トップページ»

シアニジンについて

土曜日, 8月 11th, 2007

KW:薬名検索・シアニジン・cyanidin・アントシアニジン・anthocyanidin・アントシアニン・anthocyanin・フラボノイド・flavonoid

Q:テレビで放映していたシアニジンについて

A:シアニジン(cyanidin)、3,5,7,3′,4-pentahydroxyflavylium。

cyanidinは最も一般的なアントシアニジンである。赤色系花の色素にはこの配糖体が多い。

アントシアニン(anthocyanin)は、ポリフェノールと呼ばれる植物に存在するフェノール化合物の一つで、5000種類あるといわれているポリフェノールの内、フラボノイド(flavonoid)化合物のグループに属している。自然界には、2000種類のflavonoidがあり、その構造からフラボン、フラバン、フラボノール、anthocyaninの四つのグループに分かれる。anthocyaninは、水溶性で常に糖がついている。anthocyaninから糖を除いた物質をアントシアニジン (anthocyanidin)といい、anthocyanidinは、C6-C3-C6のflavonoidの基本骨格を持っている。

anthocyanidinは2-phenylbenzopyrylium (flavylium)を基本骨格に持つ化合物群の総称である。anthocyanidinはBリングの違いからペラルゴニジン (Pelargonoidin)、シアニジン(Cyanidin)、ペオニジン(Peonidin)、デルピニジン(Delphinidin)、マルビジン(Malvidin)、ペツニジン(Petunidin)の六つの主な種類に分類される。anthocyanidinは、希に単体で植物に存在する場合があるが、通常は、配糖体であるanthocyaninとして自然界に存在する。糖は、C -3の位置に付くものが最も多く、2番目に多いのはC-5の位置で、希にC-7の位置に付くものも見られる。

糖には、グルコース、ガラクトース、ラムノースとアラビノースがあり、糖は、更に、p-クマル酸、カフェー酸、フェルラ酸、シナピ酸、酢酸、マロン酸、p-ヒドロキシ安息香酸などの酸とアシル化(- CO-)して結合する。アシル化がおこるとanthocyaninの色素が安定するといわれている。グリコシル化(配糖体になる)とアシル化により300 種類以上のanthocyaninが存在する。

  • 黒豆色素:cyanidinは黒豆の黒い皮の部分に含まれる色素として知られている。cyanidinは強い抗酸化作用を持ち、身体に有害な活性酸素を除外する。また、黒豆には大豆特有の抗酸化成分であるサポニンも含まれており、cyanidinとのダブル効果が期待できる。更にcyanidinやサポニンには、血液中の中性脂肪を減少する作用もあるといわれている。
  • 紫トウモロコシ色素:イネ科トウモロコシ(Zea mays LINNE)の紫色の種子より、温時水又は弱酸性水溶液で抽出して得られる紫トウモロコシ色素の本質も、シアニジン-3-グルコシド(cyanidin- 3-glucoside)であると報告されている。紫トウモロコシ色素の性状として、暗赤紫色の液体で酸性食品に使用した場合、鮮明な赤色-紫赤色を呈する。本品は水、プロピレングリコール、アルコール、酢酸などに溶解するが、油脂、エーテル、無水アセトンなどには溶解しない。pHの変動により、かなり色調が変化する。酸性で赤色、中性で赤色-暗赤色、アルカリ性で赤紫-暗藍色を呈する。強アルカリ側では不安定で、酸性域での使用が必要である。本品は熱・光に対して比較的安定であるとされている。紫トウモロコシ色素は既存添加物名簿に収載されている。
  • 急性毒性:SD系雄・雌ラット死亡例認めず。
  • 亜急性毒性(13週):死亡例認めず。血液学的所見: 異常を認めず。臨床生化学的所見:異常を認めず。病理組織学的所見:異常を認めず。

黒ニンジン

皮が真っ黒な為に黒ニンジン(Daucus carota L.)と呼ばれている原種に近いニンジンで、3000年前からアジアで栽培され食用にされている。このニンジンを切ると内部は紫色をしている。皮が黒く見えるのも紫の色素が皮の中に豊富に含まれているためで、この色素は、anthocyaninと呼ばれる物質である。

黒ニンジンは、12世紀には、ヨーロッパでも栽培されるようになったが、 1750年頃にオランダで品種改良され、現在の西洋ニンジンが生産されるようになった。黒ニンジンは、色素が豊富に含まれるために、煮ると食べ物が紫色に着色してしまうため、それが、大衆に嫌がられ徐々に栽培が減少し、現在の西洋ニンジンに置き換わったといわれている。しかし、現在でもスペイン、アフガニスタン、エジプト、トルコなどで栽培され食用にされている。味は、フルーティな美味しい味で、トルコなどでは、ジュースにして飲まれている。

黒ニンジンに含まれるanthocyaninの種類は次の通りである(mg/mL)。

cyanidin-3-(2”-xylose-6″-glucose-galactose): 0.607

cyanidin-3-(2”-xylose-galactose):0.533

cyanidin-3-(2”-xylose-6″-sinapoyl-glucose-galactose):0.761

cyanidin-3-(2”-xylose-6″-feruloyl-glucose-galactose):3.652

cyanidin-3-[(2”-xylose-6″-(4-cumaroyl)glucose-galactose):1.522

黒ニンジンのanthocyaninは、cyanidinの配糖体だけが含まれており、糖は全てC-3の位置に付いており、構造的に非常に良く似たanthocyaninで構成されている。これらの配糖体部分で、クマル酸、フェルラ酸、シナピ酸とアシル化しているanthocyaninが多く、アシル化しているanthocyaninは、安定性が高く脱色しにくい性質を持っている。その為、光や温度に対して、他のanthocyaninと比べて高い安定性を持つとされている。

anthocyaninの機能として、次の報告がされている。

  1. 抗酸化作用・フリーラジカル消去作用:フラボノイド化合物の1種である anthocyaninは、抗酸化作用とフリーラジカル消去作用を持っている。Bリングに付いている水酸基から水素を過酸化物に移動させることで過酸化物を除去したり、電子をフリーラジカルに転移させることで、フリーラジカルを消去する作用を持っている。
  2. コレステロール・中性脂肪の低下作用:anthocyaninは、低比重リポタンパク(LDL)コレステロールと中性脂質を低下させる。

[011.1.ANT:2005.4.26.古泉秀夫]


  1. 田中 治・他編:天然物化学 改訂第6版;南江堂,2002
  2. 海老塚 豊・監訳:医薬品天然物化学;南江堂,2004
  3. http://www.airgreen.co.jp/black%20carrot/black%20carrot%20catalog.html,2005.4.9.