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生石灰の毒性について

日曜日, 8月 12th, 2007

KW:毒性・中毒・生石灰・quick lime・酸化カルシウム・calcium oxide・乾燥剤・脱水剤

Q:乾燥剤としても使用される生石灰の毒性について

A:生石灰(quick lime)は、酸化カルシウム(calcium oxide)の別名である。

  • 本品を強熱したものは定量するとき、酸化カルシウム(CaO)98.0%以上を含む。
  • 本品は白色の堅い塊で粉末を含み臭いはない。
  • 本品は熱湯に極めて溶け難くエタノール(95)に殆ど溶けない。
  • 本品1gは水2,500mLに殆ど溶ける(水を注ぐと、暫時の後、激しく発熱して水酸化カルシウムとなる)。
  • 本品は空気中で徐々に湿気を及び二酸化炭素を吸収する。
  • 用途:薬品や食品の防湿(酒、弁当等)又は乾燥、あるいは脱水に用いる。土壌改良剤としても用いられる。日本薬局方収載。
  • 毒性:成人(経口)致死量10g、マウス(経口)LD50:7.3g/kg。酸化カルシウムは皮膚、粘膜に附着すると水酸化カルシウムとなり、局所の腐蝕を起こす。工業中毒としてしばしば見られるが、稀酢酸(皮膚)、4%-塩化アンモニウム水溶液(結膜など)で汚染部を速やかに洗浄した後、一般火傷と同様の治療を行う。
  • 作用:水分と反応して脱水、発熱(加温)。発熱及びアルカリ性を示し、粘膜腐食作用、潰瘍を起こす。経口摂取した場合、消化管粘膜や組織内の水分と反応して強く発熱する。長時間使用されていた生石灰は、水分を徐々に吸収し、大部分は消石灰(水酸化カルシウム)あるいは炭酸カルシウムになるため、毒性は低い。生石灰はアルカリ腐食剤、乾燥剤が新しいほど生石灰の比率が高い。生石灰そのものの毒性は弱いが、粘膜に附着しやすい。口内や消化管粘膜に附着し、脱水、発熱作用を起こし、刺激糜爛、出血を起こす。

症状

  • 経口:口唇・咽頭・食道・胃等、直接触れた局所の糜爛、浮腫、疼痛。時に嚥下困難。重篤な場合には食道狭窄。
  • :粉末固着による結膜・角膜の激痛、浮腫、潰瘍。
  • 皮膚:化学熱傷性の発赤、疼痛、水疱形成。

処置

  • 経口:胃洗浄・催吐は禁忌(消化管と再接触によって腐蝕増強)。活性炭は嘔吐を誘発させるため不可。下剤の投与は不可。摂取後1時間以内であれば、牛乳(120-240mL、幼児15mL/kg以下)、卵白、粘膜保護剤(アルロイドG、マーロックス)を頻回に投与。消化管糜爛、潰瘍、瘢痕狭窄に対してはステロイド療法(プレドニゾロン1-2mg/kg又はデキサメサゾン0.1mg/kg/日)を3週間を限度に実施。3週間以降に食道狭窄が見られた場合、ブジー挿入等拡張法、外科的措置。
  • :直ちに流水で十分洗眼。長時間続けるほどよい(結膜円蓋内がpH試験紙で中性になるまで洗浄。対症療法。)
  • 皮膚:附着部分を流水で十分洗浄及び対症療法。

 [63.099.CAL:2003.9.16.古泉秀夫]


  1. 薬科学大辞典 第2版;広川書店,1993
  2. 国立国際医療センター薬剤部医薬品情報管理室・編:医薬品情報,26(4):341-342(1999)
  3. 西 勝英・監修:薬・毒物中毒救急マニュアル 改訂6版;医薬ジャーナル社,2001
  4. 鵜飼 卓・監修:第三版 急性中毒の手引き;薬業時報社,1999
  5. 第十四改正日本薬局方解説書;廣川書店,2001