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トレチノイン水性ゲルについて

日曜日, 8月 12th, 2007

KW:院内製剤・特殊製剤・トレチノイン・水性ゲル・レチノイド・retinoid・脂溶性vitamin・atRA・メラニン色素沈着・老人性色素斑・加齢皮膚変性

Q:トレチノイン水性ゲルの調製法について

A: 脂溶性vitaminの一つであるvitamin Aと呼ばれる物質は、単一のものではなくvitamin A作用を有する数種類の類縁物質の総称である。 vitamin Aの類縁化合物であるレチノイド(retinoid)は、多くのホルモンと同様に核内に転写因子である受容体を持ち、生体内では形態形成や細胞の増殖分化の制御因子として不可欠のものである。retinoidの外用剤は、海外ではニキビ、光老化の治療薬として使用されており、更に乾癬や悪性腫瘍に用いられているものもある。本邦では外用薬は承認されていないが、合成retinoidであるCD-271(adapalene)とAm-80の治験が実施されているとする報告が見られる。

vitamin Aの生理活性の本体ともいえるall-trans retinoic acid(atRA:tretinoin)の持つretinoidの特異的作用を最大限に利用することにより、多くの皮膚疾患の治療及び美容目的での使用も可能であるとする報告がされている。関連する製剤の処方及び調製法は次の通り報告されている。

tretinoin

カーボポール940

エマルゲン408

10%-水酸化ナトリウム液

パラオキシ安息香酸メチル

パラオキシ安息香酸エチル

精製水 全量

0.1g

1g

2g

0.6mL

0.026g

0.014g

100mL

retinoic acid

エマルゲン

水性ゲル

200mg

4mL

50g

カーボポール

注射用蒸留水

10%-水酸化ナトリウム液

5g

500mL

3mL

調製法

  1. 水性ゲル(500g):カーボポール5gをガラス乳鉢に入れ、注射用蒸留水500mLを少量ずつ加える。ダマがなくなったら10%-水酸化ナトリウム液3mLを加える。ダマがなくならないときは一晩放置し、ダマがなくなった後で10%-水酸化ナトリウム液を加える。
  2. 0.4%-レチノイン酸ゲル:retinoic acid 200mgをガラス乳鉢に入れ、エマルゲン4mLを少量ずつ加える。水性ゲル50gを加え、均質に練合する。

特記事項

  1. tretinoinは催奇形性があるため調製時には手袋、マスクを着用する。
  2. 要院内倫理委員会承認。文書による患者説明・同意文書の取得。
  3. 使用患者は使用後8カ月は避妊。
  4. ステロイドは拮抗作用があるため、同時使用不可。
  • 適応:メラニン色素沈着、老人性色素斑、加齢皮膚変性に対する治療。
  • 規格:5g/個(軟膏瓶)
  • 保存条件:冷暗所保存。
  • 使用期限:安定性のデータはないが1カ月。
  • 使用上の注意:眼の近く、傷口及び日焼け、アセモなどのある場合には使用しない。

[014.16.RET:2004.1.27.古泉秀夫]


  1. 糸川嘉則:最新ビタミン学;フットワーク出版,1998
  2. 吉村浩太郎:レチノイン酸治療;
    http://www.cosmetic-medicine.jp/list/hihuka-practice.html,2004.1.27.
  3. 日本病院薬剤師会・編:病院薬局製剤 第5版;薬事日報社,2003