は熱湯に極めて溶け難くエタノール(95)に殆ど溶けない。
  • 本品1gは水2,500mLに殆ど溶ける(水を注ぐと、暫時の後、激しく発熱して水酸化カルシウムとなる)。
  • 本品は空気中で徐々に湿気を及び二酸化炭素を吸収する。
  • 用途:薬品や食品の防湿(酒、弁当等)又は乾燥、あるいは脱水に用いる。土壌改良剤としても用いられる。日本薬局方収載。
  • 毒性:成人(経口)致死量10g、マウス(経口)LD50:7.3g/kg。酸化カルシウムは皮膚、粘膜に附着すると水酸化カルシウムとなり、局所の腐蝕を起こす。工業中毒としてしばしば見られるが、稀酢酸(皮膚)、4%-塩化アンモニウム水溶液(結膜など)で汚染部を速やかに洗浄した後、一般火傷と同様の治療を行う。
  • 作用:水分と反応して脱水、発熱(加温)。発熱及びアルカリ性を示し、粘膜腐食作用、潰瘍を起こす。経口摂取した場合、消化管粘膜や組織内の水分と反応して強く発熱する。長時間使用されていた生石灰は、水分を徐々に吸収し、大部分は消石灰(水酸化カルシウム)あるいは炭酸カルシウムになるため、毒性は低い。生石灰はアルカリ腐食剤、乾燥剤が新しいほど生石灰の比率が高い。生石灰そのものの毒性は弱いが、粘膜に附着しやすい。口内や消化管粘膜に附着し、脱水、発熱作用を起こし、刺激糜爛、出血を起こす。

症状

  • 経口:口唇・咽頭・食道・胃等、直接触れた局所の糜爛、浮腫、疼痛。時に嚥下困難。重篤な場合には食道狭窄。
  • :粉末固着による結膜・角膜の激痛、浮腫、潰瘍。
  • 皮膚:化学熱傷性の発赤、疼痛、水疱形成。

処置

  • 経口:胃洗浄・催吐は禁忌(消化管と再接触によって腐蝕増強)。活性炭は嘔吐を誘発させるため不可。下剤の投与は不可。摂取後1時間以内であれば、牛乳(120-240mL、幼児15mL/kg以下)、卵白、粘膜保護剤(アルロイドG、マーロックス)を頻回に投与。消化管糜爛、潰瘍、瘢痕狭窄に対してはステロイド療法(プレドニゾロン1-2mg/kg又はデキサメサゾン0.1mg/kg/日)を3週間を限度に実施。3週間以降に食道狭窄が見られた場合、ブジー挿入等拡張法、外科的措置。
  • :直ちに流水で十分洗眼。長時間続けるほどよい(結膜円蓋内がpH試験紙で中性になるまで洗浄。対症療法。)
  • 皮膚:附着部分を流水で十分洗浄及び対症療法。

 [63.099.CAL:2003.9.16.古泉秀夫]


  1. 薬科学大辞典 第2版;広川書店,1993
  2. 国立国際医療センター薬剤部医薬品情報管理室・編:医薬品情報,26(4):341-342(1999)
  3. 西 勝英・監修:薬・毒物中毒救急マニュアル 改訂6版;医薬ジャーナル社,2001
  4. 鵜飼 卓・監修:第三版 急性中毒の手引き;薬業時報社,1999
  5. 第十四改正日本薬局方解説書;廣川書店,2001