ネオドパゾールとハルナールの同時服用
日曜日, 8月 12th, 2007KW:臨床薬理・パーキンソン病・ネオドパゾール錠・ハルナールカプセル・levodopa・benserazide hydrochloride・tamsulosin hydrochloride
Q:パーキンソン病でネオドパゾールを服用中の患者が、他院でハルナールの処方を出された。パーキンソン病治療目的で通院中の病院の薬剤師が、ハルナールはいらないといったため患者はハルナールの服用を中止している。相互作用とは違う理由によると思われるが、考えられる理由は
A:服用中の薬について考える前に、次の点を整理しなければならない。
- 患者が他院を受診した理由及びパーキンソン病治療中の医師は、そのことを承知しているのか?。
- 他院受診時、患者は現在治療中の病気及び服用中の薬剤について、ハルナールを処方した医師に伝達してあるのか?。
- 患者の病状が不明な段階で、医師の処方した薬剤について、薬剤師が要・不要の判断を下すことは避けなければならない。また患者に直接いうということは問題である。もし処方上何等かの疑義があると判断したとすれば、それぞれの処方医に疑義照会すべきであり、結果的に診療の妨害をしたことになれば問題としなければならない。
次に服用中の薬剤について検討した結果を紹介する。
項目 | levodopa・ benserazide hydrochloride
ネオドパゾール錠(第一) |
tamsulosin hydrochloride
ハルナールカプセル(山之内) |
---|---|---|
作用機序 | 本剤はlevodopaと芳 香族L-アミノ酸脱炭酸酵素阻害薬benserazideを4:1の比率で配合したパーキンソニスム治療剤である。パーキンソン病・パーキンソン症候群患者において、脳内線条体で不足しているドパミンを補う効果があり、ラットにおける実験により次の作用が認められている。
levodopaはドパミンの前駆物質であり、血液-脳関門を通過し、脳内で脱炭酸酵素の働きによりドパミンに転換され、パーキンソン病・パーキンソン症候群の症状を改善する。 しかし、単独投与の場合、levodopaは末梢組織において脱炭酸酵素により急速にドパミンに転換される。 そのため体内に吸収されたlevodopa量に比べ、血液-脳関門を通過して脳内に取り込まれるlevodopaは少ない。一方、benserazide hydrochlorideはlevodopa脱炭酸酵素阻害薬であり、脳以外の末梢組織でlevodopaの脱炭酸反応を防ぐ。このため配合剤では末梢での血中levodopa濃度が高まり、脳内へのlevodopa移行量が増加する。levodopa単独投与に比し、levodopaの1日量を約 1/5に減量でき、同等又はそれ以上の効果を発揮する。 また食欲不振、悪心、嘔吐等の消化器障害を軽減する。また、塩酸ピリドキシン(Vitamin B6)併用時でも作用は減弱されない[添付文書,2003.3]。 |
尿道及び前立腺部のα1受容体を遮断することにより、尿道内圧曲線の前立腺部圧を低下 させ、前立腺肥大症に伴う排尿障害を改善する。
ヒト前立腺標本での受容体結合実験において、塩酸プラゾシンより2.2倍、メシル酸フェントラミンより40倍強いα1受容体遮断作用を示した[添付文書,2004.7]。 |
副作用 | 泌尿器[排尿障害0.1%未 満] | ? |
パーキンソン病治療目的で、現在、患者が服用中のネオドパゾール錠の副作用として排尿障害が報告されており、薬剤の副作用により尿の排出が困難であるとすれば、本剤処方医と相談の上対処すべき問題である。
また、患者に前立腺肥大による排尿困難が見られるとすれば、患者の判断で他院を受診するのではなく、主治医に相談の上、他医への検診依頼を受けるべきであり、主治医と意見調整のできる範囲内の医師の治療を受けることが基本原則である。
医師間で意見の調整が可能な状況があれば、薬物相互作用等の薬物療法に係る調整が可能となるため、患者の安全性確保の上からも、主治医に相談なしに診療先を増やすべきではない。
なお、tamsulosin hydrochlorideは不要だとした薬剤師の判断の根拠については、検討材料が不足しているため、質問内容から類推することはできない。
[015.4.LEV:2004.12.14.古泉秀夫]
- 高久史麿・他監修:治療薬マニュアル;医学書院,2004