Archive for 8月 12th, 2007

トップページ»

点眼剤の副作用-霧視

日曜日, 8月 12th, 2007

KW:副作用・霧視・点眼剤・点眼薬・かすみ目・抗コリン作用・アドレナリン遮断作用・添加物

Q:副作用として『霧視』の報告されている点眼薬

A:薬剤に起因する副作用である『霧視(かすみ目)』について、『一過性のもので、持続しても1週間程度であるが、抗精神病薬の有する抗コリン作用及びアドレナリン遮断作用により、遠方眼が惹起されるが、その時の毛様筋の弛緩に由来する』とする報告がみられる。また、水晶体混濁の前駆症状として『霧視』が報告されている。

その他、角膜上皮、角膜実質が障害され、角膜に炎症が生じた状態(角膜炎)について、薬剤毒性によるものと、薬剤により感染症が誘発されて生じる場合とがあるが、軽症の場合、異物感、充血、眼脂。中等度から重症では著しい眼痛を伴い、霧視、視力低下が生じる。更に角膜混濁の進行例では、羞明、霧視を訴えることもあるの報告がされている。

なお、点眼剤に起因する『霧視(かすみ目)』の調査の結果は、下表の通りである。

[分類]一般名・商品名(会社名) 副作用の標記 発現機序等
白内障治療薬 glutathione

タチオン点眼用液
(山之内)

一過性の霧視 発現理由未詳。

本剤は添付錠剤を溶解液(塩化ベンザルコニウム・ホウ酸)に溶解して使用する点眼液で、錠剤中に添加物として炭酸水素ナトリウム・塩化ベンザルコニウム・マクロゴール・亜硫酸水素ナトリウム・エデト酸ナトリウムが配合されていることにより一過性の霧視が発現するのではないかと予測される。

緑内障治療 befunolol hydrochloride

ベントス点眼液(科研)

霧視 発現理由未詳。

類薬で散瞳、調節麻痺に関連する副作用として、霧視等の発現が考えられている。

betaxolol hydrochloride

ベトプティック点眼液
(アルコン)

霧視 発現理由未詳。

類薬で散瞳、調節麻痺に関連する副作用として、霧視等の発現が考えられている。

brinzolamide

エイゾプト1%点眼液
(アルコン)

霧視 発現理由未詳。

本剤の点眼後一時的に眼がかすむことがあるの報告。

bunazosin hydrochloride

デタントール点眼液
(参天)

霧視 発現理由未詳。
類薬で散瞳、調節麻痺に関連する副作用として、霧視等の発現が考えられている。
carteolol hydrochloride

ミケラン点眼液(大塚)

霧視 発現理由未詳。

類薬で散瞳、調節麻痺に関連する副作用として、霧視等の発現が考えられている。

dipivefrin hydrochloride

ピバレフリン点眼液(
参天)

霧視 発現理由未詳。

本剤投与により散瞳、調節麻痺を惹起-羞明、霧視等を訴える患者には症状回復まで自動車等危険を伴う機械の操作従事回避。

dorzolamide hydrochloride

トルソプト点眼液(万有)

点眼直後に見られる眼のかすみ(1.8%) 発現理由未詳。

本剤は添加物としてヒドロキシエチルセルロース・マンニトール等を含有する僅かに粘稠性の製剤であるとされている。

本剤点眼により本剤の粘稠性に由来する一過性のかすみ目が見られると推定。

isopropyl unoprstone

レスキュラ点眼液(上野-藤沢)

霧視 発現理由未詳。

本剤投与中に発現する角膜障害の前駆症状として霧視、異物感、眼痛等の自覚症状とする記載が添付文書中に見られる。

latanoprost

キサラタン点眼液(ファイザー)

霧視 発現理由未詳。

で霧視、異物感、眼痛等の自覚症状は、本剤による角膜障害の前駆症状として発現する可能性が推定されている。

levobunolol hydrochloride

ミロル点眼液(杏林-科研)

霧視 (0.4%) 発現理由未詳。類薬で霧視、異物感、眼痛等の自覚症状は、本剤による角膜障害の前駆症状として発現する可能性が推定されている。
nipradilol

ハイパジール点眼液(興和)

霧視 発現理由未詳。

類薬で霧視、異物感、眼痛等の自覚症状は、本剤による角膜障害の前駆症状として発現する可能性が推定されている。

timolol maleate

チモプトール点眼液(参天)

リズモンTG点眼液(わかもと)

霧視 発現理由未詳。

本剤は持続性点眼液であり、点眼直後眼表面で涙液と接触することにより点眼液がゲル化するため、霧視又はべたつきが数分間持続することがある。

H1遮断薬 levocabastine hydrochloride

リボスチン点眼液(日本新薬)

霧視(感) 発現理由未詳。

本剤による角膜障害が報告されており、その前駆症状として発現する可能性が推定される。

その他 apraclonidine hydrochloride

アイオピジン点眼液(アルコン)

霧視 発現理由未詳。

承認適応外使用(1-2回/日、28日間点眼)時に発現。

[065.MIS:2003.12.16.古泉秀夫・2004.3.15.改訂]


  1. 高久史麿・他監修:治療薬マニュアル;医学書院,2003
  2. タチオン点眼液添付文書,2003.4.改訂
  3. アイオピジン1%点眼液添付文書,1999.2.改訂
  4. ビバレフリン0.04%・0.1%添付文書,2003.2.改訂
  5. チモプトールXE0.25%・0.5%添付文書,1999.9.作成
  6. トルソプト点眼液0.5%・1%添付文書,1999.12.改訂
  7. レスキュラ点眼液添付文書,2003.6.改訂
  8. キサラタン点眼液添付文書,2001.1.改訂
  9. ミロル点眼液0.5%インタビューフォーム,2001.1.作成
  10. 高柳一成・編:薬の安全性-その基礎知識;南山堂,2000
  11. 高橋隆一:自覚症状から探る薬の副作用;第一メディカル,2000
  12. 高橋隆一:薬の重大な副作用がわかる本;株式会社ミクス,1998
  13. エイゾプト1%点眼液添付文書,2002.10.作成
  14. リズモンTG点眼液添付文書,2003.2.改訂
  15. リボスチン点眼液0.025%添付文書,2003.7.改訂

甜茶について

日曜日, 8月 12th, 2007

KW:健康食品・テンチャ・甜茶・食効・抗アレルギー作用・バラ科

Q:甜茶とはどの様なものか

A:甜茶(てんちゃ)→バラ科植物の葉を用いた甘いお茶。rubs suavissimus S.Lee。ルブス・スアヴィシィムス・エス・リー。

中国南部・桂林の奥地に広がる山岳地帯で飲用されているお茶の一種。甜茶の抽出成分には、鼻アレルギーを著しく抑える働きのあることが三重大学医学部-サントリーの共同研究で確認され、1994年10月26日?、東京で開催された日本アレルギー学会で発表された。

甜茶はバラ科のお茶(ふつうのお茶はツバキ科)で、中国に自生する。別名「開胃茶」と呼ばれ、食欲増進、解熱などに効果があるとされる。三重大学医学部耳鼻咽喉科の鵜飼らは、動物実験で甜茶の抽出成分に抗アレルギー作用のあることを発見、くしゃみ、鼻水などで苦しむ通年性の鼻アレルギー患者21人でその効果を試験した。

抽出成分を飴に混ぜ(40mg/粒)、1日3回、4週間続けてなめてもらった。

投与2週間後からくしゃみ、鼻水などの症状が65%で改善され、4週間後では75% に達した。うち47.8%は著しく改善、鼻アレルギー治療薬並の効果だった。アレルギーは体内の肥満細胞から分泌されるヒスタミンなどが引き金となって起こるが、甜茶抽出成分はヒスタミンの分泌を抑えることも確認した。

その他、甜茶には自然界でも極めて珍しいGOD型(ゴッド)ポリフェノールが含まれているとする報告も見られる。

また、甜茶の熱水抽出物の薬理作用の検討を見ると、cycloxygenase阻害作用や肥満細胞からのヒスタミン遊離抑制作用を認め、更にラットにおいてcompound48/80や抗原による皮膚血管透過性の亢進を抑制するが、ヒスタミンによる皮膚血管透過性亢進に対しては影響がないことを報告している。甜茶抽出物質は抗ヒスタミン作用を持たず、肥満細胞からのケミカルメディエーター遊離を抑制することにより抗アレルギー作用を示すことが示唆される等の報告も見られる。

現在、甜茶関連の各種製品は健康食品として市販されており、保険医療機関での使用は困難である。 サントリーは甜茶ティーバック20袋入り 3000円で市販している。

[1998.8.28.古泉 秀夫]


  1. くしゃみ、鼻水治療に効果-中国に自生-甜茶;読売新聞,1994.10.3.<夕刊>
  2. 花粉症によく効く?「甜茶」に人気;サンケイ新聞,1995.3.30.
  3. 甜茶パンフレット;滋賀県製薬株式会社学術課・私信,1996.4.22.
    〒520-34 滋賀県甲賀群甲賀町大字滝878番地
  4. サントリー中央研究所・私信,1996.4.22.(TEL.075-962-1780)
  5. 鵜飼 幸太郎・他:通年性鼻アレルギーに対する甜茶エキスキャンディーの臨床検討;耳展,38):519-532(1995)

テオフィリンとカフェインの相互作用

日曜日, 8月 12th, 2007

?KW:相互作用・テオフィリン・theophylline・カフェイン・caffeine・OTC薬・ドリンク剤・キサンチン系

Q:テオフィリンを服用している患者がカフェインを含有するドリンク剤を良く買って飲んでいるが、キサンチン系の薬剤の併用に相当すると考えられるが問題はないか

A:Theophyllineは、気管支平滑筋を拡張し、フォスフォジエステレース阻害による細胞内c-AMPの増加、アデノシン受容体拮抗、細胞内Ca2+の分布調節、肥満細胞からのメディエータ遊離抑制作用などの機序を持つとされており、theophylline 製剤の添付文書中に相互作用として「他のキサンチン系薬剤又は中枢神経興奮薬との併用により、過度の中枢神経刺激作用が現れることがあるので、これらの薬剤との併用はしないことが望ましいが、やむをえず投与する場合には減量するなど慎重に投与すること」の記載がされている。

一方、caffeineは緩和な中枢神経系刺激作用を示し、延髄の呼吸、血管運動並びに迷走神経を刺激する。心筋の収縮力を高め、また冠動脈を拡張させることにより強心作用を現す。

更に、腎血流量の増加に伴う糸球体濾過亢進並びに腎尿細管への直接作用によるNaイオン、Clイオンの再吸収の抑制により利尿作用を現す他、脳血管を収縮させるとされているが、その添付文書中に相互作用に関する記載はされていない。

但し、theophyllineとcaffeineの併用により胃腸症状・頻脈の発現を報告する資料は存在する。

caffeineは茶葉、コーヒー等にも含有されており、その意味では相互作用の面で扱いにくい存在といえるが、 theophylline服用患者が大量のcaffeineを摂取することは原則的には避けるべきであり、ドリンク剤の飲用について、全面的な禁止が困難であれば、caffeine無添加あるいは含有量の少ないドリンク剤とするよう服薬指導すべきである。

[222.FD15.015.21TH][1991.6.18.・1999.3.31.一部修正.古泉秀夫]


  1. テオロング錠添付文書,1990
  2. カフェイン添付文書,1986
  3. 飲食物・嗜好品と医薬品の相互作用研究班・編:飲食物・嗜好品と医薬品の相互作用;薬業時報社,1991
  4. 国立国際医療センター薬剤部医薬品情報管理室・編:FAX.DI-News,No.104,1991.6.19.より転載

ツベルクリンの単位換算

日曜日, 8月 12th, 2007

KW:物理化学的性状・ツベルクリン・単位換算・TU・Mantoux test・PPD・Purified Protein Derivative・精製ツベルクリン蛋白体

Q:ツベルクリン皮内反応の国内単位はμgであるが、海外ではTU単位が用いられている。単位換算量はどの程度か

A:米国ワシントン大学医学部が編纂するワシントンマニュアルによれば、『ツベルクリン反応(Mantoux法で投与した5TU)陽性が、潜在性結核を診断する唯一の手段である』とする記載がみられる。

このTU単位は、U.S.Tuberculin Unitの略号であるとされる。

米国ケンタッキー大学医学部の独自マニュアルによれば、Mantoux testはTST(tuberculin skin testing)の標準手技であり、PPD(Purified Protein Derivative:精製ツベルクリン蛋白体)の皮内注射によって施行される。

結核に対するtine test(尖叉試験)はCDC勧告により最早行われていない。PPDは3段階の強さを持つ:1TU(first)、5TU(intermediate)、 250TU(second)である。1TUは過敏反応が疑われるヒトに用い(陽性皮膚反応の既往)、5TUは標準初回スクリーニング試験で使われる。 5TU量で陰性のヒトは250TUに反応することもあるとされている。

国内で市販されている『精製ツベルクリン(日本BCG)』は

  • 一般診断用:1μg/瓶・0.25μg/瓶(一人用)1mL中0.5μg相当溶液としその0.1mLを皮内注射するとされている。一般診断用の最終調製液の薬用量は 0.05μgであり、米国における標準初回スクリーニング試験用が5TUとされていることから5TU=0.05μgと判断することが出来る。従って1TU =0.01μg(国内標準品)と考えられる。

[014.4.TUB:2005.3.8.古泉秀夫2005.4.19.改訂]


  1. 高久史麿・他監訳:ワシントンマニュアル 第9版;MEDSi, 2002
  2. 渡辺良孝・編:ポケット医学英和辞典;医学書院,1981
  3. 飯野靖彦・監訳:スカット・モンキーハンドブック;MEDSi, 2003
  4. 国立国際医療センター医薬品情報管理室・編:医薬品情報,27(5): 420-421(2000)

「つかれ酢」とはどの様なものか

日曜日, 8月 12th, 2007

KW:健康食品・つかれ酢・つかれす粒・クエン酸・サツマイモ・配合処方

Q:カプセル入りの健康食品とされる“つかれ酢”について。製造は広島県でされているとのこと。

A:「つかれ酢」について、次の新聞報道が見られる。

「元気が出る」ブームを映してか「つかれす粒」という健康食品が見直されている。サツマ芋から製造した自然食品で「オロナミンC」等に含まれているクエン酸が主成分。中高年を中心に、OLや若いサラリーマンにも口コミで広がっている。

「つかれす粒」は、つかれ酢本舗(本社東京)が十年ほど前に発売したもので、小さな白い粒が小箱に300個(120g)入っており、値段は500円。成分はクエン酸の他、乳糖、澱粉等。かってはお年寄りの間で人気を集めたものらしく、広島、滋賀両県の老人クラブ連合会も推薦している。

ここにきて若い世代に広がっているのは、甘味のほとんどない味が受けたためのようだ。丸の内のOLは「初めて飲んだ時はとても酸味が強く抵抗があったが、そのうち酸っぱさが体に効くような気がし始めた」と言う。1箱に入った錠剤をほぼ1週間で飲むので、ドリンク剤を毎日飲むより安心感がある。

つかれ酢本舗では、「最近、クエン酸をたしなむサークルが全国各地に広がり、北海道や九州からも電話やハガキで注文が舞い込むようになったとか」日本全国に「元気」が波及するかどうか。

[日本経済新聞社-日経流通1986.5.15.]

つかれ酢本舗[TEL.03-3953-8945]によれば、本品は散及び粒状の製品があり、散はクエン酸100%の製品で、粒状製品は、次の配合内容としている。尚、製造は西川製薬[TEL.03-3955-4633]でされている。

配合処方

1粒中

  • カルシウム ……………………20mg
  • 澱粉 ……………………36mg
  • 乳糖 ……………………120mg
  • タルク ……………………2mg
  • クエン酸ナトリウム ……………………120mg

尚、クエン酸について、次の報告がされている。

炭水化物(糖、澱粉)、脂質類(数種のアミノ酸)や蛋白質類などが摂取された後、生体内で受ける運命とクエン酸との関連は密接不可分である。この関係を明確にしたのがH.A.Krebs(ドイツ人のちに英国籍-1953年生体内酸化機構の研究でノーベル生理医学賞授与)で、今日クエン酸サイクル、トリカルボン酸サイクル又はクレブスサイクルといわれる輪環学説である。

栄養素類は生体内に移行後、先ず無酸素下の分解反応を受け、次に酸素下反応をへてカロリー発生し炭酸ガスや水を排泄する。反応中は常にクエン酸となり、次に直ぐ数種以上の一定の有機酸類に、順序正しく段階的に変化しつつ第1回目のサイクル反応が終りとなる。生体が生命であり生活する限りこのサイクルは持続する。

クエン酸サイクル説中、特に要となっている三つの物質がある。

  1. アセチル・コエンチームA:栄養素が生体内で、無酸素下異化反応を受けた結果、絶えず産生されて生体内に溶存している。
  2. オキサル酢酸:酸素下反応で、クエン酸サイクル反応が進展して、最終産生物質として体中に出現する。
  3. クエン酸:[1]と[2]がサイクル進行中に、生体内で出会い頭に縮合してできる。

有機酸類の必要性はオキサル酢酸を常に十分に生体内に作ることであり、作る体勢を何時も準備することである。

[1992.3.4.古泉秀夫][1998.10.9.一部修正]


  1. SDIC・私信,1992
  2. つかれ酢本舗・私信,1992
  3. 秋谷七郎:人体内におけるクエン酸の作用と運命;質疑応答[2];日本医事新報社,1978
  4. 国立病院医療センター薬剤部医薬品情報管理室・:FAX.DI-News,No.290,1992.4.1.

チメロサールの性状等について

日曜日, 8月 12th, 2007

KW:薬名検索・チメロサール・thimerosal・殺菌・防腐剤・アルキル水銀・エチル水銀・中毒

Q:チメロサールの性状等について

A:チメロサール(thimerosalum)[劇薬]、[英]thimerosal。

別名:チオメルサール(Thiomersal)、エチル水銀チオサリチル酸ナトリウム。エチル水銀塩(ethylmercury salts)。

  • 本品を乾燥したものは定量するときチメロサール(C9H9O2SHgNa=404.81)98.0%以上を含む。水銀含有量:約49%。
  • 本品は白色-淡黄色の結晶性粉末で、僅かに特異な臭いがある。本品1gは水1mL又はエタノール9mLに溶け、エーテル又はベンゼンには殆ど溶けない。本品の水溶液(1→100)のpHは6.0-7.0である。本品は光によって徐々に変化する。
  • 本品は水、生理食塩液に溶け易く、その溶液は石鹸、メタノールによく混和する。1%-水溶液のpHは約6.7である。本品は空気に対して安定であるが、光によって影響される。
  • [別名]マーゾニン、マーサイオレート。
  • [貯法]:遮光・気密容器。
  • [劇薬]:0.2%以下を含有する外用薬は除く。指定医薬品は劇薬のみである。
  • [毒性]:2-4gで死亡。LD50:ラット(経口)63mg/kg、マウス(皮下)66mg/kg。長期経口投与実験による最小中毒量はネコで1mgHg/kg/日以下。
  • [本質]殺菌・防腐剤。
  • [名称]Thimerosal(USP)、Thiomersal(BP)、Thiomersal(東独)、Mercurothiolate Sodique(FP)、sodium o-(ethylmercurithio)benzoate。
  • [来歴]1926年Kharaschが創製したもので、マーキュロクロムなどと同じ有機水銀化合物(エチル水銀安息香酸塩)であるが、後者のように着色しないことと、殺菌力の強いことで広く用いられる。
  • [薬効]本品は殺菌作用及び静菌作用を持ち、0.1%の水溶液は連鎖球菌、ブドウ球菌、大腸菌などを死滅させる。本品の0.001%水溶液でも、連鎖球菌・ブドウ球菌・大腸菌等の発育を阻止することができる。
    C6H5SHg-となって作用すると考えられている。本品はカビに対しても効果を持つが、芽胞菌に対しては無効である。刺激性は弱く、組織蛋白質を凝固しないので、深達性がある。本品を可溶性抗原、血清、蛋白質に加えても混濁、凝固又は沈殿を起こさない。この場合抗原の免疫を阻害せず、殺菌力にも影響しない。トキシン、トキソイド等の生物学的製剤やその他の医薬品の防腐剤として使用された。また毒性は比較的少なく、普通の使用濃度では溶血を起こさない。
  • [副作用]本剤はエチル水銀の基を有するため、メチル水銀と同様な中枢神経障害を主体とするアルキル水銀中毒を起こしうる。昭和45年(1970年)に、本剤を防腐剤として使用していた人血漿を短期間に大量投与された小児が、アルキル水銀中毒を起こして死亡した例が報告された。また本品に対して過敏なヒトでは、適用後、局所の炎症を起こすことがあり、長期連用は慎むべき薬物である。
  • [適用]本品はマーキュロクロムのように溶液が着色しないので、人体組織や繊維を汚染することがなく、石鹸、エタノールと混和しても効力が変わらない。従って広く消毒用、防腐用に用いられれていた。本品の使用濃度は使用部位又は個人の感受性差により異なるが、一般消毒用としては0.1%-水溶液又は生理食塩液が用いられる。
使用濃度 適応部位
0.1%-水溶液又は生理食塩液 皮膚表面、深部及び敏感な粘膜、化膿性皮膚疾患、創傷一般の消毒・洗浄剤
0.02%-生理食塩液 眼科用消毒・洗浄剤
0.1-0.02%水溶液 耳鼻咽喉科用消毒・洗浄剤
0.1%-チンキ剤 手術洗浄用
0.5%-吸水軟膏又は親水軟膏 皮膚糸状菌
1%-チンク油製剤 皮膚糸状菌
0.01%-水溶液 鵞口瘡に塗布又は含嗽剤

本品水溶液は、酸、重金属塩により沈殿を起こすので、水溶液調製には新鮮蒸留水を用いる。また長期保存すると次第に分解する。

thimerosalは蛋白質との配合により殺菌効力が低下しないという特性から従来生物学的製剤の防腐剤として配合されていた。しかし、最近では、日本でも、thimerosalを添加しないワクチンや、thimerosalを減量したワクチンが増え、thimerosalをワクチンの保存剤としてできるだけ添加しない方向になっている。

ワクチンに添付されている添付文書でthimerosalの添加を確認することが可能である。保存剤として添加されるthimerosalは、従来、ワクチン1mL中に0.1mgの添加がされていたが、最近ではワクチン1mL中に0.01mgにthimerosalの添加は減量されている。また、ワクチンの「接種上の注意」欄に、「本剤は添加物としてチメロサール(水銀化合物)を含んでいる。チメロサールを含んでいる製剤の投与(接種)により、過敏症(発熱、発疹、じんましん、紅斑、かゆみ等)があらわれたとの報告があるので、問診を十分に行い、接種後は観察を十分に行うこと。」という注意事項が記載されている。

その他、2000年6月アメリカ家庭医アカデミー(AAFP)、アメリカ小児科医アカデミー(AAP)、予防接種諮問委員会(ACIP)、公衆衛生協会(PHS)は、ワクチンに保存剤として含まれるthimerosalに関して共同声明を行った。

『thimerosalは水銀を成分として含み、混入感染を防ぐ目的でワクチン保存剤として使用されている。水銀の及ぼす身体への影響には一般の関心が高いこと、ワクチンから水銀を除去することが小児の水銀への暴露を減少させることにつながることを考慮して今回の声明がなされた。

この声明で、AAFP・AAP・ACIPはthimerosal無添加ワクチンへの迅速な移行を求めている現行の政策を支持した。しかし十分量のワクチン供給が達成されるまでは、保存剤としてthimerosalを含むワクチンの使用はやむを得ないとした。ワクチン中のthimerosalによって健康上の被害を被ったという証拠は今のところ存在しない。

米国では2000年3月以降、thimerosalを保存剤として含まないB型肝炎ワクチンの接種を受けることが可能になった。b型インフルエンザ菌ワクチン (Hib)、ジフテリア・破傷風トキソイド・百日咳ワクチン(DTaP)においてもthimerosal無添加ワクチンがあり、また無添加への移行が進んでいる。この結果、小児が通常のワクチン・スケジュールで暴露されるエチル化水銀の最大量は約60%、すなわち187.5μg→75μg程度の量に削減される。

  [011.1.THI:2006.2.18.古泉秀夫]


  1. 第八改正日本薬局方解説書;廣川書店,1971
  2. 第七改正日本薬局方解説書;廣川書店,1961
  3. http://www.eiken.city.yokohama.jp/infection_inf/thimerosal1.htm,2006.2.18.
  4. http://idsc.nih.go.jp/iasr/21/247/fr2474.html,2006.2.18.
  5. 西 勝英・監修:薬・毒物中毒救急マニュアル 改訂6版;医薬ジャーナル,2001
  6. 後藤 稠・他編:産業中毒便覧 増補版;医歯薬出版株式会社,1992

中性電解水について

日曜日, 8月 12th, 2007

KW:滅菌・消毒・中性電解水・電解中性水・中性機能水・中性殺菌水・電解次亜水

Q:中性電解水とはどの様な水か

A:中性電解水は『電解中性水・中性機能水・中性殺菌水』などとも呼ばれている水で、高い殺菌力を持つとする報告が見られる。

生成される水は、pHが中性領域(微弱酸性 pH6.4前後)にあり、かつ、生成される全ての水が同様の性質を持っているため、以下の利点があるとされる。

  • 全ての生成された水が利用可能である。
  • 利用後の水を無処置で直接下水道に排水することが可能。
  • 十分な水量を連続供給することが可能。

従来使用されていた強酸性水(電解酸性水)は、電極の一方に生成される強酸性水を利用するため、他の電極にできるアルカリ性水の利用法がなければ廃水として扱わざるを得ないという非効率的な面があったが、中性電解水では、生成される水の全てが使用可能であるとされている。

原料水として使用するのは水道水であり、また、下水道排除基準にも合致しており、排水時に処理を施す必要はないとされる。通常使用する水道水に食塩を添加し、電気分解して得られる次亜塩素酸ナトリウムを主成分とする水であり、使用する機器によっては、残留塩素濃度を10-40ppmの範囲で3段階切替が可能だとされている。

従って、中性電解水は水道法の基準を満たす安全な水であり、十分な残留塩素濃度を保ち、殺菌力の強いHClOが高い濃度に維持されるため、

  • ほとんどの細菌・ウィルスを10-30秒以内に殺菌・不活化することが可能である。《B型・C型肝炎ウィルス・耐性黄色ブ菌・O-157大腸菌に対応》
  • 有効塩素濃度が長時間保たれることで、夜間など診療時間外にユニット内に水分が滞留している間も殺菌力が維持される。
  • 歯科領域において術後含嗽用として、患者への殺菌水の利用が可能である。

等の報告がされている。

参考資料

永井百彦・他:電解中性水の矯正歯科領域への応用;北海道矯正歯科学会誌27(1):68-72,1999

試験菌 処理前 30秒後
O-156 490,000個 0
大腸菌 9,100,000個 10個以下
サルモネラ菌 7,500,000個 10個以下
黄色ブドウ球菌 9,700,000個 10個以下
腸炎ビブリオ 240,000個 10個以下

腸炎ビブリオを試験菌とした、魚介類の汚染除去試験において、水道水、洗剤稀釈水、電解中性水(電解次亜水)、次亜塩素水(100ppm)、オゾン水(1.4ppm)のそれぞれに期待する殺菌効果はなかったとする報告も見られる。

電解中性水中の次亜塩素酸濃度は、消毒剤としてみた場合、低濃度であり、電解中性水単独で、完全な消毒効果が得られるとは考えられない。 しかし、初期処理水として、野菜等の洗浄や手指洗浄用として使用するのであれば、一定の効果は期待できると思われる。

[615.28. HCL:2005.6.3.古泉秀夫]


  1. 残留塩素濃度補正システム(EPIOS-02 / EPIOS ECO SYSTEM);http://www.epios.co.jp/news_denkai1.htm,2005.5.29.
  2. 旭硝子エンジニアリング株式会社;http://www.agec.co.jp/h/h13.htm,2005.5.10.
  3. 清水康弘:水産物の洗浄による滅菌技術開発;三重県科学技術振興センター;http://www.mpstpc.pref.mie.jp/project/kyodo5/kyodo52.pdf,2005.5.29.

治験記号GW-102について

日曜日, 8月 12th, 2007

KW:薬名検索・治験記号・GW-102・SN-308・SN-3081・GR-43175C・GR-43175・片頭痛・偏頭痛・群発頭痛・コハク酸スマトリプタン・sumatriptan succinate

Q:GW-102の治験記号で表記される薬剤について

A: 治験記号「GW-102」について、次の報告がされている。

  • コハク酸スマトリプタン(sumatriptan succinate)(Glaxo Smith Kline)。
  • 鎮痛剤、中枢神経系用薬。
  • [適]片頭痛、群発頭痛。
  • 同義語:SN-308、SN-3081、GR-43175C;suproserin;GR-43175;Imigran

調剤時の剤形の選択

日曜日, 8月 12th, 2007

KW:物理化学的性状・剤形・錠剤粉砕・脱カプセル・剤形選択

Q:錠剤・カプセル剤の他に、散剤・顆粒剤・口腔内崩壊錠等が市販されている製剤の場合であっても、錠剤の粉末化あるいは脱カプセル化する方法で調剤してよいか

A:各薬剤の剤形は原薬の安定性、服用の利便性等を較量し、使用目的によって、その医薬品が最も効力を発揮すると考えられる剤形で製造されている。

従って、散剤・顆粒剤等が市販されている製剤では、錠剤・カプセル剤を粉末化して市販の散剤に変える等の便宜的な調剤を行ってはならない。

また、医師が処方せん上に薬品名とともに剤形の記載をした場合には、当該製剤が市販されている際には、『保険医療機関等では厚生労働大臣の承認する医薬品を使用するの原則』からいって、市販されている剤形の製品を調剤すべきであり、薬剤師の勝手な判断で錠剤・カプセル剤を粉末化する等の便宜的な調剤をすることは認められていない。

ただし、市販製剤として散剤・顆粒剤がなく、患者の病態から経管投与等の特殊な投与方法を取らざるを得ない場合には、剤形変更による安定性、安全性等を検討し、錠剤・カプセル剤を粉末化することがあるが、この場合にも処方医の了解を得た上で行うか、処方せん上に粉末化の指示が記載されている場合にのみ行うのが本来である。

一方、病院薬局等において散剤・顆粒剤の使用頻度が甚だ低く、デッドストックになる可能性のある場合、処方医と協議して錠剤・カプセル剤の粉末化を行うことがあるが、この際にも医師の了解を得た上でのことであり、医師が定期的に処方する意図があるとした場合、デッドストックとならない範囲の量を購入する。

調剤薬局の場合であっても、市販の製剤がなく、やむを得ず剤形変更をせざるを得ない事例では、処方医の了解を得た後に調剤することが必要である。また、市販の製剤はあるがその剤形の製剤の使用が甚だ少ない場合、処方医の了解が得られれば、粉末化等の剤形変更は可能であるが、了解が得られない場合には、市販製剤を購入せざるを得ない。

[014.4.TAB:2004.9.28.古泉秀夫]


  1. 基本医療六法;中央法規,2001

チメロサールの殺菌力

日曜日, 8月 12th, 2007

KW:滅菌消毒・チメロサール・殺菌力・thimerosal・水銀性剤・エチル水銀・アルキル水銀中毒

Q:消毒薬としてのチメロサールの殺菌力は、どの水準に分類されるのか

A:消毒薬の殺菌力を主体とした分類として、『水準』を用いる分類法があるが、各水準は次の通り定義されている。

高水準消毒薬

(high-level disinfection)

(high-level disinfection) 大量の芽胞の場合を 除いて、全ての微生物を殺滅。
中水準消毒薬

(intermediate disinfection)

芽胞以外の全ての微 生物を殺滅するが、中には殺芽胞性を示すものもある。
低水準消毒薬

(low-level disinfection)

結核菌などの抵抗性 を有する菌及び消毒薬に耐性を有する一部の菌以外の微生物を殺滅。

チメロサール(thimerosal)については、次の報告がされている。

本品を乾燥したものを定量するとき、thimerosal(C9H9HgNaO2S:404.81)98.0%以上を含む。 thimerosalは白色-淡黄色の結晶性の粉末で、僅かに特異な臭いがある。thimerosalは水に極めて溶け易く(1g/1mL)、エタノールにやや溶け易く(1g/9mL)、エーテル又はベンゼンに殆ど溶けない。本品の水溶液(1→100)のpHは6.0-7.0である。1%水溶液のpHは約 6.7である。本品は空気に対して安定であるが、光りにより徐々に変化する。

  • 貯法:遮光した気密容器。
  • 劇薬(0.2%以下を含有する外用薬を除く。指定医薬品は劇薬のみである。)
  • 本質:殺菌、防腐剤。
  • 名称:Thimerosal[USP]、Thiomersal[BP]、sodium o-(ethylmercurithio)benzoate、Thiomersal[東独]、Mercurothiolate Sodique[FP]。ethylmercurithiosalicylate

1926年にKharaschが創製したもので、マーキュロクロムなどと同じ有機水銀化合物であるが、マーキュロクロムのように使用部位の着色がないこと、殺菌力が強いことから広く用いられていた。本品の水溶液やチンキには、安定剤としてモノエタノールアミンを0.1%程度加える。

  • 薬効:本品は殺菌作用及び静菌作用を持つ。本品は黴に対しても効果を持つが、芽胞菌に対して無効である。刺激性は弱く、組織蛋白を凝固しないので、深達性である。
0.1%-水溶液 連鎖球菌、ブドウ球 菌、大腸菌を死滅。
0.001%-水溶液 連鎖球菌、ブドウ球 菌、大腸菌の発育を阻止。
1:500- 1000 結核菌無効・胞子無 効
  • 副作用:本剤はエチル水銀基を有するため、メチル水銀と同様な、中枢神経障害を主体とするアルキル水銀中毒を起こしうる。昭和45年に、本剤を防腐剤として使用していたヒト血漿を短期間に大量投与された小児が、アルキル水銀中毒を起こして死亡した例が報告された。また、本品に対して過敏な者では、適用後、局所の炎症を起こすことがあり、長期連用は慎むべき薬品である。
  • 適用:本品はマーキュロクロムのように溶液が着色しないので、人体組織や繊維を汚染することがなく、石鹸、エタノールと混和しても効力が変わらない。

本品の使用濃度は使用部位又は個人の感受性差により異なる。また可溶性抗原を混和しても混濁しないので、トキシン、トキソイドなどの生物学的製 剤やその他の医薬品の防腐剤とする。

0.1%-水溶液又 は生理食塩液 一般用消毒(皮膚の 表面、深部及び敏感な粘膜の消毒殺菌、化膿性皮膚疾患、創傷一般の消毒洗浄)
0.02%-生理食塩液 眼科用
0.1-0.02%- 水溶液 耳鼻咽喉科用に使用。
0.1%-チンキ剤 手術の清浄用
0.5%-吸水軟膏 又は親水軟膏・1%-チンク油製剤 皮膚糸状菌症
0.05%-水溶液 鵞口瘡に塗布又は含嗽
0.04-0.02% -水溶液 患部の湿布
0.02-0.01% -水溶液 尿道、膀胱の洗浄
0.1%-水溶液 タンポン又は直接注 入し産婦人科に使用。

本品の水溶液は酸、重金属塩により沈澱を起こすので、水溶液調製には新鮮蒸留水を用いる。また長期保存により次第に分解する。

thimerosalの作用菌種に関する報告を見る限り、『芽胞菌、結核菌』に無効とする報告が見られるため、消毒薬の作用強度から見ると『低水準消毒薬』に分類される消毒薬である。

[615.28.THI:2004.7.5.古泉秀夫]


  1. 小林寛伊・編:改訂消毒と滅菌のガイドライン;へるす出版,2004
  2. 国立国際医療センター薬剤部医薬品情報管理室・編:医薬品情報,26(7):704-705(1999)
  3. 第八改正日本薬局方解説書;廣 川書店,1971
  4. 第七改正日本薬局方解説書;廣川書店,1961
  5. 綿貫 

鎮痛剤誘発性頭痛について

日曜日, 8月 12th, 2007

KW:語彙解釈・副作用・鎮痛剤誘発性頭痛・薬剤乱用性頭痛・Analgesic abuse headache・エルゴタミン誘発性頭痛・慢性連日性頭痛

Q:鎮痛剤誘発性の頭痛があるという新聞記事を見たが、これの原因等について

A:鎮痛薬や頭痛治療薬であるエルゴタミン製剤を頻繁に服用すると、依存性が強まり、かえって痛みに敏感になり、頭痛が連日発生する場合がある。この頭痛を『鎮痛剤誘発性頭痛(薬剤乱用性頭痛)』といい、明け方や早朝に痛むのが特徴で、元の頭痛が片頭痛でも緊張型頭痛でも惹起される。原因の詳細は不明であるが、服用する鎮痛薬に依存性を強める無水カフェイン等が配合されている例が多い。単一成分の薬より複数の成分が配合された薬の方が依存性が高まるという。

その他、頭痛の治療薬として使用している鎮痛剤やエルゴタミン製剤を、過剰・慢性的に使用すると、本来の頭痛とは異なる頭痛が発現する。鎮痛剤 誘発性頭痛(Analgesic abuse headache)、エルゴタミン誘発性頭痛、薬剤乱用を伴う慢性連日性頭痛などといわれる頭痛である。鎮痛剤あるいはエルゴタミンを3ヵ月以上連用すると、月の半分は頭痛をきたすようになり、これらの薬剤の使用を中止すると1ヵ月以内に頭痛が消失する。

鎮痛剤乱用による頭痛は、アスピリン(50g以上/1ヵ月)又は他の鎮痛剤、NSAIDsを相当量使用した際に起こるとされている。エルゴタミンによる頭痛は、連日2mg以上のエルゴタミンを服用した際に起こり、頭部全体の拍動性の頭痛として発現、発作性が不明確、随伴症状を伴わないことで片頭痛と区別できるとされている。

鎮痛剤、エルゴタミンの使用を中止すれば、本来の頭痛に戻るが、患者は頭痛がするから鎮痛剤を服用しているわけで、薬の服用が頭痛を悪化させることを説明しても、なかなか理解が得られず、適切な治療ができない。頭痛薬長期乱用に伴う頭痛の原因となる薬剤として、鎮痛薬、エルゴタミン、カフェイン、オピオイド、バルビツレート、トリプタン系薬剤が挙げられる。治療の原則としては、原因薬剤の中止、薬剤離脱症状に対する治療、薬剤乱用の原因となった頭痛の予防、患者教育が必要である等の報告が見られる。

[615.8.ANA:2004.6.28.古泉秀夫]


  1. 医療ルネッサンスNo.3342 頭痛の新常識-3- 逆効果 鎮痛薬の乱用;読売新聞,第46007号,2004.4.22.
  2. 日本神経学会:http://www.neurology-jp.org/,2004.4.27.
  3. 清水俊彦:特集-外来で見る女性特有の痛みと薬物療法-「頭が痛い」と訴える患者;薬局,55(6):1961-1970(2004)

チャーガについて

日曜日, 8月 12th, 2007

KW:健康食品・チャーガ・チャガ・Chaga・Tchaga・シベリア霊 芝・カバナタケ・白樺茸・シラカバタケ・白樺霊芝・カバノ癌腫病菌

Q:チャーガといわれる健康食品はどのよ うなものか

A:チャーガ(Chaga、Tchaga)あるいはチャガは、サルノコシカ ケ科又はタバコウロコタケ科に属するとされている茸で、白樺や岳樺などのカバノキ科の木肌の割れ目に寄生して菌糸を伸ばし、木質を腐食しながら菌核を形成する。菌核は石炭のようになり、大きなものは10kgにも達する。

ロシア・ヨーロッパ・中国・日本の北部地方等の寒冷地に分布する真菌類で、 一般的に見られる傘を形成せず、樹皮の下に薄く広がっている。

  • 学名:Fuscopiria Obliqua。
  • 和名:カバノアナタケ。
  • 別名:シベリア霊芝、カバナタケ、白樺茸、シラカバタケ、白樺霊芝、カバノ 癌腫病菌。

原産地ロシアでは、1950年代から60年代にかけて多くの研究が行われ た。日本には、1960年代にロシアのノーベル賞作家ソルジェニーツィンの小説「ガン病棟」で「チャガ」というロシア名で紹介された。しかし、きわめて稀少なもののため、門外不出とされ、これまで幻のキノコと呼ばれていた。地元ではお茶代わりに飲用されており、味はやや苦い。民間療法として胃潰瘍、悪性腫瘍、慢性胃炎、糖尿病、精力回復等に用いられている。

チャガの主な含有成分として、蛋白質、食物繊維、糖質、エルゴステロール、 ビタミン類、ミネラル類、フラボノイド、トリテルペノイド、アルカロイド、プテリン、アガリチン酸、イノシトールなどがあげられている。

水溶性多糖類としては、マンノース、ガラクトース、キシロース、アラビノー ス等のヘテロ糖鎖と水不溶性多糖類β-glucanが主体であるとされる。なかでも多糖類(β-glucan)については、他のキノコ類に比べて、含有量が多いと報告されている。チャガの多糖類は、主として生体の免疫力を高め、ガン細胞の成育を阻止する作用があるとされている。

期待される健康効果

・抗酸化作用(活性酸素の抑制:アガリクス茸の約24倍)

・抗がん作用(β-glucan)

・血糖値降下作用(インスリン分泌の促進又はインスリン抵抗性改善)

・血圧降下作用(食物繊維)

・インフルエンザウィルス・エイズウィルスの増加抑制(チャガの熱水抽出物 のリグニン)

[015.4.CHA:2004.6.7.古泉秀夫]


  1. 奥田拓道・監修:健康・栄養食品事典 改訂新版;東洋医学舎,2004 -2005
  2. 中島裕希・他:シベリア霊芝(チャガ)の抗酸化活性と超高圧法によるエ キス調製;日本薬学会,2004[健康産業流通新聞,第570,2004.4.22.]
  3. 今西裕華・他:チャガ抽出物のII型糖尿病モデル動物における耐糖能の 改善効果について;日本薬学会,2004[健康産業流通新聞,第570,2004.4.22.]
  4. 寺井 薫・他:メシマコブ(Phellinus linteus)とチャーガ(Fuscoporia obliqua)による抗腫瘍効果と放射線防御効果に関する研究;日本薬学会,2004[健康産業流通新聞,第570,2004.4.22.]
  5. カバノアナタケ10-U1株に感染したシラカンバ幼植物体の感染特異的 タンパク質の検出;日本農芸化学会,2004[健康産業流通新聞,第570,2004.4.22.]

茶葉抽出成分の除臭効果

日曜日, 8月 12th, 2007

Q:医師からラジオでお茶の葉の成分か何かから作ったものを内服させると便の臭いが少なくなることを聞いたが、これは何かの質問を受けた。入院患者で便臭の酷い患者がいるとのこと

A:通常、日本人に飲用されるお茶は、生薬名『茶葉(チャヨウ)』。ツバキ科

のチャノキ(Thea sinensis L.)葉を摘み蒸籠(セイロ)で蒸し酸化酵素の作用を停止し、提供されるもので、ビタミンCが多いことが知られている。

その他、発汗、興奮、利尿作用のあるカフェイン、テオフィリン等のアルカロイド、下痢止めの効果があるチャタンニン、茶の旨味成分としてアルギニン、テアニン等のアミノ酸が含まれている。

その他、茶葉中の成分として、次の報告がされている。

メチルキサンチン類 caffeine(4%)、theobromine、theophylline、adenine、xanthine、methylxanthine類の一部は、タンニンと結合している。
多価フェノール類 特にタンニン(カテコールタンニンが主であるが栽培品種や葉令により10?20%の間で変動)。数多くの単一成分が分離;(?)- epicatechin,4-gallocatechin及びその他のcatechin-gallate類、flavan-3-ol,flavan- 3,4-diol類、theaflavine類のダイマー。procyanidin類(thearubigenin類)のオリゴマー、没食子酸やクロロゲン酸等のようなフェノールカルボン酸
精油 主にモノテルペン-アルデヒドとモノテルペン-アルコールが存在し、300種以上の化合物が検出
その他の成分 多くのフラボノイド類、トリテルペンサポニン類及び主として醗酵の際に初めて生成する揮発性芳香成分。theanine(グルタミン酸の5-エチルアミド)は、茶のアミノ酸における特徴的な成分の一つで、品質評価に用いられる。茶葉中にアルミニウムが蓄積し、古葉中に一部フッ素化合物を高度に含有するものがある。

緑茶はその免疫賦活作用、抗癌作用、活性酸素の生成抑制、健胃、抗菌、解毒、虫歯予防、利尿、眠気覚ましというような多くの効能が報告されているが、近年、脚光を浴びたのはチャタンニン(カテキン)の殺菌作用である。

緑茶がコレラ菌の他、黄色ブドウ球菌、腸炎ビブリオに対しても解毒作用があること、MRSAに対しても有効で、更にO-157についても殺菌作用があることが報告されている。緑茶の抗癌作用についての研究も進捗しているが、その抗癌性がepigallocatechin-gallate(エピガロカテキンガレート)によることが確かめられている。

その他、エイズへの効用、緑茶に含まれるビタミンA・C・Eが抗酸化作用を持つほか、カテキンが脂質代謝改善作用とともにSOD様活性作用(抗酸化物質)、アルツハイマー病、糖尿病、心疾患、動脈硬化等への効果もカテキンの効果であるとする報告がされている。上記報告中には、便の除臭効果に関する報告は含まれていないが、健康食品として市販されている商品の中にはOS液(緑茶を主体とした天然食用植物エキス-タンニン、フラボノール等にビタミンを配合)含有製品が市販されている。

*エチケット・ビュー(ダイリン;東京都港区新橋5-14-6  第2秋山ビル)

その他、マッシュルームから抽出した天然成分でシャピニオンエキス及び緑茶エキスを含有する製品も市販されている。

*NIOONE[ニオワン](カンロ株式会社)

シャピニオンエキスについては、次の報告がされている。シャピニオンエキスに含まれるミネラル・アミノ酸・マンニトール・ヘミセルロース等の茸の有効成分により、コレステロール溶解性、血圧降下作用、ウイルスに対する免疫作用があるとされている。悪臭除去効果としてメチルメルカプタン(野菜の腐敗臭・口臭に類似)・トリメチルアミン(魚の腐敗臭、アンモニア臭に類似)に対する消臭効果があると報告されている。

以上は、健康食品であり、治療上の必要があったとしても保険医療機関での取扱は困難であり、患者家族等に購入依頼することが必要である。

なお、承認適応として便臭除去は認められていないが、『葉緑素』含有製剤には、葉緑素の持つ消臭効果により便臭を消去する作用が見られるので、試用してみる価値はある。ただし、この場合、保険請求はできない。

[015.9THE:2000.4.19.古泉秀夫]


  1. 伊澤一男:薬草カラー大事典;主婦の友社,1998
  2. 井上博之・監訳:西洋生薬;廣川書店,1999
  3. 奥田拓道・監修:健康・栄養食品事典;東洋医学舎,2000

地竜の薬効・薬理について

日曜日, 8月 12th, 2007

?KW:漢方薬・地竜・ミミズ科・蚯蚓・キュウイン・カショクツリミミズ・薬効・薬理

Q:地竜の薬効・薬理について

A:地竜とはフトミミズ科・ツリミミズ科に属する動物。蚯蚓(キュウイン)の異名。和名:カッショクツリミミズ等の全体。

各種の蚯蚓にはルンブリフェブリン、ルンブリチン、テレストロールンブリジンが含まれている。広地竜(フトミミズ科-参環毛蚓)にはヒポキサンチン等も含む。

蚯蚓には又含窒素化合物としてアラニン、バリン、ロイシン、フェニルアラニン、チロシン、リジン等のアミノ酸及びキサンチン、アデニン、グアニン、コリングアニジン等が含まれる。

蚯蚓(Lumbricusspencer)の脂肪類中には、ステアリン酸、パルミチン酸、高度不飽和脂肪酸、奇数個の炭素原子よりなる直鎖脂肪酸及び分鎖脂肪酸、リン脂質、コレステロール等を含む。蚯蚓(L.terrestris)黄細胞組織は炭水化物、脂肪類、蛋白質及び色素を含み、塩基性アミノ酸としてヒスチジン、アルギニン、リジンを含有する。この黄色素は恐らくリボフラビンか、それに類似した物質であろう。蚯蚓はある種の酵素を含みpH:8.0?8.2で蚯蚓を溶解させる。

[薬理]

  1. 降圧作用:広地竜チンキ剤、乾粉懸濁液、熱浸液、煎剤等は緩慢だが持続的な降圧作用を示す。
  2. 平滑筋に対する作用:広地竜から抽出した含窒素性有効成分は顕著な気管支拡張作用を示す。また、ヒスタミン及びピロカルピンの気管支収縮作用に拮抗する。
  3. その他、解熱作用、鎮静、抗痙攣作用等が報告されている。

高熱を伴う狂騒、幼児の急癇、風熱による頭痛、目赤、中風による半身不随、喘息、関節の疼痛、歯出血、尿閉等が適応として挙げられている。

[510.FD18.015.4QIU][1991.8.27.・1999.4.2.一部修正.古泉秀夫]


  1. 上海科学技術出版社・編:中薬大辞典第一巻;小学館,1985
  2. 国立国際医療センター薬剤部医薬品情報管理室・編:FAX.DI-News,No.153,1991.8.30.より転載

中国で処方された薬剤について

日曜日, 8月 12th, 2007

KW:薬名検索・正痛・麦迪バイ素・バクチバイソ・処方薬・解熱鎮痛薬・アスピリン・フェナセチン

Q:中国人が持参した「正痛・麦迪バイ素」の処方内容について

A:正痛→中国における医療用医薬品であり、aspirin 0.2268g・fenacetine 0.162g・caffeine 0.035gの配合剤である。

解熱鎮痛剤であり、国内でも類似の処方は使用されている。

「麦迪・素」→「麦地・素」→バクチバイソと発音する。Midecamycinを含有する抗生物質で、国内での入手は可能である。医療用医薬品。尚、本剤の第2文字については「迪」あるいは「地」の両者が用いられているとの回答が得られた。また、3文字目は電脳では得られない語であるため「・」とした。

「利福・素」→リフクバイソ。Rifampicin の製剤で、医療用医薬品である。国内での入手可能。

[510.FD14.011.1ASP][1991.2.14.・1999.3.25.一部改訂.古泉秀夫]


  1. SDIC・私信,1991
  2. 国立国際医療センター薬剤部医薬品情報管理室・編:FAX.DI-News,No.30,1991.2.28.より転載