処方せん医薬品の指定について
土曜日, 8月 11th, 2007KW:法律・規則・要処方せん薬・処方せん薬・薬事法・薬事法第49条
Q:薬事法の改正に伴い『処方せん医薬品』の指定がされた。今回の指定では注射薬も含まれているが、病院内で取り扱う注射薬についても、処方せんがない場合、病棟等への払い出しは出来ないということか
A:処方せん医薬品の指定について [各都道府県知事・政令市長・特別区長宛 厚生労働省医薬食品局長発出 薬食発第0210001号(平成17年2月10日)]によれば、
薬事法及び採血及び供血あつせん業取締法の一部を改正する法律(平成14年法律第96号。以下「薬事法等一部改正法」という。)による改正後の薬事法(昭和35年法律第145号。以下「新薬事法」という。)の規定に基づき、平成17年厚生労働省告示第24号(薬事法第49条第1項の規定に基づき厚生労働大臣の指定する医薬品。以下「新指定告示」という。)が別添の通り告示され、平成17年4月1日より適用されることになりました。
つきましては、下記事項に御留意の上、関係方面に周知方よろしくお取りはからい願います。なお、この告示の適用に伴い、昭和36年の厚生労働省告示第17号(薬事法第49条第1項の規定に基づき厚生労働大臣の指定する医薬品)は平成17年3月31日限り廃止します。
記
1.処方せん医薬品の指定の趣旨
現在、薬事法一部改正法による改正前の薬事法(以下「旧薬事法」という。)第49条第1項の規定により、薬局開設者又は医薬品の販売業者が処方せんの交付又は指示を受けた者以外の者に対して販売又は授与(以下「販売等」という。)出来ない医薬品を要指示医薬品として指定しているところである。
今般、医療の実情や他の法規制に照らし、要指示医薬品として指定されていなくとも、医師等の処方せん又は指示により販売又は授与されてきた注射剤や麻薬製剤等の医薬品の適正使用を一層徹底するため及び口頭指示等による明瞭でない販売等を改めるため、新薬事法において、呼称を要指示医薬品から処方せん医薬品と改めるとともに、処方せんの交付を受けた者に対してのみ、薬局開設者又は医薬品の販売業者が処方せん医薬品の販売等できることとしたものである。 なお、処方せん医薬品の指定の根拠条文である新薬事法第49条第1項の立法趣旨は、旧薬事法のそれと同じである。
上記に見られるとおり、この法律の規制を受けるのは、『薬局開設者又は医薬品の販売業者』であって、『医療法上の調剤所』は、新薬事法第49条第1項の規制は受けない。
第二節 医薬品の取扱い (処方せん医薬品の販売)
第四十九条 薬局開設者又は医薬品の販売業者は、医師、歯科医師又は獣医師から処方せんの交付を受けた者以外の者に対して、正当な理由なく、厚生労働大臣の指定する医薬品を販売し、又は授与してはならない。ただし、薬剤師、薬局開設者、医薬品の製造販売業者、製造業者若しくは販売業者、医師、歯科医師若しくは獣医師又は病院、診療所若しくは飼育動物診療施設の開設者に販売し、又は授与するときは、この限りでない。
2 薬局開設者又は医薬品の販売業者は、その薬局又は店舗に帳簿を備え、医師、歯科医師又は獣医師から処方せんの交付を受けた者に対して前項に規定する医薬品を販売し、又は授与したときは、厚生労働省令の定めるところにより、その医薬品の販売又 は授与に関する事項を記載しなければならない。
3 薬局開設者又は医薬品の販売業者は、前項の帳簿を、最終の記載の日から二年間、保存しなければならない。
2.新指定告示の要旨
(1)医薬品として承認されているもののうち、医師、歯科医師又は獣医師(以下「医師等」という。)の処方せんに基づいて使用すべきものとして、以下に該当するものを処方せん医薬品として指定したこと。
- [1]医師等の診断に基づき、治療方針が検討され、耐性菌を生じやすい又は使用方法が難しい等のため、患者の病状や体質等に応じて適切に選択されなければ、安全かつ有効に使用できないもの。
- [2]重篤な副作用等のおそれがあるため、その発現の防止のために、定期的な医学的検査を行う等により、患者の状態を把握する必要があるもの。
- [3]併せ持つ興奮作用、依存性等のため、本来の目的以外の目的に使用されるおそれがあるもの。
(2)旧薬事法における要指示医薬品については、(1)に該当するものとして、処方せん医薬品として指定されるものであること。
(3)放射性医薬品、麻薬、向精神薬、覚せい剤、覚せい剤原料、特定生物由来製品及び注射剤については、(1)に該当するものとして、これらすべてが処方せん医薬品として指定されるものであること。なお、これらについては、それぞれ新指定告示第1号から第7号に規定しており、有効成分の表記(第8 号)による指定ではないことに留意されたい。
(4)新指定告示第7号については、人工腎臓用透析液及び医療用注入器を用いて体内に直接適用する固形製剤も含まれるものであること。
(5)新指定告示第8号関係
- [1]製剤に含まれる有効成分が同号に掲げるもの、その塩類、それらの水和物及び誘導体からなるもの(殺そ剤を除く。)が処方せん医薬品として指定されるものであること。
- [2]複数の有効成分を含有する製剤については、新指定告示上、含有する全ての有効成分を塩類、水和物及び誘導体までを含めた形で表記し、指定対象品目の明確化を図ったこと。
- [3]歯科用薬剤は外用剤には含まれないものであること。
(6)上記にかかわらず、体外診断用医薬品については処方せん医薬品として指定されないものであること。
3.運用上留意すべき事項
(1)新指定告示に掲げる全ての処方せん医薬品(平成17年4月1日に現に存するものも含む。)について、平成17年4月1日より適用するものであること。
(2)処方せん医薬品については第一種医薬品製造販売業許可、処方せん医薬品以外の医薬品については第二種医薬品製造販売業許可を受けた者でなければ、業として医薬品を製造販売してはならないこと。
(3)薬事法附則第14条第1項及び第2項の規定により、下記品目については平成19年3月31日までは新薬事法の規定に適合する表示がされているものと見なすこと。
- [1]平成17年4月1日に現に存するものであって、旧薬事法に適合する表示がなされているもの。
- [2]平成17年4月1日に現に旧薬事法に適合する表示がなされている容器若しくは包装又は添付文書(以下「添付文書等」という。)であって、平成18年3月31日までに添付文書等として使用されたもの。
(4)処方せん医薬品を取扱う製造販売業者は、その取扱う医薬品が処方せん医薬品である旨の情報提供等を適切に行うこと。特に、旧薬事法において要指示医薬品に指定されていなかったもので、今般、処方せん医薬品に指定されたものについては、周知を徹底すること。
(5)新指定告示及びこの通知発出に伴い、平成17年4月1日より、以下の通知中において「要指示医薬品」とあるのは「処方せん医薬品」と、「製造業者又は輸入販売業者」とあるのは「製造販売業者」と読み替える。
- [1]「医療用医薬品添付文書の記載要領について(平成9年4月25日付薬発第606号薬務局長通知)」
- [2]「医療用医薬品添付文書の記載要領について(平成9年4月25日付薬安第59号薬務局安全課長通知)」
- [3]「医療用医薬品添付文書の記載要領について(平成9年4月25日付薬発第607号薬務局長通知)」
- [4]「ワクチン類等の添付文書の記載要領について(平成11年1月13日付医薬発第20号医薬安全局長通知)」
- [5]「ワクチン類等の添付文書の記載要領について(平成11年1月13日付医薬安第1号医薬安全局安全対策課長通知)」
- [6]「ワクチン類等の接種(使用)上の注意記載要領について(平成11年1月13日付医薬発第21号医薬安全局長通知)」
別添
○厚生労働省告示第二十四号
薬事法(昭和三十五年法律第百四十五号)第四十九条第一項の規定に基づき、厚生労働大臣の指定する医薬品を次のように定め、薬事法及び採血及び供血あっせん業取締法の一部を改正する法律(平成十四年法律第九十六号)第二条の規定の施行の日(平成十七年四月一日)から適用し、昭和三十六年厚生労働省告示第十七号(薬事法第四十九条第一項の規定に基づき厚生労働大臣の指定する医薬品)は、平成十七年三月三十一日限り廃止する。
平成十七年二月十日
厚生労働大臣 尾辻 秀久
薬事法第四十九条第一項の規定に基づき厚生労働大臣の指定する医薬品
次に掲げる医薬品(専ら疾病の診断に使用されることが目的とされている医薬品であって、人の身体に直接使用されることのないものを除く。)
一、放射性医薬品(放射性医薬品の製造及び取扱規則(昭和三十六年厚生省令第四号)第一条第一号に規定する放射線医薬品をいう。)
二、麻薬(麻薬及び向精神薬取締法(昭和二十八年法律第十四号)第二条第一号に規定する麻薬をいう。)
三、向精神薬(麻薬及び向精神薬取締法(昭和二十八年法律第十四号)第二条第六号に規定する向精神薬をいう。)
四、覚せい剤(覚せい剤取締法(昭和二十六年法律第二百五十二号)第二条第一項に規定する覚せい剤をいう。)
五、覚せい剤原料(覚せい剤取締法(昭和二十六年法律第二百五十二号)第二条第五項に規定する覚せい剤原料をいう。)
六、特定生物由来製品(法第二条第十項に規定する特定生物由来製品をいう。)
七、注射剤(前各号に掲げるものを除く。)
八、次に掲げるもの、その誘導体、それらの水和物及びそれらの塩類を有効成分として含有する製剤(前各号に掲げるもの及び殺そ剤を除く。)。ただし、二以上の有効成分を含有する製剤にあっては、次に掲げるものに限る。以下個別薬品名省略
九、次に掲げるもの及びその製剤であって、動物に使用することを目的とするもの。
(1)オキシトシン
(2)血清性性腺刺激ホルモン
(3)胎盤性性腺刺激ホルモン
いずれにしろ病院内における注射剤は、一部自己注射可能薬品を除き、直接患者に交付するのものではなく、医師が直接患者に注射するか、医師の指示により看護師が注射するかであり、使用した注射剤については診療録に記載することが義務づけられている。使用された定数配置(常備薬)の注射薬の補充に関して、薬剤部門と病棟・手術室等の他部門間での物品の移動について、物品伝票によるか処方せんによるかは、院内の取り決め事項により行われる。
[615.1.PRE:2005.3.15.古泉秀夫]
- 薬事衛生六法;薬事日報社,2004